短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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ドン!

今日は朝起きたらとても良い天気。

ここは魔法が使える世界、スタルジア。

因みに魔法でなんでも出来るけど科学も盛んだ。

本やアニメでは魔法が盛んな世界は科学が遅れがちな描写が多い。

その理由はこの世界に他の異世界の人がポンポン落ちてくるのが大きいのだろう。

異世界の人が書く小説は面白い。

この世界に魔法がなかったらこうなっていたのだろうかと思う程完成度が良いのだ。

 

「あ、鳥」

 

窓の外から鳥が見え、今夜は焼き鳥にしようと考えていると鳥がピチュピチ、叫びながら飛んでいく。

野生の勘、かな。

ふふ、と笑う。

 

――ドン

 

「うわ、またか」

 

壁を殴る音が聞こえる。

ここはアパートなので壁が厚くないのだ。

隣に居るのはこの部屋以外の全ての部屋を借りているという意味の分からない事をしている男が住んでいる。

奇っ怪な人も居るものだから、世も末。

しかし、だ。

やられっぱなしなんて嫌だ。

前に煩いからやめてくれと手紙を書いて送ったらそれが翌日ゴミ袋に詰められていたのを知っている。

ころしてやろうかあの野郎、と思った。

隣人の名はまだ知らん。

だって大家に電話をしたら教えらんないって。

ふざけんなてめぇ、大家、お前こそ恨んでやる。

と何度か思ったけど頑張ってにこにこ笑顔で「そうですか」と言えた。

これぞ大人な対応。

次煩くしたらやり返してやると心に決めている。

取り敢えず散歩に行かなくちゃ。

 

――ガチャ

 

出たら左側に人影があり、今脳内で噂をしていた男っぽい人が居た。

本人なのだろうか。

今まで見たことがなかったから本人か分からない。

 

「女?」

 

相手も気付いたのかこちらを見る。

けっ、開口一番がそれかよ。

普通「こんにちは」「おはようございます」「どうも」が通過儀礼だろうが。

おっと、ついつい口が。

だって壁煩くするのにムカついてるもんで。

 

「こんにちは」

 

社交辞令で済ませる。

てか、こっちの事を知らないのなら手紙は読んでいないようだ。

あの切実丁寧な文章で書いたのに。

殺意がブワッと湧くが押さえる。

こんにちはって言ったのに相手は無言。

ムカッ。

そっちがそうならもうこっちだって何も言わない。

出口に向かって行く。

 

「待て」

 

(はァ!?待てってなに?お前何様だっ)

 

ギロッと睨み付けてしまいそうになるが我慢する。

しかし、滲み出る怒りを感じたのか男は首を緩く傾げた。

挨拶もせず呼び止めるとは絶対許さん。

数々の迷惑を被ったのだ。

 

「このアパートにはもう出入りするな」

 

唯我独尊。

その言葉こそ今ここに集約されている。

 

「は、はっ、はぁ?」

 

息苦しい。

怒りで呼吸がしにくい。

今日はなんだろう、息の根を止めてくださいデーかな?

 

「隣のやつにも説明しに行くから構うな」

 

そう言うと彼はこちらの部屋へ行きインターホンを押す。

出るわきゃないだろくそが。

あ、口が戻らないや。

一体どの目線で出入りを禁止にするのかこのアホは。

ふつふつと得たいの知れぬ感情がせりあがる。

 

「留守か」

 

眉間にシワを寄せる人の背後に立つ。

 

「毎日おま、貴方、壁どんどんしてますよね?この部屋の人が煩いって言ってましたよ」

 

手紙を読まないのだったら言う。

彼はこちらを向くことはなく不機嫌そうに喋る。

 

「壁を叩く演技の練習をしてるだけだ。一々文句を言うのに従ってられるか」

 

――ブツン

 

練習を?

なにを?

闇討ちされる対策かな?

悪魔がにっこりと笑う。

 

「その部屋の借り主は女です」

 

「じゃあお前が電話で説明しとけ」

 

さっきから命令されてる。

うざい。

もう耐えられない。

 

「その女は私だよこの騒音が」

 

物騒な発言をしたからか相手が漸くこちらに目を向ける。

 

「毎日煩いんですよ。ドンドンドンドン。そんなに練習したきゃ教えてあげますよ」

 

男との距離を縮めて渾身のドンを放つ。

背的に足りないので肩より下だが。

扉に向けて。

 

「これが、本物の、壁ドン、だ!」

 

――バコン!

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