「うーん……」
「おい、大丈夫か?」
「なんとか、へーき……」
じゃない―本当は。
なんだか気持ち悪い。
恋人のローにはお見通しなのだろうけれど。
「嘘吐け」
「あははっ、ばれた?」
ほらやっぱり優しい。
私がとぼけるように笑うとローはちゅっ、とおでこにキスしてきた。
「どーしたの?」
「ただしたくなっただけだ」
「ふふっ、そっか」
ローは私に対して甘い。
いつもなにかあると私よりいちはやく先回りをしている。
「もう一回キスしていいか?」
「さっきは勝手にしたのに……」
「そんなもん忘れた」
そう言って私に何度もキスを降らすロー。
顔、手、髪、体は服の上からだけれど。
そして最後はなぜかお腹の上だった。
「ロー?」
不思議に思った私はローを見る。
「自分の子にもついでだ……」
「え?」
ローの言葉に私はまさか、と自分のお腹を見る。
「う、嘘……」
「おれは医者だ。診断に間違いはねェ」
優しい顔をして私のお腹をゆるゆると撫でるロー。
「っ、う、産んでいいのっ?」
ローのその表情を見て、視界が潤む。
「当たりだ。おれ達のガキだからな」
まるで悪戯っ子のように笑う彼。
そんなローを見ていると、ふいに彼の手が私の頭に乗るのが見えた。
「安心しろ。お前もガキも幸せにしてやる」
「っ……」
泣き出す私をローはギュッと抱きしめて、私の髪をずっと撫でていてくれた。
そんな彼に私は自分の体に新しい生命の誕生を、未来を想像して、すごく心が暖かくなった。
私達の子、早く生まれてきて。そして愛情をたくさん教えてあげるから
***
『ありったけの愛してる』の続編です
「うんしょ……」
リーシャは大きなお腹を気遣いながら洗濯物を運ぶ。
「あっ!」
突然、横からひょいっと洗濯カゴを奪われた。
しかし、相手はわかっておりリーシャは非難の声を上げる。
「ロー、私の仕事を取らないで!」
「安静にしてろ」
「動いた方が赤ちゃんにもいいんだから!」
「お前が倒れたら話しにならないだろ」
「全く動かないなんて、落ち着かないのよ」
「……はァ」
ローは呆れたようにため息をつく。
「ほら、ちょうだい」
「駄目だ。おれがやる」
「え?ローが?」
「あァ」
「ついに父親として自覚し始めた?」
「さァな。とにかく安静にしてろ。いいな」
「はいはい」
「たく……もうお前一人の体じゃねェんだ」
「あ、その言葉一回は言われてみたかったんだよね!」
「………」
(もう無駄だな……)
ローはリーシャの頑固な性格を知っている為、これ以上は何も言うまいと口を閉じた。
「あれれ?ローパパは心配性ですね~」
リーシャはお腹を摩りながら言い聞かせるように言う。
「おれは赤ん坊よりお前の方が大事なんだよ」
「ふふっ、ローのそういうところ大好きだよ」
リーシャが微笑みながら言うとローは少し膨らんだお腹に手を置いて愛おしそうに目を細めた。
そのときの貴方は本当に父親のような顔をしていた
***
「……小せェ」
「ふふっ、そうだね」
先程誕生したばかりの小さな命。
リーシャとローの愛の結晶。
少しでも誤れば一瞬でポキリといってしまいそうなか弱い手。
その屈託のない笑みに両者共に口元を緩ませる。
「赤ちゃん。私達の子供だね……」
「そうだな」
ローは素っ気なく返してくるが、その目は暖かい。
「絶対ロー似だね」
「違うだろ。お前似だ」
「うーん。頭の良さはローかもね」
「こいつは女だから性格はお前に似るかもな」
「だといいな」
生まれたばかりだというのに、もう親馬鹿になっているリーシャとロー。
「あ!キャプテン、赤ちゃん見せて!」
ベポが笑顔で走ってくる。
リーシャの陣痛が始まった時に「おれも手伝う!」と言って、ベポも赤ん坊を取り出すのに活躍したのだ。
その後は、騒ぐクルー達に出産の報告に向かったベポ。
リーシャがベポに赤ん坊が見えるように見せた。
「ほら」
「わぁ!小さい!」
「ふふっ、ローと同じこと言ってる」
ベポの反応にくすりと笑うリーシャ。
「……お前ら、入ってこい」
ローが突然扉に向かって声を掛けた。
「お、お邪魔しま~す」
すると扉が開き、クルー達がぞろぞろと入ってくる。
「やべェ!まじでちっちェー!」
「すげェ!」
「つーか可愛い……」
様々な反応をするクルー達にリーシャとローは笑い合う。
そしてリーシャは我が子に微笑み掛ける。
「生まれてきてありがとう」