二十歳の時、女優をやっていた。
結構良いところまでいけたのだが、唐突なことが起こった。
マンホールに落ちた。
しかし、マンホールに落ちたままずっと落ち続けている。
一向に打ち付けられない。
体感で10時間くらい経った頃だろうか、光が見えて、視界いっぱいに光が漏れる。
どうしようと困っていると光が止み、視覚が戻ってきた。
なにもかもありえないことに理解できてないでいれば、また視界に人物が入る。
(な、なにぃ!?)
女性の胸だ。
リーシャに母は居ない。
孤児だ、誰も居なかった。
母など居ないはずなのに胸に抱かれているとな。
ごくごくと飲み干してゲップをした。
それからすくすくと育ち、すくすくと女優魂も忘れずにいた。
母にはレッスンを受けさせてくれた。
二十歳と5歳の実力は違いすぎるので直ぐに天才少女と知れ渡った。
しかし、大人になればどうなるのかまだ人生設計を書ききれてないので、仕事を絞って受ける。
その間に将来のスターを何人か見つけて、実が青いうちに接触していた。
先行きが気になりすぎる。
ただのミーハーだ。
まだ有名になってないから簡単に交流出来た。
そのうち、予想にしてなかった自体が発生して今、大変混乱し、困惑の極みに達している。
「な、なに」
「お前、おれとの共演断ったのはなんでだ」
迫られているのは齢17の私。
迫っているのは今や売れっ子俳優トラファルガー。
齢は……忘れた。
高校生とか大学生とか、どうだったかな?
そこまで特に気にならないので記憶は弱かった。
怒っているのは彼との共演を断ったから、トラファルガー・ローの言らしい。
そこまで怒ることだろうか。
日に日にローの接触が増えていき、遂には我が家でご飯を食べるくらいには交流を得てきた。
何故か来る。
「私は、仕事を選ぶって有名だし、ローなら知っているでしょう」
「だからわざわざ持ってきたのに断ったから聞いてんだよ」
相変わらずの柄の悪さ。
怖い怖いと顔を押し返す。
あと、近い。
顔が整っていんだから自覚してくれ。
「なにか忙しいのか」
「いや……そろそろ学業に集中しようかと。つまり、休職だよ」
「やめるのか」
「まぁ、大学に集中したいかなぁって」
ローは難しいことを考えている目で黙り込む。
「おれのことは嫌いか」
「どうしたの、唐突に」
「良いから、答えろ……!」
切羽詰まった顔で言われるので嘘を言う気がなくなる。
今、それは言ってはいけないのだと直感が働く。
「……好きだよ」
「男として?」
「そうだね。優しいし……なにより、ひたむきなところも」
「そうか……なら、恋人になれ」
「ふは……いや、そんな急に」
焦りすぎてステップが早くはないか。
かわいいところも好きである。
「良いよ」
「本当か?二言はないな」
女に問いかけるセリフではないが、焦らす真似はせずに頷く。
「ぶ」
いきなり抱きしめられて唇を肩に打つ。
地味に痛いよ。
腕の力を緩めてもらい、ちゅ、と自らキスをしかけた。
「な」
男の唖然とした顔が見えた。
年上としての威厳は保たせてもうよ。
「私の勝ち!」
「勝負なんてしてねェだろ」
仕方ないという顔で息を吐く男にくすくすと笑った。
「じゃあ、もう出演の話は無しの方向ね」
「駄目だ」
えっっ。
普通に付き合うのならもう出る必要性を感じない。
なのに、却下されて内心首を傾げる。
「もし報道されたら、付き合っても納得される理由付が必要だろ」
「同級生みたいなもんだから、年が近いからって言い訳は立つよ」
「もっと理由付してお前と過ごす理由は強ければ強い程良いだろうが」
どうせ付き合うのだから私は気にないのだけど。
心の中で、男の子の気持ちって難しいなと苦笑した。