短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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学生


彼女の彼氏が病みすぎている

高校生活において最も長い休息の時間、それはお弁当を食べる時。

 

「次はその卵焼きな」

 

「うん……」

 

何度も繰り返される言葉と動作に、慣れているようで慣れない行動がなんとも自分を迷わせる。

今現在、所謂相手の口の中に食べ物を運ぶ『アーン』なるものをしていて、これは自身が望む行為ではないが、その目が有無を言わさない空気に手を止めよう等という気にはなれなかった。

やっとローの口に入れ、相手がモグモグと口を動かす間、彼は手元にあるリーシャの弁当の中身を一品箸で摘まみ上げる。

徐にそれをこちらの口元へ動かし、ゆっくりと口を開ければ更に箸が近付き食べ物をパクリと食べた。

 

「お茶飲むか?」

 

問い掛けに頷くとローがリーシャのマイボトルを掴み手渡してくる。

そんな交互の食事の与え合いをし終えると、彼が然り気無く顎に手を当ててきて顔を上げさせられた。

 

「口元に食べカスがついてる」

 

まるで悪い子だと叱るような声音でニヤリと笑うと、唇をそっと、付いているのであろう場所へ寄せてペロンと舌で舐め取られた。

その羞恥心を沸き起こす行いに必然と顔が赤く染まる。

 

「俺の前でそんな顔、誘ってんのか」

 

クスクスと女子顔負けの色っぽい笑みを浮かべるローにもっと顔が赤くなるのは当然だろう。

その少しかさついた唇をほんのちょっと動かせば、すぐにキスへと変わる行為へと変わり、肩を跳ねさせてしまうが彼は全く気にせず貪るように啄む。

 

「うむっ」

 

「ん」

 

酸欠になるまで求められ、離れた時にはうっすらと目に涙が溜まり息を必死に吸い込んでいる。

キスはいつも可愛らしいものなんて滅多にされなくて、彼が自分をどれ程欲しているかと示されているような気がして嫌な気はしない。

最初の頃はこんな風ではなくて、どこにでもいる少し強引な男の子だった。

図書委員で一緒になったローとは一年からの同級生で普通に友人、または顔見知り程度。

殆ど、朝の挨拶をする男の子という認識だったのに、ある時彼が所属している剣道部で自主練習している所を偶然見掛けた。

 

『おはよう』

 

『ああ、朝は早いのか』

 

『偶然なんだけど、今日はたまたま早起きしたから』

 

正直に話して照れると、ローは汗を拭いながらこちらをジッと見た。

 

『?、どうしたの?』

 

『先に謝る』

 

何に対してだと口にしようとした瞬間、彼の顔が近付き息をつく暇もなく唇を奪う。

そうして数秒経ち、顔が離れていく様子を呆然と見ているリーシャにローは好きだ、付き合ってくれという告白と呼ばれるものをしてきて、無意識にこくりと頷いて、それに彼はこちらの身体を抱き締めてきて、汗の匂いと共に「一生大切にする」と宣言した。

 

 

 

***

 

 

 

トラファルガー・ローという彼氏において常識の範囲を越えるという言葉は常日頃付いて回る。

恋愛経験皆無の自分ですらこれはさすがにと思ってしまう事すら、彼に掛かれば当たり前に変わってしまう。

 

「ローくん、お手洗いに行ってくる」

 

本来お手洗いに、とすら言い難いのだがそうでもしなければ彼がどこに行くのか聞いてくるので、毎回場所を言っておくのだ。

立ち上がると腕を取られ、下を向くと何かを渡される。

 

「キーホルダー?」

 

「これさえあればお手洗いって言う必要はねェ」

 

「え?」

 

「とにかく、肌身離さず持ってろ。お守りな」

 

前に、小学生の時に友人と考えて作った海賊ごっこをした時に完成させた『海賊旗』のマークを模したチャームを受け取り、見つめる。

お守りならとポケットに入れると、ローは満足げに笑う。

 

「今まで恥ずかしい事言わせて悪かったな……こんな俺を嫌いになったか」

 

問われてそんな事ない、と否定すると彼は嬉しそうに笑い立ち上がると、背中に腕を回しギュッと抱き締めてきてうっとりとした声で、耳元で囁く。

 

「愛してる」

 

 

 

***

 

 

 

お手洗いに行ってくると去った彼女を見送ると、この人気の少ない体育館裏でスマホを手にしてメールを送る。

返ってくる返事と文章にニヤリと笑う。

 

『あいつは無事に入っていったか?』

 

『うん、怪しい男子は居ないっぽい』

 

各学年、組に居る女子からの情報網はとても強力。

どの時代においても情報は武器である。

彼女等にはリーシャに怪しい影、またはストーカーの類が居るかもしれないと事前に相談しておき、口外などもっての他だという条件により利用させてもらっていた。

勿論ストーカーなんていない、居たとしてもそいつはこの世に生きていられないと思う。

ただ何かあってからでは遅いので今から対策を投じる必要があるだけだ。

それに、さっき持たせたチャームに小型発信器も仕込んでおいたので、仮に誰かが嘘を報告したり謀ったりしても真実は彼女自身が証明出来る。

女など信用に値しない、全てはリーシャのみ。

例え彼女が嘘をついても直ぐに水に流すし、一度甘えれば直ぐにその何倍もの愛情を返せる程目に入れても痛くない存在だ。

これを人が何と呼ぶかなど最早どうでも良かった。

 

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