短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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異世界


迂闊な目論見

ブロッサム国。

ここは一年中春の国。

小国であるものの、軍事国家として知られていた。

しかし、その国の皇帝は至極戦い嫌いであったので比較的に周りからナメられていた。

そして、渦中の者はそれに対して不満を持っていた。

そもそも、なんで望んでもない皇帝をせねばならない、と。

王が片手間に気まぐれで手を出した女が平民。

で、王と王妃の間に生まれた子が女の子。

女の子は女になる前の年齢で駄々をこねた。

あんちくしょうどもが、と言いたくなる「面倒な仕事をする皇帝になりたくないわ」と宣う始末。

この国は世も末な情勢だった。

サクラが何とか回りの力を借りて立て直した。

で、今、王座から降りろと迫られていた。

なんでも、もう仕事は十分己が居ずとも回せる、というお花畑な思考に至ったらしい。

バカばっか。

アホらしいと彼と共に国を出た。

お望みとあらば去るよ。

 

「聞いたか?あの国、崩壊しかけるってな」

 

「当然だよ。自業自得」

 

軍部はあったけれど、とてもとても、小国の軍部の質は良くなかった。

どれだけ兵が増えようとも、怠慢から始まる仕事ぶりを知っていたから穴埋めを彼に頼んでいた。

 

「ローが居たから国として立ってられたんだもんねえ」

 

「追っ手を放つ余裕もないか。代わりにあんなゲテモノを寄越すとは自分達で止めを差したいのか?」

 

彼が言う止めというのは新たな王と言う名目で連れ戻そうとしているたった少数の女と男だ。

鬼畜なあの考えなし国は、崩壊しかけているというのに、呑気に出国させるなど頭がアレなのだと知っていたが改めて思わざる終えない。

なぜならその内の殆どの人間が王族と大貴族の子息達だからだ。

生き延びさせるにしても、無くなろうとしている国の者を出すなんて、何を考えているのだろう。

 

「あの国はお前に何をさせたいのかさっぱりだ」

 

ローが薪を用意しながら話を続ける。

彼との出会いは幼少期にまで遡る。

異世界のバイブルを持つローに本を見せてもらい二人でそれを実践したら戦闘の能力だけ抜きん出てしまった。

嬉しい誤算だが、皇帝である我が身で使うことはなかった。

しかし、ローの場合裏で能力を使い助けてもらっていたのだが、それを国力と思い違いをした王と王妃には呆れてしまったものだ。

どこをどう見て、誰に唆されたのかは知らぬが、ローもここに居るから、もう兵力は底辺にまで落ちただろう。

しかも、何年も悪にならない平穏を与えていた皇帝をこれといった理由もなく追い出したのだから、周りの国から白い目と厳しい目で見られ、お付き合いを見直されたのも当然。

当然過ぎる結果である。

 

「さてさて、もう直ぐ寝る時間だね」

 

「お前は先に寝てろ」

 

母親が王の手つきになったばかりに、こんな役目を背負わされ、生粋の貴族主義者達にナメられてきた。

少しでもフォローしてくれれば良かったのに、こちらに丸投げした彼らの未来は暗い。

貴族達が国を出る前に崩壊するのなら合併させてもらおうという隣の国の王に報告しておいた。

 

「え、ローも寝よ。色々あったし疲れてるっしょ」

 

「それは寝床に誘ってるのか」

 

ジ、と真剣な瞳で見られてドキッと胸が高鳴る。

キュッと唇を噛む。

 

「誘ってないけど、心配なの!」

 

恥じらう年齢ではないが、恋愛などしたら揚げ足を取られてしまう立場を強いられてきたからろくに男関係での経験なんてない。

逆にローはたくさんの女性が彼を欲していた。

まあかっこいいんだから当然なのだが。

 

「へェ。寝ろ」

 

流されてしまいムウッとなる。

子供っぽい仕草をしてしまうのもローの前だから。

ローじゃなかったらとっくに無表情の仮面を株って無言で居るところだ。

誰も信用してはならないと皮肉にも学んだのだし。

 

寝ろと言われて、先に進むための体力を回復する為に寝床に入り眠った。

 

朝起きると、見慣れぬ集団とイカれた男女を見てしまい顔が怒りに歪む。

 

良くも接触を試みれたものだ。

 

己らに恥ずかしいという気持ちがないのが丸わかりである。

 

「こいつら、なに」

 

ご飯を作っているローに訊ねれば「夜遅くにやってきた」らしい。

 

話を聞いてもらいたいので私を起こせと無理な願いをしてきたので返り討ちにして、痛い目に合わせたという。

 

非常識にやってきて起こせとは、傲慢さはまだ枯れてないようだ。

 

「貴方達の国がなくなりかけているのに、呑気にお喋りしている暇は無いと思うんだけど」

 

「なにか食べ物を分けてほしいんだ」

 

追ってきた為に食料もなく、お金も底をついたと聞いてもない近状を語る。

 

追わずに働けばイイノニ。

 

「祖国を捨てた薄情者に渡す物はない」

 

「そ、そんなこと言わずに助けてくれっ」

 

どれだけ縋られても助ける気はない。

 

冷たい視線を向けたまま、言葉で切り捨てる。

 

思いっきり塩を投付け追い返す。

 

相手は無理と悟り走り逃げる。

 

ざまぁみろ!

 

どの面下げて来たのか本当。

 

呆れ果てながら足蹴にして外へ放り出した。

 

「ふふ、ふふふ!……はーあ」

 

楽しい気分は直ぐになくなった。

 

清々したのしたけど、スッキリとはならなかった。

 

「どうした」

 

元々側に居たローが尋ねてきた。

 

「復讐したかったのに勝手に自滅したから消化不良だったの」

 

「自分でやりたかったってか」

 

「うん。なんだか肩透かしよ」

 

彼は納得した様子で更に近寄る。

肩をポム、と叩く。

こんな風に感じるのは、きっと、彼のお陰かもしれない。

相手がやってきた顔を見て気付いた。

 

「スッキリしないけどムカつく気持ちが少ないのは、ローのお陰だよ」

 

「おれか?」

 

ローは本気で分からないらしく可愛らしく眉間に皺を寄せて疑問を顔に出していた。

 

「こうやって話を聞いてくれて、いつも一緒に働いてくれて、私の不満も結構消費出来たんだと思う」

 

私はどんどん口元が上がっていく。

ありがとう、と伝える。

 

「貴方のおかげで私は生きていけた」

 

「お前が頑張ったからだ」

 

褒められてはにかむ。

 

立ち上がってギュッと抱きしめた。

 

「!──どうした」

 

「肩の荷が降りて、なんだか人の温度を感じたかったから」

 

直ぐ離れる為に顔を上げると彼の手が背中に回されて目をぱちぱちする。

 

「おれも抱きしめたい」

 

どきりとしたが、気のせいだと落ち着かせる。

 

「そっか、えっと……」

 

自分がしたことは恥ずかしくなることか。

 

「あ、お、終わり。ギュッと抱きしめるのやめやめ」

 

「そうか。おれはいつでも待ってるぞ」

 

ビクッとなる。

 

「う、うん」

 

「フフ、肯定したな。珍しい」

 

俯いた。

褒められているのかな?

取り敢えず離れる。

 

「さあて、仕事仕事」

 

誤魔化すように背中を向けると微かに笑う声が聞こえた。

 

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