短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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選択肢がない

ぱちっ、とめを開けたら暗がりで男とキスをしていた。

深い情熱的なもの。

思わず、何度か瞬きして取り合えず海で溺れたみたいにもがいた。

男の腕から逃れる為だ。

何でキスなんて破廉恥な真似してたんだ自分と混乱する。

それともこの男が勝手にしたのだろうか。

 

「急にどうした」

 

「情報が目的なんだからもういいでしょ」

 

口が勝手に条件反射で動く。

情報が、そうだ、確かこの男は全うなものではなく、海賊だ。

って時分で言ってて海賊ってなんなんだと突っ込む。

唾液に濡れた唇を慌てて沢山拭う。

 

「情報はお前が持ってる。逃げやしないだろ?」

 

妖艶に笑い、月に照らされる男の名はトラファルガーとか言っていた。

ルーキーとか持て囃され、七武海入りをした話題の猛者。

どうして己に近付いてきたのかはまだ分かってないが、裏の情報が欲しいとかで、取引していた。

取引ないようはロー本人を指名していたが、なんてことだ、爛れてるっ。

即刻こちらの条件をやめてもらわないと困る。

今のまるで記憶が二つある状態では上手く考えが纏まらないので、今日は情報を渡すから帰ってと強く言う。

 

「折角こっちもその気になったんだ」

 

グッと手首を捕まれてどきりとなる。

動揺を隠しきれなくなり、スッと手を抜く。

 

「帰って。今日は貴方の気分じゃなくなったの」

 

「……帰ると思うか?」

 

この男は情報を買いに来たんじゃないのか。

そういえば、この男と出会って三年くらいになるが、ここまで拒否したことなどなかったかも。

 

「情報はあげる。ほら」

 

──ピッ

 

情報とやらが書いてある紙を厄介払いの扱いで渡す。

彼はそれを受けとると舌打ちして帰っていく。

それを見送って、息を吸う。

 

 

 

 

「こっわ!ここどこ!?あいつなに!?私は今なんなの!?」

 

 

 

 

只今、己の持ち船で悠々自適に過ごしている。

情報屋や賞金狩りとしても活動しているみたいで、金持ちみたい。

テゾーロというカジノ王とも交流がある。

結構手広くやってたみたい自分。

この世界がどんなところなのか今のところ知識にあるから分かるとして、記憶が二つあって綺麗に融合したみたい。

 

「仕事はやめたい」

 

そろそろお金も溜まったし、老後に突入しても良いんじゃないのだろうか。

 

──ガンッ

 

耳に金属のぶつかる軽い音が聞こえて、向こう側に船が見えた。

あの黄色い主張だけひたすら激しい船は。

 

「邪魔するぞ」

 

待って、色々待って。

まだ頭の中整理出来てないんだが。

そもそもローが来るなんて珍しい。

いつもは地上で会うのだが。

しかも、電話でアポイントすら取られてない。

不法侵入だ、海賊だから捕まらないけど。

 

「撃つわよ!」

 

拳銃をサッと手に持ち、破廉恥なことをされないように脅す。

取り合えず情報の前に体をどうこうしてくるのは分かってるのだ。

 

「あ、って、能力」

 

拳銃が手元からなくなって代わりにローが椅子に座っていたリーシャの上にのし掛かっている。

 

「ほんとに、退け」

 

「会わない間に口が悪くなったな。フフ」

 

「貴方にはさらけ出さなかっただけよ」

 

ぐぐっと押し返す。

そのまま椅子の端に落としてやると足を上げる。

しかし、そのまま捕まれてバランスを崩す。

足ぐせが悪いなと楽しそうに笑う男。

 

「ここは私の船よ。私がルールなんだから私より上なんてありえない」

 

──ゴス

 

今までやったことがないだろう、ローへのドツキ攻撃。

彼は不意打ちに椅子から離れる。

 

「なにが不満だ」

 

「貴方には、飽きたの!」

 

「なんだと……もう一度言ってみろ」

 

まさか、海賊でモテそうな男が女が一人減る程度でここまで怒るなんて思わなくて内心こいつやべぇと構える。

二人の間に嫌な緊張が走った。

 

「すとーっぷぅ!!船長も頭に血が上り過ぎ!」

 

「そうだぞ!」

 

第二の男達が乗り込んできた。

言い合っている間に船が間近に迫っていた。

この男達も知っている。

たまに船に行くので知り合いだ。

 

「シャチ。貴方達。船長なんだからしっかり見といてよ」

 

「いや、船長だから余計に無理だろ」

 

「バラされる……」

 

思い出したのか途端に震え出す面々。

精神教育行き届きすぎだろ。

「可愛そうに……」

 

思わず言えば、ローがこちらを睨み付けてくる。

 

「おれのもんをどう扱おうがおれの勝手だろ」

 

「「船長……!」」

 

そういえば、この船は男の崇拝者だった。

でも、恐怖に怯えてる時点で色々可笑しいと思う。

 

「それよりも、私の船から出て」

 

真顔で全員に通告。

しかし、ローだけがずっと拒否する。

 

「召し使い扱いになるけど良いの?」

 

「せ、船長……」

 

後ろでハートの船員達が心配そうに決断を見守っている。

ローはグッと歯をくいしばっている。

苦悩するローが最高とか聞こえてきたぞ。

そこまじで黙れ。

 

「良いだろう」

 

「え!良いの?」

 

別に本気だったわけじゃないから。

 

「でもやっぱり良いわ。男はいらないのこの船に」

 

「せ、せせせ船長ー!?」

 

ローが今にも暴れそうな空気に船員らが体を張って止める。

もし殴ったら船長のあった信頼とかなくなりますよと説得が聞こえた。

信頼とか、取引の関係に芽生えるのか普通。

海賊が信頼とはなんとも複雑なものだ。

 

「てめェ……騙したな」

 

「そもそも了承されない前提で聞いたのよ?なぜしても良いって言ったのか不思議に思ってるのに騙したもなにもない」

 

ローはこちらの言葉に納得して矛を下げた。

嵐のように煽られたら跳ね返ってくる態度に、僅かなジャンルの扉が開けられる音がした。

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