「大丈夫ですか船長ー」
「あちィ……」
先程から呼び掛けても今のような言葉しか発さないロー船長。
ここは夏島で船長はノースブルー出身だからバテるのは致し方ない。
パタパタと団扇で扇いでいるが暑さに免疫がない彼にはあまり意味をなさないようだ。
「かき氷でも持ってきましょうか?」
悪魔の実の能力者でもある船長は海に入れない為体を冷やす手段は限られる。
一言断りを入れて立ち上がろうとすればパシリと掴まれた腕。
「なんですか船長?」
「かき氷より……が」
「え? よく聞こえません」
耳を近付ければグイッと引かれた腕に私は船長の上に馬乗りになる。
「わっ! いきなり何なんですかぁ!」
意義を申し立てればそこにはニヤリと不適に口元を上げる船長。
「かき氷より、お前からのキスが欲しい」
「なっ……!」
普段自分から求めない船長がキスをねだるなんて。
私達は所謂恋人だが、こんな風に言われるのは初めてだ。
「暑くておかしくなったんですか、船長」
「ククッ……そうかもな」
うっすらと汗ばんだ体の船長は意地悪そうに笑って私をその綺麗な指先で誘う。
「おかしくなっちまったから、なんとかしてくれよ?」
顎に指先が添えられ私は彼が導くままにその唇へと向かう。
「じゃあ、私も暑さでおかしくなったんでどうにかしてください」
笑みを浮かべながらそう言うと船長は「じゃあ仕方ねェな」と私を組み敷いてかき氷よりも甘いキスをくれた。
<font size="5" color="#FF99FF">お嬢さん、甘い甘いかき氷はいかが? </font>
(あちィ……)
(結局振り出しに戻るわけですか)
(本物のかき氷が食いてェ……)
(はいはい、今持って来ますよ)
「おいアルテミラやめろって!」
「大丈夫大丈夫!」
今私はお酒に飲まれている。
それをシャチが止めようとしているけど別にいいでしょ!
なんたって今日は昼に敵襲にあった私達は見事勝利して宝を頂戴したんだから。
まぁ私は多少なりとも怪我をしてしまったけれど別にたいしたことじゃ──。
「アルテミラ」
「……せ、船長」
テノールの声にびくりとなりながら後ろを向くと、無表情で立っている我らが船長トラファルガー・ロー。
「安静にしていろと言った筈だが?」
「あはは……」
笑いでごまかせば船長は無表情のまま私の手を強引に引っ張った。
「痛い! 船長っ」
もちろんが機嫌の良いとは言えない船長を止める人間なんて(熊も含む)いない。
私の声を無視して船長はスタスタと歩く。
そのまま引きずられれば着いたのは医務室。
「痛っ」
ポイッと手を離され部屋へ入れられる。
「おとなしくしてろ」
「どうしてですか! 私も──」
「煩ェ!」
「……!?」
宴に参加したいと批判を言おうとしたら、今まで一度も聞いた事がない程の怒鳴り声に私は身がすくんだ。
「どうしておれの言うことを聞かねェんだ……!」
でも体が固まったと同時に感じた全体に感じる温もり。
吐息を近くに感じた。
「船……長、ご、ごめんな……さっ……」
抱きしめられていると理解したら、船長は私を心配してくれたのだとこの時ようやくわかった。
震える声に船長は「黙れ」と一言言うと更に抱きしめる力を強くした。
どうして貴方が震えているのを私は気づけなかったのだろう。
(船長……)
(もう少しこのままでいさせろ)
(あいあい、船長)