短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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shower

21世紀となり、擬人化天国と言われている世界に誕生した一人のお風呂の娘。

お風呂でありながら内気という欠陥品かと危惧された。

しかし、そこに現れたのは救世主たる消費者だった。

 

「ローさん、お風呂沸いてます」

 

「ああ。そうだな……背中を流してもらおうか」

 

いじめがいのあるお風呂ににやりと笑えばびくりと肩を揺らして露骨に嫌がるから、余計に言いたくなる心理を理解してないなと深める。

可愛い、またはいじりがいのある女は顔を赤くさせて「それはちょっと」と絶対にマニュアルに違反しているようなことを述べた。

それに対して、ローはおいおい、と呆れた顔をわざと浮かべる。

そうすると目をみるみる揺らして慌て出す。

 

「あ、あっ、その、えっと」

 

処分される可能性のあった過去を思い出したのだろう、ローの顔色に危機感を抱いたらしい。

そうでなくては言い出した意味もない。

友人はこの性格を悪魔だと評価する。

 

「なんだ?」

 

「は、入ります」

 

消え入りそうな声でぼそぼそと告げる女に勝ちは決定したなとほくそ笑んだ。

 

「先に入ってるから来いよ」

 

ローは持っていた刀を横に置いて服を脱ぎ散らかした。

ここは21世紀の大海賊時代。

近未来と超能力者が融合した不思議な惑星。

男は世間で海賊の船長として活動しており悪魔の実という食べ物を食べ、二億という大金をかけられた大悪党だ。

船を持っていて、船のなかはコロニーのよう。

大型の船なので大浴場なのだが、ローは一人部屋もあり、風呂もついていて、その風呂がアリアナである。

 

「遅い。早くはいれ」

 

回想を繰り広げていると急かされて脱衣場へ。

既に全て脱いであるローは扉の前で仁王立ちしていた。

 

「きゃあ!た、タオルは!?」

 

「お前は風呂だろ。自分の風呂にタオルを巻く意味がない」

 

正論!

正論過ぎて目が開けられない。

何度見ても慣れないもの。

 

「ローさん、入ってくださいよ」

 

「お前も脱げ」

 

「め、目の前で!?無理です」

 

「風呂だろ」

 

風呂でもなんでも羞恥心で動けない。

目を塞いでいると言葉を違う風に受け取ったローがアリアナのボタンに手をかけた。

この世は鬼ばかりだと震えてローの手を掴む。

 

「い、いや、自分で脱ぎますっ」

 

「脱げるのか?本当に?」

 

鼻で笑うローは本物の悪党である。

そこに一般人ような優しさはない。

赤面して口をはくはくすることでしか返事を返せぬ男にされるがまま服を脱がされる。

擬人化しているとはいえ不思議な科学的な技術で人と変わらない裸体。

この世界では二世紀ほど前から擬人との婚姻も可能なのだ。

不思議生物として擬人は認知されている。

 

「ほら、早く入らねェと見たい番組が終わる」

 

ローは特に急いでなかったが彼女を風呂に行かせる為にさらりと嘘を吐く。

海賊だからなどとは関係ないが。

それに、ローは能力者なので風呂に入れば力が抜ける。

女の支えはあればあるで使う。

アリアナの前に椅子がありそこにローは座り隠すことなく全てをさらけ出した姿で彼女に洗うよう求む。

タオルを巻いた状態で慣れた手つきで洗い出すと男は無言の空間も遊び心がなく、彼女の反応の為だけに話題を提供する。

 

「シャチの奴が女を連れ込んでないか」

 

「えっ?そんなは話しは聞いてないです」

 

「そうか、それなら気にしなくていい」

 

たまにナンパした女に船を自慢するから、見知らぬ女が居てイラつくこともある。

それに、ここにはお風呂という存在も居るので下手に合うと勝手に妬んで傷つけるとも限らん。

背中を洗い、体を洗うと水で流し終え、髪を流れで済ませれば終わる。

話をするのに気を取られて羞恥心は消えているようだ。

何年も洗っているから、気の紛らわせ方は心得ている男。

からかうのをやめないのかという野暮なことは思わない。

なんせ、楽しいのだから。

洗え終えたと彼女は息をつくと、今度はローが洗ってやると強引に女を椅子に座らせる。

 

「え、あ、いえ!」

 

手を煩わせるのは申し訳ないと顔に書いてある。

しかし、そんな謙虚さを蹴飛ばした。

 

「フフ、遠慮するな」

 

妖しい笑みを浮かべて肩に緩く口づけたローはすっとんきょうな奇声をあげるアリアナに目を光らせる。

 

「あ、あ、ローさん……!」

 

止めようとする彼女を無視。

見たいテレビがあるんじゃないかと焦った。

 

「テレビもちゃんと見るから安心しろ」

 

熱い熱が今度は耳に降ってきて背中を震わせた。

 

 

 

見たいテレビを見れて、お風呂にも入ったローは血行も良く、肌がつるつるしていた。

朝、いつものように朝食を食べに向かったペンギンはパンに塗るジャムなどが切れていることに気付き、ローにアリアナがどこに居るのかと聞いた。

 

「船長、ジャムが切れてて」

 

「ああ、あいつならまだ寝てる」

 

「……勘弁してくれ。ジャムは皆楽しみにしてるんだが」

 

「おれが楽しかったからそれで良いだろ」

 

そんなわけあるかと心のなかで盛大に批判した。

 

 

お昼、慌てて起きたら棚の中のジャムが切れていると船員達に言われてへこへこと汗を垂らしつつジャムの為の果物を必死に煮た。

その横で座って本を読むローも居て、慌てる彼女の姿を横目で確認。

 

「あの、ローさん、ここって熱いから本を読むの辛くないですか?」

 

「辛くない」

 

「あ、はい」

 

即答されてそれ以上問うことなど出来ない。

せめて、気まぐれに会話があればこちらとて気にする必要もないのだが。

ちらちらと見ているが全く気づかれず何故ここで本を読むのだろうと疑問が大きくなる。

なにかしらの作業をしているといつの間にか横に居るのがこの人だ。

 

「ふう」

 

熱くなってきた頃、漸く煮詰めおわり瓶に移す作業に入る。

 

「それはあいつらにやらせろ」

 

「え、でも」

 

ここまでしたのに、と不満が出た。

殆ど団員達が食べるので食べる奴等がするべきだと彼はこちらの言葉を聞かずに電話で皆を呼ぶとわらわらここへ来る。

皆は作ってくれてありがとうと言ってきた。

 

「休憩してくれ!あとは任せろ」

 

「あ、はい」

 

流されるべきではないが流されるしかなかった。

少し気落ちして廊下に出ると後ろからローも続く。

 

「くくく、そう落ち込むな。お前はよくやってんじゃねェか」

 

「私がやれることなんてジャムくらいなのに」

 

「今からでも全員の体を洗うというのか」

 

一番苦手なことを指摘されてそれは無理だと首を降る。

こんなのだからお風呂として欠陥品と罵られたのだ。

 

「お前はおれ専用だ。間違えるな」

 

「はい」

 

しょぼんと頷くと彼は休めと体を押す。

とぼとぼと去る彼女を見送ったローは楽しそうに瓶に詰める作業をする部下らを見て、あの様子が余計にショックなのだろうとなと目を細めた。

なにか役割を作らねば変なことを言い出し兼ねないと早急に計画を組み立てる。

 

 

ローがそんなことを考えている間、肝心の本人はと言うと、黄昏ていた。

あまりにも役立たずな己が自己嫌悪満載になる。

 

「役に立ちたいのに……はぁああ」

 

ため息を吐く。

船の縁に着くと現在居る島のビルが遠目に見えた。

 

「私は欠陥品なんだから、人一倍頑張らないといけないのに」

 

デパートで大安売りとして破格の値段で売られていた日がよみがえる。

不安な日常、売れていく風呂達の嘲笑う声。

あんな日常には二度と戻りたくない。

そうやって一人で悶々としていれば、視界の端になにやらもこもこした存在が見えた。

あれは、ぬいぐるみ?

くまのベポの足だけくらいしかない極小。

つぶらな存在に目を奪われた。

 

「可愛い、なにあれっ」

 

船から飛び降りて目の前に着地するとそのぬいぐるみは驚いたのか大きな声で奇声を発する。

シャチ達が階段を聞いて、その後トイレに行きたくないと泣く手前よりも怯えた声。

 

「なんだお前!?敵か!?やんのか!」

 

見た目とは違い男の子の印象がする言葉に目を輝かせた。

 

「あの!私とても可愛いものに目がなくて。よかったらお話してくれませんか?」

 

そのぬいぐるみは怖々と少しだけならと言ってくれて、ローに電話で少し出掛けてくると伝えて町へ向かう。

それがアリアナの関心を繋ぎ止める日となる。

 

 

ここがおれが住んでいるところなんだと紹介されたのは海賊船だった。

冗談だろう、このぬいぐるみの見た目で海賊船に連れてこられるなど詐欺に匹敵する。

気を失いそうになるのをなんとか耐えた。

でも、こんなに誇らしげに紹介してくれるのだからロー達のように良い海賊かもしれない。

 

「わぁ、とても素敵なお舟ですね」

 

取り敢えずお世辞は忘れず。

こういうのは最初が肝心なのだ。

上がってくれと言われて着いたのは芝生にまるで憩いのばの公園かと思うようなホビーな空気をとても感じる所。

遊び心が感じられた。

そこでは三人屯ろしている。

こちらに気付いた一人がぬいぐるみにどういうことかと問答する。

 

「チョッパー!なに一般人連れてきてんだ?」

 

鼻が長い男がこちらを凝視してきて疑問を呈している。

確かに安易に連れてくるところでもない。

カフェとかに移動するとばかりに思っていたのだ。

 

「友達になったんだ!アリアナっていうんだぞ」

 

「いや、聞いてることとズレてっし」

 

ぶんぶんと手を振って仕切り直す。

その後ろに伺うように見ている女の人。

 

「この街の子かしら?」

 

「いいえ。私も船で旅をしていて」

 

「あら、海賊の船なのにしっかりしてるのね」

 

にっこりと笑う女性はどこか観察しているような瞳で、当たり前の感情を向けられているなと苦笑。

敵かもしれないから見るのは自然なこと。

 

「こんな弱い奴が一人でのこのこ来るわけねェだろ」

 

もう一人は緑の頭の色をしたローと同じ雰囲気を纏う男。

腰に刀を差している。

ローとは気が合うかもしれない。

 

「弱いというか、そういうのは不得意です」

 

「え?でも、おれとあった時は目の前に突然現れたような」

 

ハートの船から跳躍して平気だったのは一重に擬人としての身体能力だ。

俊敏とかではなく、頑丈なのである。

 

「タフさだけはあります」

 

こくりと頷いて答えた。

 

 

 

黒髪の女性はロビン、鼻の人はウソップ、刀の人はゾロ、ぬいぐるみ改めトナカイの子はチョッパーであると紹介される。

こちらもハートの海賊団所属と伝えておく。

敵対心はないとの宣言だ。

ローのことを知っていたらしく、あの怖いやつかと言われる。

怖いのは正解だから否定しにくい。

笑って誤魔化していくとこれから他の仲間も集まっていくのだと言われ、チョッパーと話したいアリアナはその集まりを見たくてそわそわする。

チョッパーと話したいのだがと改めて告げるとそうだったなとブランコに誘われて乗る。

他の初めて会う人も近くに居るが、ハートの皆とは違った距離感になんだか安堵する。

 

「ローさんの船にはお風呂として乗ってるんです」

 

「へェ!ということは擬人化ってやつかァ」

 

擬人化はもう何年も主流となっているので知らない人は居ないと言える。

話している間にローを見たときの初見についてになった。

どこかの大会に出場したとき、大食い大会でこの船の船長と首位を争ったのだとか。

その大会、人伝に聞いたことがある。

アリアナはお風呂のメンテナンスで行けなくて、録画されたものを見たときだ。

ローはあいつの胃袋はゴムだろうから勝つのが困難だと唸っていた。

そうか、その人がこの船の船長なのか。

噂の人に会うかもしれないからドキドキする。

おめかししておいた方が良かったかもしれないな。

少しズレた思考をもってして、チョッパーと語らう。

彼と話していると癒される。

次はどの島に行くのだという話で盛り上がっていると「嘘でしょう!」という声と共にどたどたと足音荒く、扉をきつく開け放つ胸が大きなオレンジ頭の美人が突然声を張り上げた。

 

「アーロンが復活してるんだけど!」

 

「「えー!?」」

 

ウソップとチョッパーの声が重なりあって響く。

なにをそんなに驚いているのかとついていけない中、元気な声で帰ったぞー!と叫ぶ男の子の声。

皆が振り向くと荷物を背負った麦わら帽子の子がニコニコした顔で荷物を片手に手を上げる。

 

「ルフィ!アーロンがまた新聞に出てて!って、あんたなにそれ!?」

 

「おう、なんか町中で会ったから連れてきた」

 

「麦わら屋。いい加減離せ。耳は聞こえてるんだろ」

 

と、手が離れて立ち上がった荷物。

 

「え、ローさん……!?」

 

ハッと目を見開く。

それと同時にローもこちらに気付いて何故ここにいるんだと眉間にシワを寄せて目でとうてくる。

いやいや、こちらの台詞だ。

 

「お前、なんでこんなところに」

 

「ん?トラ男の知り合いか?」

 

「アリアナはローが船長だから知ってるよな」

 

「いや、あの」

 

なんと言えばいいのか、というか、ここでそれを長々と説明する空気ではない。

 

「麦わら屋、いきなり連れてくるのはやめろ。お前は人の予定を聞け」

 

「えー?」

 

「ルフィ!今すぐアーロンを倒しに行きましょう」

 

「んー?」

 

ルフィが目まぐるしく変化する会話についていけてない。

 

「麦わら屋、おれ達は関係ないから帰らせてもらう」

 

「友達だろ!」

 

「今のやりとりでなにがあった?」

 

ローは本気でルフィの発言に混乱している。

ここはアリアナがフォローしなければ。

 

「ローさん」

 

駆け寄り、ローに声を掛ければ男の瞳は女を写す。

漸く視界に入れられるものだ。

 

「さっさと帰るぞ」

 

「あの、私……もう少しここに居たいです」

 

「聞こえてなかったのか。帰るとおれは言った」

 

「で、でも!私は!」

 

反論しようとすると船長のルフィがお前も来てくれるんだなと嬉しそうに言い、アリアナの手を掴む。

そのままバッグのように連れていかれる女にローは待てと追う。

 

「よーし!東に舵を取れ!出向だ!」

 

「おい!先ずは電話入れさせろ!おれ達だけ移動したらクルーが路頭に迷う」

 

突然ロープラスアルファがいなくなっては混乱の極みだろう。

失踪事件だ。

ローは冷や汗を流して電話をしてハートの船をこちらに来させた。

急な移動にルフィ達と面識のなかった面々は唐突な展開に困惑している。

 

「よろしくな!海賊王になる男だ!」

 

「「「異議あり!」」」

 

船長だそれはとブーイングが起こるがルフィはそれを跳ねとぱしてさっさとライオン頭の上に乗って昼寝し始める。

 

「なんだあいつー!四皇みたいなやりたい放題ー!」

 

ハートのクルーらが叫ぶ。

同感だが、ローとそんなに変わらないような。

ローもローでこうと決めたらやめないし。

自由度は同じであろう。

そのローはルフィになにかいっても通じないので説得疲れをしてサンジという仲間の一人が作った味噌汁を啜っていた。

 

「妥協案として同盟を結ぶことにした」

 

「船長、おれ達の知ってる同盟とは」

 

「言うな。おれが一番良く知ってる」

 

ローが黒く淀んだ影を背負い味噌汁を飲み干す。

同盟は助け合おうとか、手伝ってくれとかの意味ではないのではと続けようとしたクルー達はそれ見て、ルフィも交互に見てからローを疲弊させる男だと知り戦いた。

下手に巻き込まれては同じように負けてしまう。

 

「いや、おれらは良いとしてアリアナが危ないですよ」

 

「その本人が強く希望した結果だ」

 

あの内気な娘の発言と知り、なにがあったのだとざわめく。

そのアリアナは味噌汁とごはんを食べていた。

ローが隣に座るよう言いつけていた。

 

「お前は良いのか」

 

船員達のハッしたことを受け、顔を上げる。

 

「私に足りないものは経験なんです」

 

ハートの海賊団しか知らないというのは成長出来ないことになる。

他の船を見たりして学ぶのが良いことだと言えた。

力強い言葉に本気なのだと悟る面々。

ローは良く許したものだと注目する。

 

「許してはねーが、おれから離れないのならなにをしてもいいかとは思ってる」

 

「えー!船長、アーロンとかいうやつと戦うんですかい?」

 

ローの諦めモードが入っている。

許可を得られたのは自身がタフなところがあるからだろう。

それに、ルフィ達の説得も効いた。

一緒になってローへ言ってくれたのでローも許可をしてくれたのだ。

船を発進させた先はナミの故郷。

短縮方法としてアグレッシブな方法をとった。

それは脇に置いといて、ローとアリアナは麦わら達の後ろについてあるく。

アーロンパークなるものが昔は存在していたらしいが、ルフィが壊したのでもうないとか。

皆は険しい顔をしてナミの故郷を歩き、家族や村の再会に暖まり、目的を話し、アーロンの行方について聞いて回る。

今は海の中に潜伏しているのではないかと言われ、海のなかでは手出しが難しいなと全員悩む。

ローの能力使ってくれよとルフィが頼むが闇雲にしても能力の無駄うちになると切っていく。

 

「あっ、海の中なら私」

 

「だめだ。おれの見える範囲から外れる」

 

お風呂なので水の中でも生活でき、普通に歩けて中もしっかり見える。

空を飛ぶのは無理だが。

ローが反対するとナミがそんなっ、と叫ぶ。

村の危機なのだと言うがローは無視する。

 

「どうにもならないじゃない」

 

ナミは悲しげに俯く。

こういう時、胸が痛むのは己が人の為に作られたからだろう。

ローは鋭い目を向けて「甘ったれんな」とオレンジ髪の女を叱る。

 

「他に案が出ないからって早々に頼るのがお前の経験してきた結果なのか」

 

男の言葉に故郷を救いたい女はハッとした顔をする。

 

「そう、ね……トラ男の言うとおり。焦っちゃってたみたい」

 

アリアナにはローの言いたいことが何一つわからなくてちんぷんかんぷんなのだが。

サンジがナミさんに説教かましてんじゃないと怒鳴り、ズイッと顔を近付けた。

嫌そうに肘で距離を取るローはこちらに目を向けて「お前も勝手に動くなよ」と釘をさしてくる。

うう、と唸れば睨み付けられてそういうのに弱い気持ちが跳び跳ねた。

好き勝手に動くことは考えていなかったが、今回に関してローに反抗してしまったという負い目があるので、うなずく他ない。

男に苦労を強いて、ハートの一味達にも巻き添えを与えてしまったことは全く範疇になく、すまないと思った。

ハートの面々はこちらを責めることなく、アリアナに冒険をしたかったのだなと笑いかけられる。

相変わらず気の良い人たちで付き合いが良すぎる。

ありがとうと礼を述べているとアーロンが目撃された付近に船を止めた。

その時、前方からなにかが飛び出し水しぶきが上がる。

 

「ハハハ!麦わら!お前から来てくれるとはな!このときをおれは待って」

 

「ゴムゴムの~斧~!」

 

──ゴスン!

 

魚人の男が台詞を述べているのにルフィがそれを遮る形で相手に技をヒットさせ、ハート達は「えええええ!?」と叫ぶ。

ここまで一緒に来た意味がない。

そういう意訳だ。

ルフィ一人がいれば解決できるのなら、大人数で押し掛ける必要が無さすぎて、海の中に落ちるアーロンを全員見送る。

 

「麦わら屋……こんなに弱いやつの為におれと同盟を結んだというのか」

 

ローがこめかみをひくつかせて質問する。

ナミ達はアーロンはパワーアップした上でここに戻ってきていると思い込んでいたのだと説明されるが、全部想像の産物じゃねーか!と男は怒った。

骨折り損だと男は船にもたれ掛かる。

 

「しかも敵自ら姿を現すとは。探索の案で揉めた前降りは一体なんだったんだ」

 

なにもかも、相手の頭脳を高く見積もりすぎたのだ。

 

「よし!宴だー!」

 

「「「出来るかァ!」」」

 

ハートの海賊団の心は一つとなった。

 

 

 

 

ハートの船が港に停泊していて、麦わら海賊団も停泊してた。

ハート達は離れようと速度で引きはなそうとしたが、ルフィがおいかけっこだと勝手に盛り上がりついてきたのだ。

ローは無視する為にさっさと降りた。

しかし、ロビンに声をかけられたことにより止まることとなる。

 

「待ってトラ男くん。砂漠の町が近くにあるのだけれど」

 

「それは今関係あるのか?」

 

アリアナを引き連れたローは貧乏くじを引いた気分で話を聞いている。

砂漠の国ではなく町なので規模は小さいが海賊がその町を支配しているので倒しに行く予定をしていると聞いている。

倒しに行くのは成り行きで、そのメインは海賊が持っているお宝らしい。

 

「おれには関係ないが」

 

やはり同じことを唱えた男にロビンはにこりと笑う。

 

「それと、温泉も評判が良いらしいわ」

 

「温泉も……」

 

アリアナの羨ましげな声にぴくりと反応したロー。

それを見据えた女は男に囁く。

 

「二人で行くのも旅の一環だと思うけれど」

 

先に海賊を襲撃しに行くことを言わなければもっと気楽に入れそうなものを。

ローはこの策略の漂う町に暫く滞在することになりそうだったので、その町を目指すことにした。

なんだって、ロビンに誘導されるように行かねばならないのだと舌打ちする。

全ては己が彼女に甘いと見透かされた結果。

己への不甲斐なさにも苛つく。

 

「ローさん、これ、砂漠のまんじゅうっていうらしいですよ」

 

それでも、天真爛漫にまんじゅうののぼりを指す女を見たら上がっていた苛立ちが静まる。

 

「お土産にでも買っておけ」

 

「留守番の方達きっと喜びますね」

 

「あいつらはなんでも嬉しがるだろ」

 

嬉しそうににこにこ笑うアリアナに答える。

まんじゅうを買い一旦船に戻り砂の町に移動するように伝えると船員が納得した。

 

「船長も張り紙みたんですね」

 

「張り紙?」

 

「あれ?見てないですか?なんでも砂漠でレースが行われるとか」

 

「レースか」

 

催しの時を狙って盗みに入るつもりなのかもしれないなとローは頭脳を働かせた。

 

「まァ良い。警戒態勢は敷いとけ。麦わら屋達がことを起こすことは決まってる」

 

「巻き込まれそーでこえェ」

 

船員達がぶるぶる震える。

海賊を一つ潰すならそこまで驚異ではないが、町が混乱した上で雑に戦わねばならないのなら単体で行動するのと同じ。

ローは刀を手に急ぐ必要はないと甲板に出た。

少しすると砂漠の町ハアレに着いた。

 

「お、幻想的」

 

「砂粒がキラキラしてて熱そうですね」

 

アリアナと船員達が会話を繰り広げているとローが自室に向かうのが見えた。

 

「アリアナ、出掛ける準備をしろ」

 

「ベポさんは?」

 

「好きにさせる。お前らも各自判断しろ」

 

「はい」

 

各員ポーズをとって了解を伝えた。

ローに言われるがままに支度をし終えてついていけば、砂の町に相応な光景が見えた。

ここでレースが行われるらしい。

 

「ニコ屋が言っていたことがやや気になるが、巻き込まれなきゃ問題ないだろ」

 

個の台詞が後に盛大なフラグになるのがセオリーだ。

アリアナは内心こっそりそう抱いた。

そして、レースが始まる前にルフィがレースに出ることをローは知る。

多分ルフィは静かに行動できないと判断された故のことだろうなと男は察する。

付いてきているアリアナはレースを楽しみに待っていた。

こういう世界だからこそ娯楽は楽しみたい。

ルフィという有名人が出ているからか盛り上がっているかもしれない。

賭け事も行われていることだろう。

ローもルフィにかけていることから実力を認めているのだなと微笑ましい。

開催者のナミ達が狙うお宝の持ち主が挨拶。

レースが始まり解説者が説明をし始める。

こういうところに力を入れているのがレースを盛り上げたい意図を感じた。

鉄砲の音を合図に全ての車が砂漠を走り出す。

盛り上がる会場に熱気も合わさり熱い。

ローはその中で特に感情を乗せることなく無表情で観戦していた。

ルフィらの動向も気がかりなのかも。

彼に見にいかなくて良かったのかとたずねたが、お前は何も考えるなと言われて。

言うとおりなのかもしれないが、過保護にされるとモヤッとする。

 

「おおっと!ルフィ選手、一気に一位となりましたァ」

 

実況の男がヒートアップしていくと客らもわあわあと煩くなる。

 

「宝箱なんて本当にあるんでしょうか」

 

気になりすぎて聞いた。

ローには考えるなと言っただろという視線をもらい、身をすくませる。

だって気になるんですから。

 

「もうすぐあいつがゴールする」

 

無理矢理話題をずらす。

ピンときたのでそこに流されていくしかない。

ローは所有者で干渉しようものならきっとお風呂としての権限を越えてしまう。

人のために作られたのだ。

そこでストップするべきだと暗黙が決められている。

アリアナは前を向いて試合を見ることに集中した。

レースが独走一位となり優勝をかっさらったルフィ。

彼は飛び上がりながら主催者に今晩の晩餐への参加権を貰っていた。

本当は行く理由なんてないのだろうが主催者の男の極上の料理というワードに反応していた。

ワードに反応してからの行くという言動は早すぎて主催者も目を丸くしていた。

からからと笑う相手は楽しみにしてくれと声をかけてレースは終わる。

今頃ナミ達はお宝をゲットしているのだろう。

 

「掛け金はいただく」

 

ローは立ち上がると掛け金をしたところに向かって早速換金して口元をあげていた。

強かなところもかっこ良い、

掛け金を換金しているところを見られないように注意して出た。

ルフィはと見てみるが既にどこかへ行っていた。

外科医はもう関係ないのにルフィが見当たらないと不機嫌そうに「あいつはどこへ言ったんだ」と述べて辺りを見回す。

なんだかんだと気にしているらしい。

可愛くて少しキュンとした。

お節介なのはローの方である。

 

「私が下から探しましょうか」

 

気になるのならと提案。

しかし、気にしていないアピールをしているのか必要ないと断られる。

気になるんだから頼んでくれれば良いのに。

ローはこちらに気づかれぬように慎重に気配を探らせていた。

 

「きゃあ!喧嘩よ!」

 

突然金切り声が聞こえて、どうしたんだと向こうをみやる。

見やった先、ローは舌打ちをして麦わら屋ァ!と叫ぶ。

 

「え?え?船長、どうしたんですか!?」

 

「あいつ、誰かと喧嘩してやがる」

 

「ええー、そんなぁ」

 

ほんの少し見ていない間に何があったんだ。

困惑と騒動が広がりどんどん野次馬も集まっていった。

 

「止めますか?」

 

ローにアリアナが動こうかと指示を仰ぐ。

しかし、またもや気にしてない風を装うのか放っておけと苦い顔で止められる。

そんな顔をするのならば自身で止めにいった方が合理的だろうに。

なにを葛藤しているのか不明。

 

「船長、本当に?」

 

「あいつも一度痛い目を見りゃァ、次からこんな真似なんてしない」

 

といいながらもルフィから目をはなさぬローに流石に苦笑した。

気になるんなら押し入れば良いのに。

行ってきてはどうですかと聞くとローは黙った後いやいい、と首を振る。

そろそろ警備もくる頃だろうと辺りを警戒する男。

ローの視角ではルフィの喧嘩相手は酔っぱらいらしいので大人しくしていれば解決するだろうとのこと。

 

「あ、おーい、トラ男!風呂子!」

 

「あのう、呼ばれてますね」

 

「麦わら屋……!巻き込むつもりか!?」

 

「あの人がそこまで考えてるでしょうかね?」

 

ただ知っている顔が居たから呼んだだけな気も。

純粋な目はそう感じ、ローは怒りに相手を見る。

彼女の推測通りルフィは単に見つけたから呼び掛けただけなのでなにも考えてなかった。

しかし、警備の者は普通に共犯と断定する。

警備兵らがわらわらとロー達を囲む。

 

「チィ!麦わら屋!後で覚えてろ」

 

「絶対忘れてそうですが」

 

敢えて付け加えておく。

そういうところも腹が立つ要因らしく、麦わら屋と行動したくなったんだよ、と苦肉に鼻の上にシワを作る。

こんな険しくても男前なのは流石だろう。

 

「長年こっそりやってきたシャワーヘッド技を遂に御披露目する日が来たのですね」

 

アリアナはそっと手元からシャワーヘッドのみを取り出す。

ローは甲板でシャワーヘッドを振り回す姿を知っていたのでこっそりじゃなかったと思い出した。

 

「シャワーヘッドアタック!」

 

──ヒュウ

 

──ゴン

 

兵士達は一直線にやってきた固い物体に頭をやられ、崩れ落ちる。

 

「今ので経験値を貰えてシャワーヘッドアタックがレベル2になりました」

 

「おれ達の世界観にそんなもんはなかった筈だが」

 

本人が自己申告しているので実際レベルアップしたかは不明。

怖い技に兵達は気色ばみ彼女をぞろぞろと追いかけだす。

捕まえろ、現行犯だなどと言う。

ローよりも先に手を出したのは単に早くシャワーヘッドで技をしてみたかっただけという、わりとヤバイ思考の末。

元来暴力とは無縁の風呂である。

包囲網をローが能力で掻い潜り二人は兵士から隠れて静かに移動した。

その間ローがくくく、と笑いお前も海賊だなと言いあわあわとなる。

それは大きな勘違いだ、あれは場に酔っただけだ。

 

「酔うもなにも酔う要素なんてなかったろ」

 

「ありましたよ~」

 

ついついヘッドで殴ったことに反省。

次はもう殴らない。

なんて誓いはまた破られるのである。

頭をくしゃっと撫でられながら宝を強奪したナミ達がハートの船の横に船をつけてお宝をゲットしてきたわよと自慢げに言うので、さんざん迷惑を被ったローを押さえ込む船員達がやけに記憶に焼き付いた午後。

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