サポート妖精として男の子か女の子を育てようと言うロールプレイングゲームが流行っていた頃の話しをしよう。
あの頃、夢中になって男の子を育てた。
ステータスの鍛え方によって行く末が決まる。
最初にやりこんだ子は剣士だった。
サブで戦闘を素手でする子を育成した。
それこそサービス終了まで。
最後の時までログンインをして寝たはずだ。
しかし、そうはならないことを目が覚めて知る。
目覚めたら自分は羽を持つサポート妖精になっていたのだ。
起きたところは船の上。
どこの船だと甲板を見上げて旗を見る。
凄く凄く見覚えのあるものだ。
「えっ」
夢だろうか、頬を叩いたけれど赤くなるだけ。
夢だ夢だと言い聞かせる。
悲しみを感じるのは夢でもそう変わらない。
「お、起きたか?」
高めの声で横を向くと小さな存在がとてとてとやってくる。
二人育てていたうちの一人だ。
まだ子供いということはスタートしてからあまり経過してない状況だが、ここをゲームの世界と断言するのは早計。
ルフィ、と声をかけるとおう、と答えて、やはり育てていたアバターじゃないかと目を剥く。
夢だろうか、夢なのかもしれない。
夢に決まっていると何度も何度も首を振るが、夢特有のごちゃごちゃした感じがないので、夢ではないのかもしれないと一瞬掠める。
「私は今までなにをしていか覚えてなくて」
「降ってきたからな、お前」
「え?降ってきた?」
溺れたとか言う始まりを多くみる出会い方にはあるが、あのゲームは確か妖精が降ってくることを皮切りに関わる。
「でも、前も降ってきたけどお前、落ちてくる好きだな」
「私のことを知ってるんですか?」
本当は質問攻めにしたい、今すぐ。
しかし、我慢してどうにか絞り出す。
聞き出せたことはどうやらここが例のゲームに無茶苦茶似ているということ。
そして、ルフィの小ささは単に能力を使用したからという事実にびっくりした。
知らない間にアマリのアバター的な存在がルフィらを補佐して存在をしていたとか。
本人は無口で一言も話さないで、今日話せたことに驚いたと言われ、確かにそれは主人公システム的なありえる話だと落とし込む。
ここは傭兵達の集まる島の一つと聞かされ、お前はここを管理したりおれ達をサポートしてたんだと説明される。
記憶にあるゲーム内容なので違和感はない。
傭兵の集まりとか言うのは初めての設定だが。
傭兵は言い換えれば冒険者だ。
他の仲間を呼んで来ると言われて、待っていればトナカイをデフォルトさせた姿のマスコットのようななにかが現れる。
「起きたのか!おれはチョッパー。医者なんだ」
ルフィは出掛けてくると勢い良く飛び出していく。
あんなわんぱくだったかな。
ステータスが中途半端なままここに来てしまったし、ゲームのルフィとここのルフィが同一なのかもまだ分からない。
トナカイが友達の医者を連れてくるなと告げてどこかへ電話する。
医者とはなんだろうか。
全く身に覚えのない肩書きに誰が来るのかと緊張する。
「大丈夫。怖いけど腕はいいんだ」
どんな人なのか益々怖くなってきた。
怖いのに腕が言いというフォローは安心するものではない。
能力を使った感じで突然チョッパーの背後に現れた背の高い男。
「ひっ」
「トニー屋。来たぞ」
確かに怖い、と思ったけどこの人って一番目に作ったキャラクターだ。
雰囲気が大分違うが、本人そっくり。
目の下の隈とかは見たことがなく、空気は殺戮的。
落ち着かない、心理的にドキドキする。
「へェ、表情豊かだな」
「そうなんだ。自我が生まれたのかも」
こちらの気持ちも構わず医者として意見交換する二人。
このツーショットは白衣萌え派にとってなかなかにレアなのかもしれない。
チョッパーがなにものなのかまだよく分かってない。
でも、もふもふと一緒にいるのなら理由などいらないのではないか。
オタク魂に揺さぶられる。
もふもふに気を取られて目の前に例の男が立つ。
体に触れられて「な、なんですか?」とどもる。
いきなり触られれば抵抗くらいしたくなるのだ。
反射的に身を引くと問診だと通達される。
「え?い、いりません!」
問診だとか、もっと若くない先生が妥当。
若い先生など見せたり触られたりするのが恥ずかしい。
白衣を着ているのだからと安心できるような服装をしておらずパーカーを着ているから医者に見てもらっているつもりでするのはムズい。
どう見繕ってもこんな顔立ちの良い男に体を見られるのは避けたい。
思わずパッと立ち上がり直ぐに走り出した。
突然のダッシュに医者達はぽかんとしたが患者の脱走にいち早く反応したトラ男こと、トラファルガー・ローは慌てて追いかける。
制止の声を投げつけるも相手は見られたくないと言う思いにより聞く耳も持たない。
拉致が開かないとローはチョッパーを能力で手元に引き寄せてそのまま女の頭に目掛けて投げつける。
直線を描く軌道により見事鈍い音を立てて二つの体は転けて地面に落ちた。
きゅううー、となるアマリとチョッパーを見てローは満足げに笑った。