自分は天然の異世界人である。
ツバサを持った種族らしい。
物心がついた時に「あ、私って人間だったんだ」と思い出した。
かといってガッツリ思い出すとかではなく、霧がかかったように前の人生は思い出せなかった。
でも、その反動で飛べる筈の種族で全く飛べない1人になってしまい、手酷い差別を受けた。
飛べない鳥はペンギンじゃん。
ペンギンスゴい可愛いでしょ?
なんでそれが分かんないかな。
「出てけ!」
「出てけっ」
──ザワザワ
自我が生まれてからはあまりに酷くなり、全ての町の人がそう言うので、望み通り出ていった。
魔法がある世界だったので小さな頃から魔法を町全体に貼り外敵専用の来ないもので囲っていたものも取り去る。
結局、誰もこのことに気付かなかったな。
自分は略奪に合いたくないから貼っていて、この町から去るんなら当然消す。
この世界ってそんなに治安良くないからさ。
ツバサが使えない代わりに魔法を強化してみたけど、こっちの方に才能があったらしい。
──ザパン
海に落ちてしまった。
ツバサが邪魔で切っちゃおうかと考えている時の出来事。
あぷあぷと浮いているとスゴい勢いで何かがやってくるのが見えて焦る。
サメか。
この世界にも居るのか。
──ザアアア
波を作り迫るそれに慌てて泳ごうとする。
「ああ、うあああ!」
魔法が使えても海の中じゃ上手く使えそうにない。
慌てて泳ぐが平泳ぎすらも出来ない。
「変な泳ぎ方してんなよ」
──バシャ
「……ああああ、あ?は?」
なんか聞こえたぞ今。
よくよく見たくはないが反射的に首を向ける。
人、なの、だろうか。
目の前には成人しているように見える男が居た。
「なんだ、人なんだ」
「人は昔に滅んでるだろ」
そういやそんなこともあったらしい。
ということは、人ではない何か。
「裸のなにか、なの?」
「半裸だ」
あ、下は着てるんですね。
「あの、私泳げなくて」
「見てれば分かる。その背中、鳥人だろ」
「は、はい」
飛べないけどねー。
「このまま藻屑になるもの一つの運命だが、どうする」
「陸まで運んでもらえないかなあ、と」
大変ご迷惑なおねがいであるが。
すると、少し残念そうな顔をして良いぞと言ってくれた。
見事な筋肉美がぴったりと頬にくっつく。
「ああ、ちょっと待って」
「あ?」
「引っ付き過ぎじゃない?」
無防備な瞳で見られてどぎまぎする。
「女の扱いは知らねェ。つーか早く行くぞ」
えええ。
なんなんだこの人。
混乱しながらも陸にあげてもらう。
それにしても泳ぐの早い。
「ありがとう!」
優しくされるの久々。
「いや。なァ」
塵にも気にしてない声音で何か言おうとする。
「いつまでそれ着てんだ、服脱げよ」
ぱしん、とウロコのついたヒレが海を叩くのが見え、ひきつる頬。
げええええー!
チャラいと有名な人魚じゃねーかあ!?
人魚は所謂男しか居ない種族で女と見れば口説くとか聞いた事がある。
「脱ぐわけないじゃんっ」
「どうしてだ」
どうしてもこうしてもない。
常識では脱ぐ筈もなく、きっちり恥ずかしいという気持ちを持っているので。
「貴方の中では普通でも私の中では非常識なのっ」
常識を知らないと言っていたから、そうなのかもな。
それにしても女に対して脱げなんて。
そもそも男しか居ないし、服を必要紙ない環境にあるのだ。
それくらいはなんとなく理解出来た。
「そうなのか」
あっさり受け入れられたらこっちが次の反応に困る。
「そうなの。で、ありがとう」
助かりましたと立ち上がろうとする。
「まだ行くな」
美男子に引き留められたら心は大幅に揺れるわなぁ。
「えっと、何?」
「家へ来ないか」
いきなり。
男の部屋へ行くのと変わらないのではないか?
「確認の為に聞くけど貴方いくつ?」
「12」
「アウト!」
「は?」
「その見た目で?アウト!私アウト!」
12才の胸板でときめいてた自分を滅多刺ししてぇ。
この異世界では割りとあるのだ。
見た目は大人なのに実年齢が子供とか、その逆も。
色々ダメだ。
まあ異世界的にはありなんだけど、倫理観がある中での己はダメだと判断する。
「助けたのになんだその物言いは」
むすくれた可愛い人魚。
口説くのがとても早い年齢な気もする。
いやまあ異世界だから12でも許されるんだが。
人魚がしきりに歩くのを阻止して走った。
恋愛など始まらない。