短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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通訳

海賊のトラファルガー・ローと出会ったのは同郷らしき女がこの世界の言葉を話せず意志疎通出来ないと知ったときだ。

 

自分は転生したが女はどうやらトリップらしい。

 

平民かつ一般市民なので海賊とかかわり合いたくなかった。

 

転生してもどこに行ってもそういうのは常識としてあるので仕方ない。

 

女ははっきり断言すると、話の通じない女。

 

「ローは優しいのよ?」

 

んなことはどうでも良いと内心思いつつ、女の述べたことを男に通訳する。

 

「この島に居る間は通訳をしても良いけれど、必要以上に関わらないでほしい」

 

通訳をする条件を彼は飲んだ。

 

女にしてみれば話が通じる相手に会えて気が緩んでいるのか、嬉しそうに色々語る。

 

頭がぽわぽわしてる、平和ボケしていると言えた。

 

「ローはね、言葉がわからない私を拾ってくれたから恩人なの」

 

それを自分に言ってどうするんだと顔だけは笑顔で聞いているふりをする。

 

どうやら彼女の言葉は相手に通じてないようで、ジェスチャーだけでやっているらしい。

 

女は恩人だからと男を慕い、にこにこと笑うが、トラファルガー・ロー達の解釈は普通に辛辣だった。

 

「ベポが頼んだから乗せただけだ。別に仲間にしてない」

 

どうやら一員と思い込んでいるのは女だけらしい。

 

いくらなんでもここには置いていくなよと遠回しに伝えれば、考えておくと来る。

 

置いていくつもりだったのか。

 

なんていうはた迷惑な。

 

海賊船に乗っていた女なんて海軍につき出されて終わりだろ。

 

女にローの本心を告げると厄介なのでオブラートに包んで伝えた。

 

「ローは私に平穏な暮らしをさせたいのね」

 

確かにそういう風に聞こえるかもしれない。

 

厄介払いしたいだけが本音だが。

 

空気とか雰囲気で歓迎されてないのを感じ取れないみたいだ。

 

致命的な危機感の無さだ。

 

呆れた顔をしているこちらにも気付きやしない。

 

男も同じように早く船から下ろしたいオーラを放っている。

 

「そうだ。私をこの島で働かせてくれないかな?」

 

こいつ厚かましい。

 

「私は通訳をする以外関与しない。仕事は自分で探して下さい」

 

「言葉が通じないのに」

 

「この世界の言葉を勉強すれば良いだけでしょう」

 

正論を突きつければ、こちらが酷いことを言っているような顔でめそめそする。

 

うざい。

 

「私には関わらないで下さいね。お約束通り」

 

ローに彼女が働きたがっていることだけを言い、仕事があるので帰った。

 

その際、彼に悪かったなと謝られたけど彼は内心どう思っているのやら。

 

どうか押し付けることだけはしてくれるなよ。

 

でないとリーシャの手が海軍の番号に伸びることになる。

 

女はその日から遅いペースで働く所を探すものの、海賊船に乗っているコブ付きと知れ渡り、更に言葉がわからないので完全に気味悪がられている。

 

当然の結果、火を見るより明らか。

 

そんな感想を女友達と眺めていた。

 

「あんた、助けてやんないの?」

 

面白そうににやつく悪友を見てアホらしいと一蹴。

 

「なんで他人のわたしが関係ない人に骨を折らないといけないの」

 

「あたしも同じ意見だけど」

 

リーシャは町では薬を作る役割を持つ。

 

いなければ大変な仕事だ。

 

とはいっても仕事事態は簡単なので責任は持ってない。

 

そういうのは背負わないもんで。

 

リーシャ達は異世界では魔女なんて呼ばれていたが、転生してこの世界に流れ着いたので薬師などという適当な名前で紛れている。

 

「私は苦労してこうして今の立場を築いた。彼女は覚えようという気概もない。失せるよそんなの見たら」

 

応援しようという感情が一切沸いてこない。

 

「異世界人のよくある病よね。物事が妄想みたいに展開して、都合よく誰かが助けてくれると根拠がないのに思い込んでいる」

 

「その典型的な人が今回この島に来てしまった」

 

「トラファルガー・ロー付きでね」

 

魔女は昔から強い人の目に止まりやすい。

 

彼女も目眩ましを持っているが、相性の問題もある。

 

「ドレークって人に会いに行くの?」

 

「会いに行くんじゃなくて、たまたま出会うの」

 

意図的な言葉によくやるよなと半分目を細める。

 

「真面目な顔をしてうぶなんて、私好み」

 

「食べちゃ駄目だよ」

 

「それは向こうが我慢するかね」

 

面食いの悪友はいたずらに顔を歪ませる。

 

「次再開したらドレークの女になってたなんて展開は頭が痛いのだけど」

 

「次回待て」

 

「待ってないから」

 

トリップした女がまた違う人に働きたいことを拒否されているのを視界の端に捉えながら、薬を作る。

 

めそめそ女と心のなかで付けた。

 

ロー達は押し付けられそうにないことを悟り、違う島に行くことに決めたらしい。

 

もっと大きな町から置いていきやすいと考えたのかもね。

 

「……これは、どういうつもりですか?」

 

抱えられていることを指摘すると、女を置いていく代わりにお前を持っていくんだと分かりやすい展開に目眩。

 

「なるほど、どいつもこいつも、勝手な」

 

リーシャは耳につけていた薬を男の鼻に投げつける。

 

男は驚きその効果に手を離し、直ぐ様離れたところに着地する。

 

「マテリアルオーダー」

 

薬を三連続撒けば煙で男は女を見失う。

 

リーシャは早速荷造りしてもしもの時の手紙を投函。

 

海賊に追われるから留守にするという内容。

 

家は特定されていて、使えない。

 

自分の顔を一ヶ月張り付けることのできる薬をトリップ女に被せた。

 

巻き込まれたのだから、返品する。

 

「アホはアホらしく過ごしていれば良いんです」

 

驚く女にリーシャは分からない方の異世界後で呟く。

 

やはりローは魔女に目をつけた。

 

悪友の言葉が張り付く。

 

「では」

 

リーシャは颯爽と去る。

 

月の隠れる間に飛ぶ。

 

「待て」

 

トリップ女の方へ走っていく男を見て、ほくそ笑んだ。

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