短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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脱獄夫

私が住む街は外から監獄町と呼ばれている。

なぜなら、国一巨大な監獄が建てられているから。

どうして街を作ったのか知らないが、普通の民家を建てるのって可笑しいと思う。

包丁で肉を切っているとドアが開けられる音がして振り返る。

 

「帰った」

 

「お帰りなさい」

 

ケロッとしていて、怪我もなくホッとした。

 

「なにも問題は起きてないか?」

 

「ええ、特になにも」

 

彼は私を後ろからギュッと抱きしめてくれた。

 

「寂しがらせて悪いな」

 

申し訳なさそうな声色。

 

「とんでもないです」

 

耳を囁く甘い声に、赤くなる頬。

彼はいつでも優しく私に対応してくれる。

2人は夫婦。

夫婦は夫の帰りを待つことを常としている。

 

私は彼と過ごす時間に幸せを感じている。

 

「あの、今日はビーフシチューを作りました」

 

つらりと発表した。

 

「ああ、好物だ」

 

彼は喜んでくれた。

 

「美味しそうだ。おかわりの分もあるか?」

 

「はい!たくさん食べますものね」

 

ニコッと歓喜しながら、ニコニコとそのままビーフシチューを掬い上げる。

 

「はい、どうぞ」

 

皿に盛ると、寄越す。

 

「もらおう。美味しそうだな」

 

彼はくん、と嗅ぐとばくばくと食べ出す。

次々無くなって、おかわりしてくれた。

 

「旨かった」

 

その言葉は私の一日のエネルギーを補充してくれる。

 

「良かったです」

 

監獄の国。

ここでは脱獄が普通。

が、知らない人も1人くらいは居るだろう。

 

それがリーシャだというだけ。

今もなお、何も知らない。

それを思うだけで心が締め付けるよう。

己の部下に彼女を守るように言いつけているので、危害を加えられるということはない。

だが、やはり自分の目で無事か確かめたいのだ。

 

抱きしめたい、キスしたい。

腕の中で落ち着く女を見て、支配欲が浮かびほのかに口角をあげる。

 

数日後、また捕まったので部下に脱獄の下準備をさせる。

 

男は一人だけでも直ぐに脱獄出来るが、部下の技術力を上げるためなどでやらせている。

看守が部下が居なくては脱獄出来ない貧弱めと罵ったことがあった。

そいつは脱獄する際、腕と足を腫れ上がるまで痛めつけた。

 

その後は、一度も見たことはない。

ざまあみろとせせら笑ったのが見舞いと思えよ?

妻に会いに行く為に、念入りに気配を消す男を迎えるリーシャは、笑みを浮かべてお帰りを言う。

 

「今日の夜飯はなんだ」

 

「シーフードカレーです。エビが沢山入ってますよ」

 

「美味そうだ」

 

妻からもカレーの香りがする。

ごくりと喉を鳴らす男はさながら、肉食の獣のようだ。

壁にある鏡が男を写す。

 

「おかわり、沢山してくださいな」

 

「言われなくともする」

 

素っ気なく言うも、女は臆する事なくフフ、と笑みを溢した。

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