軍人と謳われる職業は多種多様。
映画やドラマのような華やかで派手なものなど極々一部。
殆どは事務だ。
その一環として派遣された今回の任務は得体のしれない遺体が出たので捜査するようにと告げられた経緯。
軍事に務まる仕事ではないようなものでも仕事は仕事。
言われたことをやるだけだ。
初めは肉体を駆使するものを想像していたが、ローの頭脳が良いと知れ渡ると中間管理職になった。
勿論、身体能力も良いと知られているので外へ向う任務を多く担当させられている。
使いっ走りも楽じゃねェなと眉間のしわを深くする。
「今回もあいつを頼るか」
「ローさん、行くんですか?運転しますよ」
「いや、いらない」
部下の男が聞くが、首を振る。
邪魔者はいない方が良い。
車に乗り込んで2時間程すると建物が見えてきて、早速中へ通る。
部屋を迷うことなく行くと見知った男がこちらを見て満面な笑みを携え、ハグする仕草になった。
キラキラと金髪が光る。
「ロー!やっと顔を見せたか、この野郎」
「悪いなコラさん。雨で仕事が立て込んでしまって」
「気にすんな!頑張ってると知ってるからなァ」
彼はロシナンテ。
愛称はコラソン。
この施設の所長をしている。
出資者が兄貴なのだが、その話は深追いしなくても良い。
ロシナンテはローと昔からの家族ぐるみの付き合い。
その縁でこの施設にはローの知り合いが多く所属している。
それは軍人という特殊な仕事において大いに役立っている。
軍部も利用しているので男は遠慮なくここへ来れるので仕事を取ってきているロシナンテはとても有能。
「あー、シャニラは居るよな」
「なんだァ?おれに会いに来たんじゃないのかよォ。こいつゥ」
ロシナンテはニヤァと口を最大に上げて、からかう。
「馬鹿言うな。遊びに来たんじゃなくて仕事関係だ。ほら、これ」
「なんだ、ぬか喜びだなッ。どれどれ?ほお、事件の捜査かあ」
「事件か事故かはまだ特定されてない」
「それにしては変なところに遺体があったな。第二の存在を感じる。よし、あいつに届けてやれ。おれが届けるより届けたいお前が行きたいだろ?ハッハッハッ」
「コラさん。お節介も過ぎれば風邪引くぞ」
「おれは元気の子だから風邪を引かないぞ!」
「火がついても気付かない鈍さなら風邪にも気付くわけないよな」
「おいこら、聞こえてるぞワルガキの申し子」
子供の頃の事を持ち出されてむくれる。
どうも彼の前ではカッコ良くいれない。
ロシナンテの雑談も程々に済ませて廊下へ移動。
目的はシャニラで、彼女はありとあらゆる博士号を網羅し、検定も好きで保持しているという検定オタクだ。
物知り博士という名前で動画投稿もしている。
人気な方なのだと聞いたことがあったが、見たことはない。
忙しくて。
「シャニラ、居るか」
「あ、はい、います」
ローが誰か分からないのか客人用に対応される。
ドアを開けるとぱちっとした眼が丸くなる。
「え、あ、ローだ」
「そうだ。仕事の依頼をしに来た。ここにある素材を科捜研に調べてもらいたい」
ここは一般の科捜研だ。
国所属ではなく、個人が作った施設。
であるから、内密なやりとりがされやすく、個人的な依頼も可能。
「国に属してるところを使えば良いのに。経費で落ちないよ?お金って所謂ローの懐から出てるんでしょ?」
「ちゃんと後から払う以上の金額を得ているから気にするな」
「そうだったかな?ローは賢いね」
「お前ほどじゃない。博士号取りすぎシャニラ。ってあだ名、ダサくて呼びたくないが、的を得てるから困る」
「言われてる私が一番嫌な言い方されてるよー。んー、でも、趣味だし、いまさら増えても気にしないでしょ、誰も!」
「おれは気にして欲しいが?あだ名で呼びたくない」
「いやいや、呼べって言った事ないでしょ」
「それに、私は物知り博士というハンドルネームがあるのだ」
「結局ダサい」
「ぐっ。ロー画伯にだけは言われたくない」
小声で罵る。
ローの絵心は子供を全力で泣かせるくらい怖い仕上がりとなるのだ。
「ロー、この検査は時間がかかるから、すぐには出来ないからね?また来ないといけないから」
「あァ、わーってる」
「ふふ。頑張ってるね」
「お前ほどじゃない。コラさんに使われてるって聞いてる。なんでも、前は二つの時間を最短で紐解いたとか?」
「あれは、その、科学は関係なかった」
検定の内容を覚えていて、それでピンときて、試しに言ってみたら当たっていただけなのだ。
暇さえあれば、博士号と検定を取る変わった幼馴染ではあるが、勘は良い。
「この事件もなんなら解いてくれたって、良いんだぞ。科捜研探偵」
「ドラマのタイトルみたいなあだ名は嫌!」
ネタにされるのが分かりきってきて、被りを振る。
2日後、シャニラの科捜研から連絡が入り結果を聞かされる。
ローも内容を精査し、推理していく。
彼女は博士号を取った時のエピソードを交えて閃く。
「(なにか頭の良い内容)。てなわけで。こんなの、どう?」
「あァ、おれも考えたが今の方が真実に近いかもな」
やはり、この女は賢いと口角をくいっと上げる。
「今度、美味しいもんでも奢ってやる」
「え?いや、別にそんなの良いよ。忙しいのに、そんな暇ないでしょ」
「この事件が解決すれば、日照りの川みたいにスケジュールが無くなる」
「ええ。それ、プレッシャーだよ!」
知識オタクの悲痛な訴えが研究室から響き、兄とお茶をしていたロシナンテが「ははは」と頬をプルプルさせた。
兄は「睦まじいな」とお茶請け扱いしていた。