短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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ヒロインとか結構です3ー4

これからもこの世界にいられるのが分かっていて、しかも物語の通りならずっとここに居られるからだろう。

 

それを見てローは何も言わず通りすぎると彼女は後に付いていくことはせず物語通りにこちらへ来る。

 

ベポへ挨拶する為だろう。

 

 

「初めまして」

 

「おれはベポ。お前おれの部下な」

 

「あははっ。いいですよ」

 

 

嬉しそうなベポにこちらも笑みを浮かべると視界の端にシャチ達がいてカンナを見ながら何か言い合っている。

 

 

「女だぞ、ペンギン」

 

「ああ、女だな」

 

(うん。聞くんじゃなかった)

 

 

デレデレと鼻を伸ばした二人の会話はこちらにも聞こえて来たのでカンナにも聞こえているだろう。

 

彼女はあちらにいるシャチ達のところへ行き挨拶しにいく。

二人はやはりデレッとしていて呆れる。

一応ここにも女がいるんだけど……と心の中で言いながらご飯を食べ進めた。

 

それから五日後、襲撃に遇い敵船と交戦中のハートの海賊団。

リーシャは自室でヒロインと静かに待機中で彼女はそわそわしている。

この後物語ならヒロインが敵と戦い終わったと思い外に出てそこで残党に撃たれそこからまた海賊団の船にお世話になるのだがそんなことをされると……お金がかかる。

 

何より大切な資金をそんな起こるべくして起こるかもしれないものに使うのはと思う。

そもそも怪我をしなければいいのだと考えそのシナリオはカットさせてもらおう。

手術代と名を売った借金を理由にこの船に居座るのだが、その手術代ですら結構な値段になるからと対策をいくつか張っておいた。

 

 

「リーシャさん、もうそろそろ終わったんじゃ……」

 

「仮に終わっていてもいなくてもここからは出てはいけないの。船員の誰かが来るまで……ね」

 

 

敵が船に入り込むことだってあるかもしれないから絶対に開けてはならない約束なのだ。

物語沿いにしたいからか、彼女は堪らないとばかりに立ち上がり扉へと向かう。

 

 

「っ!?……鍵が……!」

 

「カンナさん?静かにして?それに大人しくしてもらわないと」

 

 

そう、鍵を閉めた。

いつも敵の船が来た時は鍵をかけるが、内側からかけられるし外からもかけられるが、今回は敢えて早めにかけといて鍵も隠してある。

ガチャガチャと鳴らすので困った様に言えばカンナの顔は焦ったように揺れた。

 

 

程なくしてヒロインが大人しくなりペンギンがやってきて戦闘が終わったと伝えに来たので鍵を外す。

そしてヨロヨロと外に出たカンナに続き、今回の襲撃の収集を確認しにいく。

どんなものでも結局は黒字だが赤字よりはずっといい。

換金するものとを分ける作業も仕事として担っているので急ぐ。

 

 

「異常はなかったか」

 

 

不意にそう言われ振り向くと甲板の場所にローがいた。

戦闘がある度にそう聞かれるのでいつものように頷く。

それだけで十分伝わるので早速お宝を拝見すると近くにいたシャチが首を傾げて尋ねてきた。

 

 

「カンナちゃんは?」

 

「分からない。でもきっと中にいるよ」

 

「ふーん。つーかさ、思ってたんだけどよ……女が船にやって来たのにお前喜んでないな」

 

「…………鉄仮面とでもいいたいわけ?別に喜んでるとか喜んでないとかそんなことは思ってない」

 

「女同士で楽しく話そう……とかもか?」

 

「だってあの子も私も特別仲良くないし……それより宝はこれだけ?後はもう空っぽ?」

 

 

これ以上話を突っ込んで欲しくなくて話を変えるとシャチはこれだけだと固定する。

敢えて言おう、リーシャはカンナをあまり好ましく思っていない。

先程も無理矢理外に出ようとしたし、本来の主人公とかけ離れた性格の少女だ。

 

まぁ、だからと言って苛めるわけでもなく、ただ小説通りにさせる訳にはいかないというだけだ。

彼女が沿おうとする限りこちらは逆の行動を取らせてもらう。

もしこのまま沿ってしまえば周りは巻き込まれ怪我をして痛い出費に繋がる。

それはやはり金銭管理として止める他ないというだけ。

 

 

「じゃあ金庫に運んでおいてもらっていい?私も運ぶし」

 

 

そう言い財宝の幾つかを手にして金庫に向かえば彼も後ろから重そうな金品を持ってやってくる。

そうして運び終えれば甲板にカンナがやって来た。

 

カンナは肩より少し長めの髪を一つ括りにしてお盆を持っている。

そこにはコップとガラスのビンがあり彼女は船員に配り水だと言って汲んでいた。

 

しかし、船員達はそれを飲もうとはせず渋っているのを感じる。

まだ身元がはっきりしていない女の汲んでいく水を簡単に飲む者など早々いない。

 

毒が入っている可能性を捨てることはないこの空気に焦るのはカンナだ。

何かしてしまったのだろうかと考えているようだ。

 

このままではハートの海賊団の中の空気が悪くなるのを見越してリーシャは溜め息を付きそうになりながらそれを一気に飲む。

 

傍にいたシャチが名前を呼んで何故飲むんだ、という疑問を含んだ言葉を聞きながらごくりと飲み込む。

全員がこちらを見ていて緊張を孕んだ空気がビシバシと刺さる。

 

 

 

「うん……普通の水だね」

 

「そうか……じゃねーよ!馬鹿かお前!」

 

 

シャチの叱責に煩わしくも心配された事を密かに嬉しく思いながらも軽く受け流す。

近くを見遣れば他の男達も水を飲む姿が見受けられたのでホッと息をつく。

 

すると突然腕を捕まれ振り返るとローが鬼のような形相でこちらを睨んでいたのでギョッとする。

 

 

「船長?どうしたんですか、お顔が怖いですよ」

 

 

茶化すと更に眼光が鋭くなり背筋がヒヤリとする。

そんなに怒ることではないと思うのだが、と考え離して欲しいと頼めばやっとキツい圧迫がなくなった。

 

後が残っているだろう腕を擦る。

 

 

「船長、次からは優しく掴んで下さいね」

 

 

白々しく述べればこちらを見ていた目が柔らかくなり溜め息を付かれた。

一体本当に何だと言うのだろうと思いながら去っていく船長の姿を見送る。

それからやがて夜になり襲撃の勝利と名を使った宴が始まった。

 

いつもと違うのはやはりカンナがちゃっかりローの隣に座っていることだろうか。

 

若干呆れながら遠くで料理をつついているとペンギンが傍にやって来た。

 

 

「あの女はどうだ?何か可笑しな様子は無いか?」

 

「……そうだね。独り言は多いけど特に不審なところはないよ」

 

 

夜眠りについた後に聞こえてくる独り言が例え「キャラの高感度が……」「ローさんはいつ私を好きになってくれるんだろ」「トラ男って早く呼びたいなっ」という知る者が聞けば分かる内容だとしても。

 

本当に独り言は、あれは止めて欲しい。

でも、相手がこれからどう動くのかを知るためにも聞き漏らすことはないようにしているので助かってはいる。

 

この世界を未だに本の中のものだと思っているようだがここは現実……リアルなのだ。

 

 

「そうか、それならよかった。お前と同室なのがおれ達には不安なんだ。相手はまだよく分からないしな」

 

「ふふ、そうだね。でも別に粗そうはしてないし大丈夫だとは思うよ」

 

 

やはり気を遣わせてしまい彼等には申し訳なくなる。

 

彼女が変な方向に行かないように見ていなければならないが、ロー達には安心して航海してほしいと思っているので少しだけでも頑張ってみよう。

 

そう思いながらの夜は過ぎて行った。

 

 

 

そして、早くもカンナが乗船してから一ヶ月が経過し船員達も徐々に彼女に馴れていった。

今日は島に付いたのでカンナが降りる日だ。

 

しかし、この一ヶ月を振り返るとリーシャにはかなり辛い日々であった。

ベポに日課のブラッシングをしようとすれば横からカンナがブラシをもぎ取りベポにブラッシングしたり、洗濯物を干そうと甲板にいけば洗濯物を横取りされペンギンを誘って至り。

シャチと釣りをしていれば真ん中に座り込みシャチから釣りの仕方を聞いたりと上げれば切りがない。

 

全て計算された行為なのだから後味がすこぶる悪い。

顔には出さなかったが内心辟易としていた。

おまけにローとコーヒーブレイクをして過ごしていればまたまたやって来て一緒にいてもいいですか、と聞いてきて居座る。

 

凄く疲れるし、もう目を塞ぎたかった。

だから今日という日がきて凄く凄く嬉しい。

兎に角居座るのはもう、と涙しながら今か今かと降りるのを待つ。

 

ここで問題なのはこれからが始まりということだ。

ある意味分岐点のこのシナリオで彼女の乗船が決まる。

 

 

「あの、ベポさん……最後のお願いがあるんですけど、私のお買い物に付き合ってもらえませんか?」

 

 

きた、と思った。

ベポと話していたリーシャは目を細くしてベポを見る。

どう答えるのかはもう決まっているようなものなのだが。

 

 

「別に構わないぞ。リーシャも行くか?」

 

「え?」

 

「そうだね。私も買いたいものあるし」

 

 

今の引きつった声の「え?」は聞こえなかったフリをして二つ返事。

そして行くことを船員に伝えて三人は町に降りた。

 

初めはここの地図を貰い仕切りに彼女はある場所へ行きたがったので近くへ行き雑貨屋へ入る。

石鹸や衣類を買い金銭管理が偏らないように計算して買う。

ローにはカンナへ一週間分の最低限生きていける金額を渡すように言われ渡した。

 

これで降りてもらえるのならばと自分には珍しく嬉々として渡したのだが彼女にはどう写っただろう。

雑貨屋へ入ると石鹸と衣類を買いベポのところへ向かう。

既にカンナも見終わったのかそこにいて凄く外に出たがった。

 

その理由は勿論シナリオにあって、爆発音と共にヒロインは、ついそこへ向かう。

 

そしてある男に出会い強い瞳が重なりその男の問いに強く反発して気に入られ連れ去られるという誘拐シナリオである。

 

 

「なぁ、さっき上手そうな匂いがしたんだ。買ってきていいか?」

 

 

人混みに複数で入るのは困難だろうという配慮に頷くと人混みに紛れてベポは向こうへ行った。

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