短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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いつの間にかハートのクルーになっていた


船長、コンプライアンス違反です

三角座りをして、ボーっと海を見ていた。

 

ここは船の上。

 

私って、なんでここに乗っているのだろうか。

 

「はて……入団した記憶がない」

 

困ったような困ってないような。

唸りたいが、唸らなかった。

 

「ちっこい体がさらにちっこくなってるぞ」

 

後ろを向くとムカつくぐらいイケメンな男がかっこつけた顔を見せる。

 

むかっとした気持ちでトゲトゲ言葉を発する。

 

「船長、コンプライアンス違反です!」

 

彼はきょとんとした顔で問い返す。

 

「なんだコンプライアンスって」

 

「ジェネレーションギャップなんてレベルじゃないよー」

 

この海と船と海賊という職業で理解していたが、あまりのことに現実逃避がせいぜいだ。

そもそも、私は本当にこの海賊団の船員なのか?

という問いかけを何度も自分に問いかけた。

 

「ジェネレーションギャップってなんだ」

 

さっきから質問ばっか。

 

「文化の違いに苦しんでるって意味ですかね」

 

「おれはさっきからお前の言葉が何一つわかんねェ」

 

「お互い様ですね。ところで私って入団しましたか?」

 

「どこらへんがお互い様なのか。入団しただろ。ここにいるんだ。おれの記憶にもないがな」

 

「ないんですか!?よく今まで私をのうのうといさせましたね」

 

「のうのうの使い方はそれで合ってるのか」

 

「あってないかなって思ってます。それよりももっと気にすべきところがあるのでは」

 

覚えてないのになぜここにいさせるのかな。

 

「別に一人くらいそういう奴が居てもいいだろ」

 

「いいだろって」

 

ものぐさなんてもんじゃない。

 

「お前はアホだから害がない」

 

「船長、コンプライアンスッ」

 

「だからコンプライアンスってなんだ」

 

「そういうとこです」

 

「どういうとこだ」

 

これ、エンドレスでしょ。

骨になっても終わらないやつ。

 

「船長、私によく構えますね。不審者ナンバーワンでしょ」

 

「アホナンバーワンでもある。お前の強さもナンバーワンだ。一番下の」

 

「そりゃそうですよ。私は前職が空を見る事なんですから」

 

「それは仕事なのか?」

 

「いえ、仕事がなかった私の現実逃避のための一日中の行動です」

 

「なら、うちに就職出来てよかったな」

 

「就職とか海賊に該当するもんなんですか?」

 

「するだろ?現にお前はおれから給料貰ってる」

 

「私なんにもしてないのに」

 

「そうでもない。お前を見てると頭を空っぽに出来る。役に立ててる」

 

「褒められてる気がしないなー」

 

遠い目になる。

 

「役職ってマスコットですか?マスコットって海賊にありですか?」

 

「結構マスコット居るぞ。有名なのは麦藁海賊団だ。たぬきかトナカイのマスコットが居る。ほら」

 

わざわざ手に持っていたのかピラッと見せてくる。

なんで持ってるんだろこの人。

 

「可愛い!え、海賊?」

 

「安心しろ。お前も海賊をしてる。誰でも出来る」

 

「それ貶めてますよね!?まあ、私は海賊に入団したつもりはないですから認めるのも変ですけど」

 

「ここに乗ってからどれくらい経つ?」

 

えーっとー。

多分半年くらいかな。

 

「いやその時に気付け」

 

流石にツッコミたくなったらしい。

 

「おれのこと言えねェだろ。一ヶ月とかならともかく、半年なら今更入団うんぬんなんて遅すぎるぞ」

 

「だってだって、楽しすぎてつい」

 

「ああ。確かにお前らいつも楽しそうだったな。こないだはポップコーン作るとかいってたのになぜかポン菓子に変わってて。凄く煩かった」

 

「凄いですよね技師!ポン菓子の機械を即席で作るなんて!憧れます。うっかり惚れそうでした」

 

「惚れるな。ポン菓子作ろうとして恋を完成させるな」

 

「う、うまい!うまい?」

 

「殴られたいか?」

 

鬼の形相になったので体をそる。

 

「そんな、理不尽です!」

 

「で、惚れたのか」

 

今の会話で気になるところってそこ?

 

「惚れませんよ流石に。私は惚れっぽいの対極いる女なので」

 

「それは惚れっぽくないってことか。普通ってことだろ」

 

「船長、コンプライアンスいは」

 

「コンプライアンスってだからなんだ」

 

「コンプライアンスとは……私にもよくわかんないんです」

 

「分からないのに使うとは。いつか大怪我するぞ」

 

「大火傷の違いですよきっと」

 

「対岸の火事の感覚かよ。だからアホって言われるんだぞ」

 

「言ってるのは船長だけです」

 

「たとえおれだけでも言い続ける」

 

ローはぽつんと飛ぶカモメにも目もくれない。

 

「船長って暇ですよね」

 

「暇なわけあるか。お前のことを見るだけで残業だ」

 

「残業とか海賊とは縁遠い言葉ではないですか?しかも船長自らとか、アフターケア凄いですね」

 

ローはこいつ、なんも気付いてないなと思った。

 

「お前だけだ。結構心配してるんだがな」

 

ふいうちにドキッとする。

そ、それってどういう。

 

「騒動のど真ん中はいつもお前だから目が離せない」

 

「そっちの意味でしたか。私がいつもやらかすわけではなくて、私じゃない人もいます」

 

「お前かお前じゃないかだろ」

 

「なんですかそのジャンル分けっ。私だけ特別扱いとか」

 

なんというか、これっぽっちも嬉しくないよねえ。

 

「うぐぐ。船長って私のことを本当は疑ってるんじゃないんです?」

 

「はァ?疑ってたらこんな風に話してねェだろ」

 

「いやいや分かりませんよ。ずる賢い船長なら私を手のひらで転がすなんて朝飯前なので」

 

「入団歴が10年の奴らの誰よりも図太いぞ」

 

「え!」

 

照れるな、褒めてないと言われてしまう。

えー?

 

「誰よりも長生きする」

 

「それはそれで。長生きとかいい事なんですか」

 

この現代とは何もかも違う世界で。

不便なんだよね色々。

 

「この船って二ヶ月間陸に行ってなかったですよね。私は一体どこでこの船に乗ったんですか?」

 

「そういやお前は話題にならなかった。いつのまにか溶け込んでた」

 

「記憶にないけど溶け込んでたんですか?自己紹介とかした覚えもなくて。いつのまにか周りから名前を呼ばれてたんです。私も特に違和感を感じなくて、昔からの感覚で立ってたんですけど、馴染む過程はどこに消えたのやら」

 

「お前が覚えてないのならお前の意思で船に乗ったんじゃないな。恐らくどこかの島で寄っておれの部下達と意気投合したんだ」

 

「は?いやいやいや。意気投合したからって船長が入団してない私を乗せるとか変です」

 

「そうでもない。おれも気に入った猫を次の島まで乗せたりする」

 

「規模がおかしい事に気付いてくださーい。私は人間でーす」

 

比べる生物に私を入れるな。

 

「だが、全員と気が合うやつってのはすごい事だ。ポン菓子ではしゃげるのもな」

 

「ポン菓子については船長だって美味しく食べましたよね。共犯なのでなにか言う権利はないと思うのです」

 

話題にならなかったのは逆にすごいな。

これだけ少ないなら目立つ気がする。

なのに、私すっごい可愛がられてるもん。

 

今までよくなにも考えずに可愛がられてきたなという視線をじっとり受ける。

 

「いやあ、だってですねー。楽しすぎて気付いたら半年経ってたって言いますか」

 

「もうお前が船長を名乗れ」

 

「なぜ!?」

 

ローはフッと笑う。

 

「おれよりもあいつらと馴染んでる」

 

「いやいやー、そんなバカな。みーんな船長親衛隊なので、私そういう会話だけ疎外感感じるんです」

 

「ハートの海賊団から降りろ」

 

「なんでっ!!理不尽!コンプライアンスどころか、パワハラですよー!」

 

「けっして親衛隊どうこうは気にしてもねェが、そこで疎外感感じるやつがこの船に乗るのは間違ってるよな」

 

「な!それなら半年前のわたしを返して下さい」

 

「出来るか!」

 

ベポに寝ないと明日に響くよと言われるまで続いた。

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