ブルアカ世界に男で転生したのでロボットになります   作:あーけろん

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軽率な行動と早瀬ユウカ

 

 

「──────あれ?クロキ君は?」

 

 

すっかりと太陽も落ちきり、眩い星空が窓から覗ける家庭科室であたりを見回す。これからまたみんなで夕飯だと言うのに、お面の姿が見えない。

 

 

「く、クロキさんなら図工室で何か作業してましたよ。なんでも、避難街を作っているとか…」

「そっか、それでか。……あと、ヒヨリちゃん。つまみ食いはほどほどにね?」

「ひゃ、ひゃい…」

 

 

都市整備部のマークがプリントされたエプロンを身につけて、頬に唐揚げを詰め込んでリスのようになっているヒヨリちゃんを嗜める────多少は目を瞑るけど、食べ過ぎはよくないよ?

 

 

「先生、お味噌汁は出来たよ」

「ありがとミサキちゃん。付け合わせのサラダはどう?」

「問題ない…と思う」

 

 

ヒヨリちゃんと同じく、都市整備部のエプロンを身につけ大きめの黒いマスクをつけた彼女────ミサキちゃんがやや自信なさげに口を開く。

 

 

「どれどれ……うん、よく出来てる。やっぱり器用だねミサキちゃんは」

「…別に、先生の手順書がよく出来てただけだし」

 

 

そう言って少し照れくさそうに俯く彼女に微笑む─────彼女達、アリウス分校の生徒達の事情はクロキ君から聞いている。右も左もわからない生徒達を兵士に仕立て上げるなんて、これ以上ないほど非道な行為だ。いっそ外道と言っていい。

 

 

『あいつは────ベアトリーチェは私達とは根本的に価値観が違うんですよ。俺にとっての金剛石はあいつにとっての石ころだし、あいつにとっての金剛石は俺にとっては石ころです。なんだか難しく言ってしまいましたが、要するにベアトリーチェは俺たち常人の地球人の価値観が通じない宇宙人だと言うことです』

 

 

彼がそれを言った時の口調は酷く冷淡で、私や生徒達と話す声色とは全く違うものだった。余程そのベアトリーチェという人物のことが気に食わないのだろう。

 

 

「……さて、と」

 

 

なんてことを思い出していると、二升炊きの炊飯器が音を立ててご飯の炊き上がりを教えてくれる。その音を合図に視界を家庭科室の背後──────急遽隣の教室との壁を壊して臨時の食堂になった場所へ視線を向ける。

 

 

「────今日の戦力を見た限り、PMCはこちらの戦力を過小評価していたと考えるのが自然だ。兵装も拿捕を目的とした物が多かったことから考えるに、アビドスの生徒を捕縛することが目的だと考えるべきだ」

「ん、どうりで歯応えがないと思った」

「上空から監視していましたが、サオリさんの言う通りだと思います。機甲部隊の展開も確認できませんでしたし、あくまで様子見だったのだと思います」

「そうなると、明日以降がPMCの本気と考えるべきだ。幸い戦闘予定区域の住民の避難誘導は今日付けで完遂している、明日からは戦闘にだけ集中すれば良いだろう」

 

 

長机の一つではアビドス市街地図を広げ、そこに線を引いて明日の作戦を考えているサオリちゃんやアヤネちゃん達が見える。少し離れた机ではアツコちゃんとノノミちゃん、トキちゃんが談笑しており、さながら合宿所のような賑やかさだ。

 

 

「そういえば、クロキさんってミレニアムだとどんな生活を送ってるんですか?やっぱり普通に授業は受けていないんですか?」

「そうですね。クロキさんには特例として試験や出席が免除されています。その厚遇に一部の生徒から反発もあったんですが、ミレニアムプライスでぶっちぎりの大賞を取ってからそういった声も無くなりました」

「ミレニアムでも女の子に囲まれてるの?」

「囲まれてますね。セミナーのお二人に会長、エンジニア部の皆さんやC&Cの先輩方、後はヴェリタスの皆さん───────いえ、あれはもう自分から飛び込んでいると見るべきか……」

 

 

─────うん、聞かなかったことにしよう。

 

 

「さぁみんな、そろそろ夕飯が出来るよ。机の上を綺麗にしてね〜」

 

 

手を大きく2度叩き、みんなに向けて声を張り上げる────あ、ちょっと今の先生っぽいかも?

私の掛け声にみんながテキパキと動き出すと同時に家庭科室の扉が開かれ「お疲れ様です、先生」と優しい声が鼓膜を叩く。

 

 

「あ、クロキ君。ちょうど良かった、これから夕飯だよ」

「みたいですね。すみません、準備を任せちゃって」

「ううん。そっちこそ、避難街の方はどう?」

 

 

小さく会釈しながら家庭科室に入ると、一番に手を洗いながら口を開く。

 

 

「はい、先程竣工しました。まだまだ手は加える必要はありますが、とりあえずは不自由なく暮らせると思いますよ」

 

 

────────ん?

 

 

「あはは、クロキ君でも言い間違いはあるんだね。それを言うなら着工でしょ?竣工だったらもう作り終えちゃったことになっちゃうよ」

「えぇ、ですから竣工で合ってますよ」

「……えっ?」

「えっ?」

 

まるでなんともないような口振りの彼の言葉───すると、誰かがつけたのか古いテレビから少し割れた絶叫が聞こえる。

 

 

『ご覧下さい‼︎こちら現在騒動の渦中にある都市整備部の保有する楽園予定区画なのですが、瞬く間に街が産まれています‼︎』

 

 

興奮覚めぬ口調に目線をそちらに向ける。テレビにはヘリコプターで上空から撮影したのか、簡素で凝った装飾のない住宅街が一面に広がっている。そう、住宅街が、である。

 

 

『こちらに有志の方が撮影してくれたタイムラプスがあるのですが、おわかり頂けるでしょうか⁉︎まさしく住宅が、建物が!ぽこじゃがと、まるで筍の様に生えていく様子が確認できます‼︎』

 

 

それはまさに雨後の筍の様に、真っ平らだった土地に瞬く間に道路が、住宅が、インフラが生えていく様子だった。まるでゲームのように建物が出来上がるその様子は、まるでシムシティをプレイしているような気分にさせられる。

 

 

「先生、配膳を手伝います───って、何見てるんです?」

『突如生えてきたこの街ですが、どうやらアビドスから避難してきた住民達が暮らす予定とのことです!それでは早速住人たちにインタビューをしていこうと───』

 

 

突如テレビが暗くなり、声が聞こえなくなる。原因など、横でリモコンを持っているクロキ君に他ならないだろう。

 

 

「ん、クロキ。今から良いところだったのに」

「これから夕飯だろ?それに、あんなの見たってなんにも面白いことないぞ」

「というより、どうやってこんな短時間で…?元から準備していたのか?」

「今回は工事現場がミレニアムだからうちの作業用ドローンを思う存分使えるし、建物だってほとんどクラフトチェンバー────まぁ、魔法のような力で予め出力したブロックを組み上げただけだ。態々準備する程のものじゃない」

 

 

「クロノスの連中ももっと映すところがあるだろうになぁ…」と頭を掻いて席を離れるクロキ君─────そういえばこの人、2年でキヴォトスの半分を作り替えているんだった…。

 

 

「────まぁ、クロキが規格外なのは今に始まった事じゃないから」

 

 

のほほんとした口調のホシノちゃんの言葉にこの場にいた全員が頷き、粛々と夕飯の準備を進めるのだった────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

「─────まずはみんな、今日一日本当にお疲れ様。おかげで避難誘導は無事に完遂したから、明日からは再開発業務に取り掛かれるよ」

 

 

昨日の夜と同じく、家庭科室の黒板の前でチョークを片手に教壇の上に立つ─────今日の夕飯は全て自分の手で食べたことはここに明記しておく。

 

 

「それと一つ報告。明日のお昼から『便利屋68』がここアビドスに合流することになった。対策委員会のみんなは知ってると思うけど、仲良くしてくれると助かる」

「便利屋の皆さんが?確かに助かりますけど、クロキさんがお願いしたんですか?」

「うん。いや、ちょっと事情が重なったというべきか………」

 

 

先程、家庭科室に来る前の電話─────鬼方からの電話を思い出す。

 

 

『ごめんクロキ、カイザーに私達とクロキの関係がバレてた』

 

 

申し訳なさそうな彼女の口調だったがとんでもない。彼女たちはなにも悪くない、全て悪いのは見通しが甘かった俺の方だ。ましてや戦う必要がなくなった領域支配機─────『Melchior』をけしかけてしまったのは俺の落ち度と言う他ない。

 

 

そう言うわけで彼女たちは大口の稼ぎ口を失ってしまったばかりか、カイザー達に目をつけられてしまった訳である。そんな彼女達を放って置くなんて出来ないし、万が一のこともあるというわけで、俺から熱りが冷めるまでアビドスで暮らすことを提案したのだ。

 

 

(なぜか社長は嬉しそうだったけど……ま、いっか)

 

 

何はともあれ貴重な戦力である。それに便利屋68は武装を殆どつけていなかったとは言え領域支配機を破壊しているのだ、戦闘能力については疑いようもないだろう。

 

 

「ん、その事情について詳しく聞いても良い?」

「…まぁ、俺の悪巧みが失敗した、と思ってくれ」

「?」

 

 

疑問符を浮かべる彼女を前に一度咳払いし、「それで」と話を本筋に戻す。

 

 

「ミレニアムのエンジニア部……白石部長に戦闘用ドローンは依頼しておいた。具体的な納期は聞いてないけど、おそらく明後日には到着する筈だ」

「…そうなると、明日が事実上の山場となる訳か」

 

 

錠前の言葉に頷く。おそらくカイザー達はアビドスが有する戦力が予想以上だったのだろう、今日の快勝は長くは続かない。明日からは持てる戦力の全てをここアビドス高校に叩きつけてくる筈だ─────もっとも、ここを攻撃させるつもりなど毛頭ない。

 

 

「今日の深夜から付近の要塞化を始める。簡易的なものだけど『楽園防衛機構』────自動迎撃システムの構築も進める。先生の遺物にかなり負担をかけることにはなりますが……」

 

 

先生、というより彼女の手に持っているタブレットへと視線を向ける。果たして彼女、【超人】であるアロナが協力してくれるか…。

 

 

「…………まぁ、私からお願いしておくよ」

「すみません、お願いします…」

 

 

苦笑いを浮かべている先生に釣られて俺も苦笑する─────、今の溜め、絶対拒否されたんだろうなぁ…。

 

 

「相手が機甲師団となると使う武器も強力な物が必要になるな。最低でも迫撃砲程度は欲しいところだが…」

「その程度なら問題なく作れるよ。奥空さん、後でお願いしても良い?」

「はい、任せてください!」

「それと、明日の戦闘はおそらく飛鳥馬さんのアビエシュフが─────ん?」

 

 

その時、ふと胸元に入れていた通信端末が光と共に振動する。会議中のため後でかけ直そうと相手だけ確認すると────。

 

 

「…白石部長から?」

 

 

端末に光る文字はエンジニア部部長の文字。こんな時間に電話してくるなんて、何か不測の事態があったと見るべきか、でも今は作戦会議中だし……。

 

 

「とりあえず出てみたら?話が長引くようならあとでかけ直すって」

「……すまない、少し外す」

 

 

俺の表情から葛藤を読み取ったのか、ホシノの声に促されて教壇から降りて廊下に出る。それから通話ボタンを押し、端末を耳元に当てる。

 

 

『あ、やっと出たね。全く、すぐに出ないから心配したよ』

「ごめんごめん。それで、急に電話なんてどうした?ドローンの発注に何か問題が?」

『そうそう、その話だよ。実は丁度新しい戦闘用ドローンが完成してね。せっかくの機会だから実戦で試したいんだよ』

「新しい戦闘用ドローン?」

 

 

不自然な程に上機嫌な彼女の言葉に疑問符を浮かべる。新しい戦闘用ドローンを作っていた話など、噂程度にも聞いたことがない。

 

 

「実証実験は構わないけど、本当に大丈夫なのか?いざ本番で動きませんでしたは流石に…」

『はははっ。クロキも面白いことを言う。私になんの相談もなく、いきなり企業に戦争を吹っかけた後でのうのうとドローンを発注された私達エンジニア部の事は考えた事があるのかな?』

「うっ……それは……」

 

 

彼女の言葉に息が詰まる。

正直なところ、そこを突かれると痛い。本来ならばセミナー……と言うより、早瀬会計に事前に話すのが筋という事もわかっている。

特に今回の行動は下手を打てばミレニアムも連邦生徒会から処罰される恐れもある大規模な行動だ。こんな軽挙妄動な行為、下手を打てばミレニアムから放校されてもおかしくはない。

 

 

────それでも、やらなくちゃいけない事だと思ったんだ。

 

 

「……ごめん、ウタハ。それでも俺は──」

『…前から思っていたんだが、クロキ、困ったら名前で呼ぶ癖はやめた方が良いよ』

「いや、これはだな…!」

 

 

『……まぁ、良いよ。君のそれは今に始まったことじゃないからね』と呆れた声も隠しもせずに彼女が続ける。

 

 

『とにかく、どうするんだい?生憎と今すぐに出せるドローンは件の新型ドローンだけだから、通常の戦闘用ドローンだと納品まで一週間くらいかかるよ?』

「うっ、一週間かぁ…」

『そんなにすぐに注文して用意できるわけないだろう?それでどうする?これでも十分君の意向に添っているつもりだけど?」

「うぅん……」

 

 

彼女の言葉に悩む。

新型、新型かぁ………。一男性として彼女の新型は是非ともお目に掛かりたいが────。

 

 

「…わかった。それじゃあその新型をお願いできるかな?」

『そうこなくちゃ。実はそういうと思って既に一部をアビドスに向かわせていたんだ。そろそろ到着する筈だよ』

「そういうと思ってって……」

 

 

なるほど、つまり最初から実証実験するつもり満々だったということか。流石はエンジニア部部長、抜け目のない事だ。

 

 

『それじゃあクロキ。また後でね?』

「あぁ、それじゃあ──────うん?また後でって?」

 

 

ぷつんと切れた端末を耳から離す─────聞き間違いか?でも確かにまた後でって…。

 

 

「…まぁ良いか。とりあえず家庭科室に戻ろう」

 

 

脚を家庭科室に向けたその矢先、扉が開かれて先生がひょっこりと顔を出す。

 

 

「あ、クロキ君。電話は終わったの?」

「はい、今ちょうど終わりましたよ。今から戻って会議の続きを───」

「その前に、ミレニアムから何か聞いてる?」

 

 

俺の話を遮って彼女が口を開く。はて、ミレニアムから…?

脳裏の記憶を辿っていると「実は」と先生が続ける。

 

 

「今、校庭にミレニアムの校章を掲げた大型トラックが来てて…」

「大型トラックですか?」

「うん、ミレニアムを騙ったカイザーコーポの人達かも知れないからみんな警戒してるんだけど…」

 

 

その時ふと、先程白石部長が言っていた言葉が脳裏に浮かぶ。彼女の言っていた新型ドローンだろうか?随分とタイミングの良いことで…。

 

 

「あぁ、多分今の電話の件ですね」

「電話の件?」

「なんでも新型ドローンを先にこっちに送ってたようで、おそらくそれが到着したんだと思います。私が荷受けしてますので、先生達はみんなに言っておいて下さい」

「あ、クロキ君!」

 

 

軽やかな足取りで廊下を小走りする───────新しい戦闘用ドローン、なんて良い響きだろうか。おまけに今回送ってきたのは彼女の口振りから考えるにおそらく試作機のテストモデルだ。世の中の男の子がみんな大好きテスト用のピーキーな試作機、気分も高揚すると言うものだ。

 

 

「〜〜♪」

 

 

某自由な機動戦士の例の曲(舞い降りるなんちゃら)を口遊みながら校庭に躍り出ると、大きなトラックが2台横並びで校庭に鎮座しているのが見える──────お、あれか。

 

 

「さてさて、ちゃんと検品しないとな〜♪」

 

 

何も警戒することなくトラックに近づき、その背後の荷台へと近づく。背面に付けられている端末を操作して扉を開けようとした──────その時、徐に荷台の重い扉が開かれる。

 

 

──────おいおい、その格好は一体なんの冗談だよ。

 

 

「───────はっ?」

 

 

──────聞き慣れたその声の直後、視界がトラックから一転して満点の星空へと切り替わる。なんだ?何が起きた?というより、さっきの声は……。

 

 

「おい、いつまで惚けてんだクソボケ野郎。さっさと起きろ」

 

 

あまりに一瞬の出来事に思考が空白で埋められる。だが、襟元を掴まれて顔を引き上げられ否が応でも下手人の顔が間近に広がる。

 

橙色の綺麗な髪を三つ編みにまとめ、鋭い眼光の下に泣き黒子が映える美少女。メイド服にスカジャンという全く合わない着こなしでも、それに袖を通すのが彼女であればそれが正装なのだと過去の自分が脳裏に呼びかける。

 

 

「な、なんで……」

 

 

口から困惑の言葉が漏れる。

普段から勝気な笑みを浮かべ、常に強気を隠さない彼女────けど、今の表情は普段浮かべている表情とはにても似つかない。

薄ら赤くなった目元と額に青筋を浮かべ、わなわなと震える手でサブマシンガンを──────黄金の龍が描かれた彼女だけの、美甘ネルだけのそれを握りしめている。今の彼女は正に、怒髪天を衝く表情だった。

 

 

「なんで美甘部長がここに─────ガッ⁉︎」

「んな事はどうだって良い。それより、これは一体どういう了見だ?あぁ?」

 

 

引き起こされていた身体を再び地面に叩きつけられ、眼前に彼女の顔が迫る──────俺にはわかる、今の彼女は過去に類を見ない程に激怒している…‼︎

 

 

「お、落ち着いてくれ美甘部長!事情を話さず事を起こしたのは謝る!けどやむを得ない事情があったんだ‼︎」

「やむを得ない事情ねぇ。それってのはあれか?お前の部活を騙ってアビドスで大暴れしようとしていたクソ企業の事か?」

「っ、知っていたのか…!」

 

 

まるで見てきたような口振りの彼女に歯噛みする────正直、もしかしたら把握されているとは思っていた。ミレニアムにはキヴォトスでも有数のハッカー集団であるヴェリタスやヒマリ達がいる。ネットを使っている以上、情報の導線はどこにでもあると言って良いだろう。

 

 

「当たり前だろ?…って言っても、知ったのはつい3時間前だけどな」

「なら─────グッ‼︎」

「勘違いすんじゃねぇ。よりにもよってテメェの事を騙ってキヴォトスで暴れようとした奴等はタダじゃおかねぇ、誰に止められようが絶対に潰してやる」

 

 

再び地面に近づけられ、くぐもった声が口から漏れる。

俺の言葉に彼女は怒りを収めるどころかボルテージを高登らせている一方だ。けど解せない、そこまで事情を知っていながら、なんで美甘部長はここまで…?

 

 

 

「────けどよ。私はお前から助けてって言葉を聞いてねぇんだよ」

 

 

 

──────滅多に聞くことのない、静かな口調。それを聞いた時、俺は彼女に何をしたのかを漸く理解した。

 

 

「なぁ、教えてくれよ。どうしたらお前は私を、私達を頼ってくれるんだ?いつも一人でキヴォトス全部を背負ってるような顔しやがって。ふざけんのも大概にしろよ」

 

 

再び彼女に襟元を掴まれ、彼女の瞳にひょっとこの、どこまでも不出来なハリボテの顔が情けなく映る。

 

 

「挙げ句の果てにはなんだよその格好?もう私達の事なんてさっぱり忘れて、アビドスに骨を埋めるってか?冗談じゃねぇ、さよならも言わずにウチから消えるなんてこと出来ると思うなよ」

「ね、ネル、俺は─────」

「今はてめぇの弁明なんて聞きたくねぇ。良いからさっさとミレニアムに帰んぞ。話はミレニアムの反省室でゆーっくり聞いてやるからよ」

 

 

無理やり俺を起こし、引き摺るようにトラックへ脚を向ける────刹那、甲高い発砲音と共に彼女の足元の地面に穴が開く。

 

 

「────なんだか勝手に話を進めているけど、簡単にクロキを渡すと思う?」

 

 

遅れて漂う硝煙の匂い────振り向くと、そこには煙を放つ銃口を美甘へ向ける砂狼の姿と、その両脇を固めている対策委員会のメンバーとその背後に先生の姿が見えた。

 

 

「…その格好、アビドスの連中か。悪いな、うちのクソボケ野郎が迷惑を掛けた。今度うちの代表が菓子折りでも持って────」

「お菓子なんていらない。私が望むのは、クロキを置いて貴女がここから立ち去ることだけ」

「…おいおい。話が通じねぇのか?今私に発砲した事は水に流してやるっつってんだ。良いからとっとと失せな」

 

 

二人による売り言葉に買い言葉、まさに一触即発の雰囲気が辺りに充満する─────そんな中、再びトラックの荷台から声が響く。

 

 

「美甘部長、あまり挑発しないでください。話がややこしくなりますから」

 

 

整然とした口調と同時に金属の床を歩く音が響く。ミレニアム校舎で何度も聞いたその歩調に背中に冷や汗が流れる────嘘だろ?実働部隊の美甘部長はともかく、まさかそんな…⁉︎

 

 

「──────アビドスの皆さん、急に押しかけてごめんなさい。私たちのクロキが随分とご迷惑をお掛けしたみたいで」

 

 

努めて明るい声─────俺視点だと激怒している声─────で微笑みながら、我らがセミナーの会計担当が荷台から現れた。

 

 

「は、早瀬会計………‼︎⁉︎」

 

 

ちょ、ちょっと待ってくれ。ここに早瀬会計がいるって事は、今ミレニアムでは誰が行政をやっているんだ⁉︎生塩書記だけか⁉︎流石に彼女だけだと負担が大きすぎる───。

 

 

「私も居ますよ?」

「生塩書記⁉︎⁉︎」

 

 

早瀬会計の背後からひょっこりと現れて微笑む───全く目が笑っていない────生塩書記に愕然とする。そ、そうなると事実上のセミナーがここにいるってことか⁉︎

 

 

「その顔……ミレニアムの生徒会のお二人ですね。こんな夜分に事前の通達もなくいきなり訪問なんて、いささか非常識じゃないですか?」

 

 

そんな二人に臆することなく、奥空さんが毅然とした口調で口を開く─────凄いな、本当に彼女は一年生なのだろうか?

 

 

「非常識?それを言うなら、他校の生徒に自分たちの制服を着せている貴女達の方がよっぽど非常識じゃなくて?」

「あれはクロキさんが自分の意思で着ているものです。断じて強制したわけじゃありません!そうですよねクロキさん‼︎」

「アッ、イヤ、えっとぉ……」

「ほら、言い淀んでるじゃない。嘘は良くないわよ」

「嘘じゃありません!ほらクロキさん、早く反論してください!」

 

 

なんだこの新手の修羅場は?誰が悪いんだよこれ……軽率な俺だよ……。

 

 

「ま、まぁまぁ。ユウカもアヤネちゃんも落ち着いて?ね?」

「先生?なんだか忘れていらっしゃいますけど、クロキと二人きりで校庭から消えたこと、なかった事にはなってませんからね?」

「あっ、いや、それはぁ……」

 

 

早瀬会計にピシャリと言われて萎んでしまった先生────男性でも女性でも早瀬会計の尻に敷かれるのは変わらないんだなぁ……なんて、現実逃避している場合じゃないか。

 

 

「と、とりあえず一度校舎で話そう。事情も説明したいし…ここに来ているのは美甘部長とセミナーの2人だけで良いのか?」

「あ?んな訳ないだろ」

「えっ、んな訳ないって────」

「クロキ〜〜〜‼︎」

 

 

 

瞬間、豊満な肉体が弾丸となって自分を襲う。ロボットスーツを着ていない状態で彼女のそれを受け止められる訳がなく、当然のように弾き出されて一緒に地面に転がる。

 

 

「ゴホッ、ゴホッ。この感じは─────」

「あれ?クロキなんだか顔変わった?変な顔だね!でも私としては普段の顔の方が好きかなぁ?」

 

 

口の中に入ってしまった砂を吐き出して瞑っていた瞼を開くと、間近に大型犬の様に爛々と目を輝かせる彼女───一之瀬さんの顔が視界一面に広がる。

 

 

 

「やっぱり君か…!と、とりあえず離れてくれ一之瀬さん!」

「えぇ〜?どうしようかなぁ?」

「クロキのいう通り、離れた方が良いぞアスナ先輩。セミナーの二人が凄い目で見てる」

「えぇ〜?もぅ、しょうがないなぁ…」

 

 

「よっこいしょ」と身体を起こした一之瀬さんと合わせて俺も身体を起こす────というより、さっきの声は…。

 

 

「角楯さん、君も来てたのか……」

「あぁ────それにしても、ヘンテコな格好だな」

「…まぁ、自覚はあるよ」

 

 

しょうがない奴を見る目で見られているが、今この混沌とした状況は俺が悪いので何も言うことはできない。

 

 

「あら、来ているのは角楯だけじゃありませんよ?」

「───その声は室笠さんか。驚いたな、まさかミレニアムの最高戦力たるC&Cが勢揃いなんて」

「ミレニアムで最も重要な人物の一大事なんですから当然かと────尤も、当人にその自覚がないのが本当に困りものですが」

 

 

皮肉たっぷりな彼女の言葉に肩を竦める────耳が痛いとはこの事か。

 

 

「…まぁ、私からも言いたい事はたくさんありますが、ここは彼女に任せるとしましょう。カイザーコーポレーションの動きと貴方の行動が予測できたのは彼女のお陰ですし」

「彼女?」

 

 

意味深な言葉の後に恭しく頭を下げると身体を横に逸らす室笠──────その向こう側に、彼女はいた。

 

 

 

「────全く、貴方はいつも軽率すぎますよ。だから言っているじゃないですか、何かする時は私に相談しなさい、と」

「………いや、本当に面目ない」

 

 

月下の夜。車椅子に腰を掛け、困ったように儚げに微笑む彼女──────明星ヒマリその人に、俺は頭を下げることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、なんか俺の立ち位置がおかしくないか?」

 

 

 

─────アビドス高等学校、家庭科室横の食堂。

 

 

 

つい先程まで和気藹々とした雰囲気が流れていたその場所で、教壇を境に二つの学校が鋭い眼光をぶつけ合っている。

 

 

「その通り。クロキはこっち側に座るべき」

「そうですそうです!」

「何を言っているんだ。そもそもこのクロキは我々ミレニアムの生徒であるのだから、こちら側にいるのが当然だろう?」

「彼の所属は元々ミレニアムなんだし、何も間違ってないでしょ?」

 

 

私の正面に席を連ねる、白の制服を着こなした生徒達─────『ミレニアムサイエンススクール』の皆に囲まれて、ミレニアムの制服に着替えたクロキ君が居心地が悪そうに肩を竦めている。

 

 

「エンジニア部にヴェリタスまで来ていたのか………なんでこんな事に……」

「それがわからないから貴方はクロキと呼ばれるんですよ?反省してくださいね?」

「…はい」

 

 

車椅子の少女────確かヒマリちゃん───に嗜められて項垂れるクロキ君。…けど、状況は正直芳しくない。こんな時間にミレニアムの主要メンバーが突然アビドスに訪問してきた……となると、要求してくる事なんて一つしかない。

 

 

「……それで、こんな砂漠くんだりまで大所帯でやってきて、一体どう言うつもりなのかな?」

 

 

今口を開いたホシノちゃんも、理由に見当は付いている筈だ。だからこれは確認のための質問だろう。

 

 

「そうね、色々と言いたいことはあるけど……まずはこちらからの要求を伝えるわね」

 

 

にっこりと微笑み、ユウカが口を開く─────戦端を開く言葉を。

 

 

「今後アビドスに関する騒動は全てミレニアムで管轄するから、貴女達は終わるまで部屋で大人しくしてて欲しい……まぁ、詰まるところ今後は何もするなって事ね」

「……だよねぇ」

 

 

誰にも聞かれないような小さな声でため息を吐く─────ほんと、これだけ大きな矢印を向けられてよくもまぁ引退できるなんて考えてましたね先輩…。

 

 

「これは私たちアビドスの問題だよ。他所の学校にとやかく言われる筋合いなんてないんだけど」

「その他所の学校の部活の助けを借りないとなんにもできない学校がよく言えるわね」

「わ、私達だってちゃんとやってるわよ!あんた達こそ、クロキにおんぶにだっこなんじゃないの⁉︎」

「あぁ?こっちはちゃんと護衛の仕事やってんだが?」

「それを言うなら私だって一緒の現場で働いてますよ。私たちは対策委員会ができた時から一緒にいるんです。この校舎だって、クロキさんと一緒に直したんですから」

「だからそれを依存してるって言うんじゃないの?そういう貴女、何かクロキにしてあげたの?」

「何かって……それは、その、膝枕とか…?」

 

 

彼女の言葉に天を仰ぐ……ノノミちゃん、煽るねぇ。

視線をクロキ君に向けると、何かに祈るように俯いている────先輩、これは貴方が招いた事態なんですから神に祈らずなんとかして下さい…。

 

 

「…クロキ〜?」

「いや、あれは調月会長からの鬼のようなスケジュールで死にかけてたから…!」

「成程、クロキさんは膝枕がお好き、と…」

「生塩書記、勘弁してくれ…」

「…あー、ちょっと良いかな?」

 

 

このまま推移しても結論は出ないだろうと口を開く────このままだとお互いが知らないクロキ君に関する爆弾が連鎖爆発して彼が灰になってしまう。

 

 

「ユウカ────というより、ミレニアムのみんなの気持ちはよくわかってるつもりだよ。こうしてクロキ君の事を心配して大勢で駆けつけてきたんだし、その気持ちを無碍にするつもりはこちらにもないよ」

「…………」

「でも、だからっていきなり何もするなって言うのは酷な話じゃないかな?アビドスにはアビドスの考えがある。それを一方的に排斥するのは、先生としては看過できないかな」

「……それは、そうですけど」

 

 

少々強く言いすぎた自覚があるのか、やや俯いて彼女が続ける。

 

 

「だ、だからって!アビドスみたいな殆ど生徒のいない学校が、カイザーコーポレーションと戦争して勝てるとは思えません!だったら最初から私達ミレニアムだけで…!」

「心配しなくても、彼女たちは強いよ。今日だって、カイザー達の兵士と戦って快勝したんだから。ね?クロキ君」

「────そう、でしたね」

 

 

今の言葉に嘘はない。実際今日の戦闘は快勝と言って良い出来栄えだったことは疑いようがない───例え今日がカイザーたちにとっての本気ではなかったとしても、勝ちは勝ちだ。

 

 

「────それでしたらやはり、ここは協力するのが一番ですね」

 

 

先程まで沈黙していた車椅子の少女─────ヒマリちゃんが手を叩いて声を上げる。

 

 

「クロキ、今のアビドスに私たちミレニアムが合流した場合カイザーに勝てる確率はどのくらいありますか?」

「……よっぽどの下手を打たない限り負けはないと思う。というより、そんなことは君の方がよく知っているでしょ?」

「えぇ。アビドス対策委員会の強さ────もとい、そこにいる小鳥遊委員長の強さは本当によく知っていますから」

「………へぇ」

 

 

二人の視線が交錯する─────あの視線は、羨望と嫉妬…?

 

 

「そもそも、ここで私達が争った所で得をするのはカイザー達だけです。早瀬さんや小鳥遊委員長もそこはわかっているでしょう?」

「………」

「……まぁ、ね」

「話は決まりですね。クロキ、ここに私達が滞在できる施設はありますか?」

「すぐに作ることは出来るけど……」

「それではお願いします。徹夜は乙女の肌の天敵ですので。それと小鳥遊委員長、少しよろしいでしょうか?」

「─────うん、良いよ」

 

 

ヒマリちゃんとホシノちゃんが席を離れて教室から出ていくのと同時に、教室に張り詰めていた空気が弛緩する──────彼女がいて助かった。もしここに彼女が居なかったら、もっと話が拗れていたかもしれない。

 

 

「────なぁ、クロキ。ずっと気になっていたんだけどよ、良いか?」

「ん?なんだ美甘部長?」

「お前の右後ろでずっと侍ってるこのメイド、誰だ?」

 

 

クロキ君の背後に侍っている彼女─────トキちゃんを指差す。というかそっち側にいたんだね、あまりに自然すぎて気づかなかったよ。

 

 

「はじめまして、美甘部長。私は飛鳥馬トキ、C&C所属の一年生で、クロキさんに仕えることを許された唯一のメイドです。と言うわけなので、皆さんはあまりクロキさんに近づかないようお願いします」

「─────あ?」

「─────へ?」

「─────うん?」

「─────はい?」

 

 

刹那、氷柱が落ちたような空気が教室に充満する。あーあ、私はもう助けられませんからね先輩。

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────────

 

 

 

 

 

「─────それで、話って何かな?」

 

 

先程の家庭科室から遠く離れた教室─────クロキが普段寝泊まりしている旧図工室に連れられる。

 

 

「…こうして直にお話しするのは初めてですね、小鳥遊ホシノさん」

「そう言う君は、確か明星ヒマリさんだよね。こんなおじさんになんの用かな?」

「ふふっ、おじさんなんて呼称はやめた方が良いですよ────おじさんが、あんな媚びた目線をするわけがないのですから」

「─────見ていたんだ、悪趣味だね」

 

 

目線を細める─────あの場面を見られていたんだ。そうなると、スーツをハッキングしていたと考えることが自然だね。

 

 

「ごめんなさい、私も悪趣味だとは思ったのですが、ここ数日のクロキは様子がおかしかったので」

「………」

「あぁ、どうか勘違いしないでください。こうしてここにお呼びたてしたのは、感謝を口にする為なんですから」

「感謝?」

「えぇ───────クロキの事を引き止めてくれて、本当にありがとうございます」

 

 

そう言ってから深々と頭を下げる彼女に一人納得する。そっか、彼女はクロキの夢を知っていたんだ。

 

 

 

「…けど、感謝の割には随分と冷たい口調なんじゃない?さっきの言葉も、なんだか別の意味が含まれているように感じだけど」

「流石、お見通しですね──────えぇ、そうです。端的に言えば私、貴女に物凄く嫉妬しているんです」

「嫉妬?」

「そうです。だって、貴女はクロキにとって特別なんですから」

 

 

静かな口調のまま、明星は続ける。

 

 

「クロキの夢はこのキヴォトスを、みんなが安心して暮らせる楽園へと作り変える事です。でも、彼自身気づいていませんが、その熱量は平等ではありません。とりわけこの砂の大地──────アビドスのことは特に気を使っている様です。態々楽園造園室なんて会社を作ったのも、ミレニアムからの干渉を防ぐためなのですから」

「……それが?」

「それで私、色々と調べてみたんです。このアビドスについて────そうしたら、とある一人の生徒の情報が出てきました。彼女は……」

「────軽々しく彼女の名前を口にするな」

 

 

意図せず、声帯から冷たい声が吐き出される。

 

 

「…ごめんなさい、私としたことが無遠慮でしたね。ですが、彼女の死が今のクロキを構成している重要な要素と言うことはすぐにわかりました。───きっと、彼は彼女の願いを聞いていたのでしょう。アビドスの復興を、アビドス砂祭りの再興を」

 

 

────心底、驚いた。彼女を前にすると、天才というのは本当にいるんだと実感する。

 

 

「えぇ、わかっていますとも。今私が抱いているこの感情は醜い嫉妬です。彼にとっての最初の特別になった、貴女と彼女の事が妬ましくてしょうがないのですから」

「…いや、それは違うよ。多分、クロキにとっての最初の特別は────」

 

 

【ねぇねぇホシノちゃん!これ見て!人型ドローンを見つけてきちゃった!売ったらちょっとは纏まったお金になるかな?】

【へぇ、先輩にしては良い拾い物────ちょっと待ってください、これ中に人が入ってますよ⁉︎】

【えっ⁉︎うそ⁉︎】

【み、水を…】

 

 

2人きりだったアビドスに突然現れた、ハリボテのロボットスーツを着た不審者。私と先輩の絡みを見てはにっこりと微笑む、ちょっと怖い奴だった。

 

 

【クロキくーん!君も一緒に遊ぼうよ〜!】

【いえ、自分は後方で腕を組んでいるだけなので。どうぞ小鳥遊と二人で遊んでいて下さい】

【ユメ先輩が言っているんだから、キモいこと言ってないでさっさと来い!】

【嫌だ!俺は百合の間に挟まる醜男にはなりたくない!】

 

 

────でも、ユメ先輩が死んでから何もかも変わってしまった。

 

 

【───俺が、このキヴォトスを楽園にしてみせるよ。もう、誰も死ななくて済む楽園を】

 

 

彼女の亡き骸の前で、彼の言い放った覚悟の言葉。

今思うと、あの時──────ユメ先輩が死んだ時、一緒にクロキも死んだのだろう。今こうしてここにいる彼は、前にアビドスで笑い合ったハリボテとは別の【クロキ】なんだ。

 

 

 

「────彼にとっての初めての特別は、きっとユメ先輩だけなんだから」

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────星明かりに照らされたアビドス砂漠、そこに建設されたカイザーPMCの基地…もとい、【ウトナピシュティムの本船】採掘現場に美しい咆哮が轟く。

 

 

歯車を模した天使の輪っかを戴いた美しき白龍─────【Melchior】の襲撃を受けたPMCは戦闘開始後10分程度でゴリアテ12機を含む機甲師団の9割と歩兵7割を消失。事実上の壊滅状態となり、アビドス自治区から撤退を余儀なくされる。

 

 

障害を排除した後、白龍は同本船を採掘の後これを掌握し演算能力を獲得。クラフトチェンバー0号機─────マエストロ曰く【扉】の権能を用いて莫大な量の砂を材料に一夜にして要塞都市を完成させる。

 

凡そ半日で作られた砂の要塞を、黒服は感銘に打たれながらこう呼称した─────【審判の都市】と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






鏑木クロキ

しっかりお仕置きされたハリボテロボットであり、試作機と言う言葉に弱い男の子。思い出したように先生に好感度調整のために生徒の脚を舐めるのはどうだろうと聞いたらしっかり説教された。次回からアビドスオメンカブリからミレニアムラクエンヅクリへ戻る。


美甘ネル

実はクロキが都市整備部を作った時からの付き合いで、ミレニアムの中ではヒマリに次いで付き合いが長い。常に誰かを想い、身を粉にして働く姿に一種の憧憬と多少の重たい感情を持っているだけのスカジャンメイド少女。激おこむかちゃっかファイヤー状態でクロキをボコボコにした。


白石ウタハ

今作二人目の騙して悪いが枠。クロキの作成した『領域支配機』の外殻構築を手伝っている。クロキと協力して作り上げたそれを捨てるような発言に実は結構怒っている。楽園防衛機構の全容を知っている数少ない生徒の一人であり、彼の持つセンスに強い憧れを持っている。


明星ヒマリ

クロキがスーツを脱ぐまで彼のことを監視していた少女。彼の独白も、願いも、苦悩も全て知ってしまったある種可哀想な理解者。クロキの願いの原点である小鳥遊ホシノの事を嫉妬していると自覚している天才少女。


黒服&マエストロ

洗礼を終えた【Melchior】の性能と生み出した【審判の都市】の清廉さに感涙している。今週の動画のサムネ用に月下の夜、砂で作られた要塞都市とそこで佇む領域支配機の写真を撮影した。


カイザーPMC理事

アビドスを過小評価していたことを改め、今一度戦力を本拠地で再編成した矢先に洗礼を終えた【Melchior】の襲撃を受けて機甲師団のほとんどを失ってしまった。既に白龍がクロキの手を離れたことなどは当然認知していないので、勝手に鏑木の事を恐れ慄いている。


領域支配機【Melchior】(洗礼済み)

ゲマトリアによって補修、再起動された領域支配機。聖人の因子を色濃く残すそれは十字架によって洗礼を終え、歯車の天使の輪っかを戴いた美しい白龍。失敗者の抱いた願いの通り、キヴォトスを襲う脅威に対する備えを開始した。


審判の都市

テンションが最高潮になった黒服によって命名されたものだが、実際は鏑木クロキが梔子ユメの死後最初に考案した『楽園防衛機構』の完成版。際限なくある砂を用いて無限の兵隊を生み出す要塞であり、失敗者の求めた暴力装置の極地。準備が整い次第、楽園の設立を阻む障害の排除を始める。


洗礼

クラフトチェンバー0号機を用いて空想上の救世主をキヴォトスに顕現させた後、それを十字架に磔にすることで万物に神秘を与える儀式。ゲマトリアの考える【色彩】への対抗手段の一つ。救世主不在の現在は【Melchior】に搭載されていたAIに強く記憶された生徒の肉体を擬似的に顕現させ磔にすることで、当該領域支配機のみ洗礼を可能にしている。



アロナ

大規模な錬成なんてしませんから!ぜっーたいに断って下さいね先生‼︎



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