――楽しんで。
四人の視線が再び合う。
(((楽しんで!))))
カンカンカン、とドラムスティック同士がぶつかり音を出し、喜多は口を開く。
「わたし――プラス――期待――マイナス――不安×ギター――=ロックだ――」
先程までと違う。
真剣にちゃんと歌うのではなく、楽しく笑顔に歌う。
一生懸命に演奏するのではなく、楽しく演奏する。
「変わったね」
廣井は目を開き、にやりと笑う。
「ああ、さっきまでガチガチもいいとこだったのに」
「さすがだネ」
三人は舞台上でのびのびと演奏する結束バンドから先程遅ればせながら到着した今日のゲストメンバー五人に目を移す。
「唯! お前はー! ライブ中のグループに声を掛けるなんて!」
黒髪ロングの彼女は先程声を掛けた彼女に対して叱責を向けていた。
「だってー、なんか全然楽しそうじゃなかったんだもん! 澪ちゃんだってそう思ったでしょ?」
「いや、それはそうだが……」
「まあまあいいじゃないの。結果的になんかよくなってるっぽいし」
カチューシャをしているせいでおでこが広いように見える女性がその場に入り仲裁する。
「ほんと、唯ちゃんの声かけのおかげであの子たちなんだかすごくよくなってる気がするわ」
「もう、ムギ先輩は甘いですよ。確かに演奏はよくなってると思いますけど、それよりも唯先輩のせいで遅刻したんですよ?」
「もーあずにゃーん、許してよー」
「許しませんよ! あっちこっちの店に誘惑されて!」
「あずにゃんだって美味しそうに食べてたじゃーん」
「そ、それはそうですけど……」
「というかそれよりも――」
黒髪ロングの彼女が廣井たちの方に目を向ける。
「す、すみません、遅刻してしまって」
「ああいえ、気になさらずに。むしろあなた方と一緒にライブをさせていただけるのにわざわざ起こし頂くのがすごく申し訳ないくらいで」
志麻が丁寧に応対をする横で、廣井は追加の鬼コロを入れる。
(放課後ティータイムがこんな狭いキャパでライブをしてくれるなんて普通はない。今日はガチでいかせてもらう)
廣井が唯に目を向け一瞥した時に、舞台の方から拍手と歓声。
三百人以上の観客からすると些か小さ目ではあるが、確かに結束バンドはそこに認められた音だった。
「まあ、出番までまだありますしー、ゆっくりしててくださいよー」
と、廣井はそう言って楽屋に戻り、志麻とイライザも会釈してその後に続く。
そして、三人と入れ替わるように舞台から降りてきた結束バンドの四人がやってきた。