ぼざろ×けいおん!   作:遥崎 歩

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最終話

 だが、唯はステージに上がる一歩手前で半身を後方に向け、ひとりに目を向けた。

「――、」

 だが、何も言わず唯は再び身体をステージに向けると足早に駆けて行った。

「どうしたんだろ?」

 虹夏が首を傾げる横で喜多も同じく首を斜めに向ける。

 だが、ひとりには聞こえた気がした。

 彼女とギターの声が――。

 そして舞台の幕が上がり、今日一番の音が観客から響く。

『やばい、止まれない、止まらない、昼に夜に朝にsinging so loud――』

 誰もかれもが発狂し熱狂し声を上げる。

「すごい――」

 ひとりは思わず声を失う。

 ひとりは結束バンドに入るまでライブに行ったことはなかった。その陰キャ特性故、人の多いところには行けない。だから、結束バンドに入ってから見たライブがひとりにとってすべてであった。

 その中で一番すごいと思ったのはSICKHACKだ。

 SIDEROSもすごいが廣井、志麻、イライザの三人のライブ以上にひとりの記憶に鮮明に残る物は無かった。 

 今、この時までは――。

「いやー、やっぱ生で見るのはすごいねー」

「ああ、悔しいが流石だ」

 ライブを終えたSICKHACKの三人は結束バンドの横に立ち、声を漏らす。

 そして、虹夏は律に対して、リョウは澪に、喜多は唯に対して、目を逸らすことができない。

(すごい……すごい……これが……これが放課後ティータイム!)

 

 ライブが終わり、観客がいなくなった会場でひとりは廣井と志麻、イライザにお礼を伝えた。

「あ、あの、今日は本当にありがとうございました」

「ん? いやむしろ助かったくらいというか……すまなかった。こちらの都合で順番を変えてしまって結果として結束バンドの皆さんには満足な演奏をしてもらうことができなかった」

「い、いや、そんなことは……」

「それよりさーぼっちちゃんたちも打ち上げくるでしょー?」

「え、は、はい、えっと、その放課後ティータイムの人達も来るんですか?」

「いや、来てほしかったんだがこれから帰るらしくてな」

「こ、これからですか?」

「夜行バスで帰るんだってー。なんか明日の朝一で地元の商店街のイベントに出るんだってさー」

「そ、そうなんですか……」

「もっと話したかったネ!」

「あ、あれ、じゃあもう帰っちゃったんですか?」

「ああ、さっき出て行ったよ」

 志麻は入り口を指差す。

「そ、そうなんですか……」

「え! 放課後ティータイムの人達帰っちゃったんですか!」

 と、話を聞いていた喜多が声を上げる。

「ドラムの人に話聞きたかったなー」

「サイン貰えれば高値で売れた」

「おい」

 各々色々な意味で残念がりながらも肩を落として撤収の準備をするために楽屋に戻る。

「あ、ぼっちちゃん」

「はい?」

 だが、そんなひとりに廣井は背後から声を掛ける。

「いつかまた一緒にライブしようねー。その時は放課後ティータイムがメインじゃなくて――わたしたちかぼっちちゃんたちどっちかが主役でさ」

「は……はい!」

 

「むー、もっと色々な人と話したかったよー」

「仕方ないじゃないですか。というか……」

「商店街のイベントに出るって決めたのは唯だしな」

「今日遅刻しなければ少しは話せただろうに」

「私はこういうドタバタも好きよ」

 夜行バスの待ち時間。

 五人は駅弁を食べながら談笑していた。

 ちなみに紬はこれが駅弁……と感動していた。

「いやーでも東京に来るのもいいな」

「まあたまにはな」

「たまにと言わず沢山来ようよー」

「イヤですよ。唯先輩どうせまた迷子になりますから」

「そう言えば唯ちゃん、ライブの直前に高校生のギターの子を見てなかった?」

「あーうん。なんか思い出しちゃってさー! 私達があの音楽室で練習してたこと」

 放課後ティータイム。さわちゃんが付けてくれたこの名前。

 あの放課後、あの場所での思い出。

「あの子達も卒業しても一緒にバンド続けるのかね?」

「どうなんだろうな」 

 律の問いに澪は曖昧に返す。卒業と同時に解散。というバンドグループは珍しくない。高校生がやってるバンドなんてほとんどがそんなものだ。

「大丈夫だよ! きっとやってるよ!」

 だが、唯は明るく笑う。

「だってあの子高校生の頃の私より上手だもん」

「なんですかそれ、根拠になってませんよ」

「えーそうかなー。でもそれにさ――私達と同じくらい仲良しに見えたし、最後の一曲すごく楽しそうだったもん」

 唯のその言葉に四人は思わず綻ぶ。

「まあ、そうだな」

「ああ」

「そうね」

「ですね」

「また会えるといいな」

 

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