サブタイトル:ENJOY IT!
開口一番、生徒会長は「水くさいじゃないですか!」と大声で言った。
昼休みの生徒会室。校内放送で呼び出された深夜を待っていたのは目を輝かせた生徒会長だった。生徒会長の真面目そうな見た目と勢いの良さのギャップに、深夜は面食らう。
生徒会室には生徒会のメンバーだろうか、他にも数人生徒たちがいたのだが、こちらには興味がないようで弁当をつまみながら談笑している。生徒会長のこういったアクションは彼女たちにとっては日常茶飯事なのかもしれない。
「水くさいって、何が?」
「聞きましたよ! スク部のみなさんが、パフォーマンスを披露してる機会を探しているって」
「よー知っちゅうね」
「生徒会長ですからね! それでパフォーマンスの場所はみつかりましたか?」
「それが中々見つからんがよね」
水曜日の作戦会議から二日。深夜も乃々羽もそれぞれがそれぞれの友人関係などをあたって、全ス選前の予備パフォーマンスの場を探してはいたのだが、進捗は芳しくなかった。講堂や体育館はすでに全ス選まで土日も含めて予定が抑えられており、その他のパフォーマンスを披露するのに適した場所は見つからないでいる
生徒会長はどこからかその情報を聞きつけたらしい。
「今日、東雲先輩をお呼びしたのは、その件についてなんですが」
そこで生徒会長はいったん言葉を句切る。
「昼休みミニライブをしてみてはどうでしょうか?」
「昼休みミニライブ?」
「あれ、先輩ご存知ないですか? たまに吹奏楽部とか軽音楽部とかが昼休みに屋上庭園で10分くらいのちょっとした演奏会をやってるじゃないですが」
「あーたしかに。たまーにやっちゅうね」
「あれ、生徒会管轄の企画なんですよね」
深夜たちが普段活動場所として使用している屋上庭園は、旧校舎と新校舎の間にある図書室棟の屋上になっている。屋上といっても5階建ての高い旧校舎や新校舎とは異なり、1階建ての図書室の屋上なので実質的には少し高いところにある中庭という扱いだ。新校舎・旧校舎・渡り廊下に三辺を囲まれており、どこからでも見下ろせる配置になっているので、ちょっとしたコンサートやパフォーマンスを行うのには適したつくりになっている。その構造をいかして行われているのが、昼休みミニライブだった。
あー、その手があったねぇ……
深夜も吹奏楽部や軽音楽部の友人たちのミニライブを何度も見たことはあったのだが、あくまでもお客さんとしての立場での参加だったので、自分たちが演者としてそこでパフォーマンスをするという考えが完全に抜け落ちていたのだ。
「6月のどこかで是非スクールアイドル部に昼休みミニライブをやっていただきたいんです。お探しになっていたパフォーマンスの場所としては最高の条件だと思うんですけど、いかかでしょうか?」
「うちらでホントにええが? あれって、それこそ吹奏楽部とか軽音楽部みたいに活動実績も実力もある部活だから許されちゅう活動な気がするがやけど」
深夜は少しだけ尻込みをする。あそこでパフォーマンスをしている吹奏楽部や軽音楽部は、いずれも県大会などで優秀な成績をおさめている強豪部活だ。できたてほやほやのスクールアイドル部がそこに肩をならべていいものなのだろうか。
「特に参加条件とかはないので、生徒会の一存で出演者は決められるんですよ。なので、生徒会長である私が許可する以上、スクールアイドル部が昼休みミニライブとしてパフォーマンスすることはなんら問題無いです」
深夜は考える。
全ス選前に舞台を経験するって目標は達成できるし、断る理由がないくらい最高の舞台よね
「うちらとしてはこれ以上ないくらいありがたい提案ながやけど、なんでうちらなが? 他にもパフォーマンス系の部活って沢山ある気がするがやけど」
「生徒会としても、生徒会長としてもスクールアイドル部には期待してるんですよ。私、かが女をもっと楽しくして、もっと生徒たちにかが女のことを好きになってもらいたいんですよね。人気のあるスクールアイドル部って、単なる部活じゃなくてその学校のアイドルというかアイコンみたいになってるじゃないですか。だからうちのスクールアイドル部も、そういう感じで生徒たちに愛されるスクールアイドル部になれたら、もっとかが女が魅力的になると思うんです! だからそのために生徒会長としてできる協力はなんでもしたいと思っています」
生徒会長のスクールアイドルへの予想以上に大きい期待に深夜は少し驚いた。でも、よくよく考えてみると深夜が青春としてスクールアイドル部でやりたかったのはこういうことなのかもしれない。
学校をもっと楽しくするために、スクールアイドル部がお手伝いをする。
それは深夜たちが目指すかがみ川女子高校スクールアイドル部の目指す形とズレていない気がするのだ。
「会長さんの期待にどれくらいこたえられるかは分からんけど、昼休みミニライブ、やらせてもらえる? 任せられただけのパフォーマンスをしっかり見せられるよう頑張って練習するき」
「では、交渉成立ということで」
差し出された会長の手を深夜は握り返す。
「あ、一応最終的な回答はノノちゃんと顧問の須藤先生にも確認してからでもいい?」
「もちろんです。日程など詳細の調整もしたいので、連絡先を送らせていただきますね」
会長がスマホを取り出すのを深夜は待ちながら、深夜は少しずつ胸の奥に初舞台に向けたワクワクがわいてくるのを感じていた。