かがみ川女子高校スクールアイドル部   作:記録部

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もう一人の主人公、東雲深夜(しののめみや)の前日譚です。


2024/04/09:Day 0(Side:深夜)

明日からいよいよ高3かぁ……

かが女におれるがも、あと1年。

この2年は楽しかったし、恵まれてたがやけど……

……なんかが足りない気がするがよね。

なんやろう……

 

家族は優しいし、友達はみんなええ子やし。

部活はやっちゃーせんけど、放課後も色々遊んだり手伝ったりで、けっこー楽しいし。

フツーに最高の高校生活やと思うがやけど。

 

やっぱ、なんかが足りんがよね……

……なんやろう。

 

ハマれることがないんがいかんがやろうか。

なんでも80点ぐらいで楽しんだり、頑張ったりするんはそこそこ得意ながやけど、それ以上になれんのがウチのいかんとこながは、なんとなく分かっちゅうがやけど。

でも、大大大好きなことなんてそんな簡単にみつからんくない?

 

◯◯が大好き!

△△が好かん!

 

そんな強い感情、フツーに生きよるだけやとなかなかわかんと思うがやけどなぁ……高校生で何かに熱中しちゅう人ら、ホントにすごいと思う。

 

でもウチの高校生活ラスト1年。このまま特に何もハマることなく終わってええがやろうか。

このままフツーに卒業して、フツーに進学か就職して、フツーに高知で暮らしていく。そんな人生でええがやろうか。

10年、20年経って振り返ったとき「あのときああやったねぇ」ってしみじみ思い出せるような出来事ひとつない高校生活でええやろうか。

 

「何かないかねぇ」

 

ポッキーをかじりながら、おすすめ動画をスクロールしてみる。

スマホの画面いっぱいに映し出されるいろんな青春。

流行りの曲にあわせて踊ってみたり、くだらないことして笑ってみたり。

こういうのは、ウチもまあひととおり経験済みながやけど。とはいえ、流行りにのりよっただけで、のめり込んだりはなかったけどね。

 

「こうやってみたら、ウチの青春もまあそこまで悪いものじゃないがかもしれんねぇ」

 

無理矢理肯定的につぶやいてみても、足らんという気持ちはやっぱり消えんがよね。

 

スクロール、

 

スクロール、

 

スクロール、

 

スクロ……

 

ふと親指がとまる。

親指をゆっくり下に動かして、一つ前の動画をもう一回再生する。

 

それは、ふたりの女の子が学校の体育館みたいな舞台の上でかわいい衣装をきて歌って踊る、よくあるといえばよくある動画やった。

やのに、そのよくある動画から目を離せん。

カメラが切り替わって、舞台下につめかけたうちわとか光る棒みたいなんをもった沢山の高校生たちが映し出される。

みんな笑顔で、一緒になって歌って、踊って。

カメラが一気に引きになって体育館全体をうつしだすと、舞台上と舞台下は完全にシンクロしちょった。

 

舞台上のふたりがマイクをオーディエンスに向けて差し出して、

 

「「「アゲイン!!!!」」」

 

スピーカーから飛び出す声の重なりが、ウチを震わす。

 

「これだ……!」

 

「ついに見つけた! ウチがやりたいこと!!」

 

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