副題:Chance Day, Chance Way!
北海道のよさこいの方が全国的には有名になっているとはいえ、地元高知に生まれ育った深夜にとっては「本物のよさこいは高知だけだ」と言わんばかりのプライドがある。だから、隣で目を輝かせる乃々羽の姿を見るのは、何とも誇らしくもあり、少し照れくさい。
「すっごい賑やかですね!!」
「そうやろ」
「阿波踊りみたいなやつを想像してたんですけど、全然違うんですね!!」
「よさこいはほっとんどルールがないがよ。やき、自由でおもしろいがよね」
深夜は、乃々羽に対してよさこいのルールを説明し始める。とはいえ、よさこいには意外にもルールが少なく、覚えるべきはたったの四つだけだ。地方車に関する規定を除けば、実質的に守らなければならないのは次の三つだけだった。
・鳴子を手に持ち、前進しながら踊ること
・アレンジは自由だが、「よさこい鳴子踊り」の曲を必ず入れること
・1チームあたりの踊子数は150人まで
このシンプルさが、よさこいの懐の深さを物語っている。原曲を忠実に守りながら踊るチームもあれば、ロックやジャズ、ボサノバなどのジャンルに大胆にアレンジし、一見してよさこいとは思えないほど個性的な演出をするチームもある。音楽もスピーカーから流す場合もあれば、地方車の上で生演奏を披露するチームもあり、そのバリエーションの豊富さはよさこいの大きな魅力だ。
また、服装に関する規定がないことも、各チームの個性を際立たせている。多くのチームは統一された衣装を着用しているが、深夜たちの目の前を通り過ぎていくチームの中には、なぜかアラブ風の衣装を着ている者や、私服で参加している者も混じっていて、その混沌とした光景が一層のカオスを生み出していた。
「よさこいってなんだかスクールアイドルみたいですね」
「あー、言われてみるとそうやねぇ」
プロダンサー顔負けの、一糸乱れぬパフォーマンスを披露するチームが通り過ぎた後、次にやってきたのは小さな子どもたちも混じった、誰でも真似できそうなポップな振り付けのチームだった。絶対的な技術や完成度で見れば、二つのチームの間には明らかな差がある。それでも、どちらのチームも等しく「よさこい」として成り立っている。その事実に、深夜はどこか心が温かくなるのを感じていた。
自由で、多様で、それぞれのチームが自分たちの「好きなよさこい」を体現している姿。そこには、深夜がスクールアイドルに感じる魅力と同じものがあった。誰かと競い合うためではなく、自分たちの好きなことを、好きなように表現する。そんな姿勢が、深夜にとっては何よりも尊く思えたのだった。
「みゃー先輩はよさこい出たことあるんですか?」
「うちは覚えちゃーせんがやけど、幼稚園の時に出たことあるらしいがよね」
家族がことあるごとに写真や動画を見せてくるので、深夜がよさこいに参加したこと自体は紛れもない事実だ。しかし、実際のところ、その記憶はほとんど深夜の中には残っていなかった。それでも、このメロディや空気感は深夜の心の奥底にしっかりと根付いているようで、いつの間にか自然と体が反応していた。
もしかしたら、うちがスクールアイドルに惹かれたのは、うちの中に眠っちょったよさこいのDNAが反応したからかもしれんね。
「見てるとなんだか一緒に踊りたくなっちゃいますね」
「せっかくやしうちらも踊る?」
「踊れるんですか?」
「うちも全然知らんかったがやけど、昨日よさこい調べちょったら、なんか県外の人とかでも飛び入りで楽しめるように当日参加できるチームがあるがやって」
そう言いながら、深夜はスマホを操作し、市のホームページを乃々羽に見せた。「市民憲章よさこい踊り子隊」と書かれたページには、当日1時間ほどの練習を経た後に、実際の演舞場で踊ることができると記載されている。集合場所は、ここからそれほど遠くない追手前高校の前で、時間は午後2時。今から向かえば、十分参加できる。
「やります! やりましょう!!」
乃々羽は目をキラキラと輝かせて即答すると、「早く行きましょう!」と深夜の手を引っ張った。その勢いに、深夜は乃々羽に引きずられるように歩き出した。
「ノノちゃん、そんなに急がんでも間に合うき! とりあえずどっかでご飯買って、食べながら行こ!」
と言いながらも、乃々羽の楽しそうな様子につられて、深夜の顔にも自然と笑みが広がる。
深夜は乃々羽と一緒に、色とりどりの衣装と音楽があふれる街へと駆け出した。
今日は地元局の高知さんさんテレビがよさこいの生配信をYouTubeで行っていますので、深夜や乃々羽が満喫しているよさこいの空気をよければ動画でも味わってみてください!
https://www.youtube.com/live/17jxsbkpxbA?si=vR-q7SOEtASUam_G