かがみ川女子高校スクールアイドル部   作:記録部

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Side:深夜


2024/09/13:生徒会長の呼び出し

「ラブライブ!前のお忙しい中、呼び出してしまってすみません」

 

 生徒会長の呼び出しを受け、深夜は昼休みに生徒会室を訪れた。今日は他の生徒会メンバーの姿は見当たらないようだ。静かな空間に、会長の存在が一際際立つ。ピシッとした制服の着こなしに、細く鋭い銀縁眼鏡が加わり、会長は一見してとても真面目そうな印象を与える。ぱっと見は隙のない、堅物という感じだ。

 

 しかし、昼休みミニライブ以降、様々な場面で会長と関わる機会があった深夜は知っている。彼女がかがみ川女子高校を心から愛している、優しい子であることを。いろいろな生徒や部活のサポートに奔走し、陰ながらかがみ川女子高校を支えているのがこの生徒会長なのだ。

 

 そして熱狂的なスクールアイドル部のファンでもある。

 

「全然大丈夫。こっちこそ無理言ってゴメンね」

 

 先日の羽南のアドバイスを受けて、深夜たちスクールアイドル部は文化祭でのパフォーマンスに向けて動き始めていた。とはいえ、屋上庭園でのイベント開催にはそれなりの準備と協力が必要だった。

 その一環として、生徒会に協力をお願いすることになった。生徒会は普段から昼休みのミニライブなどを通じて、屋上庭園でのイベント運営に慣れているため、彼女たちの知識とサポートが屋上庭園イベントには必要不可欠なのだ。

 

「お願いされていた文化祭の屋上庭園イベントの件ですが、お手伝いできそうです」

「ホンマに!?」

「はい。昨日、生徒会の月例会議があったんですけど、そこで顧問の宮崎先生も含めて正式に許諾がおりました。といっても、あくまでも主催はスクールアイドル部さんで、生徒会は設営や運営の協力として関わるという形ですが」

「全然問題ないよ! 助かるわー」

「あとはもちろん、文化祭実行委員会側の許諾も必要になります。そっちの方はどうなんですか?」

「まだ完全に許可をもらえた訳じゃないがやけど、羽南、あ、副委員長、が言うには大丈夫そうみたい」

 

 屋上庭園でのイベント開催について、深夜は事前に羽南を通して文化祭実行委員会に探りを入れていた。副委員長である羽南が後ろ盾になってくれれば、ある程度はすんなりと受け入れてもらえるのではないかと深夜は思っていたのだが、現実は少し違っていたらしい。羽南からの話によると、実際には多少もめたというのだ。

 

「文化祭のイベント管理は文化祭実行委員会の管轄なんだから、そこに突然スクールアイドル部が割り込んでくるのはちょっと……」という反対の声が一部から上がったらしい。実行委員会のメンバーたちは、ずっと文化祭に向けて一生懸命準備してきたのだ。そこに突然スクールアイドル部が入り込んでくることに対して、彼女たちが複雑な感情を抱くのも無理はない。深夜も、もし自分が彼女たちの立場だったら、きっと同じように思っていただろう。

 

 最終的には羽南がうまく説得してくれて、なんとか文化祭実行委員会全員が屋上庭園でのイベント開催に納得してくれたとのことだった。深夜は羽南に感謝すると同時に、彼女や認めてくれた実行委員会のメンバーたちの期待に応えなければならないと強く思ったのだった。少なくとも彼女たちの顔に泥を塗るような結果だけは絶対に避けなければならない。

 

「しっかり準備して成功させんとね」と深夜は心の中で気を引き締めた。

 

「なら、やる方向でこちらとしても準備を進めていきますね。念のため、私からも文化祭実行委員長の方には一応話は通しておきますので」

「うん、よろしくお願いします。色々忙しいのにゴメンね」

「いえいえ。生徒会はこれまで文化祭にはあまり関わってこれていなかったので、こうやって関わるきっかけができて助かってます」

 

 それが生徒会長の本心なのか、ただの気遣いなのかは深夜には分からなかった。それでも、彼女の言葉に少し肩の力が抜けたのは確かだった。

 

「それで、他に誰がパフォーマンスされる予定なんですが?」

「今確定しちゅうのは、スク部(うちら)と服飾部、それと2年生バンドのRe-Ariseやね」

「服飾部とRe-Arise……Re-Ariseって西さんのバンドですよね?」

「知っちゅうが?」

「はい。在校生のそういう活動はだいたい把握してます」

「さすが生徒会長」

 

「まあ西さんは一年生の時同じクラスでしたしね」と言いながら、生徒会長は少し照れくさそうに頭をかいた。

 

「それに私、彼女たちのライブ見に行ったこともあるんですよ」

「会長さんが?」

「はい! なるべくうちの学校の子たちがやっている活動は自分の目で見たいたちなんです。Re-Arise、かなりロックでかっこよかったですよ!」

「へぇ。まだうち、西ちゃんたちの演奏ちゃんと聞いたことがないがよね」

「そうなんですね。じゃあ、文化祭で彼女たちの演奏聞いたらびっくりすると思いますよ!」

「そうできるように、ちゃんと屋上庭園イベントの準備をしていかんとね」

「そうですね。イベントは今確定してる3つだけで終わりになりそうですか?」

「あと、もともとイベントに申し込んじょった他の子たちにも声かけちゅうけど、まだ参加するって言ってくれちゅう子たちはおらんがよね。イベントできるのが確定しちょらんかったのも関係しちゅうと思うがやけど」

「せっかくの機会ですし、なるべく多くの人に舞台にたってもらえるといいですね」

 

 生徒会長の言葉に深夜は力強くうなずいた。

 

「じゃあ、文化祭のことは私たちの方でも少しずつ進めていくようにします。タイムスケジュールとか設営とか撤収とか、雨のときの対処とか色々考えないといけないことがあるので、とりあえず検討事項をリスト化してみます」

「了解。申請書が通って正式に文化祭実行委員会から許可が出たら、一回参加予定の子たちも含めて話し合いする感じでもいい?」

「はい、是非」

「じゃあ、また日程とか連絡するね」

 

 そう言いながら生徒会室を出て行こうとする深夜の背中に、「あ、東雲先輩」と生徒会長の声が届く。

 

「お手伝いさせていただくかわりという訳ではないんですけど、お願いをひとつ聞いていただけませんか?」

「もちろん! うちらでできることやったら何でも」

「実はまた昼休みミニライブをスクールアイドル部さんにやっていただきたいんですよね」

「そんなことでええが?」

「はい。もともと他の部活にお願いしていたんですけど、ちょっとその部の状況的にやるのが難しくなったみたいで、代理でやっていただけるとすっごくありがたいです」

「むしろうちら的にはまたパフォーマンス出来る機会もらえるんはご褒美やき」

「ありがとうございます! 9/26の木曜日でお願いできればと思っていますけど、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫やと思う」

「ありがとうございます! では、そのあたりも含めてまた改めて連絡させていただきますね!」

「了解! じゃあ、連絡待っちゅうね」

 

 深夜は軽く手を振りながら、生徒会室を後にした。

 生徒会長のお願いを受けたことで、ラブライブ!前にやることがひとつ増えたのだが、むしろそれはスクールアイドル部にとって良い機会だと深夜は感じていた。かがみ川女子高校スクールアイドル部の初のオリジナル楽曲のはじめてのパフォーマンスは、ラブライブ!県大会ではなくかがみ川女子高校の生徒たちの前で行いたいという気持ちがあったからだった。

 

「昼休みミニライブかぁ……みやびーがもうすぐ衣装完成するって言いよったし、できたら衣装着てちゃんとやりたいね」

 

 そうつぶやきながら廊下を歩く深夜の足取りは軽く、次に向けての準備が自然と頭の中で組み立てられはじめていた。

 

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