かがみ川女子高校スクールアイドル部   作:記録部

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Side:乃々羽
サブタイトル:ありふれた悲しみの果て


2024/04/15:学校の許可ァ?認められますわァ

「スクールアイドル部を作りたい、ですか」

 

 細い銀縁の眼鏡にピシッと着こなされた制服、生徒会長はいかにもという出で立ちだった。

 新校舎3階の角部屋にある生徒会室は、広くもなく狭くもなく、整然としてもなく雑然としてもない、普通の文化部の部室という印象だ。窓の外には久しぶりの雨が降り続き、雨粒が窓を叩く音が静かに室内に響いていた。

 

「学校の許可もらうの無理やろうか」

「学校の許可ですか? 問題ないと思います」

「えっ」

 

 乃々羽は生徒会長の予想外の回答に驚いた。こういうのは「認められない」的なのがお約束で、申請でもめるのが常だと思っていたのだ。

 

「どうされました?」

「いえ、あの、てっきり『スクールアイドル部の申請なんて認められません』みたいに言われるかなって思っていたので」

「うちは部活動には協力的な校風ですしね。活動内容が学校規定に反していないかのチェックは必要ですけど、基本的にスクールアイドルだったら認められると思いますよ」

「そうなんですか?」

「女子高の部活といえばスクールアイドル部みたいなイメージありません? むしろうちにずっとスクールアイドル部がなかったのが不思議なくらいですよね。先生方も歓迎してくれるんじゃないでしょうか。もしかしたら『スクールアイドル部でかが女をもっと有名にしてくれ!』的なことを言われるかもしれませんね。私も誰かスクールアイドル部作ってくれないかなってずっと思っていたので、応援しますよ!」

 

 思いのほかスクールアイドル部にウェルカムな生徒会長に、乃々羽は少し面食らった。

 

「ちなみに、うちら部員2人だけながやけど、ルール的には大丈夫やろうか」

「えっと、校則見てもらえれば分かると思うがですけど」

 

 生徒会長は生徒手帳をパラパラとめくり、部活動細則と書かれたページを見せてきた。

 

「部員の人数規定は特にないんですよ。零細文化部なんて1人部活のとこも珍しくないですから。部員が0人になっても、廃部じゃなくて休部にして、また部員が入ったら部活再開させるなんてシステムがあるくらいながです」

「そうなんですね。5人以上とか一定の人数集めないと部活って作れないと思ってました」

「アニメとかだとよくそういうルール結構ありますよね。何人以上みたいな規定があると幽霊部員を入れて部員人数をかさ増しするような部活が出たりして、逆に活動実態が不透明化しちゃうんです。それならちゃんと部活をやる人だけをきちんと申請してもらった方が、生徒会的にも学校的にも助かるんですよ」

「じゃあ、スク部作るの問題ないってことでええかね?」

「そうですね。活動内容と人数の面では問題ないと思います。あとは、活動場所と顧問の先生を決めてもらう必要があります」

「活動場所と顧問」

「活動場所は既存の部活が使ってるところは原則使えないので、今空いているところだとこのあたりくらいですかね……」

 

 生徒会長はノートPCを操作し、画面を見せてきた。画面には校内の場所と使用部活のリストが映っていた。

 

「当たり前やけど講堂、音楽室あたりのメインどころは全部埋まってるがやね」

 

 一般的に部活動で使われそうな場所は、ほとんど他の部活に使われてしまっている。頬に手を当てて悩んでいる深夜を尻目に、乃々羽はリストの中に「ある場所」が載っていないことに気がついた。

 

「屋上庭園って使えますか? あそこだとそれなりの広さがありますし、踊ったり歌ったりするのによさそうだと思ったんですが……」

「屋上庭園ですか……なんとも言えないですけど、部分的に活動場所として使うことは可能だと思います。ただ、一応生徒会顧問の宮崎先生に使えるか確認してみて下さい。それと部室ですが、今空いてるところが無くて、かろうじて使えそうなのは旧校舎3階階段上の物置くらいになっちゃいますね。あそこで何か練習したりするのは無理だと思いますが、用具置き場としては使えると思うので、ないよりはましくらいに思ってください」

「とりあえず屋上庭園と物置で話を進めようかね」

「あと、たとえば土日とかで講堂とかを使いたい時は必ず事前申請してくださいね! 直前申請だと他の部活とかぶってしまって使えないこともあるので、はやめはやめの申請をお願いします」

 

 生徒会長の助言に、深夜も乃々羽もうなずいた。

 

「あとは顧問やね。うーん、担任の原ちゃんにお願いするのはどうやろうか」

「原先生は今バスケ部顧問なので、ダメですね。顧問の掛け持ちは原則禁止なんです。特例がないわけじゃないんですけど、基本は1部活1顧問でお願いしてます」

「そうなん?」

「顧問の先生の負担を大きくしすぎないっていうのと、掛け持ちしてしまうと顧問としての監督責任が十分果たせない可能性があるっていうのが理由です」

「ちなみに今、顧問をやってない先生ってどなたがいるんですか?」

「えっと、ちょっと待ってくださいね」

 

 生徒会長は再びPCを操作し、新しいリストを見せてきた。

 

「今フリーなのはこの先生たちですね」

「おー、みごとにあんま関わりない先生ばっかりやね」

 

 乃々羽には当然なじみのない名前ばかりだったが、深夜も同じようだった。深夜とつながりのある先生であれば話は進みやすいかもしれないと思っていたが、顧問探しは一筋縄ではいかないかもしれない。

 

「どちらかというと若手の先生の方が、顧問を受けてくれやすいと思いますよ。ベテランの先生で顧問をやっていない人は、絶対にやりたくないって避けてきたか理由があって顧問辞めた人がほとんどですから」

「若手の先生、頼んだら引き受けてくれるやろうか」

「うーん、そればかりはあたってみないとなんとも言えないですね。ただ、先生側にも顧問を受けることのメリットがないわけじゃないんです。一応顧問手当がでますし。あと、新設部活のようなあんまり仕事のない部活の顧問になっておけば、今後忙しい部活の顧問を突然投げられることがなくなるので」

「なら、うちがちょっと知っちゅう先生からとりあえず当たってみよっか」

 

 深夜の提案に、乃々羽はうなずいて応えた。

 

「じゃあだいたい方針が決まったみたいなので、申請書類をお渡ししますね。これを埋めてもらって、部長と顧問のサインを入れて生徒会まで持ってきてください。不備がないか確認して、大丈夫だったら私が生徒会確認印を押すので。そのあとは、生徒会顧問の宮崎先生に書類提出して正式認可を受けてくださいね。宮崎先生にはあらかじめ私の方から口添えしておきますから、基本的にそこで却下されるようなことはないと思います。一応、最終的には職員会議にかけられるんですけど、生徒会長と生徒会顧問確認済みの部活申請で認められなかった部活はこれまでにないので安心してください」

 

 生徒会長の丁寧なインストラクションを、深夜も乃々羽も何度もうなずきながら聞き、メモを取った。

 

「ちなみに、スクールアイドル部の設立が認められた場合でも、今年度はすでに部活動予算が決済済みなので部費を出すことはできません。なので、申し訳ないですけど、基本的には部活動費は自腹で出してもらうことになります」

「4月に部活作るがやき、それは仕方がないがよ。むしろ色々と丁寧に教えてくれてありがとうね!」

「いえいえ。生徒会長として当然のことをしたまでですから。私もスクールアイドル部ができるのを楽しみにしています! 何か困ったことがあればいつでも相談にものるので、気軽に生徒会室にきてくださいね!」

 

 笑顔で後押ししてくれる生徒会長に頭を下げ、深夜と乃々羽は生徒会室を後にした。

 

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