かがみ川女子高校スクールアイドル部   作:記録部

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Side:乃々羽


2024/09/26:第2回昼休みミニライブ!

 &GAIN!!!を歌い終えた乃々羽と深夜を待っていたのは、割れんばかりの拍手だった。

 

 最近は曇ったり小雨が降ったりとすっきりしない天気が続いていたが、今日は打って変わって雲ひとつない快晴。まさに絶好の昼休みミニライブ日和だ。ただ、9月末だというのに気温は30度を超えていて、強い日差しが屋上庭園を照らしている。風通しのいい屋上とはいえ、この陽気では体感温度はかなりのものになる。

 

 しかも、今日は宮下先輩が手掛けた本番衣装を着てのパフォーマンスだ。通気性を考慮して作られているとはいえ、やはり練習着とは違い、冷感インナーを身につけていても体中から汗が吹き出るのを乃々羽は感じていた。

 

 ステージでスポットライト浴びてるときも、これくらいの暑さだし、いい予行演習だと思わないとね。

 

 乃々羽はそう自分に言い聞かせ、軽く息を整えながら周囲を見渡す。ステージ前の屋上庭園には各務やみこちなど見慣れた顔を中心に、すでに40人近い人が集まっていた。それだけではない。屋上庭園を挟み込むように建つ新校舎と旧校舎の廊下では、ぱっとは数えられないくらいの生徒たちが、窓からこちらを見ている。観客数は前回のパフォーマンスと比べて明らかに増えていて、この暑さにもかかわらず、前回以上の盛り上がりを見せていた。

 

「1曲目は&GAIN!!!でしたー! 前の昼休みミニライブも見に来てくれた人は知っちゅうかもしれんけど、今年の全ス選の課題曲だった名曲のカバー曲やね!」

 

 深夜のMCに「知ってるー!」とあちこちから声が返ってくる。

 

「ありがとうございます。みなさんのアゲインコールも完璧で最高でした!」

 

 今回もアゲインコールを曲の前に簡単に練習したが、前回も来てくれた人が多かったのか、観客の反応はよりスムーズだった。曲の中で響いた「アゲイン!」の声の大きさは乃々羽の想定以上で、その声が重なり合う瞬間はたまらなく心地よかった。

 

「改めまして、かがみ川女子高校スクールアイドル部です! 普段はここ屋上庭園や家庭科室で練習しています。今回で昼休みミニライブに登場するのは2回目になります! ちなみに、前回の私たちのパフォーマンスを見たよーって人、どれくらいいますか?」

 

 屋上庭園の観客たちは、ほぼ全員手を挙げている。

 

「また見に来てくれてありがとうございます!」

 

 乃々羽がそう言うと、手を挙げた人たちから自然と拍手が起こる。

 

「じゃあ逆に、今日初めてうちらを見たよーっていう人、手を挙げてくれる?」

 

 深夜の問いかけには、廊下から見ている生徒たちを中心にちらほらと手が上がる。それを見て、古参勢からも拍手が起こった。

 

「見に来てくれてありがとう! 楽しんでもらえるように全力で頑張るき、最後まで見ていってね!」

「さて、今回の私たちと前回の私たちで大きく違うところがあるんですが、わかりますかー?」

 

 乃々羽が問いかけると、すかさず「衣装ー!」というレスポンスがあちこちから湧き上がった。イヤモニがない舞台なので、観客の声がダイレクトに耳に届く。MCをしている今も、その反応が新鮮で乃々羽は楽しくて仕方がない。

 

「そーです。衣装でーす! ついに、私たちのオリジナル衣装が完成しました!」

 

「可愛いー!」「まわってー!」など、さまざまな反応が飛び交う。

 

「せっかくなんでまわっちゃいましょうか?」

 

 乃々羽と深夜がその場でゆっくりと一回転すると、観客席から「きゃー!」という黄色い歓声が巻き起こった。それに応えようとポーズをとると、最前列に陣取っているみこととちょうど目が合った。

 

 みこち、スクールアイドルガチ勢なの隠さなくなってきたな。

 

 心の中で少し気恥ずかしさはあったが、乃々羽はファンサとしてウインクをしてみせる。すると、みことは手に持っていたペンライトをブンブンと振って、こちらに返してきた。

 

「ちなみにこの衣装、なんと服飾部が作ってくれたんです!」

「可愛いし、動きやすいし、最高よね。うち、かが女カラー取り入れちゅうところが一番好きやね」

「私は腰や胸元の大きなリボンが大好きです!」

「ちなみに、作ってくれた服飾部部長の宮下雅ちゃんはあっちにおるよ!」

 

 そう言うと、深夜は屋上庭園の隅で控えめにこちらを心配そうに見つめている雅を指さした。視線が一気に集まると、雅は驚いたのか慌てて視線をそらしてしまう。それでも観客から自然と湧き上がった拍手に、頭を下げながら手を挙げて応えてみせた。

 

「服飾部は家庭科室で放課後活動しちゅうき、もし服作りに興味がある子がおったらのぞきにきてな!」

「そして、今回オリジナル衣装だけでなく、なんとオリジナル曲も完成しましたー!」

 

 おおおという歓声が屋上庭園を包む。

 

「この曲と衣装は、ラブライブ!に向けたものになります!」

「ラブライブ!知っちゅう人ー!」

 

 深夜の問いかけに観客の半分以上が手を挙げる。

 

「ラブライブ!は、野球部でいうところの甲子園、バレー部でいうところの春高、サッカー部でいうところの冬の選手権とかそういう感じの、スクールアイドル部で一番有名な大会です。予選を勝ち抜いた学校は、なんとあのアキバドームでパフォーマンスができるんです!」

「そのラブライブ!の高知県予選が、来週の日曜日にオレンジホールであるがよね。観覧無料で出入り自由なやき、もしその日になんも予定なーいって人がおったら、うちらの応援しに来てくれん?」

「学校のみなさんの声援があると、本当に力になるので、是非、よろしくお願いします!」

 

 乃々羽と深夜が頭を下げると、すぐに「行くよー!」とか「がんばれー!」とか温かい応援の声が降り注いできた。

 

「ありがとうございます!」

「次に披露するのが、そのラブライブ!用に作った、かがみ川女子高校スクールアイドル部初のオリジナル曲──MIrAI/I∀ɹIW(未来ミラー)やね。かが女の『かがみ』からとったタイトルで、作詞をうちが担当して」

「作曲は2年生の西アスカ先輩に手伝ってもらって、私が担当しました」

「作曲手伝ってくれた西ちゃんは、2年生同士でRe-Ariseってバンドを組んじゅうき、気になったひとはインスタとかで調べてねー」

 

 ステージ前の観客に混ざっていたアスカが誇らしげに手を挙げてみせた。それに応じるように、他の観客から歓声が上がる。

 

「実は今回、手伝ってくれた服飾部やRe-Arise、そして私たちスクールアイドル部のパフォーマンスが一気に見られるイベントを、文化祭でやる予定です! ここ屋上庭園が会場になるので、よかったら文化祭の時も覗きに来てください!」

 

 深夜によると昨日になってようやく、屋上庭園ステージの許諾が正式に文化祭実行委員会から下りたらしい。ちょうどタイミングよく昼休みミニライブの機会があったので、乃々羽と深夜はここで告知しておくことに決めたのだった。

 

「手伝ってくれる人も絶賛募集中やき、我こそはって人は、うちらに気軽に声かけてね!」

「ちょっと話が長くなってきたので、そろそろ次の、そして、最後の曲にいきましょうか」

 

 深夜がそう言うと、観客からはお約束の「えー!」とか「今来たばっかりー!」とかいうレスポンスが返ってくる。お決まりのやりとりに乃々羽は笑いながら「もっと聞きたいと思った人は、来週末のラブライブ!県予選や文化祭の屋上庭園ステージに是非遊びに来て下さい!」と返した。

 

「今回作ったこの曲はサビのところのダンスがマネしやすい感じになっちゅうき、一緒に踊ってね!」

「コーレスも自由にガンガン入れていいので、最後まで楽しんでいってください!」

「ちゃんとお客さんの前で披露するのは今日が初めてやき。うちらの初めてのオリジナル曲のパフォーマンスを見届けてください!」

「では、聞いて下さい。かがみ川女子高校スクールアイドル部でMIrAI/I∀ɹIW(未来ミラー)

 

 乃々羽と深夜がステージの中央で向かい合うと、周囲のざわめきが次第に静まっていく。

 目の前の深夜の額からは汗が垂れ、頬は赤く染まっている。その少し垂れた目には、自信がはっきりと見えた。深夜がウインクをしてきたので、乃々羽もそれに応えるようにウインクを返す。

 

 何度も何度も聞き込み、打ち込み直したイントロが流れ始めると、乃々羽の体は自然とリズムに乗り始める。屋上庭園から控えめに聞こえていた「ハイっ! ハイっ!」という掛け声が、徐々に大きくなって、メロディに重なっていく。

 

 自分たちで作り上げた曲を、自分たちで歌い、踊る。そして、そのパフォーマンスに学校のみんなの声や動きが加わり、ひとつの完成されたパフォーマンスとなる。

 この感覚は、清学時代ですら一度も味わったことがない、乃々羽にとって本当に初めてのものだった。だというのに、これこそがまさに「乃々羽が目指してきたスクールアイドルソングの形」なのだと、直感で確信する。

 

「未来ミラー 未来描いて 笑顔で進もう」

 

 だから、乃々羽は全力で届ける。

 MIrAI/I∀ɹIW(大切なこの曲)を。

 かがみ川女子のみんなに。

 

 私たちの曲を本当のスクールアイドルソングにするために!

 

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