起きちゅう?
起きてますよー!
なんかちょっと眠れんがよ
いよいよですもんね
せやねえ
リハどうでした?
緊張しました?
舞台からみたらだいぶ広う感じたけんど、サイズ的にはテレストの大ホールとあんまり変わらんかったき、今日のとこはそんなにかな
明日お客さん入ったらまたちょっと雰囲気変わりますよ
それな(スタンプ)
全ス選……
ラブライブ!は有観客ですしコールもOKなんで全然雰囲気違うと思いますよ!
ファイト(スタンプ)
どんな感じ?
逆に楽しすぎちゃって、気づいたら終わっちゃってるみたいな
昼休みミニライブのアップグレード版みたいな感じですかね
それノノちゃんよー言っちゅうけんど、想像つかんがよね
明日のお楽しみですよ!
楽しみ(スタンプ)
明日はご家族も来られるんですよね?
うん、東雲家全員集合やね。家出ちゅう一番上のねーちゃんも来るって言いよったし。ノノちゃんとこは?
うちもみんな来てくれます!
ええねぇ。ノノちゃんママ会ったことないき、会えるの楽しみやわー
あと友だちも来てくれるって言ってました!
うちも結構みんな来てくれるって言いよったわ
アスカ先輩もRe-Ariseの面々連れてきてくれるって言ってましたよ
おお(スタンプ)
生徒会も文実の子たちも来てくれるって言っちゅう
お世話になってる人たちが来てくれるんは嬉しいねぇ
わかる(スタンプ)
これはもう完全にホームですね!
わかる(スタンプ)
ノノちゃん、ちょっと通話してええ?
オッケー(スタンプ)
***
「どうしたんですか?」
スピーカー越しに聞こえる乃々羽の声は、心なしか弾んでいた。
「いやー、なんかノノちゃんの声聞きたくなったがよね」
「なんですかそれ?」
乃々羽の柔らかい笑い声が夜に心地いい。
「みゃー先輩、もしかして緊張してます?」
「さすがにちょっとねー。でも、実際楽しみの方が勝っちゅう。全ス選の時と違ってちゃんと自信持てるくらい十分練習してきたしね。それにみんな見にきてくれるんがめっちゃ嬉しいがよ」
「須藤先生の言ってたホーム大作戦は成功ですかね?」
「明日ふたあけてみたら誰もきてくれんとかあるかもしれんけんど」
冗談めかして深夜がいうと、昔から「たまにそう言う悪夢見ることがあります」と乃々羽が怖い切り返しをしてくる。想像するだけでもゾッとするような話だ。
「うちらが別に何か特別なことやったわけじゃないけど、みんな来てくれるって言ってくれるんはシンプルに嬉しいがよ」
「スクールアイドルの輪が学校内でどんどん広がって行く感じがあって良いですよね!」
「スクールアイドルやる前は話したこともなかった人と、いつの間にか繋がっちゅうの不思議よね」
深夜はふと、始業式前日の夜のことを思い出す。あの時もこうやって部屋のベッドでゴロゴロしていて。なんだか物足りないモヤモヤが心を覆っていて。
それが
ノノちゃんとスクールアイドルをはじめて。
色々経験して。
あのときは大好きと言えるものはなかったけど、今は心の底から大好きを叫べる。
かが女が好き。
スクールアイドルが好き。
応援してくれるみんなが好き。
ノノちゃんが好き。
かがみ川女子高校スクールアイドル部が大好き。
「みゃー先輩? 寝ちゃいました?」
深夜はふと、ぼんやりしてしまった自分に気づく。寝ていると勘違いしたのか、乃々羽がささやくような声で問いかけてくる。
「起きちゅうよ。ちょっと昔のこと思い出しよっただけ。正直、半年前にはこんなことになるとは思ってもなかったき」
「わたしも半年前には想像できなかったですね……スクールアイドルやってることも、ラブライブ!のステージに立つことも。絶対ないって思ってた未来が今あるのは、みゃー先輩があの時声をかけてくれたからです」
「あの時のうちはなんも考えてなかったけんどね」
「その方が逆に運命っぽくないです?」
あの日、屋上庭園でアゲインを歌ってなければ。
あの日、声かけたのがノノちゃんじゃなかったら。
たぶん、ラブライブ!には出れていなかった。
「運命やねぇ」
深夜は様々な感情をこめて、ため息をつくかのように運命という言葉を吐き出した。
「あともうちょっとだけみゃー先輩と続けたいです。スクールアイドル」
「うちも」
「じゃあ、最高のパフォーマンスにしないとですね」
スピーカー越しの乃々羽の声は、まるで深夜の背中を押してくれるように力強かった。枕元の目覚まし時計を見ると、針はちょうど0時を指している。あと10時間で県大会の幕が上がる。そして、明日のこの時間には泣いても笑っても結果が出ているのだ。
「よし、もう寝るようかね。明日寝不足やと、最高のパフォーマンスもできんきね」
「ですね。おやすみなさい、みゃー先輩」
「おやすみ、ノノちゃん」
通話を切り、枕元にスマホを置いた。スマホのアラームと目覚まし時計を7時にセットして、電気を消す。布団にくるまりながら、深夜は目を閉じた。明日の本番のことが少しだけ頭をよぎるけれど、乃々羽との通話のおかげか不思議と不安はなく、徐々に眠気が勝ってくる。
(明日は最高のステージにしよう)
そう心の中でそっとつぶやくと、ゆっくりと意識が遠のいていく。
部屋は静寂に包まれ、ただ心地よい期待だけがそこに残っていた。