かがみ川女子高校スクールアイドル部   作:記録部

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Side:深夜


幕間③
2024/11/23:Day 0+228(Side:深夜)


「楽しかったぁ……」

 

 今日、何度目か分からないその言葉が自然と口をついた。多幸感だけが今の深夜を包み込んでいる。

 

 ベッドに飛び込むと、ふわふわの羽布団が体を優しく受け止めてくれる。お風呂でじっくり温まり、部屋に戻るとようやく興奮が少しだけ落ち着いてきた。その途端、今日一日の疲れがじんわりと体の奥から顔を出し、眠気が深夜を襲う。

 

 枕元のスマホを手に取ると、結果発表から4時間近く経った今でも通知が鳴り止む気配はなかった。

 あれから来てくれた人や支えてくれた人たちへ、深夜はメッセージを送り続けていた。ひととおり感謝の言葉を伝え終えたので、返信を一旦やめて写真アプリを開く。スクールアイドル部のフォルダには、今日だけで1000枚近い画像が増えていた。

 

 画像をスクロールしながら、楽しかった記憶を追体験する。一枚一枚が今日一日の輝きを鮮やかに蘇らせ、あの瞬間へと誘う。あの人生で一番濃密だった数分間のことを、深夜は思い出していた。

 

「最高やったねぇ……」

 

 今日のステージの映像はラブライブ!公式アプリで何度も何度も見返した。そのたびに、自分でも驚くほど自然と顔がにやけてしまう。リビングで録画したニュース映像を家族と一緒に見たときも、あまりのにやつき具合に姉たちから「何か変なものでも食べた?」と心配されたくらいだ。

 

 もう一度、アプリを開いて動画を見る。

 何度見ても、ラスサビでステージと観客が完全に一体化したあのシーンが一番好きだった。

 

 正直に言えば、今日のパフォーマンスは深夜にとって「&GAIN!!!」を初めて見た時の感動を超えてしまっていた。あの日、やりたいと思った夢。それを超える形で自分たちは成し遂げた──その事実に深夜はただただ満足している。

 

 ──また来週ね

 

 御代からの通知が表示されたので、LINEを開くと、メッセージとスタンプが送られていた。それに深夜はすぐさまスタンプを返す。

 はじめや御代には結果発表の直後に、「おめでとう」と連絡を送った。ライバルであり仲間でもある彼女たちのパフォーマンスは、地方大会を勝ち抜くにふさわしいもので、今は全国決勝大会に挑む彼女たちを心から応援している。そこに悔しさは一切なかった。純粋に、彼女たちが中四国地方の代表であることを嬉しく思っていた。

 

 たしかに結果は残念だった。ノノちゃんとアキバドームに立ちたかったのも本音だし、終わってしまったことに寂しさを感じないと言えば嘘になる。それでも、深夜の口をつくのは「楽しかったなぁ……」という言葉だけだなのだ。

 

 あの日、ベッドに寝転びながら感じた「何かが足りない」という漠然とした空虚感。それは今、深夜の中から完全に消え去っている。こんな風に満足できる日が訪れるなんて、あの時の自分には想像もできなかった。

 

 深夜は、何度目か分からない「楽しかったなぁ……」という言葉をまた口にして、そっと目を閉じる。

 充足感が、眠りへと深夜を優しく誘っていった。

 

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