煌黒の滅竜魔導士   作:皐月の王

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『王』の激情

「9人全員やられてるとはな……」

 

アルバスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、呟く。一人捕らえたと言えど、こっちはほぼ壊滅状態。割に合わない状況であり、何より

 

(くそ、なりふり構わず速攻で片付けるべきだったか…!ウェンディ、アーリィ、ハッピーが連れていかれることも無かった……!)

 

自身の見通しの甘さに怒りが込み上げる。が、直ぐに息を吐き、状況を立て直す方向に動く。

 

「一夜さん、例のものをお願いします。オレはエルザを見る」

 

「任せたまえ、"痛み止めの香り"!」

 

一夜が試験管のようなものを開けると香りが辺りに漂う。その香りを嗅いだ者の痛みが和らいでいく。

 

「いい匂い」

 

「痛みが……やわらいでいく……!」

 

面々は動けるようになっていく。だが、エルザの様子が芳しくない。

 

「おい、エルザその腕…!」

 

「不覚をとった……」

 

「傷口から見るに蛇……コブラの毒蛇か……!ウェンディが居ない時に……!仕方ねぇ!」

 

アルバスは異空間から細い鞭を取り出し、傷口から心臓よりの所を軽く縛り上げる。

 

「取りあえず、現状はこんな所か」

 

そういうとアルバスは他のメンバーを見る。現状この場で動けるのはエルザ以外である。壊滅的かと思われたが、立て直すことも出来つつある。

 

(流石一夜さんだな、こういう状況での立て直しとなると、ああいう人がいると心強い。言動は変だが)

 

内心ため息を着きながらに思っていると

 

「このままでは……戦えん」

 

エルザがそう呟き、剣を落として、腕を真横にあげて、ハンカチを噛み食いしばり覚悟を決めた表情で

 

「斬り落とせ」

 

息も絶えたえでそう言う。皆は驚いた表情になり、グレイは

 

「バカな事言ってんじゃねぇよ!!」

 

エルザにそう叫ぶがリオンが落ちた剣を拾い上げて

 

「わかった、オレがやろう」

 

「やれ!」

 

リオンはエルザの意志を汲み取り剣を構える。

 

「よせ!」

 

「今、この女に死んでもらう訳にはいかん!」

 

「けど……」

 

リオンの言うことに言い淀むルーシィに

 

「どんだけ甘いですの!?妖精さんは!」

 

シェリーは言う。この命がかかっている状況で躊躇う方がエルザが長く苦しむと分かっているため、ここで躊躇うのが甘いと言ったのだ。それに対してルーシィも食ってかかる。

 

「あんたに何がわかるっていうのよ!!」

 

「やるんだ!!!!早く!!!」

 

エルザの悲痛な叫びが早く斬るように言う。だが、極めて冷静にアルバスが言う。

 

「エルザ、リオン。斬るだけ無駄だぞ」

 

「何!?」

 

「どういう事だ?」

 

エルザは目を見開き、リオンも構えを解く。他の面々もアルバスを見る。

 

「どういう事よ斬るだけ無駄って!エルザの覚悟が無駄だと言うの!?同じギルドの仲間なのに!!」

 

「ああ、無駄だな。毒蛇に噛まれた場合、毒はその毒は即座に体に回り始める。今、腕を斬った所で、毒の抽出には役に立たず、むしろ出血多量を引き起こすような重傷を負わせてしまうだけだ。だから、とりあえずは安静にしておけ。それに、今、言い争ってどうする」

 

アルバスの冷静な言葉にイヴが

 

「でも、まずいよ!!このままじゃ!」

 

慌てるように言う。そこで

 

「ウェンディなら治せるわ」

 

シャルルが口を開く。

 

「アルバスの言う通り、言い争っている場合じゃないでしょ。力を合わせて、ウェンディ、アーリィ、ついでに青いオスネコも助けるの」

 

「あの娘が解毒の魔法を?」

 

「すごいなァ」

 

「解毒だけじゃない。解熱や痛み止め、傷の治癒もできるの」

 

シャルルが語った事にアルバス以外が驚く。

 

「治癒って……失われた魔法じゃなくて?」

 

「まさか…天空の巫女ってのに関係あるの?」

 

ルーシィの質問にシャルルは答える。

 

「あの娘が天空の滅竜魔導士、天竜のウェンディ」

 

「ドラゴンスレイヤー!?」

 

ナツが驚いて声を上げるが、アルバスが話す。

 

「詳しい話は後だ。今、エルザを助けるのにウェンディは必要。そして、六魔将軍の目的は分からないが、ウェンディを連れ去ったということはウェンディを必要としているのは明白だ」

 

「となれば」

 

やる事は1つと言わんばかりに皆の意識が固まっていく。

 

「やる事は1つ」

 

「ウェンディちゃんを助けるんだ」

 

「エルザの為にも」

 

「ハッピーとアーリィもね」

 

そしてナツが号令をかける。

 

「おっし!!!行くぞ!!!」

 

《オオッ!!!!》

 

それぞれが動き出す。そんな中

 

「ルーシィ」

 

アルバスがルーシィに声をかける。

 

「何?アルバス」

 

ルーシィが首を傾げてアルバスを見る。アルバスは回収していた物を差し出す。

 

「これ、星霊の鍵。六魔将軍の一人を叩きのめして回収した」

 

「星霊の鍵って……黄道十二門の鍵もあるじゃない!しかも三つも!」

 

「待ってくれその星霊の中にアリエスは居なかったか?」

 

ヒビキが尋ねてくる。鍵を見て気になったのだろう。アルバスは隠すこともせず

 

「ああ、居た。カエルムと言う星霊と二門同時開門で襲いかかってきたから。仕方なくダメージを与えて強制的に帰らせた。そして、六魔将軍のエンジェルは拘束済みだ。アリエスに思入れがあるのか?」

 

アルバスがヒビキに聞くと

 

「アリエスは……カレンの星霊だったんだ…」

 

震えた声で語る。アルバスは察して森に向かい

 

「そうか、オレは何も言えねぇ。この手の仕事はそういうこともある。だから、この先どうするかはお前が決めろよ。失った者は何も戻らない」

 

「アルバス!他に言い方ってものが!」

 

「良いんだ、ルーシィ」

 

ヒビキはゆっくりアルバスを見据えて言う。

 

「ありがとう、カレンの仇をとってくれて。そんなつもりは無いんだろうけど、捕まえることが出来て良かったと思う。それに降りる気は無いよ、僕と同じような気持ちになる人を作らない為にもね」

 

アルバスはその言葉を聞きフッと笑い振り向かないままに

 

「なら、頑張らないとな互いに、死ぬなよ、カレンという人が生きた証はアンタだからな。ヒビキ、ルーシィ、エルザを頼むぞ!」

 

「うん!」

 

「ああ!」

 

それだけ言うと、アルバスは動き出す。深呼吸して歩き出す。そして、しばらく歩くと

 

「わらわらと出てきやがったな?」

 

草むら、木々の上、周囲を取り囲むように闇ギルドの魔導士達がアルバスを中心に陣形を組む。

 

「たった一人とはカモだな!」

 

「ハッハッハッハ!!そういう事だな!」

 

「ギャハハ!!遊ぼうぜ!ガキンチョ!!」

 

「おっ!妖精の尻尾じゃねぇか!!」

 

散々に言う闇ギルドの連中を半分無視して周りを見渡し溜息をつく。

 

「んだぁ?この状況が飲み込めてねぇみたいだな?こんな状況で溜息とは余裕じゃねぇか!」

 

そう言われたアルバスはギルドマスターであろう人物に視線を向けて、不機嫌な表情を隠そうともせずに言い放つ。

 

「大事な相棒と妹分が拐われたんだ。……それで、急いでいるから―――」

 

アルバスの周りにあらゆる武器が集う。一つ一つが『王』の号令を待つ騎士のように集う。

 

「殺す気で行くぞ?」

 

瞬間、それぞれ振るえば一騎当千の武器は『王』の号令を下に蹂躙を始める。

 

「な、何だ!?お、お前は何なんだ!?」

 

僅か数秒、その一瞬にも近い時間だけで、包囲してた闇ギルドの面々は戦闘不能となる。ギルドマスターだけを残して。そのギルドマスターもアルバスに肩を踏みつけられて木に縫い付けられるように固定される。

 

「さぁ、吐けよ。お前に残された選択肢は、大人しく吐いて一瞬の痛みで眠るか、口を割らずに拷問を受けるかだ。気絶で逃げれると思うなよ?」

 

差し向けられる無数の武器、圧倒的な実力、そして子どもとは思えない圧を放つ『千剣の王者』の異名を持つ少年は一切の容赦は無い。不敵に嗤う『王』は情報を聞き出した。




もう少し滅竜魔法使った方がいいですよね?
エスカトンジャッジメント?HAHA、放ったらダメじゃないか!(いつかはやりたい)
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