PERSONA3×Blue Archive~Re:Tales Of Our Youth Days   作:花極四季

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今年初の投稿。しばらくリアル疲労もあってモチベが上がらず放置してました。
ブルアカふぇす2025もとっくに終わってるのに、機を逃すというレベルじゃねーぞ!



18話

 ヒナ達のペルソナ披露を行った次の日。

 今日は帰り際に話題に出ていた【C.A.N.A.A.N】のオープン日だ。

 帰宅が遅れていつもより起きるタイミングがズレたせいもあり、起きた時には微かな振動と喧騒が響いていた。

 時間的にオープンはまだのようで、この忙しない雰囲気は最後の後押しによるものだろう。

支度を済ませている間にリンからモモトークが届き、その内容は外出するならば開店直後の人込みに紛れるようにとのこと。

 一応目立たないような間取りに一室までのルートは構築されているが、前提として関係者以外立ち入り禁止の看板を立てている以上、そこをスタッフではない見た目の存在が通れば嫌でも目立つので仕方ないことではある。

今後もこういう方法で出入りしていたとして絶対にどこかでボロが出そうな気がするが、その辺りの対策とかどうしているのだろうか。

 立場上あまり贅沢なことは言いたくないが、出入りひとつで気を遣いたくないし、機を見て問題提起してみるのもアリかもしれない。

 少々自意識過剰な気もするが、さりとて目立ちたい訳でもない。

取り敢えず、備品の中にあった鍔付き帽子を目深に被り、あまり性差のない服装に着替え直す。

 変装というにはお粗末極まるが、ぱっと見で判断できなければオープン当日の混雑が予想される環境に紛れる分には何とかなる筈だと、根拠のない場当たり的対応を敢行することにした。

 

 セーフルームから退出し、外から見えない位置で生徒達が入ってくるのを待ち、ようやくその時は訪れた。

 ビル内に音楽が流れると同時に、生徒達の喧騒が一斉に耳に入ってくる。

 いざ、その中に紛れようと慎重に外に顔を向けて――絶句した。

 波濤、雪崩、土砂崩れ――そんな災害とも呼べる比喩がしっくり来るほどに、眼前に広がる生徒によって形成された人波は圧倒的だった。

 どこか見覚えのある制服の生徒もいれば、それ以上に見たことのない制服の生徒がいる光景は、キヴォトスという学園都市の広大さを知らしめるには十分すぎるものだった。

 想像はしていたがそれを遥か上回る現実で殴りつけられ一瞬思考が停止するも、逆にこれ幸いと出来るだけ自然なタイミングで人波に紛れ込むべく動き出す。

 

 結果として、心配は杞憂だったと言わんばかりにすんなりと成功した。

 無数の設備に意識が向けられているというのもそうだが、これだけの数の人がいれば、たった一人相手に注目するなんて余程異彩を放つ格好でもしていない限りあり得ない。

 数えるのも億劫になるほどの多種多様な制服を前にすれば、自分の服装もその中のひとつと認識されても不思議ではない。

 規模こそ不明だが、すべての学園の制服をきちんと把握している生徒なんて稀だろうし、そういうことなんだろう。

 

 声の方に目を向けると、プライズコーナーにあるクレーンゲームの前で自分の背丈の半分あるかどうかの少女二人が何やら騒いでいる。

 金髪のショートボブに猫耳と尻尾、近未来的意匠を施されたパーカーを羽織った少女達は、それぞれがピンクとライトグリーンの蛍光色でデザインに差異を設けており、それがなければまるで見分けがつかないほどに瓜二つな顔立ちをしている。

 恐らくは双子であろう片割れの暴れるピンクの方をライトグリーンの方が羽交い絞めしており、先の発言からグッズが手に入らずああなっているのだろう。

 

 そんな小動物同士のやり取りを背後から眺めていると、その視線を察したのかライトグリーンの少女が顔だけをこちらに向ける。

 

「お姉ちゃん、後ろに人が並んでるよ。迷惑になるから、ね?」

 

「あとちょっと!もうちょっとで取れそうなの!」

 

 姉と呼ばれた暴れるピンクの少女を優しく諫める妹であろうライトグリーンの少女。

 ゲームそのものに関心があったわけではないが、彼女達が何に執着しているのかは興味があった。

 誤解を解くついでにこの騒音下でも声が届く距離にまで近づく。

 クレーンゲームの景品は彼女達が両腕で抱えて収まる大きさのぬいぐるみが設置されており、肝心の機械の方は巨大な排出口に横棒を添えることでぬいぐるみ引っかかって落下させない仕組みのもの。

 自分の知るクレーンゲームと大きな差はなく、この手のタイプで景品を取った記憶もある。

 景品の位置から察するに、彼女達が求めているのは青い帽子や靴やらを着た雪だるまが目当てのものだろう。

 

「あ、あの。すみません、今すぐどきますので――」

 

「いや、別に並んでたわけじゃないよ。それより、あれが欲しいの?」

 

「そ、そうです」

 

「了解。ちょっと貸して」

 

 お金を投入し、小気味良い音楽が奏でられる。

 記憶はあれど経験までは保証できなかったが、何となく出来る気がしていざやってみた結果――

 

「「あっ」」

 

 ぬいぐるみの落下音と共に二人は同時に声を上げる。

 目標だったぬいぐるみを回収し、ピンクの少女へと手渡す。

 

「はい」

 

「……え?」

 

「欲しかったんでしょ」

 

「そ、そうだけど……いいの?」

 

「そのためにやっただけだから」

 

 数秒の間を置いて、おそるおそるといった様子で受け取る。

 呆然とした様子に始まり、現実を受け入れていくにつれて表情に喜色が浮かんでいく。

 

「――ぃやっ、たあああああああ!!」

 

「お、お姉ちゃんうるさい!」

 

 ぬいぐるみを高く掲げ喜び勇むピンクの少女。

 しかし、それもつかの間。少女はライトグリーンの少女へと向き合い、そのままぬいぐるみを突き出す。

 

「はい、ミドリ。私が取ったわけじゃないけど、結果オーライだよね!」

 

 ミドリと呼ばれたライトグリーンの少女の胸元に押し付けるようにぬいぐるみが手渡される。

 あれほど暴れようとしていたはずなのに、その表情に一切の執着はなく。

 一見して噛み合わない行動。しかしその執着が間接的にもたらされたものだとしたら――

 

「……えっと」

 

 ミドリがチラチラと上目遣いにこちらに視線を彷徨わせる。

 渡したのが彼女の姉だとして、元を辿れば入手したのは自分なので、幾ら言質ありきでもらい受けたとしても気後れするのは仕方ないことだろう。

 

「遠慮しなくていいよ。もう君達のものだから」

 

「あっ……ありがとうございます」

 

 そう言い渡すと、控えめながらに喜びを表すようにぬいぐるみを抱き締める。

 思えば目立たないよう行動しようとした手前、いきなり目立ちかねない行動を取った自分にらしくないと思いつつ、目の前の光景を見ていらぬ節介を焼いた甲斐があったと納得する。

 

「それより貴方、クレーンゲーム上手いね!結構嗜むクチ?」

 

 そんな折、姉の方がどこか目を輝かせるようにしてこちらを見つめてくる。

 見た目こそ瓜二つだが、こうして対峙してみると活発な姉に控えめな妹と、すぐに判別できる程度には個性的な二人だ。

 

「まぁ、それなりに」

 

 ぼんやりと脳裏に浮かぶのは、今のようにクレーンゲームを遊んでいる光景。

 隣には友人と思わしき無精髭の少年が居て、彼が一方的に話しかけている構図となっている。

 自分とは対照的に活発でひょうきんな彼は、自分のプレイの結果に一喜一憂したりと非常に忙しない。

 一見相性が良くなさそうな相手なのに、記憶の中の自分もそれを客観視している自分も自然体に受け入れている。

 少なくとも、ただの知り合いの枠には収まらない相手なのは確かだろう。

 

 思えば、以前もどこかの記憶で彼の姿を見た気がする。

 記憶喪失以前の記憶は、その時は鮮明でも短い時間で摩耗してしまう。

 この瞬間の記憶も似た末路を辿るのだろうが、それでも積み重ねていけばいずれ正しく思い出せる、はずだ。

 

「あっ、そうだ。お金、返しますね」

 

 愛おしそうにぬいぐるみを抱えていたミドリが、跳ねるように頭を上げたかと思うと、ぬいぐるみ片手にポケットをまさぐる。

 先の言動から察するに、財布でも取りだそうとしているのだろう。それを自分は言葉で静止する。

 

「別にいいよ一回分ぐらい」

 

「で、でも……」

 

「君たちがどれぐらいそれにお金を使ったかは知らないけど、その積み重ねがあったから一発で取れたに過ぎないし」

 

 あまり納得のいってないと言った様子でミドリが苦悶の表情を浮かべる。

 単純に義理堅いのか、それほど恩義を感じているのか。

 何にせよ、こちらとしてはそこまで気負わせるつもりもなかったので対応に困るところだ。

 

「そうだよミドリ、せっかくいいって言ってくれるんだから素直に受け取らなきゃ!」

 

「お姉ちゃん、そんな簡単に」

 

「ミドリが悩んでいる間にこの人からワンコイン分以上の時間を奪っちゃっても?」

 

 そう姉に言われて、返す言葉もないのかミドリが口を閉ざす。

 

「ごめんね、ミドリはちょっと頑固なところあるから。それと、改めてありがとね!私はモモイ、貴方は?」

 

「結城理」

 

「オッケー、よろしくね理!いやー、ゲーム仲間の男の子と知り合うの実は初めてなんだよね。どこの学校?どんなゲームジャンルが好き?あ、私達実はミレニアムで【ゲーム開発部】に所属してて、そこでゲーム開発してるんだ!」

 

 物理的に詰め寄りながらひたすらに言葉を捲し立てるモモイの圧を前に、自然と後ずさりする。

 活発な気質であることは理解していたつもりだったが、まさかここまでとは。

 何気に下の名前で初めて呼ばれた気がするし、そういった意味でもモモイは自分の中でかなり異質な存在だ。

 それが悪いというわけではない。ただ、今まで名前を交換するほどの関係の相手の殆どは、自分の異質な立場を知っていたり警戒されていたりと、初対面で隔意なく接してくれた相手は彼女が初めてと言っても過言ではなかった。

 

「お姉ちゃん!お姉ちゃんこそ結城さんを困らせてるよ!」

 

「あっ……あはは。ごめんね、ちょっと興奮しちゃって」

 

「まったくもう……うちの姉が申し訳ありません」

 

 バツの悪そうに頬をかくモモイを尻目に、ミドリが丁寧に頭を下げて謝罪する。

 なんとなく、二人の力関係というか、持ちつ持たれつみたいな関係性を垣間見た気がする。

 

「うーん、でもせっかく友達になったんだし、貸し借りを残すのもアレだよね。じゃあさ、今度うちに遊びに来なよ。そこでおもてなしするから!」

 

 さりげなく友達認定されてしまったが、それ自体は別に不満はない。

 

「うち?」

 

「あ、私達の家じゃなくて【ゲーム開発部】の方ね。参考資料用にたくさんゲームあるし、なんならうちで作ってるゲームのテスターにもなってもらいたいし~」

 

「どうせテスターの方が本命でしょ」

 

「そ、そんなことないから!」

 

 モモイは両腕を忙しなく上下させて抗議するも目は泳いでおり、本心を欠片も隠しきれていない様子。

 良くも悪くも感情に素直な気質なのだろう。その裏表のない性質は接していてむしろ気分が楽になる。

 立場を考えることなく接することができる相手として、彼女達は貴重な存在だ。

 たまには使命を忘れて心を休めたい、そんな時に彼女達みたいな人間と行動を共にする相手として、これほど模範的な存在はいないだろう。

 

 ――ああ、そうか。

 何故、こうも彼女に対して安心感を覚えるのか。

 似ているんだ。先程脳裏に過った少年とどこか纏う雰囲気が。

 性別も背丈もまるで対照的なのに、どこか感じ入るものがある。

 ムードメーカー、という奴だろうか。

 その多少行き過ぎなぐらいの騒がしさが、どうにも心地よい。

 

「ゴホン!……で、どうかな?」

 

「暇なときでいいなら」

 

「もちろん!……とはいっても、こっちももう少ししたら忙しくなりそうだから、その時はごめんね?」

 

「ミレニアムで開かれる部活の成果を発表するコンテストが数ヶ月後にあるんです。そこで好成績を出せばお目通りが良くなって部費を融通してくれることが慣例なので、みんな必死になって成果を出します」

 

「私達もその例外ではなくて、今日ここに来たのもどちらかというと連邦生徒会管轄の設備に置かれるゲームがどういうものかっていう視察というか、インスピレーションを得るために来たってわけ!」

 

「まぁ結局お約束といいますか、すっかり遊びこんでしまって……」

 

「だって、最新機種が揃い踏みなんだよ?プライズだって見たことないもの取り揃えてるし、数ヵ月通った程度じゃ遊び尽くせない自信があるよ」

 

 ゲーマーを名乗る彼女達のことだ、それは真実なのだろう。

 娯楽とはいえここの設備への投資にすら余念がないのは流石というべきか。

 これなら他の設備も大いに期待できそうではある。

 

「なんにせよ、そういうことだから。あ、モモトークやってるなら交換しようよ」

 

「そうですね、折角だから私もいいですか?お姉ちゃんが迷惑かけた時には連絡していただければと」 

 

 流されるままに二人の名前がモモトークのアドレス内に登録される。

 些細な変化だが、縁が結ばれたという実感を得るには十分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 我は汝…… 汝は我……

 

 

 

 

 

 

 

 汝、新たなる絆を見出したり……

 

 

 

 

 

 

 

 絆は即ち、まことを知る一歩なり。

 

 

 

 

 

 

 

 汝、"星"のペルソナを生み出せし時、

 

 

 

 

 

 

 

 我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 

 

 

 

 

 

 それにしても、ゲーム開発部という名前に聞き覚えがあるのだが、どこで聞いたんだっけか。

 少し考えてみても思い出せないが、なら大したことではないだろうと見切りをつける。

 それからしばらくの間、二人と共にゲームコーナーを歩き回りゲーム談議に花を咲かせることとなった。

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