PERSONA3×Blue Archive~Re:Tales Of Our Youth Days   作:花極四季

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ライドウリマスターをダウンロードしている間に投稿。Switch2で遊べる事実にかんげき~。


23話

 ヒナとヒフミの訪問から一日経過し、明朝にユメが帰宅してきたため朝食の準備をしながら情報の擦り合わせをする。

 連邦生徒会に情報を提供した結果、今後の行動方針として「ゲマトリアの調査」と「影時間での通信手段の確保」が主題となった。

 特に後者に関しては元々行ってはいたが、通信手段が存在しないことでの弊害が巨大シャドウの出現法則が明らかになったことで、喫緊の対応となっている。

 少なくとも次の影時間までの猶予、つまり一ヶ月の間にどうにかしなければならない。

 今回は偶然なんとかなったようなもので、巨大シャドウがペルソナ使いの存在しない地域に出現しようものなら、その情報すら伝わらない間に被害が拡大し取り返しのつかない被害を被ることになりかねないからだ。

 

「それで、連邦生徒会側で【連禁区】に設定されていた土地に調査が入ることになったんだって」

 

「連禁区って?」

 

「えっと、【連邦生徒会直轄禁止区域】の略称で、文字通り連邦生徒会で管理している土地のことだね。なんでも、その土地から出てきたパーツが、今は壊れてる影時間でも使えた通信機に搭載されてたんだって」

 

「……なら、どうして真っ先にそこを調べないんですか?」

 

「私も気になったから聞いてみたんだけど、単純に連禁区に該当する地域が多くて虱潰しは現実的じゃないって話に加えて、そもそも影時間で動くかどうかは影時間の中でしか分からないから探索時間が限定されるという点。そして何よりも、禁止区域はその名の通り人が寄り付かない場所。人気の少ないアビドス砂漠とも比較にならないシャドウが発生するせいで、まともな対抗手段を持たなかった私達には手をつけるにはあまりにも非効率的な場所だったの」

 

「でも、状況は変わった」

 

「うん。ペルソナ、だっけ。あれのお陰でシャドウへの対抗策が生まれて、黒服さんの情報で次にやるべきことが定まったからね。本当ならもっとじっくり探索したいんだけど、場所が場所だけに誰彼構わず引き入れる訳にもいかないんだって」

 

 連禁区がどれほどの土地規模なのかはわからないが、仮にも連邦生徒会名義で権利を確保している以上、そこが単なる土地であるとは思えない。

 開拓もせず打ち捨てられている本来負債としかならない土地を、それでも確保しているには相応の理由があると考えるのが自然だ。

 連邦生徒会にしか明かされていない重大な秘密がその土地にあるとなれば、確かに人海戦術などできよう筈もない。

 となれば、本来なら例外なく立ち入り禁止したいのだろうが、一ヶ月のタイムリミットの存在がそれを許さないのだろう。

 

「そういうことで、連邦生徒会側で進めていたペルソナ覚醒試験?を合格した人を集めて探索するって話になったんだ」

 

「そんなことやってたんですね」

 

「影時間適正のある生徒から何百人も選出したらしいけど、実際に覚醒したのは数人だけだったっぽい」

 

 そう上手くはいかないね~、と言いながらユメは朝食を皿に盛りつけていく。

 彼女は残念そうにしてはいるが、それでも戦力の増加は素直にありがたい。

 常にフルメンバーで活動できる保証もないし、数が増えればその穴を補えるし二手に分かれての探索ができたりと柔軟に動けるようにもなる。 

 そもそも、ペルソナの覚醒条件にしたってこちらが把握している情報がすべてである保証もないし、何ならそれさえも誤って解釈している可能性すらある。

 何もかもが手探りな中、それでも成果が出ているだけでも十分すぎる。

 

 トーストに目玉焼きといった普遍的な朝食のラインナップがテーブルに並べ終わり、着席と共に両手を合わせて食事の挨拶を済ませる。

 互いに無言で朝食に舌鼓を打っている中、静寂を破ったのはユメが思い出したような語り口だった。

 

「そうそう、それでさっき言ってた人達とあらかじめ顔合わせしようって話になってて、ご飯食べ終わったら連邦生徒会に集合だから。多分用事とかはないと思うけど、問題ないよね?」 

 

「はい」

 

「良かった~。結城君は眠ってたから後回しになっちゃったけど、他の人達はもう顔合わせは済ませてるからひとりで行くことになるけど、みんな良い娘だったから緊張しなくていいよ」

 

「ユメさんは?」

 

「うーん、私も連邦生徒会に呼ばれてるけど、それとは別件なんだよね。だから入口でお別れかな?」

 

 卒業生である立場の彼女が連邦生徒会に呼ばれる理由は十中八九シャドウ関連だろう。

 実際に彼女の強さを目の当たりにしている以上、それを遊ばせておく選択肢がないことは理解できる。だからこそ対外的にも繋がりを持たせるために彼女をここの管理人に据えたということも。

 そこまで思考し、そういえばと気になっていたことを質問する。

 

「そういえば、影時間が終わってからいきなり倒れてましたが、あれはなんだったんですか?力尽きたにしては元気そうでしたし」

 

「あー、あれね。実は私、普段は全然大した身体能力なくて、それなのに影時間の中ではあんな風に重武装しても楽に飛んだり跳ねたりできるようになるんだ。だけど私自身の技量が高まってる訳じゃないから、ああしてガッチリ防具で固めてないと不安で……。普段なら影時間終わる前に脱いでたから問題なかったけど、あの時は黒服さんがいたからね」

 

納得の次に来たのは、シロコ達に起こる現象と性質が真逆であるという事実に対する疑問。

強い者が弱くなり、弱い者が強くなる。現時点でのユメの実力が自己申告以外に不明である点を除けば、まるで性質が反転しているように感じる。

だが、それが全員に該当するならば彼女ばかりが重用される理由がない。ペルソナ使い≠影時間適正者という訳でもないようだし、そんな事実は聞いたこともなければそんな重要な情報を教えない理由も考えられない。

 よって、この性質は彼女のみに適応されるものであり、だからこそ卒業生であるにも関わらず彼女が連邦生徒会に呼ばれるほどの影響力を持っているのだろうと結論付けた。

 

 食事を済ませ身支度を終え、同じタイミングで寮を出る。

 ユメは初対面の時同様のカッチリとしたスーツを身に纏っており、周囲に人の目があるからか肩肘を張って表情も真面目な風に取り繕っている。

 見た感じ人見知りというよりも大人としての振る舞いを意識しての意図的な変化に感じる。

 普段接しているぶんには単なる年上の女性、それどころか時々幼さすら感じることもある程度には気安い距離感だが、知り合いのフィルターを外せば今の彼女はちゃんとした大人に見える。

 その変化に多少の驚きはあれど、そんなの当たり前だとすぐに思い直す。

 

 子供だの大人だの、それを区別するのは法律だったり常識だったりの酷く曖昧なもので、育成ゲームの進化みたいに特定条件でいきなり変化するような単純な理屈では定義できないものだ。

 それにしたって記憶などもまるっきり変わるものでもないし、やはり考え方としては別物であり同一視できるものではない。

 彼女は今、大人になるべく適応している最中なのだ。彼女自身の考える、立派な大人に。自己紹介の時に大人一年生と名乗っていたのもその自覚があるからこそだろう。

 そこまで気負う必要はないと言いたくはあったが、彼女なりに努力しているところに水を差すのは優しさではないと、静かにその様子を見守るに留めた。

 

 そうして、連邦生徒会の活動拠点であるサンクトゥムタワーの入口に辿り着く。

 見上げれば天を貫くほどに聳え立つそれは、キヴォトスのどの建物よりも目立つ。

 【C.A.N.A.A.N.】も高さでいえば大概なのだが、それさえも歯牙にもかけない。

 目算で比較しても最低でも3か4倍は開きがあるそれは、果たして人の手で造り上げられたものなのかさえ疑わしいほどに異質である。

 だが、そんな異質さを抜きにしても、ふとした瞬間にも背景として視界に映るほど抜きん出たそれは、権威の象徴としては十二分に過ぎるだろう。

 

「じゃあ、私はこっちだから。頑張ってね」

 

 ユメが胸元で小さく手を振りこちらを見送る。

 いったい何を頑張れば良いのかと思ったが、そういえば【I.F.I.C.】のリーダーは自分だったことを思い出す。

 今回顔合わせする相手とは今後背中を合わせて戦うのだから、初対面で険悪な仲になってはいけない。

 良好な人間関係を築くことは、戦力向上という点でも決して怠ってはならない問題だ。

 事前にゲヘナとトリニティ同士が潜在的に対立しているといった話を聞いているが、それ以外にも爆弾がどこかに潜んでいても不思議ではない。

 リーダーとはいえ、自分は所詮はキヴォトスの外の住人。そういった事情にどこまで首を突っ込んで良いものか定かではないが、だからといって完全な傍観者になれる立場でもなし。

 頭の痛い問題だが、やるしかない。

 互いに命預ける同じ志を持つ仲間同士でいがみ合うなんてこと、二度と起こって欲しくはない。

 

 指定の部屋の前まで辿り着くと、小さく深呼吸して扉をノックする。

 

「どうぞお入りください」

 

 柔らかな声色による返答に従い、扉を開ける。

 その先にいたのは、三人の少女だった。

 

「結城さん、ですね。どうぞ、こちらにお掛けになってください」

 

 そう笑顔で促したのは、修道服を学生服にアレンジしたような恰好をした女性。そして、先程の柔らかな声の女性の正体でもあった。

 着席を済ませ、改めて彼女達の姿を確認する。

 一人は、髪色も含めて白を基調とした女性警官を制服を纏った溌剌とした少女。

 そしてもう一人は――

 

「久しぶり、ですね」

 

「……ミヤコ」

 

 そこにいたのは、つい先日【C.A.N.A.A.N.】の案内役として駆り出された少女、月雪ミヤコその人だった。

 ただし、その恰好は以前見たような防弾チョッキ等で固められたそれではなく、その下に着ていた学生服のみのものだった。

 それに、気のせいでなければあの時とは違い、雰囲気が柔らかいように感じる。余裕がある、とも言える。

 あの淡々とした仏頂面で対面するよりは気楽であるのは間違いないのだが、そのあまりの変化に安堵よりも不安が先行する。

 いったい彼女に何が――そんな思考を遮るように、修道服の女性が話を切り出した。

 

「お初にお目にかかります。私、トリニティ総合学院の三年生で【シスターフッド】所属の歌住サクラコと申します。本来ならば私の方から挨拶に向かうべきところ、多忙な身故にここに至るまで顔合わせすらできず、誠に申し訳ありません」

 

 丁寧な挨拶とともに恭しく礼をするサクラコ。

 その過剰とも思える対応に瞠目するも、第一印象からも如何にも真面目な人物であるとは感じていたので、そういうものだと納得することにする。

 

「では、次は本官が」

 

 警官服の少女が勢いよく立ち上がると、力強い警察式の礼を決める。

 

「【ヴァルキューレ警察学校】生活安全局所属一年、中務キリノと申します!若輩の身ではありますが、キヴォトスの平和を取り戻すため粉骨砕身する所存であります!」

 

 サクラコとは違い、元気のよい挨拶が繰り出される。

 だが、一年生故の幼さの残った顔立ちからは警官独特の敬遠したくなるような雰囲気はなく、むしろ親しみやすさすら覚える程度には柔らかいと言っていい。

 ガチガチの犯人逮捕に携わる部署ならば欠点になるだろうが、生活安全局と聞けば市民対応がメインだろうし何ら問題はないと思われる。

 

「次は私ですね。改めまして、私は月雪ミヤコ。この度連邦生徒会直属の特殊部隊であるI.F.I.C.所属となりました。今後ともよろしくお願い致します」

 

 以前と比較して相対的に明るい調子で挨拶を済ませる。

 リンが以前、彼女の所属する学園が連邦生徒会の判断で規模縮小の憂き目に遭ったと話していたことを思い出す。

 警備員としての仕事は連邦生徒会側からの間接的な資金援助によるもので、当時の様子から鑑みるにそれは望んでやっていることではなかったのだろう。

 だが、転じてペルソナ使いとなったことで形は違えど連邦生徒会直轄の部隊として活動できるようになり、在るべきスタンスを取り戻したことで精神的な余裕が生まれ本来の彼女の気質が表に出てきたのかもしれない。

 

 三人の挨拶を聞き届け、最後にこちらも無難に挨拶を済ませる。

 そもそも自身の立場や境遇を正確に説明できるほど理解していない以上、そうなるのも当然ではあるのだが。

 だからこそ少しずつ相互理解を深めていき、信頼を掴み取る必要がある。

 そのためにも、こちらから歩み寄っていかなければならない。

 

「歌住さん、質問良いですか?」

 

「サクラコで構いませんよ。共に背中を預ける仲なのですから、敬語も不要です」

 

 ヒナやマコトと同学年でありながら、その落ち着いた雰囲気からつい敬語で接してしまっていた。

 それが悪いのではないが――なんというべきか、ある種のカリスマ性を感じたが故の無意識の反応だったのかもしれない。

 

「じゃあ、サクラコ。シスターフッドって何?」

 

「そうですね……。我々は主の御名の下、遍く救いを求める者に時に寄り添い、時に背中を押す役目に準じたりといった活動をしております。端的に申し上げれば、お悩み相談ですね」

 

「教会とかでよくある、汝の罪を告白しなさいとか、そういうの?」

 

「確かにそのようなことも行っていますが、昨今はそのような受け身ではなく我々の方から寄り添うように心掛けています。過去の統計から、無気力症患者は得てして精神が疲労していたり不安定な傾向にあり、そういった方達は自らの意思でその苦悩を吐き出しに来る気力もないことも多く……。本来なら強要するようで心苦しくありますが、こと無気力症に発展することを思えば傍観するわけにもいかず、救護騎士団の方々との協力で対応に当たっています」

 

「つまり、メンタルケアだね」

 

 思えばシャドウにばかり向き合っていて、それによる被害に対してあまり関心を持っていなかった。

 幸か不幸か、そのような手合いをあまり目撃していなかったからでもあるが、今後はどうなるかはわからない。

 

「ええ。ですが、それも所詮対症療法。我が身の不徳を棚に上げるようですが、持ち直したと思った方が後日にはということもあれば、単純に被害件数に対して人手が足りなかったりと、自らの無力に打ちひしがれる日々でした」

 

 そこまで言い終えると、サクラコはおもむろに立ち上がったかと思うと、両の手で包み込むようにこちらの手を取り真っ直ぐ目線を合わせてきた。

 

「――ですが、貴方がキヴォトスへ訪れたことで状況は一変しました。キヴォトスを破滅へと誘わんとするシャドウなる悪霊への対抗手段と共に、自らもペルソナなるその力を持って祓わんとするその在り方は、まさに主が遣わした使徒なれば!」

 

「いや、俺はなにも――」

 

「まだまだ主の恩寵は万人に行き届いておりませんが、いずれは遍くところとなるでしょう。その先達たる貴方は紛れもなく功労者であり、決して謙遜する必要などありません。知れば誰もが貴方に感謝の念を抱くことでしょう。そして、それほど我々の取り巻く環境が深刻だと捉えていただければと」

 

 一切の淀みなくそう語るサクラコの言葉に嘘は感じられない。

 どこまでも純粋な感謝と信仰心を目の当たりにし、彼女の人柄の一端を理解できた気がする。

 

「……と、すみません。貴方の置かれている事情を知っておきながら、押し付けるような感謝ばかりで。記憶喪失ともなれば相応の悩みや不安もあることでしょう。何かあれば微力ながらいつでも力になりましょう」

 

「ありがとう、その時が来れば是非」

 

 こちらの返答に嬉しそうに微笑んだサクラコが席に戻ると、挙手と共にキリノが声を上げる。

 

「発言よろしいでしょうか」

 

「どうぞ」

 

「サクラコさんが先程感謝を述べていましたが、ヴァルキューレとしてもその意見には同意するところであります」

 

「そのヴァルキューレって、文字通り学生が警察として活動しているって解釈でいいの?」

 

「はい。我々は治安維持のための活動を主としておりますが、その立場上法に触れる者達と対峙することもあります。その中には、学園都市にいながらも生徒としての権利を失った方々の存在もあり、彼女達は社会に反目する精神性を表に出していますが、実態は明日をも知れぬ身という不安を発散するための手段であることが大半であり、それはすなわち一般生徒より心が弱っているということに他なりません」

 

「……つまり、無気力症患者はそういった学籍の持たない生徒から発生する傾向が強く、ヴァルキューレはそれを解決するべく動いていると」

 

 キヴォトスにおいての学籍とはとても価値のあるものであり、その存在の有無であらゆる権利に差が生まれるという話は何度と耳にしている。

 人権まで剥奪されているとは聞いていないが、これほどまで文明が発達した環境でそれを扱う権利を失うとなれば、果たしてどれほど時代を逆行した生活を、それも年端もいかぬ子供が強いられるのかなど想像もつかない。

 そんな環境に身を置いてまともな精神でいられる方が普通ではない。故に、無気力症患者の温床となる。

 

 社会に反目する精神性がとキリノは言っているが、必ずしもそうとは言えないだろう。

 アビドスの置かれている現状も似たようなもので、経営難による生徒数の減少に砂漠化という名の災害によって廃校寸前の憂き目に遭っている状況を目撃した身としては、一緒くたにすべきではないとは思う。

 だが、ギリギリ学籍を保持しているアビドス生徒達とそうでないものとでは、こちらの考えている以上に隔絶とした差があるのだろう。それこそ、彼女達も同類に堕ちる可能性だってあり得ない話ではない。

 どこまでいっても彼女達は子供であり、権利によって護られていなければどれだけ強くても転がり落ちるしかない。

 それぐらい学籍の有無は重要であり、それ故に失った者達が抱える絶望も計り知れない。そして、シャドウはそんな心の隙を突く。

 

 物理的な強さと心の強さはイコールではない。健全なる精神は健全な肉体に宿るとはいうが、鍛えた結果ではなくあくまで特性として強靭である彼女達にはそれが必ずしも当て嵌まるとは思えない。

 思春期特有の悩みもそうだが、未成年でありながら大人のような社会性を求められるという歪な在り方は、成長過程にある彼女達にはこの上ないストレスとなっているはず。

 まさに彼女達とって、肉体ではなく精神を侵すシャドウはこの上なく相性の悪い相手と言えるだろう。

 

「はい。我々はその対策としてそんな彼女達を保護の名目で拘束し、矯正局にて厚生プログラムを経験させてから釈放後に連邦生徒会との連携のもと復学させるということに取り組んでいるようですが……やはりそう上手くはいかないようで」

 

 そう言って肩を落とすキリノ。

 連邦生徒会とヴァルキューレとの相互連携、保護する生徒からの抵抗、その政策を行う上で掛かる費用といった風に、素人考えでもこれぐらいは簡単に問題提起できる。

 特に生徒側の抵抗が一番やっかいで、素行不良者と体制側の存在はまさしく水と油。

 特に不良と警察なんてステレオタイプな対立関係で、素直に相手が従ってくれるはずもない。

 だが、反発する意思が残っていればマシな方で、むしろ素直に従う方がマズいだろう。

 何せそれは、反発する意思すら奪われるほど弱っているという証左であり、そうなった時点で手遅れの可能性すらあるのだから。

 

「幸運にもペルソナを覚醒するに至れた本官ですが、公安局と違い生活安全局は市民対応が主で皆さんの期待に応えられるか本音を言えば不安ではありますが、市民のひいてはキヴォトスの平和を取り戻すべく努力は惜しまない所存です!」

 

 キリノは背筋を伸ばしてそう宣言する。

 思い返すと、現状ペルソナを覚醒したメンバーで唯一の一年生であり、残りはシロコを除いて三年ばかり。

 しかもその三年が例外なく地位ある立場と実力を持つ人物となれば、気後れするのも無理はないと思う。

 こちらが眠っている間に顔合わせはしているとのことで、彼女もその事実は把握しているはず。そのうえでこれだけハッキリ言えるなら大したものだろう。

 

 ふと、自然と視線がミヤコに映る。

 実質の一問一答的な流れになっていたことで、最後の一人に意識が集中するのも当然ともいえた。

 

「……なんですか」

 

「いや、何を聞こうかと」

 

「別に強制されてるわけでもないのですから、無理に絞り出す必要ないのでは?」

 

 にべもなくミヤコが淡々と答える。

 紛れもなく正論なのだが、どうにかして話題を作りたいという気持ちもある。

 何せ、先の二人と違いミヤコは明らかに一線を引いた雰囲気を纏っている。それは以前より明るくなったとしても変わらない。

 だからこそ、こちらから踏み込んでいかないといつまて経っても変わらないと考えての判断だったが、今までが順調過ぎただけで誰しも簡単に心を許してくれるなんて都合の良いことはないのだ。

 

「じゃあ、思いついたらで」

 

「ええ、そのように」

 

 尻すぼみとなった雰囲気で場が静まり返る。

 そんな静寂を切り裂くように、ミヤコからアラームと思わしき無機質な電子音が鳴る。

 

「申し訳ありませんが、用事があるのでここで失礼します」

 

 アラームを切り、淡々とそう告げるとこちらの返答を聞くこともなく退出していった。

 あまりの素っ気ない態度にサクラコは苦悩で顔を歪ませ、キリノはそんな彼女を見て困惑している。

 厄介だ、そう思わずにはいられない。

 何故あそこまで塩対応なのか、どうすれば心を開いてくれるのか。

 今後の課題に頭を悩ませながらも、ミヤコとはできなかったアドレス交換を二人と済ませ、ユメの用事が終わるまで他愛のない会話で親交を深めることに努めていると、モモトークの通知が届く。

 ユメからのものと思いながら開くと、相手はモモイからだった。

 

『やっほー!早速だけど今日用事ある?』

 

『いや、特には』

 

『ならさ、今からゲーム開発部に遊びに来てよ。前に言ってたでしょ?』

 

『別にいいけど……忙しくなるとか言ってなかった?』

 

『まぁ、そこは気にしなくていいから。とにかく、来れるなら入校許可もらってくるから。場所分かる?駅前とかで待った方がいい?』

 

『多分平気。なんとかならなかったらその時にお願い』

 

『了解~。ミレニアムついたら連絡よろしく!』

 

 ミヤコの件で内心不安が渦巻いていた中、そんな事情など知らないモモイがぐいぐいと迫りあっという間に約束を取り付けられてしまう。

 別に押し切られての約束ではないので不満など一切ないのだが、昨日の今日の関係でこの距離感は正直面食らう。

 最初からこうだったと言われればその通りだが、公的な場所での交流の次が日常的に入り浸っているであろう部室というのは、流石に心を許しすぎではないだろうか。

 とはいえ、彼女のその積極性は見習うところもある。

 彼女との交流を深めることで人間関係を築くうえでの【勇気】が磨かれるかもしれない……。

 了解の返事を送り、どこか見覚えのあるキャラクターとOKが記されたスタンプが送られ、話題は終了した。

 

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