PERSONA3×Blue Archive~Re:Tales Of Our Youth Days 作:花極四季
年末年始は色んな意味で忙しい(ソシャゲ的な意味で)。でも正月休みの時ぐらい早く更新したいなぁ……。
ミレニアムでゲーム開発の手伝いやら、ヒマリたち【特異現象捜査部】から色々な話をしてからはや数日。
時間は既に日も落ちて人通りも少なくなってきた頃、リンから指定された地点でひとり待機していた。
ユメも今回の作戦に参加するのかと思いきや、例の別件で別れた時の話で何か頼まれたらしい。
流石にその何かまでは教えてはくれなかったが、彼女単独で行動することだけは会話の端々から読み取れた。
こちらは複数による作戦に対し、彼女は単独。それだけで実力も信頼も彼女の方が上であることが良く分かる。
そんなことからひとり待ち惚けていると、如何にも軍用といったこちらの倍以上の車高を持つ重厚な装甲車が現れる。
装甲車の後部座席のドアが開き、そこからひとつの影が軽快に躍り出る。
月光に晒されて現れたのは、連邦生徒会の制服を身に纏った小柄なピンクのロングヘア―の少女だった。
「――こうして言葉を交わすのは始めてでしたね。三大校の首脳陣が集まった日以来ですが、息災でしたか?」
形式的な笑顔で少女が話しかけてくる。
少女の纏う服装に見覚えがある。七神リンを始めとした連邦生徒会が着用している制服だ。
彼女と比較して幼いとも言える体躯なこともあって同じデザインである筈なのに印象はがらりと変わって見える。
そんな彼女への問いになんと答えるべきか悩んでいると、これは失礼と笑顔をそのままに少女は居住まいを正す。
「私は連邦生徒会【防衛室】の長を務めさせてもらっています、不知火カヤと申します。この度は七神生徒会長に代わりI.F.I.C.に関わる事柄の監督役として抜擢されました」
そこまで言われて、当時の記憶がおぼろげに蘇る。
当時は自分自身のことでいっぱいいっぱいだったこともあり、正直現時点でもそう言えば居た気がする程度の認識しかない。
「監督役って?」
「説明の前に、まずは乗車しましょう。誰に聞かれるかもわかりませんし、何より移動しながらの方が無駄がありませんので」
カヤの言葉に納得し、彼女に続く形で装甲車に乗り込む。
いきなり車内に入ることに警戒こそしたが、流石に連邦生徒会に扮した悪人とするには堂々とし過ぎていると判断した。
内装も外装に負けない重厚かつ無機質な機能美に溢れており、自然と身が引き締まる。
車内に明かりがつくと共に窓部に仕切りが発生し、外の様子は伺えなくなる。
運転席と後部座席にも最初から仕切りが存在していたこともあり、ほぼ完璧な密室が成立していた。
車が走り出すのを肌で感じると、それを皮切りにカヤは先程の話題の続きを語り始める。
「さて、監督役の件ですが……何も特別なことはありませんよ。I.F.I.C.が連邦生徒会の承認を受けた組織であり、その代表であるという証明のための肩書です。私自身は基本現場には出ませんが今回は初の本格的な活動の初日ということでの特例で、現場のリーダーは変わらず貴方の役割となります」
「じゃあ、何のための監督役?」
「連邦生徒会管轄の組織であるという証のため。いわゆる責任を取る立場、ってやつですかね。治安維持組織である防衛室のトップが兼任するにはなにかと都合がよかったのでしょう」
カヤは薄い笑みをこぼす。
貼りついたような笑みからは感情を読み取れず、今まで知り合った生徒と違い明確な壁を感じる。
狭い車内の中に見えない壁が真ん中に存在するようで、妙な圧迫感でどうにも落ち着かない。
「現在の防衛室はキヴォトスの治安維持を担っていることはそのままに、無気力症によって表向き平穏となって仕事が減った穴を埋めるように今のポジションが与えられた感じですね。それによって活発化する各学園との交流、そこから起こりえるトラブルの調停だったりも私達の役目だなんて、貧乏くじもいいとこだと思いません?」
「それは……お疲れ様」
「ありがとうございます。この立場にいると、仕事だからやって当たり前とねぎらってくれる人もごく僅かなんですよね。確かに感謝されたくてやっているつもりはありませんが、仮にもキヴォトスの治安維持を担っているのですよ……?しかも生徒はすべからく銃を所持している以上、治安を乱す立場になりかねないというのに、あたかも自分は悪いことをしていないという顔でいるのですから……」
座ったまま項垂れるカヤの姿からは、打って変わって哀愁が如実に伝わってくる。
連邦生徒会を始め、学園の運営に携わっている生徒たちがどれぐらいの負担を強いられているのかは想像もつかないが、少なくとも自分のイメージする社会人と遜色ないものと感じる。
彼女達にとっての当たり前は、自分にはこの上なく歪に見える。
単なる常識の違いという言葉で片付けられない、潜在的な歪み。それが何なのかを言語化することはできないが、そういうものだと納得することは難しいことだけは確かだ。
「とはいえ、彼女達の協力なくして成り立たないのも事実。影時間適正は人格で区別されるわけでもないようですし、数も少ないこともあって襟好みできる余裕もありません。だからといって、こちらも影時間に関するまともなノウハウなんてあるはずもなく、常に後手後手の対応を強いられての毎日で正直限界でした。ですが――」
そこで言葉を区切りこちらに顔を向けたかと思うと、カヤはこちらの手を取り強く握る。
「貴方がキヴォトスで観測されてから、状況は指数関数的に好転し始めています。影時間という我々生徒をピンポイントで狙ったような不利なフィールドでの戦いに、ペルソナという巨石が投じられたことで、シャドウによる被害も著しく減少。それに伴い増えることはあっても減ることはなかった無気力症患者の発生数も減りました。本当に感謝しています」
薄い手袋越しに伝わる熱と小さな掌から彼女の偽りのない感情が伝わる。
未だに掴みどころのない部分はあるものの、少なくとも彼女のキヴォトスを護りたいという意思に偽りはないし、悪人ではないことは間違いないだろう。
「本来、貴方はキヴォトスとは無関係の部外者。色々と不審な点があることを理由に体よく利用されていることを不本意に思っていることでしょう。言い訳でしかありませんが、だからこそ貴方の待遇には最大限配慮しており、可能な限り不自由にさせないよう努めています。その程度の見返りで死地に赴け、なんて私からは口が裂けても言えません。ですが同時に、貴方なくして影時間をどうにかすることはできないという確信もあります。ですので、困ったことがあればいつでも頼ってくれて構いません。貴方にはその権利があります」
「それは嬉しいけど……そこまでしてもらうのも」
「……記憶喪失だからなのかは分かりませんが、どうにも貴方は色々と"薄い"ですね」
「薄い?」
「希薄、と言い換えてもいいでしょう。存在感、感情、それに――恐怖。前者二つは個性の範疇といえますが、最後は違う。貴方はこれから死地に赴くのですよ?にも拘わらず、貴方からは一切の恐れを感じない」
「そんなことは――」
「キヴォトス外の人間は銃弾ひとつで瀕死になると聞いています。我々にとってはその程度、しかし貴方はそうじゃない。こういう言い方は失礼でしょうが、仮に記憶喪失以前に同じ経験をしていたのだとしても、まともな神経ではありませんね」
そこまで言い切られ、途端に車内は静かになる。
運転音のみが車内を支配する状況となり、それを切っ掛けにカヤの言葉を反芻する。
死が恐ろしくない、なんてことはない。彼女の言う通り感情が希薄な部分があるからそれが表に出づらいだけで。
でも同時に、死への忌避感が薄い自覚もある。転じて、生への執着が薄いというべきか。
彼女達のように丈夫な肉体を持たないにも関わらず、こうして淡々と現状を受け入れているのは、異常と捉えられても仕方ない部分はある。
アロナのバリアがあるから、なんて安易な理由ではない。仮にそれがなかろうと大して違いはないだろうという確信がある。
「……まぁ、そのおかげでリーダーである貴方が常に冷静に対処できると考えれば、むしろ都合が良いのでしょう。そういう意味では、貴方をリーダーに選んだ連邦生徒会長は慧眼だったのかもしれませんね。各校の代表の誰かがリーダーになるとそれが軋轢の原因になりかねない、というのも理由なのでしょうが……それでも心情的には納得しかねる部分はあります」
「心配しなくても、俺なりにやれることはやるつもりだよ。それに、別にリーダーに拘ってるつもりもないし、もしそういう人が現れればその時には譲るつもり」
「そういう問題ではないのですが――まぁいいでしょう。それより、もう少しで到着しますよ」
呆れたように小さく溜息を吐くカヤ。
だが、同時に彼女からの期待を感じる……。
我は汝…… 汝は我……
汝、新たなる絆を見出したり……
絆は即ち、まことを知る一歩なり。
汝、"悪魔"のペルソナを生み出せし時、
我ら、更なる力の祝福を与えん……
車窓から見える世界はいつの間にか、都会とは程遠い荒野一色で満たされていた。
思わずシッテムの箱で現在位置を見ると、待ち合わせ地点とは数時間掛けても辿り着けないほどの距離まで移動していた。
現在時点でおおよそ一時間経過していれば良いかどうかなのに、その矛盾をどう埋めたのか。思わずカヤの方へと視線を向ける。
「驚くのも無理はありません。実は連邦生徒会側で秘匿した特別な地下ルートを用意していまして。『必要になるから』という理由から、どう説得したのか各学校の当時の生徒会長から許可を取り、地下ルートを各土地内に建設させることに成功したのです。このルートは連邦生徒会の役職持ちにのみ存在の開示されていましたが、今まで一切使用されることはありませんでした」
「……それって、とんでもないことなんじゃ」
「はい、偉業なんてものではありません。連邦生徒会は行政関連に大きく影響力を有していますが、あらゆる越権行為を押し通せるほどの権威はありません。ましてや、連邦生徒会側からしても癒着と捉えられない危ない橋を渡っているのですから、内部からも反対の声が挙げられて然るべき行為。それもこれも、あの人個人の信用――カリスマがもたらした結果です」
「リン――連邦生徒会長でも無理?」
「――彼女では無理ですね。裏方業務をこなす能力は十二分にあるのですが、こと政治や外交といった方向ではちょっと……。彼女自身特別な出自ということもなく、文字通り自分の腕っぷしでその座を勝ち取りました」
まぁ、最後の後押しは運が良かった――いや、悪かった結果ですが。
そう皮肉な笑みを浮かべながら、カヤは続ける。
「事務処理能力のようなシステマチックな部分は優れていても人を纏め上げる才までは有していなかった、というのが私の評です。あ、これ本人には言わないでくださいね。間違いなく静かにキレながら誰も見てないところで落ち込みますから」
そう茶化すように言葉を締めたカヤに内心で同調する。
短い付き合いではあるが、真面目で言葉遣いこそ丁寧だがそれ故の堅物さも感じており、カヤの言う通りそういった事柄が得意とは思えない。
無論、すべてを彼女が担う必要がない以上それ自体が大きく問題になることは早々ないだろうが――実質のキヴォトスの頂点に君臨するには彼女はなんというか、普通だ。
それこそカヤが言ったようなカリスマのように、あらゆる人間を惹きつけるほどの魅力があるかと言われれば、とてもそうは思えない。
失礼を承知で例えるなら、彼女は凡人だ。普通の、ごくあり触れたどこにでもいる人間のひとり。
連邦生徒会長に選ばれるほどに能力を有してはいるのだろうが、それとは別に誰を差し置いたとてその座に相応しい人物かと言われれば言葉に詰まる。
何故こんな手前勝手な評価ができるかと言われれば、これも記憶の残滓を掘り起こした結果だ。
ウェーブの赤髪が特徴的な一年上の先輩で、奇しくもその人も女性で生徒会長だった。
彼女を一言で纏めるなら、女傑だった。
さる企業の令嬢で、文武両道の才を有しながらそれに胡坐をかくことなく向上心を絶やさない、自他共に厳しくも優しさも兼ね備えた人物。
彼女もまたペルソナ使いであり、苛烈さと繊細さを両立した戦いぶりは頼もしいの一言に尽きた。
実際、日常生活においても彼女を信奉する人は数多く存在していたし、そうさせる実力と風格を兼ね備えていたことも間違いなかった。
そんな彼女の印象が記憶にあるせいか、それと比較するとどうしても見劣りしてしまう。
これはリンが悪いというわけではない。生まれながらに人の上に立つことを求められてそのための教育を施された人間と、行政を纏め上げる能力を突き詰めただけの人間では、そもそも勝負の土台が違う。
あくまでも個人の理解度からの判断であって、的外れな可能性も大いにあるが、そこまで大きく外れてはいないと思う。
リン自身は恐らく連邦生徒会長を補佐する立場こそが天職であり、彼女以外にその役が務まらなかったからこその不幸だったと言える。
「……じゃあさ、さっき言ってた地下ルート作りを認めさせた人じゃ駄目だったの?」
ふとした疑問を口にするも、カヤは答えない。
表情からは色々と複雑な感情が見て取れる。
「……無論、推しましたよ。私だけではありません、彼女を知る人達の大半は彼女こそが連邦生徒会長に相応しいと声を大にしていました。人柄、能力、影響力――そのどれもが過去の連邦生徒会長でさえ比肩しうる者がいないのではと思わせるほどの人物です」
「でも、そうはならなかった」
「彼女自身が辞退しましたからね。ですが、我儘に押し通すのではなく彼女を推す人々全員と直接対峙し、辞退する旨とその理由を説明し回ったりと真摯な対応をした結果、むしろ信奉者はそれ以前より増えるという結果になりましたが、そうして今に至るわけです」
「全員って、どれくらい?」
「さぁ?キヴォトス全域に住む人々の具体的総数は不明ですが、ざっと見積もっても億はくだらないでしょうね」
「億って……無理じゃない?」
「実際は億以下であることは間違いありませんが、それでも現実的な数字にはならないでしょうね。ほぼ確実に誇張された数字でしょう」
ですが、と言葉を区切る。
「彼女ならそれでもやってのけてしまうのでは――そう思わせる何かを持つ人物であることもまた事実です。それほどの実績と人徳が彼女にはある。だから彼女に嫌われたくないという理由で素直に受け入れた人達は数多くいたと思われます」
言葉にこそしなかったが、カヤの語るその人物を聞いてそら恐ろしいものを感じた。
まるで漫画に出てくるような完璧超人で、キヴォトスへの影響力に加え信奉者も多数。
そんな人物が一声掛ければ、あらゆる人間が私兵ともなりかねない。
妄想が過ぎると思う。カヤも言う通り、噂が誇張した部分もあるだろうし杞憂となる可能性の方が圧倒的に高い。
それでも、そんな自分にとってぶっ飛んだことが常識としてまかり通っているのがキヴォトスであり、そのせいで正常と異常の境界線が曖昧になっている部分もある。
こちらからすれば、キヴォトスはまるで三分の二抜き取られたジェンガの塔のようなものだ。何故維持されているのか、いつまで維持されるのかまるでわからないぐらいのバランスで成り立っているに見える。
それが表面上しか見えてないからこその意見だとしても、やはり違和感が拭えないことに変わりはない。
とはいえ、その不安を口にしたところで何かが変わるとも思えない。
所詮は外部の人間、しかも半年も滞在していない者の意見なんて与太話で終わるのがせいぜいだろう。
ましてや、かの人物の影響力がある程度事実だとすれば、それを否定するような言葉は翻って自らの立場を脅かす行為となりかねない。
依然として不安定な立場である自分がそのようなことになれば、悲惨な末路は避けられないだろう。
これだけ影響力のある相手のことだ、アンテナを張っていれば自然と耳に入るはず。
それを頼りに少しずつ情報を集めていき、情報の確度を高めていくべきだろうと取り敢えず結論付けた。
「着きました」
窓の外は荒涼とした大地で満たされており、おおよそ生命の息吹は感じられない。シャドウが生息するにはこの上ない良環境だろう。
車両から降り、砂利と乾いた風の感覚を一身に味わう。
正面を見据えた先にはヒナやネルといった顔馴染みに始まり、先日顔合わせしたばかりのサクラコ達と、知る限りのペルソナ使いが既に集合していた。
「重役出勤だな、結城。このマコト様を待たせるとは、既にリーダー風を吹かしているようだな」
「別に大して待ってないでしょ。その無駄に突っかかるの、内輪だけならいいけど各校の生徒の前ぐらい自重して。申し訳ないわね、マコトの代わりに謝罪するわ」
最早見慣れた二人のやり取りを皮切りに、自然とこちらに皆の視線が集まる。
だが、よく見ると以前とは雰囲気が違うと感じ、すぐにその理由を察する。
彼女達が制服の上から独自に軽装の防具を纏っており、共通して腕にI.F.I.C.と刻まれた青の腕章を付けていた。
その視線の意図に気が付いたであろうカヤが説明を始める。
「あれらは連邦生徒会からミレニアムの技術部門に資金提供して作られた、対シャドウを想定した装備です。個人の意見を参考にオーダーメイドしてあるので運動性はそのままに、軽量ながらに技術の粋を結集させたことで頑丈さも担保されています。あの腕章は隊としての統一性を持たせる意図に加え、特殊な素材を使用してPCを通じて簡易的な位置把握を可能としています」
「本格的だね」
「今後の探索にそれだけ力を入れているということです」
そして、これは貴方の分の装備です、とカヤの手から防具が手渡される。
デザインや質を語れる審美眼は持ち合わせていない。だが、この装備に込められた願いだけは、少しばかり理解できる。
「こちらの判断でデザインを都合させてもらいましたが、装着に不都合はないかと」
手渡されたのは、普段の学生服のデザインを参考にした上下を黒で統一した服装に、対照的に白で配色された召喚器を収めるためのガンベルト。
こんなものがまさか用意されているとは思わず漫然と観察していると、上着の裏地に横開きの巨大なポケットがあることに気付く。
それこそシッテムの箱を入れのに丁度良い大きさで、以前から欲しいと考えていたものがお出しされたことに驚くが、シッテムの箱がバリア機能を有していることは周知されているので当然の措置でもあった。
前線で切った張ったをするには邪魔になりかねないが、彼女達との身体能力の差を鑑みれば恐らく後方支援が主体となるだろうし、運動性を損なうことはないだろう。
カヤに促され、装甲車に中に戻り着替えを済ませる。当然、シッテムの箱も胸元に収納する。
以前の身体検査で把握済みとはいえ、本当にピッタリでその職人技に感嘆する。
着替えを終え外に出ると、再び視線がこちらに集中する。
「さて、これで皆様の準備は万端ということで。私のことは今更紹介するまでもないでしょうが、最低限だけ。連邦生徒会防衛室長兼I.F.I.C.の統括を任されています、不知火カヤです。とはいえ、我々に立場の上下はありません。学年も身分も肩書も関係なく、垣根を越えて手を取り合い、互いが互いを支え合う。連邦生徒会はそれを望んでいます。特にゲヘナとトリニティ、言いたいことは分かりますね?」
「私は元よりトリニティに隔意はないわ」
「キキ、私は公平だからな。トリニティだろうとミレニアムだろうと、敵となるならば潰し、助けを請われれば手を取らんこともないぞ」
「……正義実現委員会としてはともかく、剣先ツルギ個人にその意思はない」
「ツルギさんと同様、私にもその意思はありません」
「ひとり不安が残る発言をしましたが、まぁ良いでしょう。……と、この部隊のリーダーは結城さんですからね。さぁ、何か彼女達に言葉を」
それ以上言葉を紡ぐことなくカヤは一歩下がり、自然と静寂が訪れる。
いきなり話を振られて軽く焦りを覚えたが、すぐに意識を切り替える。
「故あってリーダーに選ばれた結城理です。リーダー選出に関して各々思うことはあると思う。俺自身やり遂げられるか不安もある。何せ自身の記憶さえ不確かな状況なのに、皆を引っ張っていけるなんて楽観的な考えは持てないし、言いたくない」
これは紛れもない本心で、これから死地に赴く前のリーダーの発言としては後ろ向きだという自覚はある。
リーダーならばこういう時にこそ仲間のテンションをあげるような言葉を選ぶべきなのだろう。
だが、慣れないことをして失敗すればそれこそ本末転倒というもの。
だからこそ、自分なりのスタイルで結果を出していくことが、最善の近道と信じて進むだけだ。
「それでも、求められたからにはやり遂げるつもりだ。今はその決意を見守って欲しい」
自分勝手で拙い言葉を言い終え、訪れる静寂。それを破ったのは、シロコの言葉だった。
「――私も、何もわからないところをホシノ先輩達に何度も助けられてきた。立場も境遇も違うけど、記憶のない苦しさは理解できるつもり。だからじゃないけど、私は貴方の覚悟を見届けるつもり。かつて先輩達がしてくれたことを、私も継いでいきたい」
「……ま、そう気負うなよ。お前にできないことはあたし達で補うし、その逆も然りだ。お互いやれることをやってりゃあ、自然と最良の結果が出せる。できないことは少しずつできるようになればいいだけの話だ」
「若輩の身ではありますが、本官もその一助になれればと思います!」
「ええ、存分に私を頼ってください。この力があればあのような化け物、物の数ではありません」
各々がこちらを励ますように言葉を紡いでいく。
言葉を通じて、皆から信頼が伝わってくる……。
我は汝…… 汝は我……
汝、新たなる絆を見出したり……
絆は即ち、まことを知る一歩なり。
汝、"愚者"のペルソナを生み出せし時、
我ら、更なる力の祝福を与えん……