PERSONA3×Blue Archive~Re:Tales Of Our Youth Days   作:花極四季

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ブルアカらいぶ見ながら仕上げました。
四人確保分の石はありません。たすけて。


28話

「――と、良い感じに立ち上がりそうなところ出鼻をくじくようで申し訳ありませんが、今回の探索は初回ながら二部隊に分かれて行われます」

 

 決意表明を経てどこか意気軒昂とした空気が浸透しつつあった中、それを一歩引いた場所から見ていたカヤが冷や水を浴びせる。

 そんな空気を払うかのように、ミヤコの力強い挙手が上がる。

 

「なんでしょうか、月雪ミヤコさん」

 

「はい。まず前提として今回の作戦行動における目標の提示に、少数精鋭である戦力を分散する意図の説明を求めます」

 

 当然とも言える疑問。現状では説明不足もいいところである。

 しかし、それは予想通りと言わんばかりにカヤが間髪入れずに説明を始める。

 

「作戦行動の目的ですが、青輝石と呼ばれる影時間内でも機械類を使用可能とするエネルギー物質の確保になります。以前よりそれを利用した通信機器等の運用は行われていましたが、需要に対して供給量が慢性的に改善されていません。理由は青輝石は影時間のみでエネルギーの性質を発生させると共に青白く発光するのですが、現実世界では石ころと遜色ない性質のため時間外での回収は現実的ではないからです」

 

「では、今まで確保してきた青輝石はどのように確保してきたのですか?やはり影時間の中で探索を?」

 

「そうですね。ただ、学園の殆どがコンクリートで舗装されているので近辺では石ころなんてそうそう見当たりませんし、仮にそんなところにあっても大きさも品質もたかが知れています。人通りの多い場所は人海戦術でとっくに狩りつくしてしまいましたので、あとは人通りの少ない僻地しかないのですよ」

 

「それに、今でこそ抑えられてるけど、数年前は銃撃戦やら爆破やらが頻発していたことを考えると、ここらに使える青輝石とやらが残っていたこと自体がそれこそ奇跡のようなものじゃないかしら」

 

「ヒナさんの言う通り、それらしき性質の残骸はそれなりに見つかりましたが、実用に求められる品質となるとかなり限られてしまい、自転車操業でどうにか繋いでいたのがとうとう間に合わず、といった次第で」

 

「だから、ここみたいな人の手の届かない場所に足を運んだと?」

 

「それだけが理由ではありませんが、まぁそうですね。シャドウは人口の少ない地域ほどより数を増やすので、必然的に僻地の探索は後回しになります。こと青輝石のような影時間限定の物質となれば、日中探すのも現実的じゃありません」

 

「そもそも、シャドウの脅威は影時間内ならどこでも発生しうる以上、何をしてもリスクは常に付き纏う。奴らのテリトリーで火事場泥棒をするのだから、相応の準備をしなければ餌食になるだけよ」

 

「……なるほど、そこで二部隊に分ける理由に帰結するわけか」

 

 ツルギの呟きに頷くのは三年生達ばかりで、それ以外は疑問符を浮かべ首を傾げる。

 

「えっと、本官はまだ良く理解できてないのですが、詳しく説明して頂いても?」

 

「……時間がないから端的に言うぞ。我々は学園の垣根を越えて結成されたチーム。だが、それ故に運営方針の違いから常日頃から足並みを揃えるのが難しい。つまり、現状のようなフルメンバーが集まる状況が今後いつ生まれるかが想定できない。ここまではいいな?」

 

「活動が深夜帯と考えれば時間の工面自体はそこまで問題ないだろうが、日中の行動による疲労によるパフォーマンスの低下を考慮すればそうはいかない。文字通り命懸けの戦場に身を置くからには、中途半端な戦力はむしろチームの足を引っ張る要因となりかねない。だからこそ、この機会で明確な成果を挙げなければ――最悪私たちは破滅する」

 

 遊びのないどこまでも淡々としたツルギの言葉が、静まり返った世界にしかと響く。

 正義実現委員会の部長としての貫禄もあって、憶測の域を出ない言葉さえ真実味を帯び、三年以下の全員が静かに身震いする。

 

「そんな貴重な一夜で探索する上で、一部隊が纏まって行動するのはあまりにも非効率だ。安全第一、なんて悠長なことを言えるほどの余裕はない。しかし、人海戦術が通用するほどシャドウは容易い相手ではない。探索効率と戦力の維持、そのバランスを考えた結果の二部隊編成ということだ」

 

「な、なるほど……」

 

「それだけじゃないわ。先日大型シャドウが観測され、その際にそれを手引きしたと思われる人物が現れたのだけれど、ソイツは我々の知らないシャドウに関する情報を語った後、去り際に次の満月に再び現れることを示唆する発言をしたわ」

 

 そうよね?とこちらへ視線で問いかけるヒナの視線に頷く。

 そのやり取りに気付いてか否か、ミヤコが食い気味にヒナへと問いかける。

 

「巨大シャドウって、そんな情報聞いていません。それに、そんな奴を誰が――」

 

「この情報は本来トップシークレットよ。発言の信憑性も不確かなまま情報だけ出回れば悪戯に混乱を招くだけ。こうして伝えたのは、貴方達も今後その人物――いえ、【ゲマトリア】なる組織の一員と関わることになる可能性が非常に高いから。そして、発言の真偽はどうあれ再びあの脅威が現れることを示唆された以上、次の満月――つまり約一ヶ月の間に対策を取らざるを得ない。今度はご丁寧に私達の前に現れる保証などない以上、可能な限り被害を減らすためには影時間内での通信機能を復活させることは急務。そういう意味でも今回の任務を失敗するわけにはいかないの。わかったかしら」

 

「……はい」

 

 情報の暴力でミヤコを圧倒したことで、無理やり話題を切り上げる形となる。

 ヒナは二番目の疑問に答えることはなかった。

 話の流れからか、はたまた意図的か。どちらにせよ、今の時点でそれを聞ける時間は残されていない。

 ミヤコもそれを理解しているからだろう、納得していないことが顔に出ていながらも追及は

 

「話はそこまで。二部隊に分けると話しましたが、メンバーの選定はこちらの一存で選別します。第一部隊はリーダーを結城とし、以下は砂狼・中務・月雪・歌住の五人。第二部隊は羽沼をリーダーとし、空崎・美甘・剣先の四人です」

 

「第二部隊のリーダー選出に関して意義を――」

 

「却下です。ツルギさんが仰っていた通り、再編による議論をするほどの時間は残されていません。適性と戦闘時のポジションを見据えた結果ですので、あとは現場判断でお願いします」

 

 挙手すら惜しいと言わんばかりの反応でヒナが反論しようとするも、返す刀でカヤに論破され、今度はヒナがミヤコと同じ表情をする羽目になっていた。

 

「連邦生徒会は肩書だけの蒙昧ばかりと思っていたが、私をリーダーに選んだ貴様はその限りではないようだ。なぁに、私の最善最高の指揮でせいぜいコキ使ってやるさ」

 

 不敵な笑みと共にこれでもかと言わんばかりに胸を張るマコトを、第二部隊のメンバー全員で白んだ視線で見つめている。

 状況が状況なら以前のように反撃されていただろうが、そこは空気を読んで黙っている。対照的に、それをわかっているからこそマコトは却って饒舌になる。

 そんな性格だからこそリーダーに任命されたことに意義を申し立てることは自然な対応ではあるが、能力面で見ればカヤの目利きは特別間違っているとは思えない。

 

 マコトのペルソナは攻撃に特化した三人と違い、状態異常や補助に特化している。

 前衛をネルとツルギ、中衛をヒナとするなら、完全な後衛であるマコトは戦場を俯瞰し戦況を操るに相応しい。

 主に三年生組からは辛辣な評価を受けてはいるが、ゲヘナという巨大な学園のトップという肩書は決して伊達ではないはず。

 少なくとも、命懸けの戦場においてもふざけるような人間ではないと判断したからこその選出であり、その判断ができないような手合いにあのリンが丸投げするとも考えにくい。

 ――或いは、第二部隊の対シャドウ戦闘経験が第一部隊と比較して抜きん出ているからこそ、リーダーが実質不在でも個々の判断でどうにかなるだろうという考えからの采配の可能性もある。だからこそ現場判断という言葉が出てきたと考えれば納得もいくし、なんならマコトが役割に徹したとしてもそうなる予感すらあった。

 

「第一部隊は、結城さんとシロコさん以外はペルソナを実戦投入するのは初めてなので、あまり無理はせず結城さんの指示に従い、シロコさんは三人へのフォローを主に行動するのがよろしいかと。資源は大事ですが、それは人材にも言えることですからね」

 

 第一部隊はそれに了解の意を示す。

 部隊ごとに固まり簡単な挨拶を済ませ、カヤから最後の説明が始まる。

 

「今回目標とする地点は、この丸で囲んだ二つの建物です」

 

 アナログなラミネート加工された地図が手渡される。

 地図の中にひと際大きく丸で囲んだ場所があり、それぞれ左右対称な位置に建てられているようで、その大きさも相当なものと伺える。

 ただ、縮尺的に彼我の距離は相当離れており、これを二部隊に分かれて捜索するとなると、万が一片方に何かあっても救援に向かうのは難しいだろう。

 

「この一帯は連邦生徒会が管理という名の放置をしていた土地で、その理由はあまりにも謎が多いからですね。ミレニアム発足以前から存在する謎のハイスペック防衛ロボットに、ミレニアムの技術でも解明できない謎多き設備の数々と、明らかに我々の技術の先を行くオーパーツが集まる土地なのです」

 

「あたしも噂程度にしか知らねぇけど、ミレニアムの急激な発展にはこの土地の技術が関係しているとかなんとかって奴」

 

「なるほど……それを狙ってミレニアムの土地を決めたのか、偶然見つけたことで今のミレニアムの発展があるのか。なんにせよ、与太話というには根拠となる材料は揃っていますね」

 

「それ以上に、今のミレニアムの発展に寄与しながらも未だその全貌が明らかになっていない施設の底知れなさが恐ろしいまでありますね……」

 

「ん、お宝いっぱいありそう」

 

「実際、やろうとしていることは墓荒らし――いえ、トレジャーハントのようなものですし認識は間違ってないかと」

 

「仮にも警察に身を置く立場としては気が引けますが、キヴォトス全体の平和のためとあれば致し方ないのでしょうか……?」

 

「大丈夫、一度やれば二回目からは抵抗感なくなる」

 

「いや、そういう問題ではないですよね?」

 

「顔バレが怖いなら、覆面も用意してある」

 

「いや、用意周到過ぎません?もしかして、何か前科でもお持ちで……?」

 

「ないよ。まだ」

 

「なんですかその意味深な反応!」

 

「立場や心情として思うところはあるのは当然ですが、今の我々は連邦生徒会の傘下で行動する超法規的な部隊。平時の立場と切り離して考えなければ何事も為せないかと」

 

「ミヤコさんのおっしゃる通り、私自身平時はシスターフッドの長を務めさせてもらっていますが、この場においてはただの歌住サクラコとして臨んでいます。ですので、どうかそういったものは気にせず仲良くしていただければと」

 

「わかった、サクラコ」

 

「……!はい、私もシロコさんと呼ばせていただいても?」

 

「ん、問題ない」

 

 ネルが出した話題を皮切りに、第一部隊の中で交流が始まる。

 取り敢えず、第二部隊と違って対人関係で問題が起こりそうにないことは幸いと言える。ただ――

 

「……どうしました?」

 

 無意識にミヤコに視線を向けていたらしく、怪訝な表情を浮かべられる。

 

「なんでもない。それより、初の実戦らしいけど大丈夫?」

 

「いえ、シャドウとの戦闘自体は覚醒以前よりありましたので、厳密には違います。自主訓練も怠っていませんので、遅れを取ることはありません」

 

 ミヤコはそう力強く宣言すると共に、腰にぶら下げた複数の斧に手を添える。

 いわゆる近接戦闘用のアックスと投擲用のトマホークのようで、SRT入学に備えて事前に必要とされる技能は独学で習得済みとのこと。

 それを語るミヤコだが、表面上はいたって平然としているように見える。

 だけど、彼女の瞳の奥に秘めた熱にどこか見覚えがある。

 性別も人格も真逆でありながら、その正義感と野心が入り混じった情念の炎はまるで瓜二つ。

 気のせいかもしれない。類似例を知るが故に過敏に反応しているだけかもしれない。

 それでも、放置はできない。その瞳を持った少年が取ってきた行動を知っているからこそ、見過ごすことはできない。

 

「無理はしないでね」

 

「それは難しいでしょう。防衛室長はあのように計らってくれていましたが、事前の会話を思えばたとえ無茶を敢行してでも今日中に結果を出さなければならないのですから」

 

 ミヤコの言葉は紛れもなく正論だ。反論する余地などありはしない。

 だが、そうではない。そんなことを言いたいわけではないのに、それを正しく伝えることができないでいる。

 大した付き合いもない相手から、過去の事例を挙げて知った風に言って聞かせたところでむしろ反発を招くだけだ。

 個人の関係に支障が出るだけならいい。だが、今の自分はいち部隊を預かるリーダーであり、ひとつの対立が全体の危機を招くことになりかねない。

 歯痒くはあるが、やれることはせいぜい不測の事態に備えることだけだ。

 

「――そろそろですよ。影時間の突入と共にシャドウに包囲される可能性もあります。影時間に入ればガードロボットも停止しますので、その隙に警備を突破。道中現れるシャドウとは可能な限り交戦を避け、消耗を抑えてください」

 

「了解。だけど、カヤはどうするんだ?車は動かなくなるし、まさかここに留まるつもりじゃ」

 

「もちろん、ここに留まりますよ。そのための対シャドウ装甲車ですし、この周辺はシャドウの出現数は少ないことは確認済みです。運転手は影時間適正がないので戦力にはなりませんがね」

 

「それって普通に危ないんじゃ」

 

「問題ありません。なにせ――」

 

 カヤの言葉を遮るように、世界が色を変える。

 深緑の闇をを月光が照らす、根源的恐怖を揺さぶる異世界が姿を現したのだ。

 そして、カヤの懸念通り少数ながらもシャドウが周囲に現れる。

 その中の三体が、二部隊と位置取りで孤立していたカヤに迫る。

 細目に笑みを浮かべていたカヤの目が、鋭くシャドウを射貫く。

 

「シッ――!!」

 

 飛び込んできたシャドウを月を切り裂くようなハイキックで迎撃。勢いをそのままに地面に叩きつけ、砂埃が舞う。

 地面を軸に回転し側面から二体のシャドウを纏めて蹴りつけると、袖から滑り込むように現れたプッシュダガーを、吹き飛んでいるシャドウに向けて投擲。

 それらは一切の揺らぎなく眉間に寸分違わず命中し、ふたつの影は形を保てずに消滅。

 依然足蹴にされている残りの一体を見下ろしながら、自らのヘイローを掴み、握り潰す。

 

「イカロス!」

 

 瞬間、カヤの背後にはまるで蝋で出来た巨大な両翼を広げた女型の天使が降臨する。

 天使が空を見上げると共に、頭上に巨大な火球が出現する。

 カヤが後方へと飛び退いた瞬間、それは足蹴にしていたシャドウへ向けて落下。

 業火に呑まれたシャドウは、炎が鎮火した頃には文字通り影すら存在しなくなっていた。

 

「――とまぁ、防衛室長の名は伊達ではないということです。なのでご心配なく」 

 

 後ろ手にこちらに振り返るカヤからは、これといった疲労を感じさせない。

 あまりにも淀みない動きでシャドウを瞬殺した姿に、それを目にした一同は言葉を紡げずにいる。

 まさか彼女自身がペルソナ使いだったこともそうだが、その身のこなしは決して素人のそれではない。

 派手さこそないが、余分を削ぎ落した身のこなしから繰り出される体術の鋭さは、戦士というよりも暗殺者を彷彿とさせる。

 それこそ、今の白を基調とした制服ではなく真逆の黒で身を纏えばまさにといった様相となるだろう。

 

「……なるほど、確かに。連邦生徒会なぞ尻で椅子を磨くだけが仕事と思っていたが、少なくとも貴様はそうではないらしい」

 

「他ならぬ万魔殿の議長にそう評価されるのは、悪い気はしませんね。いずれ本当にそれが許されるほどの平和が訪れれば良いと、節に願っていますよ」

 

「キキキ、このマコト様がいるのだ。その願望は約束されたものであり、貴様らは我が王道の足跡を有難りながら辿っていれば良い!」

 

 マントを翻しながら高笑いで勝手にマコトが歩き出したかと思うと、声に反応してかシャドウに取り囲まれる。

 その様子を見ていたヒナ達第二部隊の面々は溜息を吐きつつも救出に当たる。

 

「……大丈夫でしょうか」

 

「問題ありませんよ。あの一見して考えなしな行動も、彼女の計算のうちでしょうし」

 

「私にはそうとは思えない。なんていうか、貫録が感じられない」

 

「そう捉えるのも無理もありません。それは政治の場に身を置いて初めて培われる見識であり、一般人には縁遠いものですから」

 

 キリノとシロコは当然とも言える感想を口にする。

 とはいえ、カヤの言う通りあれが素の振る舞いだとすれば、そんな人間に実質的国のトップの座が務まる訳がない。

 

「私もマコトさんのことは詳しく窺い知りませんが、纏まりの薄いゲヘナの治世を纏めながらトリニティに後れを取らない政治手腕は、まさに悪魔的と言えるでしょう。少なくとも、立場相応の能力を持ちえていないということはあり得ないかと」

 

 サクラコが付け加えるように自身の見解を語る。

 二人と違い三年生である彼女の見識はカヤと類似するものであり、彼女自身もまたシスターフッドなる組織の長である。

 漫然とした不安を口にするだけの二人と比較して、言葉の重みが違う。

 

「マコトのことは今はどうでもいいでしょ。それより、時間がないから俺達も行かないと」

 

 このままだとマコトの話題で時間を悪戯に浪費しかねないと思ったため、会話に割って入り静止する。

 それを皮切りに、本格的に彼女達の意識が切り替わり始める。

 ただひとり、会話に混ざらずにいたミヤコを除いて。

 

「……どうしたの?」

 

「――いえ、なんでもありません」

 

 ミヤコはこちらに視線を向けることなく短くそう告げると、まるで内に閉じ籠るかのように簡単な武装点検を始める。

 そんな彼女の姿を眺めていると、形容しがたい不安が胸中を渦巻く。

 彼女の纏う雰囲気というべきか、どうにも余裕というものを感じられない。

 楽観から来る余裕ではなく、精神的な安定感という意味での余裕。

 彼女のそれはマコトとは違い、意図的な演出ではないことだけはわかる。

 だが、彼女をそうたらしめているものが何かは依然として不明のまま。

 

「それでは第一部隊の皆さん。どうかお気をつけて」

 

 カヤに見送られ、目的地である廃墟へと向かう。

 シロコを除いた三人の戦闘力も把握しないまま結成されたチーム。

 三年組で固められた第二部隊と比べてあまりにも不安要素が多いのはわかりきっている。

 それでも、やれるだけのことはやるしかない。

 

「――大丈夫、なんとかなるよ」

 

 隣を歩くシロコが正面を向いたまま小声でそう呟く。

 まるでこちらの心境を読み取ったように紡がれたそれは、胸中を覆っていた霧を僅かばかりではあるが晴らしてくれた。

 シッテムの箱に服越しに祈るように触れる。

 I.F.I.C.としての本格的な活動の始まりは、影時間の空のように暗雲立ち込めるものとなっていた。

 

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