ロアナプラより愛をこめて   作:ヤン・デ・レェ

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*前回の解説

張さんはレヴィをCIAとバラライカの繋ぎかなんかだと疑っていたのですが、ブラックリストから除外されているという事実を、ロアナプラのCIA担当官(例のあの人)と、独自のコネで繋がる他地域のCIAエージェントの両方から確認を取ったことで確信してしまいました。彼はこの機に、ちゃっかりホテル・モスクワとCIAの関係性を希釈しつつ、三合会とCIAの関係性を濃密なものにしようと画策した訳です。レヴィは正規の仕事中に事故死する予定だとすれば、最終的には自己責任扱いになるから張さんは免責されますし、アメリカ本土でのCIAとFBIの功績の御膳立て、ヒズボラへ恩を売り付け…と、一石四鳥くらいの計画です。見事なまでの抜け目の無さですね。ただ、策士ではあるんですが…前提が間違っていますからね。

結果、張さんは壮大に勘違いしています。

即落ち2コマ!!






Jihad for whom II*R15

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ?今なんて?」

 

 

レヴィとロックがレンタルした水上機に乗り込んで離陸後、半日。

 

三合会事務所にて。彪からの報告を聞いた張維新は、気の抜けた炭酸飲料みたいな声を出した。サングラスがずり落ちて、子供のような表情が現れた。

 

「連中を、見失いました…」

 

ハッキリと、彪が言い直した。

 

張は真顔で、吸っていた煙草を灰皿に押し付けた。

 

「彪、俺の聞き間違いか?もう一回言ってくれ」

 

サングラスを外し、かけ直してから一拍置き、張は改めて彪に訊ねた。

 

「ですから、連中を見失っちまったんです!」

 

返答は同じだった。理解しがたい内容である。

 

「あぁ〜…なんだ、よくわからないんだが…どうやったら逃げられるんだ?パイロットはこっちが買収済みだったろ?沖合に出てからも、逐一無線で報告が来てたはずだが…」

 

なおも食い下がった張に、背中を手で張るように彪が訴えた。

 

「アニキ、何度聞いても同じですよ。沖合に出てしばらくしてから連中を見失ったんです!」

 

部下からの叱咤を受ければ、ようやく何時もの張が戻ってきた。ここまで回復に時間がかかった張を見た例がなかった。それほどに、経験したことのない、前代未聞のイレギュラーだった。

 

「……なぜだ?パイロットはどうした?初めから、連中の仕込みだったとでもいうのか?奴の裏は浚ったはずだ」

 

張の疑問に彪は首を振った。

 

「パイロットじゃありません…パイロットの死体と水上機の残骸は見つかったんです。…消えたんですよ、二人とも」

 

差し出された写真に張が手を伸ばした。周囲には陸地や孤島の影も形も無かった。火が燻ぶり、黒煙を上げる水上機の残骸と、黒焦げの死体だけが写っていた。パイロットは内通がバレて粛清されたとみるが正しいか?だが、一体どこから漏れたと言うのか…。

 

「…沖合だ、泳いで帰れる距離じゃない。なら…船か?ラグーンに対する監視は?魚雷艇は動いていないのか?」

 

写真をテーブルの上に放り、張がソファに体を沈めながら問うた。彪はまたしても首を振った。

 

「動きなしです。パイロットとの交信記録の前後にも、艦影も何も情報はありませんでした。ラグーンは無関係…ただ、一時的に本来の哨戒範囲からフィリピン海軍の駆逐艦や哨戒艇が申し合わせたように針路を逸れていたようで…目撃情報もなにも」

 

ピクリと張の目元が痙攣した。一度眼を瞑ると、もったりした息を吐いた。

 

「それだけじゃ何の証拠にもなりはしないな…最後に交わした通信の内容は?」

 

「クジラがどうとか…」

 

言うと、彪はぎょっとした。張が顔を上げたからだ。

 

「詳しく、聞かせろ」

 

サングラス越しに睨まれている気がしたが、実際彼の目は鋭く射貫くようなものに変わっていただろう。それは正しく悪党の目だったはずだ。

 

「真下を大きいクジラが泳いでるのが見える、とだけ…その直後に降下し、フロートで海面に着水したようです。一時間ほど前には、サイクロンが近づいているとかどうとか…本当にそれくらいしかありませんでした」

 

気圧されて尚、幹部としての矜持から、彪もまたはきはきと答えた。張は眉を歪ませ、直ぐに緩めた。

 

「ク、ジ、ラ…ね?…ふふ、はははは!何だそりゃあ!クルージングじゃねえんだぞ?」

 

笑い出した張に、今度は彪が訊ねた。

 

「アニキ…何かお分かりに?」

 

しかし、張も首を振った。

 

「いいや…さっぱりだ。お手上げだよ。見当もつかんな…それで?お前の意見は?奴らは空を飛べたのか?俺たちに、連中は翼を隠していたわけか?それとも、ピノキオよろしく大クジラに飲まれたってのか?…いや、それはあり得ないか…」

 

ヤケ酒でも飲みたい気分だった。誤魔化すようにジタンを咥えると、ソファの前で立っていた彪が、身を乗り出して火を点けた。

 

「何か心当たりでもあるんですか?」

 

期待を込めて彪が言うも、張は煙をため息と一緒に吐くと、その白い歯をのぞかせて笑った。

 

「ない、な。あり得ないからな。たかだかチンピラ、たかだかアウトロー。コネもカネもない連中だ。消えたところで誰も気にゃしないさ…だが、そうなると辻褄が合わねえ。誰が奴らを逃した?誰が奴らを運んでる?ヒズボラが仕留めた線は本当にないのか?他の水上機の線は?周辺地域から飛び立ったものを洗い出せ」

 

そう考えるのも当然だった。だが、やはり変な話で、金を出し渋るには遅い段階だ。文書の分の金はヒズボラからもCIAからも到に受け取っていたからだ。

 

「水上機に関してはすぐにでも…ですが、ヒズボラからはまだ何の報告も…。運び屋は何処だと…数分前から矢の催促です。アニキ…自分には、何が何やら…」

 

張の疑問に、彪はぎこちなく答えた。何かが、ズレているような…そんな不気味な感覚だった。

 

「俺もだよ…まるで狐にでもつままれた気分だ…たくっふざけた話だ!」

 

三分の一しか吸っていない煙草を、忌々し気にガラス製の灰皿に押し付けた張は、ふと弾かれたように空を見つめた。

 

「何か、変だ…何が起こってる?何が、何がおかしい…?俺は何かを、見落としているとでもいうのか…」

 

顔を手で覆い、眉間には深い皴が刻まれていた。感知できない亡霊を相手にしているようだ。

 

「アニキ…ヒズボラには何と?」

 

彪が空気を入れ替えるように聞いた。張は視線を彪に向けずに答えた。

 

「そうだな…痕跡も航路もわからないんだろ?ははッ…全く、本当にふざけた話だ…。仕方ない…北朝鮮製の潜水艇で移動してるとでも言っておけ。目的地は変わらないんだ…」

 

諦めた様な浮薄な息が漏れた。三本目の煙草を噛み締めた。

 

「は、はい!」

 

火を点けると、彪はすぐさま部下の元へ走った。部屋には張一人が残された。

 

()()()()()()とは言ったが…まさかこんなことになろうとはな…。少し、見くびり過ぎていたか?いや、今更だな…」

 

誰もいなくなった部屋で、張が煙と一緒にもごもご呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今朝、ロックはレヴィのことを迎えに彼女の家を訪れた。何時もならラグーン商会の近所の下宿で合流することが殆どだったが、この日は違ったのだ。ロックがレヴィの家を直接訪ねるのは初めてのことだった。

 

レヴィの住む家が建っているのはロアナプラでも一握りの成功者たちの豪邸が連なる一等地のさらに奥、周囲を同じ高さの高層ビルが360度ぐるりと囲む、ハッキリ言って変な場所だった。

 

高さを揃えられたビルは日光を遮らない程度の高さだったが、だだっ広い空き地に建つ彼女の家の周囲は更地で、草木一本生えていなかった。代わりにコンクリートとアスファルトで舗装されていた。

 

そんな周りに囲まれて、平屋がぽつねんと立っていた。その出で立ちだって異様だった。まるで鉄とコンクリートの箱にしか見えなかった。小さく分厚い採光窓が幾つか見えるだけで、窓もほとんどないような家だった。小さな要塞のようだと、ロックは思った。

 

気後れしつつも、玄関らしき重厚な金属の扉の前に駐車したロックは、頼りない力でインターホンに指を押し付けた。

 

音が聞こえてこなかった。想定外の気密性と防音性に驚く。これは本当に民家なのかと不安になって来る。軍の実験施設だと言われた方が納得できそうだった。

 

「おう、よく来たな。ロック…ま、入れよ…茶くらい出すぜ」

 

ガチャリと音がして、自宅に据え付けるには分厚すぎるドアが開いた。目の下に隈を拵えたレヴィだった。惚れ惚れする様な目つきの悪さである。

 

「朝早くから悪ぃな…」

 

彼女はラフな格好だった。乱れた髪に肩紐がずり落ちた黒いキャミソール姿にドキリとして、足元に視線を落して息を呑んだ。彼女の足の爪にはペディキュアが塗られていた。艶っぽい濃い赤だった。

 

「あ、いや…別に…」

 

視てはいけない物を見たような気不味さに、視線を彷徨わせてレヴィの顔に行きつく途中でシューズラックに目が吸い寄せられた。酷く傷んだ男物の革靴の脇に、レヴィのブーツが寄り添うように揃えられていた。女物の靴が他にも数点と、真新しい高級革靴が一点。

 

そして彼女の顔に辿り着いて固まった。口元には下手を打ったように、ルージュが唇から薄くはみ出て伸びた跡があった。ロックは目が離せなかった。考えたことも無かったことが、この家の中では起こっているのだ。そう思った。

 

「呆けてんなぁ…ロック、寝ぼけてんのか?おーい?」

 

ロックのもやもやに気を留めず、ぼりぼりと剥き出しの腹をかきながら、レヴィは空いた片手を彼の顔の前で振った。

 

「あ、いや…大丈夫だ」

 

「ん、ならいい…ほら!上がれよ」

 

手招きされて上がれば、直ぐにスリッパに履き替えさせられた。なんとなく内と外の区別が為されていることに感動を覚えてしまうロックだった。

 

日本人的な感覚かもしれないが、自然と他人の家に上がっているんだと言う自覚が生まれた。こういう時、日本人なら口を衝いて出る言葉がある。

 

「おはようレヴィ…え、と…お邪魔します?」

 

遠慮がちなロックの声に、レヴィは余裕たっぷりに笑い返した。

 

「入れ入れ。適当に座っとけ、あたしはシャワーを浴びて来る」

 

レヴィはそう言って、そのまま素足でペタペタと音を鳴らして風呂場に消えた。何故だろう、彼女の足音がしばらく耳に残った。

 

「あ、うん…」

 

風呂場はそこなのか…ロックは頭の片隅でそんなことを考えた。

 

「なんか用がある時ゃメイドに言え」

 

風呂場がある方に目を向けたまま固まっていると、ひょっこりとレヴィの顔が覗いた。

 

「メイド?…あぁ、あの時の…って、ええ!?同居してるの!?」

 

爆弾発言にロックが声を荒げたが、レヴィはニヤリと笑った。顔の前で指を一本立てている。口はイの形だ。し~ってやつらしい。

 

「じゃ、あとでな~」

 

吐息多めで潜めるような声を残すと、レヴィの頭は引っ込んだ。

 

「…なんだったんだ、いったい…」

 

困惑しつつ、言われた通りに座ろうと思い、ロックはキョロキョロと家の中を見回した。

 

「にしても…物が少ないな…綺麗だけど」

 

レヴィの下宿とは似ても似つかない。掃除と整理の行き届いた、整いすぎた部屋だった。最小限の物だけが置いてあるが、やけにソファと椅子が多い。テーブルも食卓と言ったほうが適切な、大きく重厚なものだった。

 

全体的に小綺麗で、物は少ないのに寂しい部屋には見えなかった。何処となく生活感を感じる。きっと、几帳面な人間が丁寧に掃除をしているのだろう。

 

テレビの前に布のソファを見つけて、ロックは腰を落ち着けた。ふぅ、と息を吐くと、少し意識して息を吸った。悪い気がしたが、変な気分だった。寝ぼけているのかもしれない。ロックが悶々とする程度には、さっきのレヴィといつものレヴィの間には、仕草も何もかもにギャップがあった。ドキリとして、クラっとくるような。

 

「…喉が、渇いたな…」

 

そう言えば朝から何も飲んでいなかった。緊張と、高揚と…変だな。ロックはレヴィと二人きりでの仕事に、嫌に乗り気な自分を自嘲するように笑った。

 

「冷たいお飲み物と、温かいお飲み物、どちらをご所望ですか?」

 

喉の渇きを零して、真後ろから声が聞こえた。

 

「ああ、冷たいお飲み物を…え?」

 

ロックは恐る恐る後ろを振り向いた。油を注し忘れたロボットのような動きだった。

 

「ごきげんよう」

 

「ご、ごきげんよう…」

 

案の定、そこにいたのはメイドだった。やっぱりか…ロックは何となく死を覚悟した。相手はなにせ、マニサレラ・カルテル相手に機関銃を持ち出すメイドだ。熱々のガンオイルが提供されても、ロックは黙って飲んだだろう。

 

「温かいお飲み物と、冷たいお飲み物、どちらになさいますか?」

 

「冷たい方で…お願いします」

 

「畏まりました」

 

残念ながらメイドの駆動音は普通だった。否、音がしなかった。やはりタダモノではなかった。

 

まもなくレモネードが提供され、ロックは普通に美味しくて二度目の驚愕に目を見開くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待っている間、ロックは何時もの癖で、何の気なしにテレビを点けた。メイドはキッチンで朝食を作っているらしく、特に何も言われなかった。電源が抜かれていたので、不思議に思いつつも差してからリモコンのボタンを押した。

 

ぽちり。

 

「朝から物騒だなぁ…」

 

画面に映ったのは朝のニュースだった。何かの残骸を背景に、キャスターが現場から中継を繋いでいた。

 

「…昨晩、ザイールのアメリカ大使館が爆破されました。建物の外観はほとんど元の形を留めておりません。現場にはまだ焦げ臭さが漂っています。大変な惨劇です!大使館関係者の死者数は不明ですが、既に判明している被害は重軽傷者だけで150名に登るとのことです。ザイール軍が夜を徹して救出活動を行い、現在は瓦礫の除去の為に重機が投入されました…」

 

「…爆発の直後にイスラム救国戦線を名乗る集団が犯行声明を発しました。現在、各国大使館は厳戒態勢に移行しており、予断を許さない状況です…」

 

「…この事態を受けて、今朝ワシントンD.C.で開かれた会見では、サミュエル・バーガーNSC(国家安全保障会議)担当補佐官が、過激なイスラムのテロリストの蛮行が、アメリカに暮らすアラブ人コミュニティ全体への悪評に繋がっていることを強調した上で、今回の事件を踏まえて、世界的なテロリズムの急速な拡大に強い懸念を示しました…」

 

「…また、ペンタゴン(国防総省)とFBIの両報道官は、テロへの迅速な対応と対策の強化を約束し、テロリズムの予防の為にも、即応可能な対テロ作戦部隊を世界の何時何処でも展開できる体制を整備していくことを、欧州のアトラスネットワークとの連携も視野に入れつつ強調しました…」

 

「…ロシア連邦からは昨晩の内に、大統領と首相の連名でお見舞いのメッセージが表明されました。内容はテロリズムへ強い憤りを感じており、犠牲者へ哀悼の意を示すものでした。また、アメリカ合衆国との強い協調を約束しつつ、テロリスト撲滅の為にも、両国の長年の隔意を乗り越えた具体的で実践的な協力を申し出るものであり、これは国際史的にも異例の事態であります…」

 

テロリストによるアメリカ大使館の爆破だけでも大事なのに、何故ロシアがここまで積極的にアメリカとの連帯を強調するのか…資材部として各国の情勢や多少の歴史にも通じていたロックからすれば、まさに青天の霹靂だった。意味不明な現象だと言い換えてもいい。まるでエイリアンが地球人に交信してきたような。

 

リモコンを持ったまま固まっていると、後ろから誰かの足音が聞こえてきた。

 

振り向けば、そこには男が一人立っていた。レイジだった。よれよれのアロハとハーフパンツを着ていた。目が虚ろで、足は裸足だった。

 

「レイジさんが何でここに…?」

 

レヴィと彼が親密なのは知っていたが、まさか同居していたとは…と考えたところで、メイドとも同居していることを思いだしたロックはやけに落ち着きを取り戻した。奥の部屋、彼が出てきた寝室からは、子供の足音が二つ漏れ聞こえてきた。

 

「あの、お邪魔してます…」

 

ロックが頭を下げるも、帰ってきたのは甲高い声だった。

 

「「お構いなく~」」

 

子供の声が部屋の奥からやまびこの様に返って来て、いよいよロックは混乱した。座敷童でも飼っているのか、この家は?

 

「あはは…もう、何が何だか…」

 

メイドに男に子供ときた…もう何が出てきても驚かないだろう。ロックは諦めたような心地になって、改めてレイジに声を掛けた。焦点の合わない視線が、ロックのものと交わることは無かった。

 

「あの、お邪魔してます、レイジさん」

 

「…あぁ、うん…」

 

ロックに生返事を返す間も、彼はテレビに釘付けだった。

 

「なにか、見ますか?」

 

「このままで…」

 

レイジはそう言って、立ったまま、ずっと、ずっと、レヴィがシャワーから戻るまで、立ち尽くしたままテレビを見ていた。

 

画面の中で、一人、また一人と死亡が確認されていく。重軽傷者が死者の列に加わっていく。大使館は跡形もなかった。

 

イスラム救国戦線の広報官が、これは資本主義国家とシオニスト国家に対する正義の鉄槌だと熱く語っていた。これはJihad(聖戦)の始まりに過ぎないのだと。

 

Louder(大きくして)!!!!!!」

 

聞いたことも無い大きな声で彼が叫んだ。低く冷たい、深淵から迫り上がって来るような声で!

 

「うわああ!?…いきなりなんだよ!?」

 

Louder(大きくして)!!!!!!」

 

ロックがポカンとして動けないでいると、彼はロックの手からリモコンを引っ手繰るとテレビの音量を上げた。

 

「うッ!!うるさいですよ!こんなんじゃまともに聞こえない!」

 

ロックが叫んだ。が、レイジはテレビに齧りついて離れなかった。ピクリとも動かない。力が籠ってなどいなかった。寧ろ糸の切れた凧みたいに、海底に千切れかけの鎖で係留されているだけの機雷のような。今にも何処かに飛んで行ってしまいそうだった。

 

「………」

 

レイジは黙ってテレビを見ていた。何も言いたくなかった。何も言えなかった。言葉で何か、どうにかできれば、彼は雄弁になったかもしれない。だが、そうはならなかったのだ。

 

現実に、人が沢山死んでいて。恐らく、そのほとんどはマトモな人間だ。彼らが叫ぶJihad(聖戦)とは無関係の、フツウに生きていただけの人間だったはずだ。殺したところで、何も変えられない。意味のない死だ。ありふれ過ぎてさえいる。だのに彼らはそれを価値あるものだと言う。それは意味があるのだと言う。崇高な犠牲であれば、彼らは死んでも構わないのか。彼らが死ぬのは仕方なかったのか。利用するだけして、あとは忘れてバイバイか。君たちの人生だけは、これまで通りに続いていくのか。

 

レイジには、理解できなかった。

 

だが、嫌である。それは嫌いである。そんな風に死ぬのは嫌だった。自分の死を勝手に理由付けされるなんて。理由の有無で値札をつけられるなんて。

 

けれど、それが彼らの論理だとすれば、彼らは自らの死もそうやって機械的に受け入れなければならない。そうじゃないとおかしいじゃないか。そうじゃなきゃ耐えられない。そうじゃなきゃ赦せない。自分の人生を使って実験すればいいのに。自分の家族でも使って、是非とも教えて欲しかった。

 

その上で、レイジはその死を拒む。死に価値などなく、死に意味などないのだから。

 

デモンストレーションの為だけに殺された人間だ。怖がらせるために、クラッカーのように使い捨てられた命だ。テロリストも、アメリカの報道官も。生き方と仕事を混同しているのだ。それが例え仕方ないことだとしても、ならばせめて恥を知れ。誇ることなく果てるが好い。

 

誰も、彼らの名前も、彼らの家族のこれからの人生についても、気にしないだろう。勿論、レイジもいずれ忘れるだろう。忘れたことを後悔しながら。忘れてしまう自分に恐怖と憤りを覚えながら。天秤が釣り合わない、と。調整が足りない、と。トントンにしなければ、と。彼自身が変えられることは何もないと言うのに。

 

故に、変えてくれる、誰かに届けと、彼は泣く。出来るだけ無様に、惨めに。頼むから、何とかしてくれと、心から願いながら。もう沢山だと。

 

「…あの!…ねえ!……大丈夫ですか!?」

 

ロックが声を張り上げた。焦れていた。苛立ちも。今のこの家の中は、まるで水の中にいるような感じだ。ピントがずれていて、テレビの音量の所為でシャワーの音も遠のいていた。

 

「……………」

 

彼は音量を上げたが、それは何も聞きたいからではなかった。いっそのこと、聴きたくも無かったが、聴いて居なければ気が済まなかったのだ。

 

「あの!!」

 

「はい、もういいよ。ありがとう」

 

ロックが声を掛けると、レイジはようやく応えた。音量を下げると、ロックの顔を見て、リモコンを手渡し、礼を言ってから寝室に消えた。

 

「いったい…何だったんだ?」

 

ロックはただただ不安になって、ソファに腰を据え直した。なんとなくテレビのチャンネルを変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄さん、どうしたの?」

 

寝室に入って布団に潜り込んだレイジは、お着換え中だったヘンゼルをベッドの中に招き入れると、その白くすべすべとしたお腹に顔を埋めた。シャツだけを纏い、眩しい素足を晒した、今にも折れそうな少年と青年の狭間のカラダに、その熱に縋りついていた。

 

人の呼気は、湿っていて熱い。シャツ越しに、少しずつ肌にじっとりとした熱が沁み込んでいく。ヘンゼルは自分が灼けて、融けていくのを感じて、ぷるりと身震いした。

 

「ズルいわ、兄様」

 

頬を膨らませたグレーテルが、レイジの着ていたシャツを羽織った姿でベッドに上がった。片足ずつ。わざとらしく。焦らすように這い寄ると、グレーテルはぎゅっと彼の背中に抱き着いた。弛緩している。だらけた靱帯のように、空気が熱っぽい。

 

「姉様は背中を撫でてあげてよ」

 

「仕方ない兄様…でも、頭は譲ってあげるわ」

 

「ありがとう、姉様」

 

ヘンゼルは頭を撫でて、レイジの顔を自分の薄いお腹に押し付けた。ヘンゼルの顔に浮かぶ微笑に、胎に迎えるような母性を感じるのは気のせいだろうか。グレーテルは彼の背中に手を這わせた。その小さな手の平は、自分の身を抱くには狭くて小さすぎる。けれど、誰かの体温と感触を感じるには十分だ。熱が肌の上をぐるぐると巡った。双子の目が合って、くすりと微笑むと、それぞれが身を屈めて彼の耳元に口を寄せた。両耳から脳を犯す甘く澄んだソプラノに、彼の体がゾクりと震えた。

 

「ねえ、お兄さん、苦しいの?悲しいの?辛いの?」

 

ヘンゼルの声は、浮薄にも聞こえる。スナックのように軽いが、すんなりと彼の耳に滑り込んだ。追いかけっこの途中で転んだ友達に、手を差し伸べる時のように。ヘンゼルの声は優しくて明るい。頭を撫でる手つきも、子供らしい、遠慮のない手つきだ。一生懸命で、軟軟とした手で、入らない力を籠めて撫でられていた。頭を押し付ければ、力負けしたようにギリギリで腕を小さく引いて、沈んで受け止めてくれる。端から端まで収まりが好くて、なんとも安心した。

 

「どうしてなんて聞かないわ。だって、理由なんてどうでもいいもの…理由なんてなくても、辛いのよね?」

 

グレーテルの声は、おままごとの中のようだ。お人形さんに語り掛ける時のように、ゆっくりと、あやすような声だった。自分にも言い聞かせるような声だ。レイジの敏感な肌の上をなぞる手付きには、何か物足りない。誘惑するように、くすぐったさと優しさを行き来していて、もどかしさを覚えた。

 

「ただ辛いんだね。ただ苦しいんだね。不安で怖くなって、心細いんだよ」

 

レイジは声を殺して泣いた。喉の奥から引き攣った笑い声にも似た嗚咽が漏れる。ヘンゼルの柔らかいお腹は温かくて柔らかくて好い匂いがした。まるで行き止まりのように、居心地がいい。もう、どこにも行けなくなってしまったような、そんな気がして落ち着いた。息苦しかった。

 

熱い息が吹きかけられて、シャツがじとじとに湿る。冬場の使い捨てホッカイロを下着越しに貼り付けた時のように、腰に火が点いて、お腹がやんわりと炙られている。熱くて汗をかくのが不愉快だが、そんなことは寒さを凌げる幸福の前には些事でしかなかった。汗をかいてでも、手放したくない時、手放し難いものがある。真夏の夜の逢瀬と同じだ。

 

「ふふ、うふふ…兄様、とっても素敵な笑顔」

 

「あはははっ…姉様だって」

 

そうだ。双子は笑っていた。ヘンゼルは熱っぽい息を冷ますように舌なめずりをしてから、妖しげな半開きの目付きで、彼の敏感な二の腕の内側を頻りになぞり上げるグレーテルに目を遣った。

 

二人共に息が荒い。鼻腔で、昨日の夜の汗の匂いを探るように嗅ぎ取っていた。そういえば昨晩の彼は必死だった。疲れ切れば眠れるのだと、そう言わんばかりだった。結局、最後の最後でレヴィに盗られてしまったが。シラフに戻った彼に寝かしつけられて、双子の心は極端に潤い、そして渇きを覚えていた。

 

子供の心に注がれた安心感と満足感とは裏腹に、大人の心はイイところで横取りされてしまった所為で不完全燃焼のまま、グラグラと煮立っていた。レヴィに怒りはない。夜更かししようとした自分たちが悪いことくらい分かってる。この家の中ではそれがルールだから。けれど、感じることは違った。感じてしまうことは違った。それだけの話だった。

 

「兄様、今日はお注射がまだだったわ。きっとその所為でもあるのよ」

 

「そうだね。姉様、お注射しようか」

 

「ええ、兄様」

 

双子だもの。考えていたことは同じだった。つい最近、スイス経由でイギリスから輸入された高純度のヘロインが、定期的に自宅に届けられるようになった。差出人は暴力教会(リップオフチャーチ)のシスターエダ。後に医療用ヘロインと称されるソレだった。更には子飼いの看護師を送り込み、わざわざ皮下注射と筋肉注射の講義を双子に施したのだ。全て、薬の投与には眼を瞑ることと引き換えである。眼を瞑るから、上手くやれというワケだ。

 

毎日毎日、極極微量を投与する。双子は物覚えが頗るよかった。知識はなくとも、知能は非常に高かった。今では本職も手放しで褒めるほどに注射器の扱いが上手い。刺されたことに気付かないほどだ。

 

痛みから彼の意識を逸らすのに、双子は都合が好かった。一人が彼の視界を独占してしまえば、それで事足りたからだ。日替わりで片方が差し込んだ舌を絡ませ、唾液を流し込んでいる内に、もう片方が針を刺し、薬液を流し込んだ。注射が終わればご褒美を。この場合は双子にとっても、彼にとっても。

 

気怠く、蛞蝓の交尾のように三人が混じり合う様は、一種グロテスクでさえあったが、同時に聖的だった。不健康なほどに真っ白い三人のカラダは美しい陶磁器のようだった。

 

完璧な世界から弾かれた先で、自分に合わせて完璧な世界を作っただけだ。割れた陶磁器に、価値はない。だから、割れた陶磁器にこそ価値がある世界に生きることを選んだ。

 

外側から見ればそれは脆く、儚いが、内に入り込み、触れてみればわかる。それは熱く、張りがあり、筋肉の弾力があり、薄くついた脂肪の柔らかさがあり、何より好い匂いがした。微かにだが、双子からは甘い匂いがした。

 

「愛してるよ、姉様。愛してるよ、お兄さん」

 

薬物の投与と、それに続く緩やかな交わりは日課であり、双子の新しい習慣になった。それがないと不安になるし、それがあっても特別に安心はできない。なぜならば、それがあるのが当たり前だからだ。

 

「愛してるわ、兄様。愛してるの、お兄さん」

 

習慣は厄介だ。一度身に沁みると、強い臭気のように洗い落とせなくなる。ただ、この場合は成功と呼んで差し支えないだろう。なにせ彼自身が、双子の殺しの上書きのために選んだことが、功を奏したのだから。

 

「愛してよ、お兄さん」

 

「愛してね、お兄さん」

 

ただ、この日は少し違った。何時もなら触れてくれるところに、彼の手が伸びて行かなかった。代わりに、冬眠明けの寝ぼけた熊のように、彼は双子をしっかりと抱き寄せた。赤く充血した瞳と目が合うと、双子は何も言わずに両側から彼の頬に口付けた。しっとりと唇が押し付けられて、熱が血の染みのように滲んだ。そうして、何の抵抗もなく身を委ねた。双子の細い手首が、指先が、手が彼の背中に届いた。彼の肩に首に、頬を寄せて鼻先を埋めて、目を瞑った。三人、身を寄せ合ってじっと動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レヴィを迎えに来ただけのはずなのに…俺は何を見せられているのだろうか…」

 

ロックの目の前で起こっている不思議を、説明することは難くない。

 

ぐす…ぐす…ひぐ…ぐず…

 

「…よしよし、辛かったな。ボスは悪くねえよ。だから大丈夫、大丈夫だ…。アンタにゃ、強くて賢いレヴィ様がついてるんだぜ」

 

男が、女に抱き着いてしくしく泣いてる。それだけだ。

 

「あ~…レヴィ!あの!俺は、えっと、どうすればいい?」

 

ロックがレヴィに声を掛けたが、レヴィは口の前で指を立てて、口をイの形にして言った。

 

「ロック!しー、だぜ?」

 

かつてないほどに真剣なレヴィの表情に面食らうロック。

 

「な、なるほど…わかった」

 

何が分かったのか、ロック自身にも分からないが、静かにしてろと、まあ、そういうことらしい。ロックは深堀したくて堪らなかったし、この不思議な状況に巻き込まれているにもかかわらず、何の説明もない事に不満も感じていた。だが、問い詰めようにも、部屋の隅に気配を消して立っていたメイドに気付いてしまい、色々と凍り付いてそれどころではなかった。

 

「悪いな、少し待っててくれ。人を呼ぶ」

 

いつも通りの上下で固め、過激なカットのホットパンツと黒のピッチリしたタンクトップ姿のレヴィは、しかし、そのファッションには似合わない優しすぎる手つきで、肩に顎を乗せてえぐえぐしているレイジの頭を撫でていた。ポンポンと音が聞こえてきそうだ。ロックは眩暈がするようだった。

 

あの二挺拳銃(トゥー・ハンド)が、子供をあやすような繊細な手つきで、自分よりも年上の優男を慰めているだと!?

 

きっと、誰に言ったところで信じちゃくれないに決まってる。

 

「俺、このままここに居てもいいのかな…」

 

純粋な疑問が零れたが、レヴィは意外にも頷いた。

 

「…いいぜ。ダッチとベニーには無いモンを、手前は持ってるからな…」

 

「……え?」

 

いきなりの特別発言にロックの胸が躍る暇もなく、レヴィは鼻で笑って続けた。

 

「それにロックよお。誰に言ったって、この話を信じる奴なんざいねえさ」

 

「…それって、どういう…なぁ、レヴィ?」

 

レヴィがロックの疑問に答えることは無った。

 

「ロザリタ。召集かけてくれ」

 

短く言うと、レヴィは愛用の衛星電話をメイドに投げ渡した。

 

「畏まりました。どなたにまで?」

 

がしりと危なげなく片手で受け取ったメイドが問えば、レヴィは真顔でレイジの頭を抱いた。目を閉じて頬を寄せ合う。耳の裏の匂いを嗅ぐように、鼻をひくつかせてから片目を見開いた。

 

「発作だ。全員集めてくれ」

 

レヴィの言葉は固有名詞が多く、ロックには分かりづらかったが、人が集まることは理解できた。

 

「よろしいのですか?」

 

レヴィは顎をしゃくった。これが秘密に含まれることを、最早隠す素振りも無い。

 

「よろしいんだよ。ロック…お前、口は堅いよな?」

 

ロックは成り行きを観察することに必死だったが、レヴィから話しを振られて頷いた。頷くしかなかった、と言うべきか。

 

「ああ…まあ」

 

ロックの肯定にレヴィもまた頷いた。

 

「なら構わねえ…遅かれ早かれだ」

 

それだけ言うと、レヴィは双子を連れて寝室へと戻って行った。

 

「おかわりをどうぞ」

 

ソファを勧められ、ままに腰を沈めたロックは口をポカンと開けたまま、メイドの方を見上げた。

 

「ああ、どうも」

 

空のグラスに、メイドがおかわりを注いだ。

 

「では、もうしばらくお待ちください」

 

「ああ、はい…お構い、なく」

 

俺は一体、何に巻き込まれているんだろうか…。ロックは機械的にグラスに口をつけた。よく冷えたレモネードは美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロアナプラの開発に投入された金と資源の総計は不明である。しかし、小国の国家予算を優に超えることは周知の事実だった。その莫大な資本の内、実に全体の半分が使途不明金だった。果たして、この金はどこに消えたのか。

 

正解は地下である。

 

島の中心にあるホテル・モスクワの勢力圏を中心に、アリの巣状の地下通路が大型自動車の通行が可能な広いものから、人一人分の狭いものまで、無数に張り巡らされていた。

 

工事に関わったのはCIAとホテル・モスクワである。ベトナム戦争での教訓を盛り込んで、ロアナプラそのものを要塞に作り替えた。そして、関係者のみが知る秘密の直通路を辿れば、全てが行きつくのがロアナプラ一番地一号…彼と彼女らの愛の巣である。

 

鉄とコンクリートの箱は、謂わば氷山の一角だった。

 

荒唐無稽な核戦争後の世界を限られた人間だけが生き残れるように全てが揃えられた、世界一安全で快適なシェルターを彼女たちは作り上げてしまった。

 

30年と続くかも分からないヒモ男の余生と、彼の今日の安心の為だけに。

 

バカみたいな話だった。でも、じゃあ、バカみたいじゃない話って、なんだろうな。

 

結果、常日頃の使い道と言えば、女死会の緊急招集の際の直通路ということになる。誰にも気づかれずに。また誰の干渉も受けずに。最短最速で彼の元に駆けつけるためにと、彼女らはこの地下に通された専用トンネルをバイクや車で爆走するのである。

 

「レヴィはどこだ?」

 

最初に駆けつけたのはバラライカだった。汗をかいているのか、髪が頬に張り付いていた。

 

「レヴィなら寝室に…」

 

「あら、あなたロックじゃない…まあいいわ、教えてくれてありがとう」

 

咄嗟に直立してしまったロックは悪くない。前のめりにつかつかと寝室に向かったバラライカから視線を外して、レモネードを飲み干すと、ロックはメイドの方を見た。

 

「おかわりをお持ちしますわ」

 

「…すみません」

 

バラライカの次に訪れたのは、体に悪そうなピンクのチューイングガムを膨らませながら現れたエダだった。小脇には防水用のビニールで覆った茶封筒が携えられていた。

 

「おう!ラグーンのロメオ(色男)じゃねえか!そんで?レヴィはどこだ?」

 

肩をバンバン叩かれたロックは苦笑いしながら答えた。

 

「あ、レヴィなら寝室です、はい」

 

「ん~…………ありがとよ」

 

「あ、いえ…どういたしまして」

 

返答を聞いてエダはスンッ…と真顔になると、つかつかと寝室に消えた。

 

はぁ~~~…と地の底に沈みそうな溜息を漏らしたロックは、深呼吸してからメイドに言った。

 

「メイドさん、お酒とかってありません?」

 

「銘柄は何を?」

 

「強いやつを下さい」

 

「ではストックのあるジャック・ダニエルを」

 

無性に酒が飲みたかった。呑んでないとやってられない。俺は一体どこに向かっているんだろう?

 

ゴーギャンのような問いに心を囚われつつ、ロックはメイドからグラスを受け取ると、とろりとした琥珀色の液体を舌先で浸かるように舐めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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