ロアナプラより愛をこめて   作:ヤン・デ・レェ

33 / 36
お待たせしました。章題そのまんまの内容です。くどいです。


Lost

 

 

 

 

 

 

それは癒しと救いの為の蠱毒であった。

 

ロアナプラという壺に、この世のありとあらゆる悪を詰め込んだ。虫同士を殺し合せたのだ。

 

正義はとうの昔に殺された。

 

世に蔓延るのは弱者に対する悪である。

 

故に彼と彼女は自らも悪となった。悪に対する悪となったのだ。

 

それは理不尽に対する理不尽である。

 

不義を懲罰する不義である。

 

悪党の世界で悪党として生き続けることで、彼と彼女は癒しと救いを手に入れた。

 

脆く儚い安寧である。

 

突き詰めれば、結論は何処までも単純である。

 

なんとなくで始まり、なんとなくで終わるのだ。

 

温かくて柔らかいもの、好い匂いがして優しいものだけが真実だ。

 

それだけ。それだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、気が付けば何かを失っていた。何かを得て、何かを失っていたのだ。

 

そして、ある円環に嵌っていた。

 

それが何なのか、言葉でも、言葉以外でも、説明することは困難だった。

 

ただ、強いて言えばそれは恐怖である。

 

これは恐怖だった。

 

グルグルと同じところを死ぬまで回り続ける、そういう円環に囚われてしまった。

 

妄想の融解ともいえる瞬間が、ふと顔を覗かせる。

 

パッと目を開くと、そこには何も残っていないのである。底に残った滓を搔き集めても、何が生み出せると言うものでも無い。

 

それは正しく恐怖だ。覚束なくなり、途端に不穏な気配を嗅ぎ取る。全身に不安が憑りついていた。

 

強いこと、賢いこと、立派なこと、豊かなこと。

 

全て不要と断じ、或いは、自分以外に依存した状態が引き起こす恐怖だ。

 

コンプレックスだらけ。劣等感まみれ。不信感だらけ。

 

些事に右往左往するのも当然だ。思考と感情を制御できないのだから。それが行動にだけは移らないのがマシなところだ。妄想の果てに何かを傷つけることだけは無い。そういう性質ではなかったことだけが救いか。

 

衝動に襲われて、安心を渇望する。

 

安心を得るためには、安心の代名詞を搔き集めなくてはならない。体温、感触、匂い、全てを。

 

カラダが穴あきチーズのようになった気がしてくれば、もう大変だ。中身が溢れだして、零れてしまわないようにしなくては。流れ出してしまえば、空っぽになってしまう。

 

空っぽになったら何が起こるのか、そんなものは知らないのだ。それが恐ろしくて仕方がないから、空っぽにならないようにと強迫観念に駆られるように、安心の要素を隙間を埋めるパテのように捏ね繰り回すわけである。

 

満たされていながらも、同時に常に不安と恐怖に直面しているのである。これは何ら特異なことではない。寧ろ、満たされているからこそ、失うこと以外に恐れることなど何もないのである。

 

だから全てを放り出した。

 

猜疑心の強さと言うべきか、生存本能の強さと言うべきか。過剰反応なのか、過ぎることなどあるのだろうか。少なくとも、そんな状態なので誰も信用してなどいないのだ。

 

自分のことすらも信用できないのだ。他人のことなどもってのほかである。

 

だが、無気力だ。

 

行動力は皆無。それは幸か不幸か、ともかくも、他人の家に深夜に押し入って惨殺事件を起こすような、そういう能動性などない。

 

力もない。才能もない。金もない。

 

何も変えられない。何も生み出せない。

 

何の価値もない。何の意味もない。

 

生きているだけで迷惑なのだろうか。

 

迷惑をかけることは罪なのか。

 

嫌われて生きていけないのか。

 

生きてちゃダメなのか。

 

怖くて怖くて仕方がないのだ。

 

排斥されたくない。

 

でも、排斥するくらいなら排斥されたい。

 

排斥されたらさっさと死にたい。戻る気力もないから。戻ってもやりたいことなどないから。戻るために必要な何も持ち合わせていないから。

 

希望が持てないから。否、そもそも初めから希望などなかった。というか希望とは何ぞや。当の希望は到の昔に飛び散っているではないか。故に、これは絶望ですらない。ここには上も下もないのだよ。ただただ、この場所から動けないままなのだ。この場所で生きて死んでいく。せめて、そこは誰かの胸であってほしいものだ。

 

これは劇的な死ではない。

 

生まれてこなかった状態に戻っていく。死こそが、況や正常になる。元に戻っていくだけだ。

 

何も残さない。なにも遺せない。

 

かといって、自分は死ねばそれまでだ。

 

死んだ後のことなど、考えるだけ無駄ではないか?

 

せめて、死ぬことで反抗することしかできないのだろうか。

 

死ぬことで、意図を持って、明確に迷惑をかけてやろうというのか。

 

嫌われてやろう、嫌悪され、唾棄され、侮蔑され、だが、死んだ僕には関係ないのだから。将来と言う苦痛が続いて行かない保証があれば、案外、最期のあれこれには勇気すら必要のないものなのかもしれないな。なんとなくでも、死ねるのだ。生と死に階段を設けたのが誰だったのかは知る由もないが、そもそもは地続きだったのだろうな。

 

だからこそ、いよいよ、そう言う時分になれば、自然とふらふら落っこちてしまうのだ。簡単に終わってしまうのだ。勇気だとか気力だとか努力だとか根性だとか、そう言った、骨組みのしっかりしたものに生かされている間は、きっと気付く事すら出来ないし、色々なものが邪魔をして、或いは死への拒絶感から、平然と何か壮大な物語を、個々人の死に請求したがる。

 

それは、なんとも安易な要請だと言わざるをえまいな。

 

もはやそこに、傷つくべきものなどなにもなく、失うことすら出来ないから。それは最早、右と左が意味を為さなくなった世界である。迷うと言うあれこれではないのだ。出口などないのである。

 

喪失感を失ったが最期、そこにはなにもない。そもそも何もなかったが、遂に人間でもなくなり、同一性も認められなくなった。失うものなど何もないのだから当然だ。

 

死んだ後なら、物でも何でも好きにすればいい。死ぬ時に、誰にも譲りたくないものは道連れにして逝くつもりだから。まぁ、言うほどのものは持ち合わせてなどいないのだが。

 

全てに火をかけて、全てを破り捨てて、全てを無為に帰す。僕と同じものにしなければ。僕の血肉と同じものに。むしろ、生身の人間なんかよりも、よっぽどこれらの方が僕と同一なものだ。そう言うことになってしまえば、最早どうもこうも無かろうな。何の気なしに、後先考えずに、利害も何もなしに、目についた誰かにも餞別代りに優しくできるだろう。お礼を言われて、嬉しかったな「よし、死のうか」とか。あとからきっと、「いいひとだった」と言ってもらえるだろう。それは少しマシではないか。実際に言われると、言われないとに限らず、一人でもそう言う人間がいると思えれば。

 

死にたくて死ぬ人間など誰一人としていないのだ。もう頑張れないから死ぬのだ。生きる元気がないから死ぬのだ。生きるよりマシだから死ぬのだ。死ぬのに勇気も元気も要らないが、生きるのには勇気も元気も必要なのだ。人生は続いていくのだから。だから、死ぬ勇気と元気を使って生きろなどと不愉快なことを言うな。知ったふうな口を利くな。それはとても、無責任なことだ。死んでも好いのよ、と言うより冷たいことだ。残酷なことだから。

 

人間の可能性は常に二分の一だ。その日を死ぬか、生きるかでしかない。一秒後か、一時間後か、一年後か、百年後か。畢竟そこに流れ着こう。ほんの小さなボタンの掛け違いで、或いは気紛れが人の生死を左右する。そこに神意だとか、運命だとかをあれこれこじつけるのはナンセンスだ。意味を与えるだとか、そういう行為は生者の特権であって、死者はそこでおしまいだ。おしまいではないかもしれないが、少なくとも外から見れば、おしまいになったように見える。面倒と言うものは悉く生者に委ねられてしまう。それが幸いなこともあれば、正直に言って幸いなどとは言えないこともあるワケである。

 

だが、であるからこそ願わくば何も遺したくはないものだ。

 

遺さない。何も残さない。悲しんでほしくない。悼むな。さっさと忘れて前を向け。いずれお前もそうなるぞ。死ぬんだからな。まともに戻れば、僕の言葉にも納得がいくことだろう。マトモに生きていると、ついつい忘れてしまっていることだから仕方ないよ。君は何も悪くない。君は何一つ間違っていない。正しいことだ。だから、だけど。だから、僕はダメだったんだ。ダメな僕は、正常で異常だったってワケさ。それだけなんだ。シンプルな話で、暮らす世界が違うから、住み心地の良さの基準も違うってだけで。全ての価値観が、真逆と言わず、何処かピントがズレている。完全に違うわけじゃないけど、ちょっとだけ変なんだ。その小さな差が、人を助けたり、苦しめたりしてしまう所が、社会と言うものの一筋縄ではいかないところなのだ。

 

無数の小さな小さなズレが、積もりに積もって、気が付けば誰かの致命的な生き苦しさに繋がっていた。そこに悪意はあったんだろうか。誰が望んだわけでも無くそうなってしまったのだとしても、疑問ではない。

 

僕にはどうしようもできないことが、僕を殺す。変えられない何かに悩むことはあまりお勧めしない。けれども、それで逃れらればどれだけ幸せだろう。僕には出来なかった。見ないように目を覆っても、聞かないように耳を塞いでも。僕は何もかもが恐ろしくて仕方がない。ブギーマンはきっと理由もなく僕を殺そうとする。何時?何処で?如何やって?全部分からない。ブギーマンって誰なんだ?でも、何処かに居るんだろ?いないって、誰がどうして言い切れるだろう。僕は不安に殺されてしまいそうだ。不安にさらされて、理不尽に殺される恐怖から、理由もなく命を奪われる絶望から逃れたくて、その可能性から逃れたくて、自ら命を絶って今すぐこの恐怖と不安の苦痛から逃れたいとさえ思うのだ。

 

だって、どうしたって、しょうもない動機で誰かを傷つけて殺す人間がいるのだ。そして、そう言う存在を社会も法も許容してしまっている。罪と罰は不均衡を極めているのだ。死に損、殺され損、奪われ損である。誰が為の法であるか。秩序であるか。正義であるか。加害者を殺したところで何も戻ってこないことなど理解しているが、せめて命だけでも奪い返すことが許されればどれだけ、どれだけ奪われた命の価値を信じられるだろう。生まれた意味を信じられるだろう。善良に生きる意味を、真面目に生きる意味を、優しさや温かさを信じられるだろう。形のない人情と言う便利な言葉で誤魔化しの効かない何かが、必ずや被害者の癒しと救いの一助になるはずなのに。だのに、どうしてそうではないのか。法も秩序も正義も、すべて欺瞞ではないか。結局、その通りに片づけられてしまうではないか。立法者と司法者が憤怒と憎悪と悔恨とに晒されることを、どうして免れようか。機械的に適用されるならばいざ知らず、法律を作る側の不正に対して、法も秩序も正義も無力を極めているではないか。

 

色々な常識やら、普通やら、何気ない状態にも、気持ち悪くて、不安で、怖くて、不気味で、不躾で…とにかくそんな風に感じてしまう瞬間と言うのがある。けれども、そう言ったコトは中二病ではないのだ。寧ろ当然で自然で、全く違和感のないことだ。お互い様だ。それはお互いに感じていることだ。だから、そういうことだから。頼むから、あれこれ酷い言葉を投げかけないで欲しかった。何も言わずに立ち去って欲しかったのだ。いっそ、優しく殺して欲しかったよ。痛みなく、苦しみなく。そうでないなら、なんて酷い奴らだろう。君たちも、この世界も。全くもって出来が悪いとしか言いようがない。腐った臭いが鼻を撲つ。耐え難い悪臭だ。赦し難い冒涜だ。僕の生というやつを、心底侮辱して果てた。邪でしかなかった。

 

これほどに不都合で不完全な世界に生まれてしまった以上、幸せに生きるにはそう言った不都合で不完全な部分に立ち向かえる強さを持ち合わせていなければならなかったのだ。けれども、実際問題として僕にはそんなものは備わっていなかった。寧ろ、人一倍不都合が多くて不完全だったのである。こういったものを、努力やらなにやらと、そういう代物で臭い消しを試みると言うのは、健気で、無謀で、姑息なように思えるのは僕の勘違いであろうか。

 

努力と言う言葉は便利だ。だけれども、万人が努力できれば、何れは努力と言う言葉は特別の意味を持たなくなるだろう。換わりの物が用意されて、それを使って誰かの人生を台無しにしてしまうのではなかろうか。何方が好いとも思わない。どちらがマシなのか、それは誰にもわかるまい。

 

万人が野球選手や棋士になれるわけではない。努力を否定するわけではなく、寧ろ称賛するべきだ。だが、同時に努力は時として免罪符であり、時として迫害の理由足り得ることをこそ留意するべきである。努力もまた、言うまでもなく道具なのだ。人間が生み出した、人間の為の道具の一つなのだ。だのに、気が付けば僕たちはしばしば努力に隷属している。これはどういう了見だろう。

 

宗教や銃と同じだ。使い方を誤れば、いとも容易く人間の人生を台無しにしてしまう。

 

越えられない壁に挫折しながらも、それでも生きなければならないだなんて。何らの痛苦も負わずに快楽を貪り、利益を収奪する人間の跳梁跋扈を見せつけられながら、我々には苦しみ抜いて死ねと言うのか。それはあんまりというものではないか。とても受け入れられないことではないか。

 

ぐるぐると頭の中が蠢いた。

 

怒りとか、悲しみとか、悔しさとか。そういうものが地獄の巨釜の中でごった煮にされているようだ。

 

ぐらぐらと煮詰められたそれは、冷める前にと、世界中に振舞われたが、空っぽになった巨釜の底で、一つ冷たい不信感だけが残っていた。他ならぬ自分自身への、永劫変わらぬ不信である。

 

蒸し海老のように真っ赤にゆで上がった不信感は、巨釜の底で自らの肩を抱いた。

 

瞼を閉じると血の涙が溢れた。

 

真っ暗闇の中で、それは考えた。

 

果たして、これで何かが変わるのか。代わりを用意しただけではないのか。

 

実際のところ何も変わっていない。

 

愚かな人間やら、残酷な世界やらと、システムやら、理やらと大袈裟で曖昧な規模を指して、恰も世界を俯瞰する様な壮大な上から目線で物申すつもりは甚だ無い。それは誇大であり、衒学的で、思考を放棄するに等しい。なにより下品と言うものだ。

 

ただ、無数の個人の動きを留められるはずもなく、使う人間と使われる人間の構図が変わったわけでも無い。

 

気が付けば、自分が何に怒っているのか、何に腹を立てているのかすらも分からなくなっていた。

 

忘れてしまったのだろうか。それとも、始めからそんなものはなかったのだろうか。はたまた、とっくのとうに、自分の手で殺してしまったのだろうか。

 

いずれにせよ、ぽっかりと胸に穴が空いた。

 

遅かれ早かれ、ここに辿り着いただろうが。

 

スッキリしたような、逆にモヤモヤするような。得体の知れない不安に胸が悪くなるような臭いを嗅いだのだ。

 

疲れていた。面倒臭くなっていた。どうでもよくなっていた。嫌気がさしていた。

 

だから僕は言った。

 

「飽きた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イブラハが死んでから彼とロックの距離はグッと縮まった。

 

発端はイブラハの死から一週間余り後のこと、早朝にレヴィを家まで迎えに来ていたロックと彼がリビングで鉢合わせた時のことだった。

 

「ロック」

 

「あ、おはようございます。レイジさん」

 

「おはよう」

 

「今日は早起きなんですね。何かあったんですか?」

 

ロックが聞くと、レイジは寝間着姿のままロックの目の前まで近づいた。

 

パーソナルスペースを侵さない程度の距離で立ち止まると、彼は目を泳がせた。

 

「いや、なんというか、唐突なんだけども」

 

「はい」

 

しばらく無言。何を言うでもなく、外方を向きながらぼんやりと何かを考えていたが、ふとキリっと目元に力を入れて、レイジは真正面からロックを見つめた。

 

「こう、無性に君を抱きしめたい」

 

「え"ッ…あ、はぁ…」

 

レイジの言葉にロックの腰が引けたが、レイジは今や一歩踏み込んだ。背の低い彼を見下ろす位置にロックの目はあるのだが、心象的にはレイジの堂々とした態度を見上げるようであった。

 

「ダッチでも、ベニーでも、ボリスでもない。君がいい」

 

そう言ったレイジの瞳は真剣なものだった。片時も目を離さずにロックを見つめていた。

 

「ははは…そうですかね?」

 

「そういうことだね」

 

のっぴきならない。腹を括るか。

 

ロックは小さな覚悟を決めると、目をぐっと瞑り、両手を大きく広げた。

 

「えっと…ハイ!どうぞ!」

 

「なんかごめん。ありがとう」

 

レイジは申し訳なさそうに笑ったが、声の調子は明るく弾んでいた。

 

 

 

 

 

 

「どう、ですか?」

 

一分くらいか。ヒシっと抱き着いたレイジ。その背中に恐る恐る腕を回したロックが声を掛けた。

 

「しっくりくるよ。ありがとう」

 

返ってきた声は柔らかかった。息が耳元にかかってくすぐったい。

 

「それはよかったです。なんか、俺も落ち着くっていうか…」

 

我ながらどうしてこんな状況になったのか理解できないまま、かと言ってお世辞で喜ぶ相手でもないからと、ロックは苦笑しながらそう言った。

 

「…何してんだ?お前ら」

 

どことなく空気が和んだ所で声が掛かった。

 

壁に斜めに身を預けながら、火のついていない煙草を口元でプラプラさせながらレヴィが半目で二人を見つめていた。

 

「レヴィ!いつからそこに!?」

 

バッ!と音が聞こえてくるような勢いでレイジから離れたロックの声は裏返っていた。顔も赤い。とんでもない弱みを握られたような心地だった。

 

「ロックが腕を広げてどうぞ!ってとこからだよ」

 

両手を広げてからかうような口ぶりでそう言うレヴィ。

 

「最初っからじゃないか!声を掛けてくれればよかったのに!」

 

羞恥で顔を真っ赤にしながらロックは顔を覆った。

 

「んなことしたら、レイジが照れてそれどころじゃなくなんだろーが」

 

レヴィはロックを嗜めるように言うと、煙草に火を点けてから、いつの間にやらソファに腰かけていたレイジの方に目を向けた。

 

「それで…どうだった、抱き締め甲斐はあったかい?」

 

レヴィの問いに、レイジは考える素振りも見せずに即答した。

 

「うん。これはいいものだ。ちっちゃい頃を思い出した。パパとママに、よくこうしてもらってたっけ」

 

照れたような笑顔だった。照れ隠しか、次第に笑みが深くなり、遂には陽だまりの中の猫の様な笑顔になった。邪気もなく解れていた。

 

「そいつはよかった。…ま、いい機会だ。仲良くしてやってくれよ…ロックともね」

 

「俺が仲良くされるのか…」

 

レヴィが顎をしゃくってロックの方を指すと、ロックが苦笑を漏らした。

 

「どうぞよろしくお願いします」

 

レイジは素直に頷き、顔は俯き気味に、手で拝むように頼み込んだ。

 

「…別に、嫌じゃないですから。好いですよ。いつでも言ってください。これくらいなら…」

 

顔を上げた時のレイジの視線が、なんとも儚かったのもある。だが、そもそも嫌では無かったのでロックは頷いた。

 

自分よりも年下に見える年上の男を抱き締めるという経験は、こっぱずかしくもあったが、案外悪くなかったのだ。アメリカンな習慣だと思えば、違和感も湧かなかった。

 

レヴィとロックは、例の如くラグーンの仕事が入っていたので、その場で彼に見送られて家を出た。

 

玄関先の空き地に止めておいた車に乗り込むと、エンジンをかけて早々に助手席のレヴィからアンニュイな微笑みが向けられた。

 

「なんだ?言いたいことでもあるのか?あるならハッキリ言えよ」

 

ハンドルを両手でしっかりと保持して、車を走らせながらロックが言った。しばしば横目に見ながら、レヴィの返答を待っていた。

 

「よかったじゃねえか」

 

「何がだ?」

 

溜めに溜めて、ようやく出た言葉がそれだけだったので、ロックは少し不満げだ。レヴィはロックを一瞥すると、口の端を僅かに上げながら言った。

 

「身内判定は厳しいんだぜ?向こうから迎えに来たんだ。折角だから好意は貰っとけ」

 

要するに、欠かせない人間として見做されているのだそうだ。誰にとってかは言うまでもない事だが。兎に角も、嬉しくないわけではない。自然とレヴィに近づいたわけだから。

 

しかし、なんとも秘密主義的な、結社的な不気味さがロックは気に入らない。変に勿体ぶって気取ったような振る舞いは、自分たちの関係性には似合わないと考えているからだ。

 

「別に嫌じゃないんだって。少し驚いただけだよ」

 

だから、ロックは努めてフランクにそう言った。つんけんなのは隠せなかった。とはいえ本心でもあるし、レヴィには誤解を受けたくないからでもある。構成員ではなく、一個人としてこの場に立っていることを断っておきたかった。

 

ロックの訴えを受け止めたのか、気づいていないのか。それはレヴィからねちっこく言葉に直してもらわねば納得できないことだろう。

 

だが、少なくとも彼女はロックのことを一人前と言わず気に入っている。去るもの追わず、来るもの拒む。誰かが選ばなければロックはそもそもあの家の存在も、彼の存在も知らないままだっただろう。

 

「朝でも会った時は頼むよ。寝起きと寝る前のルーティンだからな。軽くでいいから抱き締めてやってくれ」

 

ロックの真剣な声に対して、レヴィは深刻さを感じさせない声でそう言った。

 

「…イブラハのことが響いてるんじゃないか?」

 

レヴィの態度を受け入れつつ、ロックはそんなことを言った。イブラハの復讐に手を貸しながら世界中を飛び回ったが、ロックの役目は専ら調整やら交渉だった。ホテルの予約から現地で使う武器の予約まで。パスポートの偽造職人ともセッションを重ねる羽目になったが、兎に角イブラハの行く先々でついて回った。彼が死んだことも、彼がレイジとよく食事を共にしていたことも覚えていた。二人はお世辞にも親密とまでは言えなかったが、知り合っていたし、何度となく様々なことを話していた。

 

今日会って、明日以降は二度と会わない程度の仲ではなかった。

 

だからロックは、自分よりも尚のことレイジの精神状況にも造詣が深かろうレヴィにこの話題を振ったのだが、果たしてレヴィは片目を細め、もう片方を吊り上げる、例のからかうような笑みを浮かべて首を傾げた。

 

「さぁ?」

 

「それでいいのか…」

 

ロックは思わずといった様子。兎に角、気持ちが先行して、レヴィにもっとレイジを気に懸けろとでもいうような口調になった。

 

だが、ロックの言葉もどこ吹く風。レヴィがロックを諭すようにこう言った。

 

「悩んだって、あたしはレイジじゃないんだ。変えられないものを無理に変えようったってそうはいかない。どうにかできるモンだけ悩みな。他は悩んだって疲れるだけだ」

 

レヴィは言うや、ふぅ、と煙を窓の外に吐いた。丁度、この先で事故があったようで、信号機もないのに車列が止まった。渋滞に捉まるまいとロックが後退しようとしたが、間に合わず後続車に詰められてしまった。

 

「ドライだなぁ」

 

仕方なく蒸し暑い車内で待つことになったロックは、ハンドルに突っ伏してそう呟いた。誰も彼も余裕がない。余裕を必死に作っても、その余裕を詰めるように新しい不安やらなにやらが、残りの部分を食い潰してしまう。そんな気がした。世知辛くて涙が出そうだ。

 

だが、懐かしき社畜の哀愁を茨の冠のように巻き付けて、悶々と頭を曇らせているロックに明るい声でレヴィは言った。

 

「そうでもないさ。あたしらは他所よかよっぽど悩めることが多いんだからな」

 

「できることも多いって言いたいのか?」

 

ハンドルに突っ伏した顔を、革のカバーで擦りながら横に向けたロックが、ヘッドレストに頭を預けて上向きに、その喉を無防備に晒すレヴィを見上げた。ロックはふてくされたように言う。

 

「何を言ったって、俺たちが悪党なことには変わりないだろ」

 

「正義の味方も、ヒーローも、こんなに血塗れなもんか」

 

冷笑的に口の端を吊り上げて噛みつくが、それは虚勢で、まして、破られることを期待している脆い諦念に過ぎない。彼の相棒はニヤリと笑った。

 

「好きにできる領分が少しだけ他所様よりは広いってだけだよ。別に正義の味方気取りじゃねえ」

 

「ラグーンの仕事と一緒さ。どっちもご法にゃ触れるしな」

 

レヴィはそう言ってロックの肩を叩いた。渋滞が少しずつ前に進み始めた。どうやら事故車両が排除されたようだった。全く涼しくないクーラーに嫌気がさしていたところだった。

 

「その通りだな。スッキリしないな。ビシッと決めるのも柄じゃないけどね」

 

子供の頃、猫背でご飯を食べているとよく叱られて、その度に背筋を伸ばした。あの時は、ただただ煩わしく感じたものだが、言われなくなっても、気づくと背筋を直す癖がある。

 

なんだかんだ言って、ヒーローや正義の味方という代物は、その全てが完璧な、美しい物語になってしまう。生も死も、苦労も道程の一部として、全てが不可欠な扱いになってしまって、そう言う意味では逃げも隠れもできない。その必要が無いだけなのかもしれないけど。

 

いずれにせよ、そう言うのは自分には似合わないし、憧れる対象じゃないことだけは確かだ。

 

「違いねえ…そのナリじゃ、ヒーローってのも似合わない。よくても犠牲になる善良な市民さ」

 

レヴィに言われてロックは自嘲気に笑った。

 

「買い被りだな…俺にそんな勇気はないよ。実際は、倒れた英雄を見守るモブCぐらいが関の山だ」

 

場面は雨の日だろうか、命と引き換えに大事を成し遂げた英雄を囲んで泣く役だろうか。それとも、もう一度立ち上がって悪に立ち向かえと、やりがいの搾取を堂々とぶちまける衆愚の中の一人だろうか。

 

ロックは自分と言うものを大きく見なくても済む気がした。小さく見る気も無かったが、お世辞にも御大層なものには思えなくなっていた。それでも好いのだと。

 

ロックがハンドルを握って前を見ているのを、横目でレヴィが見た。

 

「それでもいいさ。生きてりゃ、何時か何かの足しになる」

 

レヴィは誰にともなくそう言った。窓枠に腕を掛けて外に目を向ければ、車内に流れ込んだ風に二人の髪がサラサラと流れた。

 

「ようやく涼しくなってきた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イブラハが死んでからというもの、胸にぽっかりと穴が空いたようである。一度でも知り合い、食事を共にし、剰えその人となりを知ってしまった以上、それは他人と呼ぶには身近過ぎる。顔見知りと呼ぶのは他人行儀である。歴とした友人のように感じていた。

 

人間というのは勝手なものだ。彼が死んでいなければ、あの様にキリがよい死に方をしていなければ、それはそれで何か思うところがあっただろう。あたかも一素人視聴者による映画論評だ。それは身勝手だ。無責任に言葉を並べることの、なんと誘惑的なことか。賢しらに、他人の過去と未来を知った気で語る時ほど、人間が生き生きとする時もない。不躾な振る舞いは、自身を過信させる。それは紛れもない錯覚であり、不注意による無謀だろう。

 

死んで欲しくなかったが、幸せに生きていて欲しくもなかったというのが本音だろう。

 

もしも、あの後でイブラハが新しい妻子に恵まれて仕舞えば、きっと僕はそのことを受け入れられなかっただろう。何かが違う、と。そう言って、二度と彼とは会わなかったに違いない。気分を害されて、それを態度に出したかもしれない。だが、それは決して悪いことでもなければ、僕が口を出すべきことでもなかった。ありふれたことなのに、それでも何かが不愉快だったのだ。

 

だから、彼が死んだことは残念だったが悲しくなどなかった。彼は彼のまま、成し遂げた状態で、登り詰めた状態で、自分の隣に置いておきたかったのかもしれない。信頼できる状態で。恩がある状態で。

 

とまぁ、これも一種の欺瞞であった。そうでしかなかったのだ。そして、彼は僕にとってその程度には重大であった。貴重であった。それもまた紛れもない事実だった。僕は彼のことを、心の底から尊敬していた。頼もしく感じていた。父親として生きて死んだことも含めて。僕はとても切なくなった。一筋縄ではいかないこの感情に振り回されては、やるせなさに胸が潰れるような気がした。

 

結局のところ、彼は幸福ではなかった。どれだけ沢山、彼が復讐するための力を貸したところで、奪われた息子は帰ってこないのだ。だからこそ、せめて同じ苦痛を味わわせてやりたい、後悔させてやりたい、二度と同じことが出来ないようにしてやりたい、のうのうと生きていることが許せないから殺したい。そういう想いだった。その想いを否定など出来ようはずもない。復讐を正義だなどと胸を張れるはずもない。それでも、世界や人や国や思想や、そういった何もかもを呪いながら死ぬよりはマシだと、そう信じたかった。

 

これは偽善か。だが、偽物でも善ではあるのならば、善ですらない行為よりはマシなのではないか。

 

最善は、何も起こらないこと。次善は神か何かに復讐を代行してもらい、その上で手を汚していないイブラハの元に息子が帰ってくることだった。だが、それは出来なかった。そうであれば、どれだけ幸せだっただろう。正直なところ、なんでもいいから、そう言うことにしたかった。そうなって欲しかった。不愉快で赦し難い奴らは死んで、救われて欲しい誰かは五体満足で生き残って、不自由なく幸福に暮らして、苦楽ありつつも平穏に人生を送っていく。そういう結末を望んでいる。

 

だが、イブラハの息子は死んだ。不愉快で赦し難い奴らも死んだ。神も誰も復讐を代行してくれないので人間の力が殺した、悪を自覚しながらも。やはり神がいない。天罰などない。神は死んだのではなく、神はそもそもいなかった。死んだのも、殺されたのも正義の方だった。

 

そして、イブラハも死んだ。苦しまずに死んだようだから、僕としては言うことはない。ただ、何となく残念だった。そう、残念だった。いつの間にか、何か大事な僕の一部になっていたのかもしれない。身内の様に持っていた。立派な人間だと思っていた。近くに居て欲しいと思っていた。仲良くできればいいなと思っていた。

 

果たして、誰が彼の代わりになってくれるだろう。誰もイブラハの代わりになどなれない。ましてや、どうして僕がイブラハの代わりになる様な、酷い目に遭った人間を望むと言うのか。僕は一生孤独なままでも、苦痛に喘ぐ人間に出会わない方が好かった。こんなに酷い目に遭う人ばかりだから、その所為で僕は彼女たちと出会うことが出来た。彼女たちに愛情を押し付けられるようになり、彼女たちからの愛情を貪ることができる。だが、そうではなかった方がうんとマシだっただろう。これは誰にとっての最善だというのか。僕は孤独のまま、透明人間のように生きた方が好かった。寧ろその方が、莫大な理不尽と不義に苛まれて、不安にも恐怖にも脅かされず家族に囲まれて安心して生きることが出来ただろう。

 

だが、そうはならなかったのだ。探せばイブラハのような人間自体は幾らでもいるのだ。苦痛は多寡では測れないが、奪われた物の多寡は量れる。根こそぎ奪われた人もいただろう。家族全員を奪われた人もいただろう。でも、全員を救うと言うのは、ハッキリ言って面倒臭いと感じるだろう。果たして、何処まですればいいのだろうか、何を如何すれば、自分以外の誰かを救うことなど出来るのだろう。自分に癒しを与えることすら難しいと言うのに!

 

どのみち、僕は二度とイブラハには会えない。彼の声を聴くことも無ければ、彼の顔を見ることもできないのだ。

 

僕は自分を支える足場の一辺が崩れてしまったような感じがして恐ろしかった。

 

破滅願望と恐怖は違う。破滅願望は満たせるが、恐怖は誤魔化しが効かない。…否、寧ろ誤魔化ししか効かない厄介な代物だ。破滅願望とは文字通り、破滅という終点がある。底に辿り着くことで、解放されることを願望しているわけだから。けれども、恐怖というのはしがらみよりも厄介で、底も終点も存在しない。ほんの僅かでも起こり得ること、過去に起こり得たこと全てが恐怖の範疇に入るのだから。

 

だから、僕は常に恐怖とか不安とか言うものに苛まれている。死ぬことへの恐怖ではない。生死そのものに意味などないのだ。そうではなく、そこへ至る道程である。その道程に、僕にはどうしようもない苦痛が、理不尽な苦痛が、不都合不愉快不安定要素が、僅かなりとも存在していることを思えば、それは耐え切れないほどの恐怖を僕にもたらすのである。では、何を最も恐れているのか。

 

それは事故だ。故意の事故である。

 

事故というものは、加害者から選ばれてそうなるものではない。加害者は加害の意識などない。それが大半であろう。一方、殺人というものがある。この場合、加害者には明確な殺害の動機がある。被害者の死には少なくとも理由がある。事故と事件の違いというのは、害意や悪意によるところが大きいのではないかと、そう思うわけである。

 

だが、現実的には果たしてその二つはそこまで峻別できるものではない。残念ながら、悪意など無くとも他人を傷つけることのできる人間は存在しているし、悪意や害意を孕みながら、事故同然で、特別の理由もなく無作為に選ばれて傷つけられたり、命を奪われることが、さも自然とそこに現実としてあるわけである。こんなもの、何を如何したら防げると言うのか!どうしようもないじゃないか。だから、僕は怖くて怖くて仕方がない。

 

ならば速い話が、殺したら、殺される。それでよいではないか。イジメたら、イジメられる。イジメたら、恨まれて殺されても文句は言えない。そういうことである。むしろ、想像力を働かせてみれば、他人に恨まれるような振る舞いをした結果、イジメた相手に殺されるのは意外性の欠片もない。むしろ、何故殺されずに済むと、傷つけられずに済むとでも考えているのか。全くもって疑問である。

 

殺した以上は殺される覚悟があると見做される。蔑ろにすれば、蔑ろにされる。傷つければ、傷つけられる。極めて原始的な法秩序だとしても、これほど明確なものは、今日の複雑化した司法には望むべくもない。

 

人権を蔑ろにした者の人権ばかりが保護される。被害者は殺され損、奪われ損である。生きるべき人間と死ぬべき人間の選別などと、傲慢なことは言わない。だが、他人を殺して、他人から奪い、他人を傷つけた人間がどうして殺されもせず、奪われず、傷つけられずに平然と息をすることが許されているのか、それが理解できないのだ。賠償金が用意できないで済むわけがない。内臓でも何でも売って金に換えてこい。最期には命まで奪われてようやく釣り合いが取れるのではないか。理不尽にも命を奪われると言うことは、結局のところ、その恐怖ではないか。

 

イジメも然りだ。要するに迫害だろうに。敗北による後退を転進と称したのと同じだ。姑息にも言葉遊びで言語を悪用し、その品格を貶める所業である。

 

責任能力のアレコレはこの際どうでもよい。殺された側、奪われた側、傷つけられたり側が現実的な範囲で納得し、溜飲が下がらねば、何らの意味も成さないものではないか。癒しも救いも無ければ、何のための法であるか、秩序であるか、正義であるか、平和であるか。

 

結局、僕は、そういうシステムが自分を確りと守ってくれないから、怖くて怖くて、そうして家を飛び出して、国家を飛び出して、気が付けば今やこうしてロアナプラにまで辿り着いてしまったわけである。整然として受け入れられない世界から、混沌としていても受け入れられる世界へと逃げ込んだわけである。

 

ロマンティックな幻想に生きることを選んだ挙句、僕はまるでダンテが神曲の中でやったのと同じように、手当たり次第に、自分を傷つける可能性がある、不愉快で赦し難い実績を有する、不義理と見做した連中を地獄に叩き落としたのだ。

 

敢えて動機と言う言葉を使えば、僕のは正しく恐怖だ。不安だからだ。

 

怖いから殺した。

 

だから、嘘でも正義の為だなんて言えない。言えるわけがない。どうして僕を守ってくれない、僕の大切なものを守ってくれない何かの名前を借りなければならないのか。嘘でも建前でも、そんなものの為に人を殺したくなかった。そんなの、まるっきり欺瞞だ。生臭い。生臭くて反吐が出る。そんな真似をするくらいなら、私利私欲のために人殺しをした、憎むべき悪党として然るべき憎悪を向けられて、意外性もなく地獄に堕ちた方が納得できる。

 

だって、地獄に堕ちることが出来るということは、そこには確かに地獄があると言うことではないか。天国などなくても構わない。天国に用などない。既に僕は満たされているのだ。ここが天国だ。彼女たちがいる場所が天国なのだ。だから、死んだ後なら地獄でも構わない。

 

寧ろ、僕を地獄に堕としてくれ。厳格に悪を選別し、ありとあらゆる悪党と一緒に地獄に堕としてくれ。せめて、あっちでは不義を殺してくれ。不義を許さないでくれ。僕のことを裁くということは、つまりそう言うことなのだろう。ならば、望むところだ。奴らと一緒に死後に裁いてくれ。奴らが裁かれると言うのであれば、僕には何らの不満もない。だから、どうか連中を赦さないでくれ。連中を傷つけ、連中から奪い、連中を殺し尽くしてくれ。善良な誰かにしたのと同じように。この世界に連中がしたのと同じ苦痛を与えてくれ。願わくば、より多く、より長く、より鋭く、より鮮明に。連中が二度とそんな真似をしないように。

 

だから、僕は悪党で好い。不義の責任など取れるはずもないが。

 

奪われる可能性。失われる可能性。傷つけられる可能性。そう言ったものが怖くて怖くて仕方がない。だから、目についたものを片っ端から排除していく。だが、僕自身にはどれほどの力も持つべきではない。空回りすることが恐ろしいから。結果的に自分が彼女たちに不利益を運ぶことが恐ろしいからだ。だから、全てを委ねた。自分よりも遥かに優れた彼女たちに、全てを委ねて、その結果齎される全てを受け入れることだけは覚悟を決めた。最終的に、続きのない破滅的最期を迎えるとしても、それはそれで構わなかった。捨てられたならば、それはそれで構わなかった。何故ならば、少なくとも最早何も失うことが出来なくなるからだ。それはそれで素晴らしい。素晴らしい平穏ではないか。

 

その上で、全てを決めることを望まれた以上は、全ての決断を僕自身が負う。この身一つで責任を負うことなどできない。そもそも、責任を取ると言って、現実に責任を取ることができた者がどれだけいると言うのか。

 

戦争犯罪人が首を吊れば、彼らが殺した数百万の命は戻ってきたのか?失われた経済は?奪われた財産は?破壊され尽くした街は?焼かれた村は?

 

失われた未来も希望も何もかも。何一つ取り戻すことなどできないのだ。責任ほど無責任な概念を、僕は他に知らない。

 

責任を取る…この、なんと空虚な響きか!

 

一人の人間が背負える責任など、その程度である。命とは、破壊されたものとは、奪われた物とは、それほどまでに取り返しがつかない。埋め合わせの効かないものだ。時間も、記憶も、物質も、何もかもだ。

 

天才が、才人が、エリートが、どうしてその程度のことを理解できない。否、理解できていないはずがない。その上で選択したのだ。であるならば、当然ながら、これらには故意が適用されるべきだ。そして、統計上の無数の1の中の一人でしかない僕からすれば、国や民族や宗教で、大きな括りで一緒くたに人生を台無しにされることは、まるっきり故意の事故だとしか思えないのである。

 

ジェノサイドの決定を下した数えられる程度の人数の中で、犠牲者の生まれも、半生も、その何もかもを知っている人間は誰一人いないのである。そう言う人間が無数に踏み潰されて、踏み固められた上で連中は踏ん反り返っているのである。

 

僕には、胸糞の悪い凄惨な事件を引き起こすような、非行少年やら、サイコパスやら、性犯罪者やら、精神異常者やら、そういった常習的で反省の色などない連中と、高貴を気取り殺戮と略奪に勤しみながら平然と生活してきた連中との間に、その行為の結果齎された大小さまざまな苦痛の犠牲者の有様に、どれだけの違いがあるのか理解に苦しむのである。

 

そこに違いはあるのか?

 

僕は、無いと思う。規模の大小は関係がない。全て悲劇で、全て統計で。唯一つ、安心も安全も平穏も、尊厳も幸福も希望も未来も、その何もかもを無慈悲にも踏み躙ったことだけは同一である。同列である。

 

そして、その犠牲者の中に僕や彼女が含まれないという保証は、この世界のどこにも存在しないのである。生きている限り、常にその脅威に晒され続けるのである。

 

明確に、その跳梁跋扈を許さず、悪意や不義を断罪するシステムに守られていれば、幾分かマシであっただろう。だが、そんなものは存在しない。正義など不要である。とにかく不義を殺してくれ。それだけだのに、どういうわけか正義の名のもとに不義が跳梁跋扈しておる。

 

いつの日にか、その毒牙に自分自身や、自分の大切な何かが侵されるのではないかと考えてしまうと、もう気が気ではいられない。そんな、そんな理不尽は許容できない。

 

僕は、子供の頃の純粋な正義感を抱いたまま死ぬであろう。大人になり、諦めを知り、妥協することもあるだろう。けれども、最期の最期で、この赦し難い全てを殲滅せずして死ぬことなどできない。

 

踏み躙られ、奪われるばかり、傷つけられるばかりの存在。そういう存在の怒りと、悲しみと、無念とを不愉快で赦し難い連中に直接刻みつけなければならない。二度と、ふざけた真似などできないように。

 

不安と恐怖が、限界を超えて悲痛な憤怒に変質した。僕たちを傷つける力を使って、他ならぬ不愉快で赦し難い連中を懲罰した。財力で、暴力で、権力で。僕が不愉快に感じたから。目障りだと思ったから…だなんて、実に理不尽な理由だ。なんと理不尽な。なんとしょうもない理由であろうか!

 

だが、そうでも無ければ、この現実というものを受け入れることなどできない。この現実というものに立ち向かうことなどできない。

 

なぜならば、僕たちは酷く弱い。矮小で、心細い。臆病なのだ。

 

だから、強者の振る舞いを投影して、他ならぬ諸君の作法を以て悪を成すのだ。

 

どれだけの葛藤と、自己嫌悪と、苦痛が伴ったであろうか。

 

一人でも殺した瞬間から、例え一人の命でも、その命を奪うことをレヴィに命じた瞬間から、僕には文句を言う権利などなくなってしまったのだ。

 

恨みや、怒りや、無念を晴らすためにも拘らず、それでも不義であることには変わらないのだと、誰よりも理解しているのだ。だから、こうまで懊悩するのである。懊悩するくらいならば、初めからこんな真似をしなければ好い。そうだとも。その通りだとも。だが、そうなれば一体誰がこの理不尽に否を突き付けることが出来ようか。理不尽に、理不尽を以て復讐を遂げることが出来ようか。

 

確かにそれは僕の役目ではない。誰に強制されたわけでも無い。だが、延々とこの不愉快な理不尽の跳梁跋扈を見せつけられ続けることに堪えられないのである。

 

僅かなりとも、その理不尽が、その不愉快で赦し難い何もかもが、自分自身に向くのではないかと思えば、生かしてなど置けないのである。

 

そして、幸か不幸か、その為の不義を成すに足る何かを僕は持ち合わせてしまった。強いて言えば、それは気分である。何となくである。正しく、理不尽である。理不尽に対する理不尽である。憎悪であり、憤怒であり、不安であり、恐怖である。絶対的衝動である。

 

僕に対して、僕と言う人間はこの上なく理不尽であった。だが、弱者に対する理不尽なる悪党よりも、理不尽に対する理不尽なる悪党の方が、余程のこと胸がすく想いであった。

 

小さい頃にその実在を純真に信じていた単純な悪と正義の構図は死んで久しいが、死んだ筈の正義のシステムとやらに、この身で成せる最上の不義こそが最も近いものだった。

 

皮肉なことに、その実現は自らの安寧を手に入れることと等しかった。

 

自分の安心安全。自分の平穏。自分の安寧。自分の幸福。自分の自由。自分の希望。自分の未来。その全てをありとあらゆる悪意から保護すること、ありとあらゆる不愉快で赦し難い存在を殲滅し、精神的にも肉体的にも苦痛と不安を最小化することでしか、僕は癒されないし救われない。目に入り耳に聞こえる範囲だけでも、完璧な世界を実現するためには、理不尽を懲罰する理不尽な悪党に成れ果てることでしか、結局のところ、弱い僕は納得できなかった。いつ死んでも、せめて納得して死ねるようにと。

 

不義を殺すのは、何時だって不義である。悪が正義を殺したのだ。その悪を殺した別の悪が、死んだ正義から剥ぎ取った皮を被り、正義を僭称したのだ。

 

正義など要らぬ。僕に力を与えよ。不義を殺す為の不義を成せるだけの力を与えよ。理不尽への復讐を成し遂げるための、理不尽な力を与えよ。

 

正義が癒しと救いを与えないのであれば、正義を殺した不義を殺し、その皮で贖う他ない。正義の皮を正義の遺族へと返還し、不義は不義のままに。息絶えるその日まで、不義は不義と対峙し続けるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶望し続け、期待し続け、憎み続け、怒り続け、悲しみ続け、苦しみ続け…。

 

何事も、何かをし続けると言うことは困難が伴う。

 

継続とは才能に他ならず、そう言う意味でも、僕は終ぞ非才だった。

 

「飽きた」

 

その一言に集約された僕の沈静は、恰も砂の様だった。

 

乾き切った砂の様な、空虚な、唐突な沈静が僕を襲った。

 

このように、安易で卑俗な自分自身に絶望すること、はて幾度だろうか。

 

短絡的ならいざ知らず、熟慮の末にこのような、精神的な疲労困憊に託けた心理的落着を迎えてしまったことは、これまでにも何度もあった。

 

「飽きたよ、ロザ」

 

キッチンで夕飯の支度をしていたロザリタの背中に声を掛けた。

 

僕がそう言えば、彼女はこう言った。

 

「それもまたよろしゅうございます」

 

手を留めて、振り返った彼女は合わせた手を顔の横に持ってきて、爽やかな笑みを浮かべたではないか。僕は拍子抜けした。

 

「よろしゅうございます、なの?」

 

「ええ、寧ろ安心しましたわ。気を張り詰めて無理をなさっておいでではないかと」

 

「うーん」

 

釈然とせず、もう一言欲しかった。

 

するとロザリタは俯く僕の両頬を手で優しく押さえ、顔を両手でそっと持ち上げ、目を合わせると言った。

 

「完璧を求めるよりは、先ずは何かを為さったことを認められては?無駄かどうか、無意味かどうか、無理に考える必要はございません」

 

「そういうもんかな」

 

「そういうものですわ。それでも好いのです」

 

納得してしまうが、やはり何か不安のようなものを感じた。

 

願わくば責めて欲しいという、この我儘よ。

 

僕は次にシャワールームから出てきたレヴィに言った。

 

「レヴィ、僕は飽きた」

 

「あん?何がだよ」

 

言われて初めて気づくこともあるものだ。何に飽きたと言うのか、はて、僕にも説明できなかった。

 

「よくわかんないな、でも、疲れたんだ」

 

僕の言葉にレヴィは真剣な表情で言った。

 

「勢いつくまでボーっとすんのもありだと思うぜ?」

 

「そう言うもんか」

 

冷蔵庫から取り出した缶ビールを一息に流し込んでから、彼女は僕の胸を指先で小突いた。

 

「いつも言ってんだろ?逃げられるうちは逃げちまえって、アンタが言ってんじゃねえか」

 

「それもそうだけど」

 

レヴィの言うことは最もである。しかし、納得できない。何かに対する期待と、期待に対する罪悪感のようなものが胸の中で渦巻いていた。

 

僕は次にゲストルームで寛ぐシェンホアを見つけて言った。

 

「シェンホア、僕は飽きた」

 

「あいや、なら、ゆっくりと休むべきね」

 

あっけらかんとそう言われてしまい、意気込んでいた気持ちが早くも和いでしまった。

 

「責めないのか」

 

「責めるの欲しいか?」

 

いざ言われると、責められたら責められたで泣くかもしれない。そう思えば首を横に振らざるを得ない。

 

「そうでもない」

 

「おぅ…ご主人は面倒ね」

 

シェンホアの眉がハの字に歪んだ。

 

「ごめん」

 

面倒臭い自覚はある。

 

「謝るなら帰って寝るよ。ぐっすり寝るの、嫌なこと先送りするのに一番ね」

 

「その考えは無かった」

 

かなり力技だが、確かに問題は解決しそうだ。そもそも、問題にすらなっていないのかもしれない。

 

「嫌なこと、忘れるがよいな」

 

「忘れてしまっても好いのかな」

 

「忘れられるものはそうした方が健康的ですだよ」

 

「うん、そうだね」

 

シェンホアの意見も最もだ。特に寝て忘れてしまうと言うのは好い。面倒臭くないし。

 

とはいえ、ここまで聞いたのだからソーフィヤにも聞くことにした。

 

家を出ることなく、地下に潜り、そのまま細い通路を通って何処かへと抜けると、分厚い鉄の扉を開いた。

 

扉を開いた先は執務室だった。重厚な机が存在感を主張していた。革張りの椅子に腰かけているソーフィヤの元へズカズカ歩み寄り言った。

 

「ソーフィヤ、色々とやって貰って申し訳ないんだけど、飽きた」

 

「あら、そうなのね。じゃあ、ここらへんで止めにしましょうか」

 

「あ、うん」

 

余りにもあっさりしていたので、気の利いた言葉が出なかった。かなりの規模の動きを見せていたというのに、いきなりやめてしまっても構わないのだろうか。地球の裏側まで手を伸ばしているのだ。問題しかないはずだ。言った手前、気が引けたが。

 

「…不思議そうね?どうかしたの?」

 

「もっと、何か言われるかと思ってた」

 

「買い被り過ぎね」

 

「そうかな」

 

僕の反応を受けて、ソーフィヤは肩を竦めておどけた。口元の笑みは可憐に見えた。

 

「ええ、そうよ。大義とかを掲げるような人間だったら、私は今もクレムリンにいたでしょうね」

 

「言われてみれば」

 

「何が不満なの?何が不安なの?私に教えて頂戴な」

 

ソーフィヤがぐっと身を乗り出した。臙脂色のスーツの大胆に開いた胸元に目が行った。視線の意味を見逃さなかった彼女の手が、すかさず僕の頭を捕まえて、ギュウギュウと顔を胸に押し付けた。視界は真っ暗になった。

 

あ、これ知ってる奴だ。競走馬の視界を塞ぐアレだ。

 

温かいし柔らかいし、好い匂いもする。なるほど、安心できる。

 

ようやくわかったような気がした。つまり、こういうのだ。要するに、こういうのが欲しかったのだ。難しいことなど何もなかった。やはり知も論も、温もりの前では無力なのだな。

 

「…あー…なんて言うか、分かった気がする」

 

「…そう。気が向いたら教えてくれるかしら」

 

「忘れる前に言うよ。この場で」

 

「思い切りの好さは人一倍ね。好きよ、そういうところも」

 

僕はもごもご喋った。解放されると、目と鼻の先に、怜悧な青い瞳が見えた。

 

「あ~…っと。…まぁ、子供の確認行動ってやつだよ。うん。それだけ…飽きたってのは本当だけど。それよりも大きい不安が湧いてきて、それでシラフに戻っちゃったんだと思う」

 

自分勝手に振舞った後で、捨てられるんじゃないかと気が気じゃなくなるアレだ。虫が好すぎるとは思うが、得てして、その不均衡に無償の愛を見出すのが子供心なのかもしれない。自分を庇護する存在に、破綻しない程度の面倒を掛けて拒絶されないことを確認して、愛着を実感する。そういう確認行動を、無意識の内に行ってしまうのは何も今に始まったことではなかった。

 

「…そう、分かって好かったじゃない。私も一安心だわ」

 

それはソーフィヤの本音だろうか。安心したのは確かだろう。彼女にとって彼のこの手の行動は慣れたもので、彼が考えているほどの面倒を感じていない。実のところ、面倒の範疇にそもそも入っていないのだろう。

 

「はは…恥ずかしい感じだ」

 

ソーフィヤの声は優しかった。

 

だが、だからこそ、その剥き出しの真心に、自分の弱さとも、情けなさとも言える部分がより強く刺激されてしまうのである。一見悪循環だが、その循環に嵌ったままでいることを許容されていることは、ある意味では幸福なことに違いない。

 

僕は殊更、その自覚から得られる暗い幸福を噛み締めるのだ。

 

「なんで照れるの?」

 

ソーフィヤが優しい手つきで髪を梳いてくれた。

 

「子供っぽいから」

 

答え方まで、そのままである。羞恥とは距離を置いた心理から、吐き出された言葉だった。気が付けば頭は彼女の膝の上に、膝を屈して絨毯の上に跪いていた。頭を撫でる手。頬を撫でる手。頬の手を、訳も分からず捕まえて匂いを嗅いだ。柑橘系の好い匂いがした。保湿クリームか何かかな。

 

「子供っぽいのは悪いコト?許されるなら、別に誰を苦しめているわけでも無いのだし、それで好いじゃない」

 

「君は好いのか」

 

ちらりと彼女の顔を見た。恐る恐るだ。頬に寄せて腕に抱いている彼女の手は逃げて行かないから。そのことだけに縋って、勇気を振り絞ったのだ。

 

「私は構わないわ。いえ、この言い方はアレね…言い直すわ。貴方はそのままで好いの…どうかしら?安心した?」

 

「…うん。安心した」

 

「そぅ…」

 

僕はなんだか、これで好い気がした。

 

「少し出て来る」

 

「いってらっしゃい。気を付けてね」

 

僕の言葉にソーフィヤは何も聞かずに微笑んだ。何も言わずに送り出してくれた。

 

これでも好い気がした。

 

酷く唐突で。なんとなくで。でも、どうしようもない。

 

なんて理不尽なんだ。

 

自分勝手に浮つく心に涙が出そうだ。

 

嘘を吐けないよ。まるで魔法の様だ。

 

でも、この理不尽は嫌いじゃない。癒しと救いが理不尽だって。

 

僕は次の日、無性にロックを抱き締めたくなった。

 

だから、抱き締めた。

 

何か、落ち着く気がした。

 

父は喫煙者だった。今の君くらいの年の頃に僕が生まれたそうだ。

 

吸っていたのはラッキーストライクだったな。

 

二十歳から吸ってたって教えてくれた。

 

レヴィと君からは同じ匂いがする。

 

不思議と君は怖くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




*エダや双子のことを忘れているわけではありません。出さなかった理由は、レイジに色々と近過ぎるからです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。