地球親善大使アリスティア   作:生焼きマンガ肉

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アメリカの動向

 アメリカ合衆国は地球の覇権国家として君臨している超大国であったが、近年では脅威となってきた中国との覇権争いやウクライナ戦争などの問題でアメリカを動かしているジョン・コリンズ大統領は苦労していた。

 とはいえ、とある並行世界ではこれに加えて中国起源の新型コロナウイルスによるパンデミックによって大混乱になってしまい経済的に大打撃を受けてしまった為、この世界のアメリカはまだ恵まれている方だろう。

 そんなアメリカの新たな悩みが宇宙人だ。

 事の始まりはNASA(アメリカ航空宇宙局)が地球以外に文明が存在する太陽系外惑星を発見したことだ。

 これは有史始まって以来の大成果であり、NASAやアメリカ政府は秘密裏ながらも大いに盛り上がっていた。

 そして、アメリカ政府はNASAを通してその惑星にメッセージを送ることにしたが、返答は一切来なかった。

 これは件の星が太陽系外惑星であるから、そもそも電波が届くのに時間がかかり過ぎるという問題もあり特に政府としては気にしていなかった為、一年たっても返答が来なくてもそんなものだと判断していたのだ。

 しかし、一年も進展がなかった結果、NASAが痺れを切らして地球外文明の発見をアメリカの功績として国内外に発表しようと政府に上申してきたのだ。

 NASAの主張は『ぼやぼやしていると他の国もこの星を発見してしまい自分たちの成果をかっさらわれてしまう』というものだった。

 確かにアメリカが発見できた以上他の国が発見できない理由はないので、公表することでアメリカの成果として国内外に示す方が国益になるという主張は妥当なものだ。

 そう考えた大統領は鳴り物入りで地球外文明を発見した事実を発表した。

 当然これを受けて地球では宇宙人がいるいないという論争は終わり、各国とも件の惑星にメッセージを送り付けていったが、それらも進展することがなかった。

 このまま時間だけが経過すると思っていた所に、日本政府の発表が世界を駆け巡った。

 それは日本がマルデア星という地球外惑星とのコンタクトに成功して、あちらが送ってきた親善大使と話し合いをしているというものだった。

 この事態にアメリカ政府は驚愕した。

 自分たちが地球外文明のマルデア星を見つけて一年間もメッセージを送り続けても反応がなかったのに、後からメッセージを送った日本がマルデア星とのコンタクトに成功したのだ。

 端から見れば日本に成果をかっさらわれてしまった形になった為、NASAは勿論アメリカ政府としても放置できない問題となった。

「なぜ日本なのだ?」

 大統領の呟きには『そもそもマルデア星を見つけて最初にメッセージを送り続けていたのはアメリカなのに』という思いが込められていた。

「マルデア星には我が国だけでなく各国がメッセージを送り続けていたので、我が国以外は条件は同じはずですが、日本だったのは原因は不明です。勿論ただの偶然という可能性もありますが」

 大統領補佐官の言葉に大統領は少し考える。

「日本のでっち上げという線はないだろうな」

「そんなことをすれば日本は国際的に信用を失うので、それはないでしょう。それに縮小ボックスはトリックではありません。あれは明らかに地球外の製品です」

 日本人のでっち上げと言いたくても明確な物証がある以上否定できない状況だった。

「あの縮小ボックスだけでも地球の経済界は混乱状態になっているからな」

「あれは物流を一変させるほどの代物です。今後はあれが大量に流入するとなると従来の物流システムは過去の物になるでしょう」

 マルデア星から縮小ボックスという規格外の代物が持ち込まれた事で地球経済にも大きな影響を与えていた。

「となると、ファンタジーのエルフに酷似した少女が宇宙人であるのは事実という事になるな」

「そうなりますな。それと魔石と魔法も考慮するべきでしょう」

 補佐官の言葉に大統領は考え込んだ。

「誰でも魔法が使える石か。魔法は夢があるが現状では日本しか接触できていないのが問題だ」

「日本に圧力をかけてマルデア星との交流に参加しましょうか?」

「いや、この状況で横入りするのは得策ではないだろう。それに国内の問題があるから日本には外交方面で今回の詳細な情報を提供するように呼び掛けるだけでいい」

 大統領は補佐官の提案を退ける。

「確かに国内の宇宙人脅威論は問題です」

 補佐官はホワイトハウスの外にいるデモ隊に視線を向けて溜息をついた。

 

デモ隊のシュプレヒコール:

「政府は宇宙人の侵略から地球を守れ!」

「地球を宇宙人に渡すな!」

「今すぐ侵略者を排除しろ!」

「宇宙人から地球を守るんだ!」

「ステイツは宇宙人の侵略から地球を守るべきだ!」

 ホワイトハウスの外でプラカードを掲げた彼らは口々に宇宙人の脅威を叫んでデモ活動をやっていた。

 

「マルデア大使と交流を持とうにもあれではな」

 これには大統領も頭を抱える。

「唯一の救いはマルデア大使がこちらにこない事ですな。ステイツで問題が起こる心配をしなくていいでしょう」

「逆を言えばあの手の連中をどうにかしないとマルデア大使をステイツに招くのは無理だぞ」

「確かにマルデア大使がこちらの招待を受けてくれても国民がマルデアに対する抗議活動をしていたら、あちらの不興を買うのは目に見えています」

 そんな事になるぐらいなら、最初からマルデア大使をステイツに招待しない方がマシなのは言うまでもなかった。

「しかし、言論統制は言論の自由に反しているから不可能だ」

「こういう時は独裁国家なら融通がきくのですが、ステイツは民主主義国家なのでそういうわけにもいきません」

「何てこった!」

 大統領はステイツの民主主義を愛していた。

 独裁国家の様に言論統制されて国民が言いたいことを言えずにいる社会は健全ではないと思うのだが、こうした言論の自由の弊害には思うところがあった。

「国民が落ち着くまでは様子見をするしかないな」

 大統領は国益の為なら日本に圧力をかけてでもマルデア大使と交流を持つべきだと思うが、国内の反対意見から思うように動けない状態だった。

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