地球親善大使アリスティア   作:生焼きマンガ肉

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変換器とローカライズ

 高級車に乗った私は京都の任天堂本社に到着した。

 政府から話が通されていたようで入り口で待機していたスーツ姿の社員たちがいた。

「日本へようこそ。ミス・ハイベル」

 私が付くなり彼らはそう言ってくれた。

 今回はこちらの都合で押しかけた形になってしまったが、それでも彼らは私を歓迎してくれるようだ。

 正直、任〇堂に拒絶されたら私の事業が破綻しかねないから、彼らが好意的に対応してくれるのはありがたかった。

「歓迎していただき、ありがとうございます」

 私も彼らに無難な挨拶をしておいた。

 私は社員たちに案内されて社内に入り、会議室に通された。

 そこにはスーツ姿の重役たちが待っていた。

「日本へようこそ。ミス・ハイベル」

「こちらこそ、無茶な話を持ち掛けてしまい申し訳ありません」

「確かに驚きましたが、重要な事だとは分かっているのでお気になさらないで下さい」

 比較的若くて明るそうな人が話しかけてきた。

「そう言ってもらえると幸いです」

 重役の人たちと少し談笑して本題に入ることにした。

「日本政府から話は聞いていると思いますが、私は御社のゲーム機をマルデアに輸出することを考えています」

「勿論、伺っております。大変驚きましたが、弊社もできるだけ協力したいと思います」

「それは、よかった」

「しかし、魔力という技術は我々にとって未知のものです。ゲーム機とゲームソフトをマルデア向けにするにはどうすればいいのか。これは我々にとっても何も分からない事です」

「確かに私もゲーム機とソフトの仕様から確認する必要があると思っています」

 

 そうして話し合いながら、マルデア向けのゲーム機の開発が始まった。

 といっても重役たちとではなく、実際にハードを設計するチームを紹介されて、そこで開発がスタートした。

 大手家電メーカーの技術者も来ていたが、そのメーカーもゲーム機のハードの設計に関わっていたらしい。

 そんな彼らにとって最大の問題が魔力だろう。

 そもそもゲーム機に限らず地球の家電製品はすべて電気をエネルギーに稼働する事が前提となっている。

 そこで魔力をエネルギーにするマルデア向けにゲーム機を調整するのは困難だった。

 ゲーム機やゲームソフトを調整していたら、何年かかるか分かったものではないのだ。

 しかし、私にはいいアイデアがあった。

 それはゲーム機とゲームソフトはそのままにして電源の入力部分で魔力を電力に変換する魔術機具を作る事だ。

 マルデアの家庭にある魔力源にゲーム機を接続した時に変換器がそれを電気に変えるようにすればいい。

 これならゲーム機に入っていくエネルギーが電気になり、問題なく稼働できる筈だ。

 この意見に技術者たちも同意してくれたので、変換器の製作と言語や細かい点をマルデア向けにローカライズすることにした。

 とはいえ、マルデア語は事前にフ〇ントワ〇クスという東京に拠点を持つフォント開発会社でマルデア語に対応したフォントを作っていたので、それを利用することにした。

 この会社のフォントはアニメやゲームなどで使われているので、ゲームをマルデア語にローカライズするなら適任だったのだ。

 

 魔力を電力に変換する仕組みとスイ〇チの映像出力をマルデア向けに変換する仕組みを作り上げるのは面倒だったが、何とか魔術部品を作り上げる事に成功した。

 この魔術部品は地球では製造できないだろうが、マルデア企業なら量産が可能だし、所詮は小さな部品なので低コストで生産してくれるはずだ。

 とはいえ、この試作品を作るだけで一ヶ月も用いてしまい、その間は京都のホテルで寝泊まりすることになった。

 当然、私が寝泊まりしているホテルではいろいろと騒ぎになり地球のSNSを騒がせてしまったが、これは私の本意ではなかったとだけ言っておこう。

 因みにベースとなるゲーム機は任〇堂スイ〇チ有機ELモデルのネオンバージョンだ。

 これは通常モデルよりも有機ELモデルの方が使いやすい事と、左右のジョイコンが白で統一するよりもネオンブルーとネオンレッドで色分けしていた方が左右のジョイコンが区別しやすいのが理由だ。

 更にマルデアでは地球のインターネットを使用できない事からそれに合わせてOSも調整していた。

 言語をマルデア語用にするだけでなく、USBケーブルでつなげば他のスイ〇チにセーブデータを移動できるようにしたのだ。

 これはオンライン機能を利用してセーブデータを外部に保存する事ができないから故障や買い替えの為にそうしていたのだ。

 またマルデアではオンライン対戦も不可能であるが、まあこれは仕方ないとあきらめる事にした。

 スイ〇チは携帯機としても使えるから皆で持ち寄って遊ぶことができるからオンライン機能が必要というわけでもないからね。

 こうしてマルデア用任〇堂スイ〇チの試作機ができたが、実際に使えるかどうかはマルデアに持ち帰って魔力源に繋いで試してみる必要があるし、スイ〇チがマルデアのデバイスで使えるようになるかは持ち帰って試してみるしかないだろう。

 

 また販売するソフトの選抜であるが、これは任〇堂と議論を重ねた。

 普通に考えたらゲーム機の性能を活かせる割と新しいスイ〇チソフトを輸出するのがいいだろうが、マルデア人がビデオゲームを知らないという問題があったからだ。

 現代のゲームは3Dの高グラフィックが主流であるが、これってゲームをまったくしてこなかった人からすると取っ付き難いという問題があった。

 結局2Dのレトロゲームの方がシンプルで遊びやすいという結論になったのだ。

 しかし、マルデアでは地球のインターネットが使えないからダウンロード販売はできず、ソフトはパッケージで売るしかないが、レトロゲーム単品をフルプライスで売るのは問題だった。

 そこでレトロゲームを八本収録したコレクションパックをでっち上げてお得感を演出して売り込む事にした。

 幸いレトロゲームならデータ容量が小さいので八本でも余裕でパッケージに収められる。

「問題はどのレトロゲームを収録するかだよね」

 ソフト選びには慎重を期す必要がある。

 やはりローカライズに手間がかかるロールプレイングゲームやアドベンチャーゲームは避けるべきだろう。

 その点ではパズルゲーム、アクションゲーム、シューティングゲームは初心者にもわかりやすいし、あまり文字に依存していないから、ローカライズの手間がかからない利点があるので、最初に選ぶタイトルとしては最適だろう。

「やはり最初はテ〇リスを入れるべきね」

 落ち物パズルの金字塔と言えるこのタイトルは外せない。

「テ〇リスということはファ〇リーコンピュータを中心としたタイトルにしますか?」

 技術者もテ〇リスというチョイスには異存がないようだった。

「いえ、ファミリーコンピュータ版のテ〇リスはシステムやグラフィックがいまいちでした。私はゲームにそこまでグラフィックを求めませんが、それでも最低限のグラフィックは欲しいです。そういう意味ではファ〇リーコンピュータやゲーム〇ーイはやめておきます」

 私は2Dのレトロゲームが好きではあるが、それでも今ではファ〇リーコンピュータとゲーム〇ーイはグラフィックが低すぎると感じてしまう。

 流石にこれでは魅力的に映らない可能性が高いから最初のタイトルとしては避けるべきだろう。

「ちょうどS〇GAがアーケードで出したテ〇リスがメガド〇イブミニに移植されているからそれがいいでしょう」

 一言でテ〇リスといっても様々なゲームがあるが、その中でもアーケード版はセ〇テ〇リスとも呼ばれて当時はかなり評判がよかった。

 その事を考慮すると最初のテ〇リスとしては妥当だと思う。

「また、それ以外のタイトルも第四世代据置機を中心にしたいと思います」

「となるとスーパーファ〇コンでしょうか?」

「それだけでなく、PCエ〇ジン、メガド〇イブ、ネオ〇オなども含めます」

 この辺りのゲーム機になると2Dゲームは完成度が高くなっていたからマルデアでも十分通用するだろう。

 というか、私はどちらかというと今の映画みたいなゲームよりもその辺りのレトロゲームの方が好きなんだよね。

「それを含めるとなると他社との話し合いが必要になりますね」

 確かに他のハードで出たソフトだと任〇堂以外のソフトしかないから必然的にそうなってしまうだろう。

「またファ〇リーコンピュータやゲーム〇ーイで出たタイトルでも良質なリメイク作品は候補に入れます。こちらは第四世代据置機に拘らずにプ〇イステーションやゲームキュ〇ブなどでリメイクされたソフトでもいいと思います」

「これは他社との話し合いで苦労しそうですね」

 それに必要な労力を考えると頭が痛いのか、任〇堂の人たちも溜息をついていた。

「でも、マルデアでの販売に成功すればゲーム史に残る偉業になるのは間違いありません。その辺りメリットを説明すれば向こうも食いついてくるのではないでしょうか? というか、この功績は任〇堂だけで独占するよりも他社と協力したという形で分け与えた方が後々いいでしょうね」

 勝ち組になりすぎると妬ましく思われてしまうからね。

「確かにそうですね」

 その辺りはわかったのか彼らも納得してくれたので、早速輸出候補をリストにして任〇堂と日本政府に交渉をお任せしたのだった。

 その結果、速やかに話し合いが進み、それらのゲームソフトをマルデア用のパッケージソフトに移植する作業に取り掛かることができた。

 選抜されたタイトルはローカライズの手間を省くために文字を余り使用しないので私が比較的短時間でローカライズができた。

 事前にマルデア用のフォントを製作してマルデア人が見やすい文字で統一されていた為、任〇堂スイ〇チの外箱、ゲーム機、ジョイコン、プロコンの文字は特に修正する必要はなかったのは余談だろう。

 こうして諸々の準備を終えた私は一端マルデアに帰る事にした。

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