地球親善大使アリスティア   作:生焼きマンガ肉

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起業

 動画配信を行う傍ら私は起業して新興企業を経営することにした。

 元々、跡継ぎではない私は家の資産と事業を受け継ぐことができないから、起業家になる事を望んでいた。

 マルデア用ゲーム機が完成して量産が可能になったことから、そろそろ起業して人を雇う必要が出てきたのだ。

 現実的に考えてゲーム機を販売するにしても私が直接売るのは現実的ではないから、小売店に販売してもらうべきだ。

 そしてゲーム機はどちらかというと子供のおもちゃに分類される娯楽品だから、子供向けのおもちゃ屋と相性がいい。

 そうなると私がおもちゃ屋に営業しなければいけないが、個人では相手にされないし、そもそも私の外見年齢が幼過ぎるから営業とはとことん相性が悪いのだ。

 つまり営業の為には起業して大人を雇ってその人におもちゃ屋に営業してもらうべきだろう。

 求人を出して人を雇うのはそれなりに時間がかかるから、やはり起業をさっさとやっておくべきなので法務局で会社設立の登記申請を行い法人で起業した。

 会社の形式は株式会社ではなく合同会社だ。

 合同会社は小規模のスタートアップ企業に向いている為、うち向きと言えた。

 会社名は合同会社カカリだ。

 カカリは日本の囲碁用語で、あの有名なア〇リ社が囲碁用語を社名にしたのに因んでこちらも囲碁用語を社名にした。

 私のカカリ社は雑居ビルの一室を借りて事務所にした。

 こじんまりとした始めりであるが、うちみたいな零細企業にはこれが丁度いいだろう。

 

 そんな雑居ビルで私は一人の男性と会っていた。

「本当に貴女が社長ですか?」

 アラン・フローレスと名乗った緑色の髪の男性が信じられないような表情で私を見ていた。

 20代前半の彼も十分若者と呼べるだろうが、12歳の少女にしか見えない私が求人先の社長だとは信じられらなかったのだろう。

 アランさんは私が出した求人に応募した人である。

 つまり雇用主と労働者という関係になるかもしれないから普通はこういった対応は拙いのだが、今回は彼の気持ちはよくわかるからそれを咎めるつもりはない。

 私だってこんな状況になったら戸惑うだろうからね。

「私は15歳なので、そこまで子供というわけではありませんよ」

「それでも十分若いけどね」

「不安になるのは分かりますが、事業に成功すれば貴方は正社員として安泰になります。残念ですが今の貴方を正社員として雇用してくれるのはうちしかないでしょう?」

「……そうですね」

 アランさんはそう言った。

 私の求人は多少問題のある人材にした。

 ぶっちゃけると幼い少女にしか見えない私が起業したばかりの零細企業で、おまけにマルデアで野蛮認定されている地球の娯楽品を扱う職場に来たがる者は普通はいない。

 そうなると余所では雇ってもらえずに困っている後がない者を選ぶのが妥当だった。

 具体的には前科がある人だね。

 マルデアでも日本と同じように前科があると社会的信用を失って企業に正社員として雇ってもらえなくて社会復帰が困難になるケースが多い。

 こうなると再犯の温床になるからマルデア政府も前科がある人間の社会復帰プログラムに企業側に協力を求めている状況であったが、やはり社会的信用が低い事から老舗企業はそういう社員を雇うのを嫌がっており、新興企業でもそういった人材を受け入れる会社が少ないのが実状だった。

 そんな状況だったから、こちらから申し込めば都合のいい人材を紹介してもらうことぐらいはしてもらえたのだ。

「説明を続けます。弊社では地球の娯楽品を輸入販売する事業を展開する予定です」

「あの地球ですか、それは大丈夫なんですか?」

 言外に野蛮な地球の娯楽など売り物になるのかと疑問に思っているのだろう。

「こればかりは説明するよりも実際に試した方がいいでしょうね」

 私はスイ〇チをアランさんの前に出した。

「これが弊社が販売する娯楽品ビデオゲームです」

 いくら口で言っても先入観を取り除くのは困難だから、実際にやってみてくれた方がいいだろう。

「古いデバイスのようですね」

「実際やってみますね」

 私がスイ〇チを起動して事前にダウンロードしておいたソフトをやってみせながら説明する。

 やっているのはスーパーマ〇オコレクションに収録されているスーパーマ〇オブラザーズだ。

 このゲームはシンプルな横スクロールアクションで文字に依存していないから、ローカライズしておらず日本語表示のままでも操作は十分できる。

「この左右についたボタンでキャラクターを操作して遊びます。一番右に行ったらゴールですね」

「映像を動かすとは変わった遊びですね」

「やってみてください」

 私はアランさんにスイ〇チを渡して操作を説明すると彼はボタンを押しながらマ〇オを操作していった。

「あっ、死んでしまった」

 カメに当たってやられた事に慌てる。

「大丈夫です。すぐに生き返るので、何回でもトライ可能です」

「なるほど、これは興味深い遊びですね」

 アランさんはまんざらでもない表情でプレイを続けた。

 どうやら気に入ってもらえたようだ。

「これを、マルデア用にローカライズした商品をおもちゃ屋に営業してほしいのです」

「これは確かに他にはない娯楽ですからうけるかもしれませんね。いくらぐらいで販売する予定ですか」

「店頭価格は300ベルで、小売店が三割の利益を得る形にしようと思います」

「遊び道具にはそれなりですが、そこまで高くはないみたいですね」

 マルデアのベルとアメリカのドルは大体同じぐらいの相場で、有機ELモデルがアメリカで349.99ドルで販売されている事と、マルデア用に調整する手間を考えるとかなり格安に売っていた。

 これはゲーム機本体が売れないと困るという事情から逆ザヤ覚悟でゲーム機の普及に力を入れる事にしたからだ。

 まあ、逆ザヤといってゲーム機の販売でいくら赤字を出しても日本政府が補填してくれるから問題ない。

 日本政府にとっても魔石と縮小ボックスは破格の価値があるので、多少の逆ザヤなど問題にもならないのだ。

「将来的にこのデバイスに色々なソフトを入れて遊べるようにします。ソフトは一つ40ベルで売る予定です」

「なるほど、いろんな遊びができるようになるわけですな。いい商品です。これなら売れるでしょう」

「その通りです。アランさんが入社したら弊社の営業として首都圏のおもちゃ屋にこのスイ〇チを売り込んでもらいます」

「わかりました。やってみましょう」

 私の言葉にアランさんが快く引き受けたくれた。

 こうして私は従業員を一人雇う事ができた。

 小さな一歩だけど、これで営業が可能になるね。

 

 こうして会社として動きだした時に、父さんから魔術部品が生産されたと知らせが来た。

 任〇堂からは変換器の生産体制が整ったというメールが来ていたから、魔術部品さえ向こうに届ければすぐにでも生産に取りかかれる状態だ。

 本格的に貿易を行うならこれまで以上の輸送量が必要になるが、ここで父さんが素晴らしいものを用意してくれた。

 それは荷物を気軽に大量に運ぶための魔術輸送機だ。

 輸送機にはすでに二種類の魔術部品を詰め込んでいた。

「この輸送機に載せた荷物には、自動的に空間縮小の魔術がかかる。変換機の部品はもちろん、ゲーム機本体を五万台くらいなら入れる事ができるだろう」

 やはりマルデアの技術は段違いである。

 輸送機というよりはただのリアカーみたいに見えるが、千倍の容量を詰め込む事ができる。

 なおかつ、手で押してもほとんど重さがない。

 タイヤなどついておらず、底は少し浮いている。

 これ一つあれば、大きなビジネスを動かすような輸送が簡単にできてしまうスグレモノだ。

「手始めに部品を一万個セット載せている。貿易が成功すればもっと増やせるだろうな」

「父さん、ありがとう」

「なに、この輸送機はうちの会社の備品だが、現在使われていないから、アリスティアに貸しても問題ないさ」

 うちの会社は規模が大きいから、こういう余剰の備品もあるのだろう。

「それでも会社の備品には違いないから地球人にあげたりしたらいかんぞ」

「はい、わかりました」

 この輸送機は縮小ボックスと違ってそれなりに高価だからそれは当然だ。

 私は輸送機を持ったままで魔術研究所に行き、星間ワープで再び日本に行くのだった。




アラン・フローレス
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