「ここはどこ?」
今回は京都の任〇堂本社につくように設定したはずだが、到着した場所はどう見ても目的地ではなかった。
とにかく周囲を見渡していると遠くにそびえるタワー、通天閣が見えた。
「ここは大阪だね」
前世でも見た覚えがあるタワーのおかげで場所が一発で分かったのはいいが、『何で京都に行くはずが大阪に来てしまうのだ』と頭を抱えたくなる。
あの星間ワープ本当にポンコツだな。
魔法省が簡単に使用許可を出してくれるわけだよ。
こんな代物では持て余すのは当然だろう。
できればまともな星間ワープを使いたいよ。
「何、あのリアカーみたいなの」
「っていうか、彼女はアリスティア・ハイベルか」
「いや、ただのコスプレだろ」
「コスプレにしてはレベルが高くないか?」
リアカーぽい物を持っている少女というやたらと目立つ状態であったので、通行人がすぐに私の存在に気付いて騒ぎ出した。
「彼女はどう見ても本物のアリスティア・ハイベルだぞ!」
「えっ、本物なのか!」
「確かに間違いないぞ。ニ〇ニ〇に投稿されている動画と顔も声も一致している」
一人の男性がスマホを片手にそう言った。
どうもそのスマホはニ〇ニ〇の私の動画を開いているようだ。
「この動画の再生回数がどれも1億を超えているじゃないか。億万長者かよ」
「おいおい、ニ〇ニ〇でこの再生数って尋常じゃないぞ!」
彼らはどうも私の配信が人気すぎることに驚いているようだ。
私が珍しいのは分かるが、いつまでもここで駄弁っているわけにもいかない。
「あの交番はどこですか?」
「えっ、日本語上手いね」
そんな騒いでいる通行人の一人に道を尋ねると、彼はどう見ても日本人に見えない私がネイティブに日本語で質問したことに戸惑いながらも道を教えてくれた。
何だかんだ言って日本人は日本語をちゃんと話せるなら外国人にも親切に対応してくれるのだ。
逆を言うと日本人は外国語が苦手だから、日本語を話せない外国人に話しかけられると対応に困るようだね。
しかし、こうも座標がズレるなら地球に行くたびに通行人に交番の場所を尋ねて交番に行って警察に目的地に運んでもらうという面倒な手順を踏まなくてはいけなくなる。
これは地球製のデバイスを持つべきかな?
最近は地球のスマートフォンというデバイスはそれなりに進化しており、ネットに繋げば現在地の把握や最寄りの交番の地図も表示できるらしいから、便利と言えば便利なんだよね。
それにいざとなれば外務省と現地で連絡が取れるというのもいいね。
よし、朝倉さんに催促しておくか。
私は今後の改善策を考えながら輸送機を引いて教えてもらった交番へと向かった。
「あの、すみません」
交番の中にいた警察に声をかけると彼はこちらに視線を向けた。
「はい、何でしょうか?」
「私はこういう者で、京都に行くのにサポートしてほしいのですが…」
私は警官にパスポートを渡すと、警察は驚愕した。
「アリスティア・ハイベル! 本物じゃないか……」
「政府から何か指示が出ていますか?」
「大使を発見したら上に報告して目的地にお送りするように言われています。中でお待ちください」
彼は私を案内して手際良く連絡を入れていた。
その後、私を車で仮眠を取りながら京都に向かうのだった。
京都の任〇堂本社につくとすぐに仕事モードに切り替えた。
会議室に通されて現地で待機していた朝倉さんと会う事になった。
今回は東京ではなく京都が目的地だった為に朝倉さんは星間ワープ使用時刻には京都に出張しており、私の到着に合わせて任〇堂にきていたのだ。
朝倉さんとは仕事の話をすることもあるが、今回はスマホが欲しいという要望を伝える事にした。
「なるほど、それでスマホを用意する必要があるわけですね」
「はい、よろしくお願いします」
「確かに星間ワープが不安定ですから位置情報を把握したり周囲の地図を確認できるスマホは必須ですな」
「それにいざと言うときに連絡を取れますからね」
こうして考えるとスマホは便利だ。
「わかりました。早速用意いたします。その間に任〇堂の方々と話を進めておいてください」
そう言って朝倉さんはスマホを用意するために席を外した。
私も会議室を出て社員さんに案内されて開発室に向かった。
開発室に入った私は久しぶりに開発者さんたちとあって仕事の話を進めた。
「変換器の魔術部品を一万セット持ってきました」
私は輸送機から部品を取り出して彼らに渡す事にした。
まずこれを渡さないと、話が進まないのだ。
「ありがとうございます。これでマルデア用任〇堂スイ〇チの生産に取り掛かれます」
「いえ、こちらこそよろしくお願いいたします」
こちらが腰が低いように感じるかもしれないが、これはビジネスなのだから相手に失礼のない様に接しないといけない。
今後の取引の事を考えると横暴な態度をとっていたら良くないからね。
私はマルデア国地球親善大使であるが、それは貿易の為に貰った道具のようなもので、マルデアでは私の地位は一般人の範疇に収まるから謙虚に振る舞わないといけない。
「ゲーム機の生産はこれからですが、サンプルソフトは既にできています」
テーブルの上にスイ〇チソフトのゲームカードが一つ置いてあった。
「これが最初のサンプルソフトですね」
「はい、製品版のソフトとゲーム機は来月までに用意します」
「よろしくお願いします。こちらもこのサンプルソフトとスイ〇チ試作機で売り込みをしておきます」
サンプルソフトとスイ〇チ試作機はどちらも一つずつしかないが、マルデアの人たちにゲームというものを説明するにはこれで十分だ。
そして、完成予定品のチェックをした。
「スイ〇チとソフトの箱、説明書などは特に問題はありませんね。このままで大丈夫です」
スイ〇チやソフトに使用されているマルデア語のフォントは元々カッコよさよりも見やすさを重視した物だ。
これは変にカッコ良くしようとしてマルデア人が別の文字に見えたり読みにくくなるよりは見やすさと分かりやすさを重視した方がいいからだ。
それだけに製品の修正は必要ない。
開発者たちと仕事の話が終わり休憩室に通された私は時間が空いたのでスイ〇チで遊びつつ時間を潰していると、朝倉さんが戻ってきた。
「お待たせしました」
「いえ、こちらこそ面倒をかけて申し訳ございません」
朝倉さんは上と連絡を取って私に渡すスマホを経費で落とせるように話を通して携帯ショップでスマホを契約してきたそうだ。
そう聞くと面倒になるかもしれないけど、このスマホは外務省の経費で落とす形になるのでその手続きは必要らしい。
そりゃそうだよね。
「このスマホはネットに繋がっているので地図アプリは使えます。それと電話帳アプリに私の番号と外務本庁の番号を念のために入れておきました」
それは有難いね。
私は受け取ったスマホを起動して地図アプリも使用して現住所の確認と近くの交番の検索をやった。
「まあ、これでなんとかなるわね」
正直スマホは慣れていないから悪戦苦闘したよ。
やっぱり慣れない作業というのは疲れるね。
「問題は充電ですが、これはモバイルバッテリーを使用して交換する形式にします」
私が地球の家電製品を使う際のネックがマルデアでは発電できない事だ。
その所為で任〇堂スイ〇チは魔力を電力に変換する仕組みが必要になったほどだ。
しかし、スマホに関してはそこまで使うものではない。
地球に転移した時に電源を入れて地図アプリを使用して交番につけば電源を切ればいいから、使用頻度はそこまで高くはないだろう。
私は交易の為に任〇堂に行かないといけないから、私のモバイルバッテリーを任〇堂で充電してもらって次に来た時にそれを受け取ればいい。
理論上はスマホ一台とモバイルバッテリー二機でやりくりできるだろう。
こうして私はサンプルソフトとスマホ、モバイルバッテリーを持ってマルデアに戻った。