スイ〇チの営業が上手くいき、事業が何とか形になり出した。
更に任〇堂から初期出荷分のスイ〇チと専用ソフトが生産できたという報告を受けて私は今回は空になった輸送機を持って任〇堂本社に再び向かう事になった。
そしてワープの魔術で地球に来たわけであるが、到着したのは目的地の任〇堂本社ではなかった。
スマホの電源を入れて現在地を確認すると東京だった。
京都と東京ではかなりの誤差があるのだが、国外に転移しなかっただけマシだと考え直して即座に最寄りの交番を検索して、そこに向かう事にした。
「あれってアリスティア・ハイベルじゃない?」
「コスプレか? リアカーまで用意しているなんてレベルが高いな」
やはり顔バレしている有名人な上にリアカーまで引いていたら悪目立ちしてしまい、移動中は周囲の日本人から注目されてしまう。
それでも私を取り囲むような事をしないのが日本人のマナーの良さだろう。
こちらも仕事で来ているから邪魔されたら困るので迷惑にならないように距離感を保ってくれるのは有難い。
私に気づいて遠巻きに見ている日本人を意図的に無視して交番についた。
交番についた私は警察官にパスポートを見せて任〇堂本社まで送ってもらう事にした。
現在では定番パターンとなっているから、警察官もそつなく対応してくれた。
全国の交番では私の対応マニュアルが配布されているらしい。
そういった気遣いはありがたい所だね。
少し待つとトラックとパトカーがやってきた。
現在の移動方法は私と輸送機をトラックに載せて、パトカーがそれを護送するというものだった。
パトカーで統一できれば楽だけど、輸送機が嵩張るからどうしてもトラックが必要だったのだ。
この辺りは不便なので将来的に改善した方がいいだろう。
夕方ごろになったが、私は京都の任〇堂本社に着いた。
今回は手続きをして荷物を受け取るだけだ。
まずは社内で書類にサインをして、任〇堂とカカリ社の取引をしっかりと契約という形にした。
「これが異星の企業との契約書……」
「ああ、マルデアと日本を結ぶ史上初の契約書だ」
スーツ姿の営業職の人たちは、感激したように書類を眺めていた。
確かにこれはゲーム史を飛び越えて世界史に残るレベルの話だから、この契約書は日本では博物館に収蔵する一品になると思う。
「アリスティアさん、これがスイ〇チのローンチタイトルになります」
営業さんの言葉に私は台の上に置かれた任〇堂スイ〇チ専用パッケージソフトに視線を向けた。
そのソフトのタイトルは〝ビデオゲーム・ベストコレクション″である。
タイトル通り、ビデオゲームの良作を集めたコレクションパックという意味だ。
まあ、レトロゲームを中心になるから今のゲーマーからみれば古く感じるかもしれないけど、それでも当時人気だった良作8個を選抜している。
収録されたタイトルは下記である。
・テト〇ス(メガド〇イブ ミニに収録)
・マ〇オブラザーズ(ゲーム〇ーイアド〇ンス『スーパーマ〇オアドバンス』に収録)
・忍者龍〇伝(PCエ〇ジン)
・ハ〇ソンセレクションVol.2 スターソ〇ジャー(ゲームキ〇ーブ)
・グラデ〇ウス(プレイス〇ーション『グラデ〇ウス DELUXE PACK』に収録)
・ギ〇ラガ・アレンジメント(アーケード『ナ〇コクラシックコレクション Vol.1』に収録)
・パ〇クマン・アレンジメント(アーケード『ナ〇コクラシックコレクション Vol.2』に収録)
・ディ〇ダグ・アレンジメント(アーケード『ナ〇コクラシックコレクション Vol.2』に収録)
看板タイトルは勿論テ〇リスであるが、これはアーケード版セ〇テ〇リスをメガド〇イブミニに移植した物であることを考えるとアーケードゲームに偏っているように感じるが、まあそれはいいだろう。
最初に複雑なタイトルは敷居が高いから、パズルゲーム、アクションゲーム、シューティングゲームなどのシンプルで分かりやすいタイトルにしている。
「こうしてみると本当に名作ぞろいですね」
パッケージにはテト〇ミノ、マ〇オ、パ〇クマン、ビックバ〇パー、リ〇ウなどが描かれており、とてもパワーがある。
「はい、マルデアにお届けするから実現できたラインナップです」
自社ソフトだけではく、他者の名作ソフトを一つにソフトに収録するなら企業間の調整が色々と面倒なのは少し考えれば分かる。
それでも星間貿易がからんでいるからこそゲーム会社も協力してくれたのだ。
そこは感謝しないといけないね。
その後、私たちはビジネスの状況について話し合う事になった。
「マルデアでは、小売さんの受注はどうですか?」
「はい、商品が魅力的なおかげか、既に販売店から2500台ほど発注してもらっています。あとは、お客さんが買ってくれるかどうかですが、宣伝用のグッツもあるから大丈夫だとは思います」
こればかりはやってみないと分からないからなんともいえないが、事前に宣伝用のポスター、スイ〇チを紹介する小冊子を用意してもらっていた。
「そうですね。これらをお店に置いてもらえば宣伝になります」
営業さんは段ボールからカラフルな紙の束を取り出したそれはスイッチの宣伝用グッツだった。
「これなら、お客さんも目に留まるはずです。小売さんにスイ〇チと一緒に渡しておきますね」
「期待しています。販売が順調なら、すぐに次の5000台をご用意します。その後の増産も考えますよ」
「よろしくお願いしま」
任〇堂の協力は心強いが、少し気になる事があるので尋ねる事にする。
「それで情報管理に関しては大丈夫ですか?」
「はい、政府と各メーカーが協力しており、情報漏洩は起きていません」
「それはよかったです」
実は現在進められているゲームの輸出は世間では情報が出回っていなかった。
勿論、このネット社会では完璧に情報を隠蔽することはできないので、私が任〇堂に出入りしていることはネット上では知られているが、ニュースなどにはなっていなかった。
何故そんな事をするのかというと、例えば日本政府や任〇堂が大々的に日本のゲームをマルデアに輸出する事を公表しても、マルデアでまったく売れずに爆死したら、政府や任〇堂だけでなく、S〇GAなどのソフトメーカーにまで大恥をかくことになるからだ。
勿論、いつまでも公表しないわけにはいかないので、スイ〇チを発売して売れたら大々的に政府が公表して任〇堂やソフトメーカーの実績にするが、売れずに爆死したら政府が小さく試行錯誤の一環でゲームの輸出を行ったが失敗したことを控えめに世間に知らせる手筈となっている。
政府やゲーム企業は無駄に恥をかきたくないから私の要請を受けて情報管理をしていたのだ。
「売れるにこした事はないけど、最悪も想定しないといけません」
「そうですね」
商売の話を終えて、私は一階のロビーへと向かった。
普段は何もない場所だが、そこには大量のゲーム機が置かれていた。
五千台のスイ〇チと、パッケージソフトが五千本。
そして周辺機器などが入った箱がズラリと並べられている。
「すぐに運び込む人員を用意しましょう」
営業さんはすぐに手配しようとしたが、私はそれを手で制止した。
「必要ありません。私一人で十分です」
私は念動力を使い、スイ〇チを一気に十台ほど浮かせて輸送機に入れる。
すると、スイ〇チは1000分の1ほどの大きさに縮小されて輸送機の隅に収まった。
それを繰り返して、次々と本体を輸送機に入れていく。
十分ほどかかっただろうか。
五千台のスイ〇チと周辺機器たちは、輸送機に収まってしまった。
「こ、これはすごい。こんな小さい荷台に全部収まるなんて……」
営業さんは私の作業に目を見開いていた。
私はフロアに何もなくなったことを確認し、彼に挨拶をする。
「これで全部ですね。では、私はマルデアに戻ります」
「は、はい。本日はどうもありがとうございました」
丁寧に頭を下げる男性に、私は頷いて答える。
「ええ、こちらも宣伝グッツまで用意していただきありがとうございました。五千台、しっかりとマルデアの人たちに届けたいと思います。では、失礼します」
私は腕につけたデバイスを起動し、マルデアへとワープした。