地球親善大使アリスティア   作:生焼きマンガ肉

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スイ〇チ販売

 アランは社長がゲーム機を持ち帰ってきた翌日からスイッチを小売店に運ぶ作業に取り掛かった。

 ワープ局に頼むことも考えたが、地球の企業から宣伝グッツまで貰ってきていたので、一つ一つ手渡しして、店に宣伝を頼むことにしたのだ。

 そうなると手間がかかるが、『最初の初動が大切であり、販売の為にできることをやっておくべきだ』という社長の意見はもっともだったためアランは店舗を巡ることにした。

 ワープステーションを利用すれば一瞬で他の駅に飛べるので、そこまで手間がかからない。

 デバイスで発注のデータを確認しながら、私はカカリ社の雑居ビルから出た。

 まず行くのは最初に発注をとった玩具店だ。

 カウンターで店長を呼んでもらい、早速現物の商品を見せる。

「こちらが本体のケースになります。本体だけでなくソフトも必要なので最初は本体とソフトのセット売りがおすすめです」

「セット売りという事は340ベルで売ればいいか」

 お客さんがゲーム機だけ買って遊べないという事態になって、こっちに苦情が来たらたまらないので最初はセット売りにしないといけない。

 この手のトラブルは可能な限り回避するに限るだろう。

「変わった箱だな」

 地球のパッケージが珍しいのか、店長はじろじろ見ていた。

「こちらは別売りのコントローラーです」

 スイ〇チ用のジョイコンだけでなくプロコンも用意していた。

「二種類のコントローラーを選べるわけだな。それでこちらがポスターかね」

 店長が目を付けたのが、販売促進用のグッツだ。

「はい。このポスターを店内に飾って頂けると嬉しいです。それからスイ〇チ説明用の冊子があります。これを読めばお客様もすぐにどんな遊び道具なのか分かって頂けると思います」

 取り出した冊子を開き、店長は驚いたように目を見開く。

「ほう、魔術冊子ではないようだが、十分見栄えするな。おたくは小さな販売会社だと聞いていたが、随分しっかりしているんだな」

「このゲーム機を作っているメーカーさんが大手ですから、宣伝にもご協力頂いてます」

 任〇堂は地球のゲーム業界ではトップクラスの大企業で、その任〇堂が全面的に協力してもらったらしっかりした冊子ぐらいは作れるのだ。

 店長は任〇堂の企業ロゴを見ながら、唸るように感心していた。

 私はデバイスに出荷のチェックをつけながら、玩具店を回っていく。

 それから数日かけて、発売日までに2500台のスイ〇チを小売にすべて出荷した。

 会社のオフィスでアリスティアさんと落ち合い、発注と出荷を最終チェックする。

「すべて出荷できましたね」

「これで明後日の発売日を待つだけです」

 アリスティアさんは満足そうにしていた。

 アリスティアさんはその容姿から営業に不向きなので、製品を説明するためにカカリ社の公式ページの製作に集中していた。

 任〇堂からもらったスイ〇チ説明用の冊子を参考にしたらしいが、お客さんがスイ〇チを理解できるようにしっかり作られていた。

「贅沢を言うなら小売店で試遊台を用意してもらえば言うことなかったわけですが、流石にそういう場所はとってもらえませんでした」

「まあ、それはそうですよね」

 私の言葉にアリスティアさんは仕方ないと割り切っていた。

 試遊台はかなりのスペースを取ってしまうから、現段階ではかなり厳しい。

 将来的にスイ〇チが人気商品になれば小売店もスペースを割いてくれるだろうけど、それはまだ先の事だろう。

 

 そして迎えたスイ〇チの発売日。

 私とアリスティアさんはオフィスに詰めていた。

 何か問題があれば私たちが対処しなければならないからだ。

 スイ〇チ本体とパッケージソフトには困ったときの連絡先として、カカリ社の番号を記載しているから、何かあればお客さんから連絡がくるだろう。

 勿論、朝一で連絡が来るわけがないから、少し時間をおかないといけないだろうから、デバイスでニュースを見て時間を潰すことにした。

 ニュースの内容はマルデアのありきたりな話ばかりで間違っても地球に関することなど報道されていない。

 以前は地球から連絡が来てマルデアが迷惑しているという話があったが、現在ではそれらはすべてアリスティアさんが請け負っているからだ。

 現在では地球から来たメッセージはすべてアリスティアさんの下に送られているらしい。

 魔法省も面倒な事を押し付けられて一安心という感じなのだろう。

 そんなことを考えている時に、デバイスから呼び出し音がした。

 気を取り直して、私は魔術回線を繋ぐ。

「はい、こちらカカリ社でございます」

『カカリ社さん。ケララ玩具店なんだけど、ちょっと困ったやら嬉しいやら、大変なことになりましてね』

「な、何でしょうか?」

 私がどきどきしながら聞くと、店長は言った。

『スイ〇チが売り切れたんですよ』

「売り切れですか?」

『そうです。うちはそんなに仕入れていなかったのだけど、朝でみんな売れちゃいましてね。それで買いに来たお客さんが、在庫はないのかって言ってるんですよ』

「ほ、本当ですか!」

 売れなくて怒られるかもしれないと思っていたら、逆に嬉しい悲鳴だったのだ。

『ええ、うちは発売前からゲームの映像を店で流してたんだけど、評判がよくてね。ソフトも売り切れちゃったんです。また発注したいんですが、いいですかね』

「はい、もちろんです。ありがとうございます!」

 店長からは追加で本体を十台、ソフトを十本も注文してもらえた。

 とりあえず、2500台の予備を使って、今回はワープ局にお願いして玩具店に発送することにした。

 ワープ局なら各家庭の住所に一瞬で荷物を飛ばせるので、午後には届いているだろう。

 と、今度はお客さんから直接の通話が来た。

『おたくの機械の使い方が分からないのだけど……』

 子供の母親らしい人だった。

 詳しく聞いてみるとコントローラーの充電方法が分からないらしい。

「本体ケースの中に専用のアタプタ―と変換器がありますので、それを魔力源にさしてください」

『あら、あったわ。ごめんなさいね、あたしデバイスに弱くて。それよりこのテト〇スっていうの?うちの子がすごい喜んで遊んでるのよ』

「本当ですか、ありがとうございます!」

 例を告げると、『ちょっと子供と代わるわね』と母親がデバイスを誰かに渡す音がした。

 すると小さな女の子の声が耳に聞こえてきた。

『あのね、あのね。テト〇ス、いっぱい負けちゃうけど、すごい楽しいの!』

 その言葉だけで、色んな事が報われたような気がした。

 私は通話の向こうの彼女に向かって、心を込めて言った。

『ありがとう。ゲームを作った人たちに、伝えておきます』

 これが、私たちの仕事の始まりだった。

 それから、幾つか追加発注を望む店の声が相次いだ。

「このままでは、在庫がもう足りなくなります」

 アリスティアさんがデバイスで残り数を確認しながら呟く。

「ゲーム会社さんに次の5000台をお願いしましょう」

「そうするね」

 私の提案に頷いたアリスティアさんが日本に連絡を入れ、販売の状況を報告した。

 あちらも喜んでいるようで、すぐに増産を約束してくれた。

 と、また通話の呼び出しがあった。

「はい、こちらカカリ社です」

『すみません、ベストコレクションを買ったんですけど。ゲームの質問してもいいですか?』

 声の相手は、中学院くらいの子どもだった。

「はい、どうぞ」

『あの、忍者龍〇伝のステージで高くて進めない場所があるでしょ。どうすれば進めるんですか?』

「は、はあ」

 どうやら壁を上るのができなくて詰まっているようだが、聞きたいことがそれだったことに私は驚いた。

 操作方法に関してはそれぞれのゲームのタイトルメニューに説明書の項目があるし、公式ページにも記載していたが、昔の様にソフトに紙の説明書を同封することをしていないから本当にわからないんだろう。

 幸い、発売したゲームについては事前に自分でもやりこんでいる。

 私は壁を上る方法を説明した。

「そうやって壁を上がれるはずです」

『ああ、できた。ありがとう!』

 そう言って、少年は通話を切った。

「説明書も読まないとは困ったな」

 しかし、それ以外にも攻略情報がわからないから質問してくるお客までいた。

 攻略情報は上げていなかったので一々説明する羽目になった。

「まさか攻略情報まで聞かれるなんて」

 私は頭を抱える事になった。

「ゲームを遊ぶ人にはいろんなスタンスがあるから、自分でやりたい人はやって、教えてほしい人は聞けばいいと思います。攻略情報も出しておいた方がいいのかもしれません」

 アリスティアさんはそう言う。

「私は自分の力でやるべきだとは思いますが、あんな通話が頻繁に来るようなら、仕方ないですね」

 全てが初めての事で、戸惑いながら私たちは対応に励んだ。

 攻略情報を聞いてくる通話は結構多く、私たちはゲームを常に起動しながら回答し続けていた。

「これでは二人で回すのは無理だわ。通話対応の人手を雇うしかないわね」

 アリスティアさんが言うようにお客さんから通話が多すぎるのだ。

 これはスイ〇チで遊ぶという行為に慣れていなくてこちらに通話をかけてきているからだろう。

 結局その日は通話対応で手がいっぱいになった。

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