カカリ社で発売したスイ〇チは好調なのはよかったが、予想以上に問い合わせが多くて手が回らなくなった私は法務省に人材を求めることにした。
つまり前科がある刑務所出所者を対象に求人を出したのだ。
今回の求人は通話対応、Web担当者、経理、ローカライズの四つだ。
起業したばかりのカカリ社はまだまだ人手が足りない。
お客様の問い合わせに対応する社員、カカリ社の公式ページとSNSを管理してもらう社員、
経理をやる社員は必要だった。
今いるのは社長の私と営業担当のアランさんだけで、私とアランさんが通話対応、Web担当者、経理も回しているが明らかに無理があるからね。
それに私の場合、地球との交流や任〇堂との付き合いなどもあるから物理的に手が回らないから、他人に任せられる業務は追加の人材を雇用して任せておきたかった。
求人を出してすぐに応募が来たので、今日と明日に面接を行う事になった。
今日はノエル・マーフィーさんとシャロン・アシュビーさんという20代の女性が二人応募してくれたが、やはり二人とも外見年齢が幼い私が社長だと知ると驚いていたが、気を取り直して面接を受けてくれた。
ノエルさんは銀髪のロングヘアの女性で大人しそうな印象なのに対して、シャロンさんは青い髪のショートヘアの女性で明るそうな雰囲気だった。
「ノエルさんは通話対応はできますか?」
「はい、前職でもやっていました」
「それはよかったです。ただ弊社の製品を知らないと仕事にならないので製品を知ってもらいますね」
お客様の対応は当然だが、ビデオゲームに関する事なのでゲームの事を何も知らないと仕事にならないんですよね。
研修としてゲーム機やゲームソフトを一通り知ってもらう必要がある。
「シャロンさんはWeb担当者で問題ありませんか?」
「はい、前職でも企業の公式ページを管理していました」
シャロンさんは職務経歴書に書かれているように老舗企業のWeb担当者をやっていたようです。
刑務所に入ることになった時に解雇されているけど、経験者なのは間違いありません。
「そうですか。こちらも弊社の製品を知らないと困るので製品を知ってください」
通話対応とWeb担当者はカカリ社の製品を知らないとまともに仕事ができないという問題があるので、研修としてゲーム機を扱ってもらいゲームを十分に遊んでもらう必要があります。
『これは、ゲームであっても遊びではない』ではなく、『これは、ゲームであっても仕事である』と言っていいだろう。
「お二人に質問しますが、求人票に記載している通り、弊社はあの地球の娯楽品を輸入販売しています。その辺りは大丈夫ですか?」
流石に前科持ちなのは仕方ないが、後から『野蛮な地球の製品を扱うなんて真っ平ごめんだ』とか文句を言って揉め事になったら困る。
そういった方にはご縁がなかったと採用を見送るのがお互いの為だ。
「偏見がまったくないとは言えませんが、前科がある私が正社員にしてくれる職場はそうないので割り切って頑張ります」と、ノエルさんは正直に言ってくれた。
「今の私は職場を選べる立場ではないので大丈夫です」と、シャロンさんの返事も正直なものだった。
「わかりました。お二人とも採用します。明日から出社してください」
職場を選べないので妥協して頑張るという主張だったが、私はそれを受け入れた。
そもそもマルデアでは地球は野蛮と教えられているのだから、地球の娯楽品と聞いてまったく思うところがないというのは不自然だ。
これが実際にスイ〇チを遊んでその魅力からゲームファンになったというなら話は違うだろうが、スイ〇チが発売されて数日しかたっていない上に、刑務所出所者という状況を考えれば『弊社の製品に好きになりました』とか言われるよりは信じられる。
「はい、ありがとうございます」
求人票には急募や即日勤務と書いていたので、翌日から働いてくださいと言っても二人はあっさりと了承してくれた。
まあ、現在は無職だから即日勤務でも問題ないのは当然だろう。
ノエルさんとシャロンさんを採用した翌日も面接があり、その日はサラ・キャンベルさんが来ていた。
サラさんは30代の赤毛のロングヘアで大人の女性という雰囲気があるけどちょっと地味な感じがする。
「サラさんは経理で応募されていますが、資格も取っていますし、前職もその様ですね」
「はい」
サラさんの履歴書には経理や会計の定番な資格が書かれているし、前職が経理をやっていたようです。
ここで前科持ちの経理経験者と聞くと予想できるでしょうが、サラさんは業務上横領で逮捕された過去があります。
それだけにカカリ社の資産を横領されたら困るので彼女を信用しすぎてはいけない。
面倒だけど、私もチェックはしておくべきでしょう。
『そんなに心配なら経理ぐらい信用できる人間を雇えばいいじゃない』と私も思うのですが、カカリ社は起業したばかりの零細企業で、社長の外見年齢が若すぎる事、どとめにマルデアで野蛮認定されている地球の娯楽品を輸入販売しているのが問題なんです。
どう見ても問題のある企業にしか見えないので普通の人材ならこの時点でカカリ社に入社しようとしないでしょう。
仮に応募してきても面接で少しでもこちらの内情を理解したら辞退されてしまいます。
そんなカカリ社に入社したがるのは刑務所出所者ぐらいなものなんですよ。
表向きは刑務所出所者の社会復帰に貢献する企業だと主張していますが、内情は御覧の有様です。
「わかっていると思いますが、業務上横領は裁判になります。くれぐれもそれは注意してください」
経理だから製品をそこまで周知している必要はないが、金が絡んでいるから一番問題が発生しかねない部門である。
業務上横領の前科がある彼女を経理として雇うのは背に腹は代えられないとはいえかなり危険なので釘をさしておくにこした事はない。
これが普通の人材ならあまりに無礼だから言わないけど、彼女の場合は逆に言わないといけないのだ。
そんな私の考えが伝わったようでサラさんは表情を硬くしたが、それでも彼女はカカリ社に経理として入社することにした。
彼女の場合経理関係の資格と経験しかない上に前科があるから、正社員の経理で雇ってくれるうちに来るしかないのだろう。
カカリ社が駄目なら日雇いで食つなぐしかないほど後がないからね。
余談だが、同時にローカライズ業務担当者も5人雇っている。
地球のゲームは未翻訳では遊べないからマルデア語にローカライズしなければならない。
面倒なのが地球とマルデアでは習慣、文化、常識などが違い過ぎるために地球でAI翻訳で済ませる事ができないのだ。
マルデア語を知っているだけでは不十分で、ちゃんとマルデアに適応させないといけない。
つまりローカライズは任〇堂などの地球の団体に任せられない為、最初のゲームソフトのローカライズは私が直接行い、既にベストコレクション三本分をローカライズしていた。
これは最初期のソフトがシューティングゲーム、アクションゲーム、パズルゲームといった文字に依存しないタイトルばかり選んでいたから可能な事だったが、今後はロールプレイングゲームやアドベンチャーゲームなどのテキストが多いタイトルもローカライズして販売したいから、どうしてもローカライズに多くの労力を割く必要があった。
しかし、ただでさえ忙しい私が直接ローカライズに関わるのは無理があるので、ローカライズ業務を行う社員を雇って、彼らに地球と通信しながらローカライズを進めてもらう事にした。
あからさまにローカライズ業務担当者が多いが、これは地球のゲームソフトをマルデア向けにローカライズしなければ会社の業務そのものが止まってしまうからだ。
ゲーム市場を育てるためには新作のゲームソフトを短期間で出さないといけないし、ローカライズに力を入れないと発売に時間がかかり過ぎてしまいゲーム市場が冷え込んでしまう危険性すらある。
このローカライズは翻訳機を使いながらローカライズしていく事になるから将来的にはより多くの人員による人海戦術で輸出対象のゲームソフトをローカライズしていく事になるだろう。
このローカライズだが、経理やWeb担当者と違って資格や経験などは求めずに求人を出したので、これといった資格や経験がない刑務所出所者が応募してくれたので早々に採用が終わったのだった。
この結果、カカリ社は社長、営業、通話対応、Web担当者、経理がそれぞれ1人ずつで、ローカライズ業務担当が5人の合計10人の会社となった。
相変わらず我がカカリ社は零細企業であるが、それでも順調に成長しているのだった。