スイ〇チを発売してからはかなり忙しい日々をすごしているが、それでも休日にはちゃんと休むのが私だった。
スイ〇チは既に完売しており通話対応では『いつ入荷するのか?』という声がよく聞かれる。
初期生産台数を5000台に絞っていたのは明らかな失敗だったが、一応弁護しておくと正直ここまで売れるとは思わなかったのだ。
日本でも『いいものなら売れるなどというナイーヴな考え方は捨てろ』という有名なセリフがあるが、これは任〇堂スイ〇チにも当てはまる。
スイ〇チがいいものであることは確かだが、マルデア市場ですぐに評価されるとは思っていなかったから、取引先の玩具店はお試し程度の発注しかしていなかったのだ。
発売してネットを使って宣伝等を行い、少しずつ認知度を上げる事で売り上げていく予定だったから、初期生産台数を完売するには半年はかかると思っていた。
しかし、現実にはスイ〇チがじわ売れではなく、一気に売り切れて品切れになってしまったのだ。
企業としては嬉しい誤算であったが、需要を読み切れなかったのは失策だった。
正直言うならこの機に早くスイ〇チを売り込みたいが、任〇堂が追加の5000台を生産しているのを待っているので売りたくても売れない状態だった。
唯一の救いはスイ〇チの初期不良が極めて少なかった事だろう。
初期不良はわずか1台にすぎなかったのだ。
これはスイッチが発売されてから5年がたったゲーム機だったのが理由だろう。
発売されたばかりのゲーム機は不具合が多くなる傾向があるが、時間が立つごとに生産が安定してその手の初期不良が減少する傾向にあるからだ。
当然だが、その1台は無料交換して対処していた。
この停滞した状況で私は地球に情報発信することにした。
現在地球では日本政府が星間貿易に関する情報公開を行い大きな議論となっているから、ビデオゲームの輸入に関する情報を伏せる必要はなくなった。
勿論、今後発売するソフトなどは公表できないが、既に発売したソフトに関しては秘匿する必要はないだろう。
そんなわけでニ〇ニ〇動画で日本人に報告する為にカメラで自撮り撮影を開始した。
何故日本かは私が日本語しか話せないから必然的に日本人を対象にするしかないからだ。
「日本のみなさん、こんにちは。この度、日本のゲーム機を輸出することになりましたが、こちらの想定以上の売れ行きで初期出荷分が完売しました。これもゲーム会社の協力のおかげです。これからもマルデアで地球のゲームを広めていきたいと思います!」
ここで録画を止めた。
一分にも満たない短い動画だったが構わない。
要はスイ〇チの初期出荷分が完売したことを伝えることができればいい。
それをニ〇ニ〇動画に投稿すると、すぐにとてつもないアクセスが集まり出した。
再生数がどんどん上がりコメントも書き込まれていった。
『祝、スイ〇チ完売!』
『おおー、売れたのか』
『完売か、すごいな』
『初期出荷台数が5000だから数を絞り過ぎたか』
『任〇堂が頑張って増産しているぞ!』
やはり日本のゲーム機が宇宙でも売れたという事は日本人によって嬉しいようで好評だった。
一々そんなことを発信しなくてもいいと思うかもしれないけど、これも星間交流の一環だし、これから星間貿易を円滑に進めるためには日本の世論を味方につけた方がいいだろう。
スイ〇チ発売から3週間がたち通話対応が落ち着いた頃にやっと任〇堂が残りの5000台の生産とソフトの増産が完了して、同時に並行して進めていた新作ソフトの生産もできたという連絡がきた。
スイ〇チが好調に売れた事から前回変換器の魔術部品を生産してくれた企業に即座に追加の生産を依頼していた。
以前依頼した物を追加で生産するだけだったので比較的簡単に話が進んだ。
今回は前回の倍の2万台分の変換部品を依頼しており、更に商品の売れ行き次第では今後も定期的に部品の発注を行う事を伝えると相手側も快く対応してくれた。
その元手となったのはゲームの売り上げで、5000台のゲーム機と5000本のゲームソフトは売り切れており、更にプロコンなどの付属品も売れていた。
売り上げの三割が小売店の取り分であるが、それを除いても約130万ベルもの大金が入ったのだ。
勿論、事務所の家賃や人件費だけでなく、変換部品、魔石、縮小ボックスなどの購入費もありかなりの経費がかかっているし、税金の支払いなどもあるから売り上げすべてが純利益ではない。
こうして私は変換部品2万個、魔石2000個、縮小ボックス20個を輸送機に詰め込んだ。
輸送機を持った私はいつもの魔術研究所の一室に向かった。
「おお、君か。ひさしぶりだな」
そこにはいつもの研究員がいた。
この人私が来るときにいつもいるね。
ちゃんと家に帰っているのかな。
私はそんなどうでもいい事を思わず考えてしまう。
「はい、今日も地球にいく事になったのでよろしくお願いします」
「ああ、今回も京都府京都市だな。やってみよう」
といってもこの人いつも座標がずれているよね。
「まあ、この星間ワープは不安定だからあくまで目標が京都市だが、そこに着くとはかぎらないよ」
「かぎらないというか。目標地点に着いた試しがないですよ」
この星間ワープの不安定さにいつも悩まされている私は思わずそう言う。
「設備の問題だからこちらではどうしようもないな。一応国外にでないように気を付けておくよ」
「そうですね。国外なんてややこしいですから、勘弁してほしいです」
現在私はマルデア国地球親善大使という立場にあり、地球でも広く認知されているのだが、正式に立ち入る事ができるのは日本だけだった。
他の国のパスポートとかは持っていないから、他国に出てしまうと不法入国になってしまう。
まあ、たとえそうなっても国際社会の反応もあって私を不法入国で拘束とかはできないだろうが、面倒事は避けたいのだ。
「うむ、そこは注意している。それはそうと君がこの間売り出したスイ〇チを試しに購入してみたが、あれは興味深いものだったな」
「そうなんですか。お買い上げありがとうございます。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
この研究員とは会話をしているが、名前も知らなかった。
あちらは仕事の都合で私の名前を知ってたが、私は相手の名前を知ろうとはしていなかったのだ。
その事に気付いて私は彼女の名前を尋ねてみた。
「私はガレナ・ミリアムだ。よろしく頼む」
「ご存知でしょうか、私はアリスティア・ハイベルです。今後もよろしくお願いします」
星間貿易の為にはここの星間ワープを使うしないので、ここの研究員の協力が得られたら好都合だと思いたい。
実際には研究員が協力的かは関係なくこの不良品の星間ワープに振り回されれるのだから、意味があるのか疑問ではあるけどね。
その後、ガレナさんの誘導で私は京都市の任〇堂本社に向かう事になった。