そして当日、私は出発前に姉に呼び出された。
「アリスティア、地球に行くならこの服に着替えなさい」
そう言って姉が紙袋を渡してきた。
中身を確認すると赤を基調としたゴスロリ風の服だった。
とてもかわいらしい服で前世ならともかく、12歳の美少女にしか見えない私ならよく似合うだろう。
そういった意味では姉が私にこの服をプレゼントした理由も分かる。
いや…。
「これは魔術服?」
ただかわいいだけの服ではなく、魔術品だ。
「そうよ。どんな環境にも適応する高級魔術服よ。防御力も高いからファッションというよりも装備ね。地球人は野蛮だし星間ワープは不安定だっていうじゃない。これぐらいの備えはしなさい」
姉に言われて私はその場で着替えて高級魔術服を着用した。
「ありがとう姉さん」
「構わないわ。貴女には割を食わせているしね」
資産家の兄弟姉妹は家族関係が険悪な事が多い。
それは同じ兄弟姉妹でありながらも兄や姉とはあまりにも待遇が違い過ぎるからだ。
その為、揉め事が起こることが多いが、私は前世の事もあり、ハイベル家には心理的に一歩引いていて、その辺りで不満を持つ事はなかったから家庭内で揉める事はなかった。
「それは私からのプレゼントよ。アリスティア気を付けて行きなさい」
「はい、姉さん」
いくら高級魔術服でもゴスロリ風の服はという思いはあったが、それでも姉さんの気遣いは嬉しかったので素直に感謝することにした。
そして、私は大きなバッグを持ってマルデア首都の魔術研究所へと向かった。
ワープルームがあるのは第三研究室らしい。
二階の奥にあったドアを開けると、室内に白衣を着た女性がいた。
「君がアリスティア・ハイベルか。あのハイベル財閥令嬢が本当に一人で未開の地に行くとはね」
彼女は私を見て意外そうにそう言った。
「ええ、何事もチャレンジです」
私がそう言うと彼女はしぶしぶ腕時計のような形のデバイスを取り出した。
「相手は常に争いを続けてきた野蛮な種族だから気を付ける事だ。このリスト型デバイスで、地球からワープルームに戻ることができる。ただし込められた魔力は一回分だけだ。故障などの補償もできないので、壊さないようにな。使用方法をデバイスの説明欄を見てくれ」
「ありがとうございます」
私はデバイスを受け取り、それを腕に巻き付けた。
そして、ワープルームの中に入る。
「行先は私には分からないが東京都千代田区霞が関にしている。この星間ワープはかなりのズレがあるから霞が関に出るとは限らないが、安全装置があって生き埋めにならないからそこは安心してくれ」
霞が関でなくても日本のどこかに出ればいいと割り切ればいい。
流石に国外に出たら困るから、すぐに帰らないといけないけどね。
「それでは、冒険心あふれるきみの無事を祈るよ」
そう言うと、白衣の研究者はすぐに魔術を起動させた。
視界が白く輝き、次の瞬間には私の体はマルデアから消えていた。