朝倉さんに連れられて警察署を出た私はそのまま高級車に乗せられて霞が関の外務本省に向かった。
外務本省につくとすぐに豪華な客室に案内された。
そこには数人のスーツ姿のおじさんがおり、朝倉さんが彼らが外務省の幹部たちだと教えてくれた。
大臣や議員がいないのは私の要望に配慮したようだ。
「この度は我が国の不手際でご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」
そう言うと幹部たちは一斉に頭を下げた。
「いえ、気にしないで下さい。流石に前例のないことだから不具合が出てしまうのは仕方ありません」
外務省のエリートたちに頭を下げさけてしまうと、こっちが気まずいからこちらも柔らかく対応しておく。
「そう言っていただけると嬉しいです」
おじさんたちは安堵の表情を浮かべていた。
どうも宇宙人とのファーストコンタクトがケチがついてしまったので、困っていたようだ。
確かに日本人に理解がある私でなかったら怒っていただろうからそれも無理もない。
「ただ再発防止の為にやはり私のパスポートを発行して欲しいですね。あれがないとどうしても不法入国者という扱いになってしまうので困ります」
「確かにその通りですね。分かりました、できるだけ早く発行します」
私の要望に朝倉さんは快く引き受けてくれた。
面倒な事だけど、これはトラブル防止の為に絶対に必要な事だ。
これを曖昧にすると後々面倒な事になるからね。
「さて、トラブルはこれで解決済みということで話を進めます」
警察署で時間をかなり無駄にしたから早めに話を進めておきたいからね。
私はバッグから透明な石を幾つか取り出してテーブルの上に置いた。
「綺麗な石ですね。これはマルデアの宝石ですか?」
見た目は宝石に見えるから彼らがそう思うのは当たり前だが、これは宝石ではない。
「いえ、これは魔石と言って魔力の塊です。これを使えば誰でも願いをかなえる事ができる魔法の石です」
「願いをですか?」
「といってもこれ一つでは大した事は出来ませんが、数を増やすごとにできる事の幅が広がります」
私はテーブルから魔石を三つ手に取って、頭が禿げている男性に視線を向けた。
「失礼ですが、貴方は髪の毛があった方がいいですか?」
私にいきなりそんな事を言われて男性は面食らったようで、戸惑っていたのが表情に出てしまう。
「そ、それはある方がいいです。髪型を選ぶにしてもその方が都合がいいです」
「それなら〝生えろ″」
私が魔石を使うと男性の頭部が輝いて、髪の毛が生えた。
「君、髪の毛が生えているぞ!」
同僚が驚いたように男性の頭部を見ていた。
「ほ、本当だ!」
男性は自分の頭を触って髪の毛の確かめていた。
「注意点は魔石は消耗品なので石油や石炭の様に使用すればなくなってしまう事です。使い方には気を付ける必要があるでしょう」
魔石は使い捨てですらなく使用すると消えてしまうため、石油や石炭のように割り切って使う必要があったが、魔石が豊富に得られるマルデアならともかく現状の地球ではそれは難しいかもしれない。
「次は縮小ボックスです」
私は手持ちのバッグから収納ボックスを取り出した。
「なっ、バッグよりも大きいものがでてきたぞ!」
明らかにバッグよりも大きい物を取り出した事で幹部たちは目を見張っている。
「おわかりになったでしょうか。このバッグもそうですが、こちらのボックスにも収縮の魔術がかけられています。実際のスペースよりも遥かに多くの物を入れる事ができます」
「そ、それは凄い。どれくらい入るんだね」
「これは百倍くらいですね。体積と同時に質量も収縮するので、ここに入れた物の重さは百分の一になります」
「百倍……。しかも、重さが百分の一だと」
「これが出回れば、物流に革命が起きるぞ!」
物流というのは、世界を支える重要なものだ。
トラックや船、飛行機などで食料や製品、荷物を運ぶ。
これをスムーズに行うために、どれだけの金をかけて道路を整備しているか見当もつかない。
また、物を置いておく倉庫にどれだけのスペースを取っているか。それを百分の一に出来るとしたら、地球にとっては革命だろう。
その分排ガスが減ったら、環境にも良いとは思う。
ただまあ、今の私が持ってこれる量ではそんなに出回らないだろうけど。
「これ一つで、トラック二台分は入るのかしら……」
「輸送の規模が格段に変わりそうですな」
「在庫管理の概念も変わりますよ」
ボックスに群がるスーツの男女。
やはり、外務省の幹部だちなので実用性が高そうなものに対するリアクションがいい。
まあ、今回はこれくらいでいいだろう。
「この魔石と収納ボックスを、こちらは商品としてご用意します。まあ、現状調達できる量には限度がありますが」
「素晴らしい。魔術文明の力は偉大ですな」
幹部たちは称賛してくれるが、解決しなければいけない問題がある。
これらの品物は私の自腹で出しているから、サンプル程度ならともかく本格的に品物をやり取りするとどう考えてもお金が足りないのだ。
これで私のお土産は終わりであるが、今度は日本側の品物を確認しないといけない。
「それでは日本が開示するものですが、先日の通信で任〇堂の娯楽品を用意してほしいといわれていたのでそれらを揃えておきました」
一言で地球の娯楽品といってもビデオゲームだけでなく、映画、音楽、漫画、小説、アニメ、更には食事まで含まれてしまうから、事前に任〇堂の娯楽品という注文を付けて対象を絞り込んでおいた。
私は用意された部屋に入り、中にあった娯楽品を眺める。
モニターに映る3Dの立体世界を駆け巡るマ〇オの映像が目に映った。
「……任〇堂スイ〇チ?」
私が知っていたスーパーファ〇コンやゲームボ〇イとはかなり違うゲーム機だった。
マ〇オは2Dのドッド絵ではなく、まるでアニメの様に動いている。
ゲーム機はここまで進化していたのか。
「これは任〇堂製の家庭用ゲーム機で、最新モデルの任〇堂スイ〇チ有機ELモデルです」
「色違いのバージョンもあるんですね」
両端のコントローラー部分が白と赤と青のバージョンがある。
「有機ELモデルにはジョイコンがホワイトとネオンの違いがありますが、今回は両方とも用意しました」
「なるほど」
視線を向けると二種類のゲームハードの他にも沢山のゲームソフトがあった。
パッケージを見ると2Dゲームもあったが、大半は3Dゲームばかりだった。
私個人としては3Dよりも2Dの方がなじみがあるためとっつきやすいのだが、まあこれは個人の好みだろう。
「大変興味深い代物ですね。これらは後で確認しておきます」
ゲーム好きとしては久々のビデオゲームを思う存分プレイしたいと思うが外交官の人たちとの交渉中なのでゲームに没頭するわけにもいかない。
ここは必死に我慢する。
「それで私の事を世界に向けて発表するとの事ですが、これは手順を踏んでほしいですね」
「手順ですか?」
私の言葉に朝倉さんが疑問を持ったようだ。
「はい。見ての通り私は地球人と外見が近いのでいきなり宇宙人だといっても信じてもらえないかもしれないので発表の仕方を考えるべきだと思います」
ここで私は自分の考えを彼らに伝えたのだった。