外交官との交渉の数日後、私は用意された一室でパソコンでインターネットを使用していた。
私の生きていた1995年にはインターネットはほとんど普及していなかったが、この時代では世界中で当たり前のように使用されている。
これに興味を持った私が朝倉さんに用意してもらったのだ。
インターネットの閲覧は自由にして構わないが、現時点では書き込みは控えてほしいと頼まれた。
まあ、私の存在はまだ正式発表していないからそれも当然だろう。
最初はパソコンの操作には手こずったが、すぐに慣れてインターネットから情報を得ていた。
現在ネットで一番ホットの話題は日本に宇宙人の親善大使が訪れているという話題だった。
これは勿論、私と日本政府が原因だった。
日本政府の動きであるが、日本は親日国には即座に『最近発見された地球外文明とコンタクトに成功して向こう側が送り込んだ親善大使と接触した』という情報を外交ルートで伝えて、その翌日に普通の関係の国に、翌々日には反日国に伝えるという時間差で情報を流していった。
この結果、親日国や普通の国はあくまで外交ルートを通しての確認だけだったが、特定アジア諸国が大ぴらにメディアを使って日本を批判してしまう。
当然、反日国が騒ぎ始めた時にはそれ以外の国は情報を得ていたので特に反発されずにすんだ。
こうして情報が拡散されて日本のメディアも騒ぎ出した時に日本の内閣総理大臣が地球外文明マルデア星の事や親善大使と接触した事を正式に発表した。
そして、その場で宇宙人から貰った物として縮小ボックスを紹介した。
当然ながらこの物流を一変させる縮小ボックスの存在は世界中で大騒ぎになると同時に宇宙人の信憑性を高めた。
総理大臣が縮小ボックスのようなとんでもない代物を使って宇宙人の存在を証明してしまった以上、私が宇宙人である事を疑う者はいなくなる。
ここまでやれば私が宇宙人として紹介されてもやらせやでっち上げだと言われずに済むだろう。
現在では世界中で宇宙人について議論されており、日本は注目を集めていた。
当然日本政府は世界中から宇宙人に対する情報開示を強く要求される事になり、期日を指定して記者会見を行う事にした。
そろそろ記者会見の時間が近いため準備をしないといけないからネットサーフィンを終了させて身支度を整えた。
こうして私は黒服の護衛の人に囲まれたまま会見場に向かうことにした。
ちなみに今日の日付は2022年5月12日らしく、地球は私が死んでから27年も経っていた事がわかった。
それだけ時間がたっていたらゲーム機も変わっているのは当然だろう。
会見場はそこまで広い場所ではなかったが、席にはメディア関係者らしき人たちが集まっている。
カメラを持った人間も壁側にずらりと並んでいた。
控室で待っていると時間がやってきた。
まず壇上で総理が各メディアに挨拶をして、やがて演説を始めた。
「先日を発表したように我が国は地球外文明のマルデア星から親善大使を訪問しており、現在この場に来ております」
やっと私の出番が来たようだ。
「それでは紹介します。マルデア星の親善大使アリスティア・ハイベルさんです」
総理の声に私は舞台に出ていく。
シャッター音が会場に響くが、逆に誰も声を上げていない。
誰もが私という宇宙人を観察しているのだろう。
さて、挨拶はしておきましょう。
「初めまして、私はマルデア国地球親善大使のアリスティア・ハイベルと申します。私はマルデア政府から地球関係の一切を一任されており、地球との交流をすべて取り仕切ることになりました。これからよろしくお願い致します」
「事前に説明した通り、彼女は地球人にかなり近い外見をしていますが、我々とは異なる異星人です。それは彼女のDNA鑑定でも確認されています。繰り返しますが、これはやらせでもでっちあげでもありません。彼女はDNA鑑定でも確認された地球外知的生命体です」
総理が念を押して記者たちにそう言う。
実はマルデア人の外見がファンタジー世界のエルフに似ている事からやらせ扱いされる可能性を避けるためにDNA鑑定まで事前にやらせていたのだ。
「日本政府はマルデアとの交流を行い両国の関係を深めようと思っています」
と、総理は言葉を締めくくった。
会見後、インターネットを確認していると様々な意見が乱立していたが、事前に仕込みをしていたおかげでやらせ扱いをされることはなかった。
日本では私の外見もあって好意的な意見もあるが、未知の存在故に判断が付かず様子見な意見が主流となっていた。
これは問題ないが、気になるのが宇宙人脅威論を主張する声の大きい者がいることだろう。
これはネット社会の弊害で、ツイフェミなどの極端な少数派が声高に意見を言うのが悪目立ちしてしまっているのだ。
しかし、日本は世界的な寛大な国である為、未知の宇宙人への世論はまだましな方だろう。
これが一神教の地域だとどれだけ炎上しているか、想像したくもない。
日本にはお土産を渡して私という存在をちゃんとお披露目できたのだ。
更に日本政府が発行したパスポートも貰ったので今後は問題なく日本で活動できる筈だ。
正直、警察沙汰になって外交官とのやり取りや会見などいろいろと気を使う事ばかりでそろそろ家に帰ってゆっくり休みたい。
というかゲームを遊びたい。
ちなみにゲーム機、モニター、そして電源供給のセットも貰っており、それらは圧縮バッグに詰め込んでいた。
私は外交官の人たちと挨拶して帰る事にした。
「それでは今回は失礼します」
私は腕についたデバイスに触れるとワープが起動する。
私は光に包まれ、地球から消えた。