よろしければ引き続きお楽しみください。
「人...なの?」
「驚かせてごめんなさい。私...」
「来ないで!!」
入寮者だろうか、歩夢を警戒している。
0時過ぎの来訪者なんて不審者と思われても仕方ないと侘びたとしても、彼女は歩夢の弁明には耳を貸さず、拳銃のようなものを手にした。
歩夢が息を呑んだ瞬間、静止の声と灯が同時に降りかかった。
「待ってください。」
奥の階段からボブカットの少女が歩み寄ってくる。
対して歩夢の目の前にいる少女はダークブラウンの挑発をハーフアップにし、赤いリボンでまとめていた。ボブカットの彼女と歩夢を交互に見やっている。
「到着が遅れたと伺っています。」
「ごめんなさい、人身事故で遅れてしまって。」
「いいんですよ、それは把握しています。」
「栞子ちゃん、彼女は...。」
「新橋分寮に一時在籍する、2年次の編入生です。」
「えっ。」
ハーフアップの少女は歩夢と向き合い、深々と頭を下げた。そこまでされては歩夢も「頭を上げて欲しい」と焦る他なかった。
「自己紹介もせずに申し訳ありません。私は三船栞子。1年生です。こちらは同級生の」
「桜坂です。」
「改めまして、上原歩夢です。」
「女子寮が空いていなくて、こちらの新橋分寮で過ごしていただきます。」
「え、お二人はどうしてここに...。」
「しずくさん、案内してください。」
「はい。」
しずくに手を引かれ、歩夢は階段を昇る。
なぜ二人は女子寮ではなく新橋分寮にいるのか、聞き出すことはできなかった。
⭐︎
「さっきは急にごめんなさい。」
「こちらこそ、驚かせちゃいましたよね。もう深夜だし。」
「敬語じゃなくていいですよ。私の方が後輩ですし。」
しずくから脅すような真似をしたことを詫びられた。
なぜ拳銃らしきものを握っていたのかは定かではない。日本は特定の職業についていない限り、携帯すら許されないはずなのに。
「あの、ここに来るまで気持ち悪くなかったですか?」
「え?特に何も...。」
「へっ??そういう人もいるんだ...。」
歩夢にとって、0時から1時までの間は日常だった。あの光景を最初に見たのは7歳の頃、歩夢の世界がひっくり返ったあの時だった。棺と化した生命を見ても、歩夢は特に何か思うことはなかった。
「あの、上原さん。このこと、誰にも言わないでくださいね。」
「うん、わかってる。」
⭐︎
歩夢の部屋は3階の一番奥にある。扉の向こう側にはベッドと机があった。ピンク色で揃えた部屋は、物が少ないため華美ではない。
「やっぱり疲れちゃったな。」
人身事故によるモノレールの遅延、謎の幼女、突然銃を突きつけてきたしずく、そして新橋分寮の存在。とにかくトラブルが多すぎた。
寝支度もそこそこに、ベッドに沈んだ歩夢の意識は遠く彼方へ沈んでいった。
⭐︎
影時間に不適応な生命は棺桶に変えられ、脅威から身を守る。
だが時として、不条理は起きるもの。
「え、あれ...俺...。」
棺桶から出されてしまった人間は、「影」に食われる。
「ぎゃああぁぁああ!!!!」