「おはよう、寝坊助さん」
机に伏して眠っている少女に声をかける。
……反応はない。寝息は聞こえるし、呼吸しているように見えるから生きている、でいいのかわからないけど、とりあえず眠っているだけのようだ。
そもそもここはどこだ?
崩壊した教室のような空間。足元には水があるし、さっきのシッテムの箱とかいうタブレットの中なのだろうか?
だとしたら私の身体は?
「んぅ……」
そんな考え事をしているうちに、少女は目を覚ます。
「はれ?あれ!?ううぇ!?せ、先生!!??なんで!?」
「やぁ、君がシッテムの箱かい?」
「あわわ、あぁ、は、はい!
私が【シッテムの箱】メインOSのA.R.O.N.Aです!アロナとお呼びください!!」
「うんうん、よろしくA.R.O.N.Aちゃん」
A.R.O.N.Aという名前の少女はこのシッテムの箱というデバイスのOSらしい、少女の形をとっているのはよくわからないが、意志疎通でやりたいことができるのは便利だ。
「あの、先生?」
「どうしたの?」
「せ、生体認証を行いたいので、こちらに来ていただけますか?」
「ん、いいよ。はい」
「ではお手をお借りしますね、指紋情報を記録しますので!」
「おぉ、すごいね。指紋の形を覚えられるんだ」
「はい!目視確認ではありますが、しっかり覚えますので!!」
「あっ」
そういって私の手から手袋を外す。
「むむむ、む~こんな感じですかね?はい!覚えました!……多分」
「え?今多分って言った??
私困っちゃうよ?これのロック解除できなくなったりしたら!」
「だ、大丈夫です!顔と声も一緒に覚えましたから!指紋がダメだったらそっちで開けます!!」
「大丈夫かなぁ」
この子機械なんだよね?
ちょっと不安だぞ、私
「うん、わかった。これからよろしくねA.R.O.N.Aちゃん」
「はい!"黒崎先生"!
…………?」
うんうん。
元気でいい子だね。とても機械だとは思えない。
ホントに、いい子だ。
「ありゃ?」
気がついたら元の部屋に戻ってきていた。
「無事使用できたみたいですね」
リンちゃんが隣でホッとしたような顔でシッテムの箱をみている。
「私、いま何してた?」
「?? シッテムの箱のロックを解除しましたが…」
「なるほど……ふむ」
意識だけA.R.O.N.Aちゃんのいる世界に行っていたってことかな?
不思議だね。
A.R.O.N.Aちゃんも、
これを私に託した連邦生徒会長も。
「うーん、リンちゃん。これを入れられるホルダーとかあるかな?さすがにタブレットをそのまま持ってるのはちょっとね」
「そうですね……あっ、こちらでいかがでしょうか?」
リンちゃんが持ってきてくれたのはリボルバーのホルスターを改造したようなものだった。
受け取ってみると、上等な皮のようなもので作られているようで頑丈そうだった。
そしてまさかのシッテムの箱もぴったり入る。
なんて好都合なものが置いてあるんだ……。
「では、案内は終了ですので、私はこの辺りで。先生が所属する『シャーレ』に関しては、上の階の執務室に資料を置いておくように手配しておきますので、先生は妹さんを迎えに行ってあげては?」
「気遣いありがとうね。リンちゃんもここまでありがとう」
「誰がリンちゃんですか、はぁ、まぁいいでしょう。
改めまして、ようこそ、ギヴォトスへ」
「OK、A.R.O.N.A。ミレニアムサイエンススクールってどこにあるの?」
『はい、はい?なんですかその聞き方は~!私はそんじょそこらのスマホとは違うんです!ちゃんと呼んでください!そうしたら教えて差し上げます!』
「はいはい。A.R.O.N.Aちゃん、妹を迎えに行きたいからミレニアムサイエンススクールの場所を教えてほしいな?」
『仕方ないですね!!それじゃあ、案内をしますね!先生のスマホにギヴォトス全域のマップをインストールしました!そこにミレニアムサイエンススクールまでのルートを表示させました!』
「わぁお、すごいね。端末情報も教えてないのにデータをインストールできちゃうなんて。私のスマホにはいいけど、ほかの人にはやらないでね?」
『わかっていますとも!』
「じゃあ向かいますか~」