「は?え?どこだここ……」
ちょっと超能力が使えるだけの一般人である俺──
近場で一番大きな建物の屋上から見下ろすも周囲の家々や地形に全く見覚えはないし、何より空は赤黒く染まり、ゆっくりと渦を巻いて遠くに
高校2年生のある日、突然この超能力──ネンリキンに目覚めた俺の日常は変わらなかった。初めの頃は結社のシークレットなエージェントに命を狙われちゃったらどうしようと怯えたり、クラスに同じような超能力を持つ人間が転校してきて超能力バトルラブコメが始まったりしないかなぁと妄想したりしてずっとずっと何かが起こるのを期待と不安でいっぱいになりながら待っていた俺は大学生になって逆に焦りを感じ始めた。まさかこのまま大人になってしまうんじゃないかって、もちろんただ漫然と待っていただけではない。
超能力が目覚めてから2ヶ月ほど待っても何も起こらなかった俺は自分からアクションを起こすことにしたのだ。もしも世界を救う役割が与えられた時や、唐突に異世界に召喚された時のためにひたすらに念力を鍛える傍ら、さまざまなオカルトを調査し、パワースポットに足を運び、英語を学び、はるばる海を超えて自称霊能力者に会いに行ったりと努力はしたのだ。し か し 何 も 起 こ ら な か っ た 。パワースポットはただの観光地だったし、噂の裏路地には何もない、自称霊能力者は水の色を変えただけ。ネット上の噂と超能力を頼りに魔法少女や怪物の目撃証言を探したものの見つからない。最大限の努力はした。
そうして半ば諦めかけていたところに現れたこの明らかな異常事態!俺の物語はここから始まるんだ!とワクワクと一抹の不安を胸に抱き、早速周囲に念力を飛ばそうとした俺の目の前を影が横切った。一瞬だったがあれはもしかして人か!?
振り返った俺の真横をゴッ、と今度は濁流が追い越して行った。中くらいのビルを丸ごと飲み込めるほどの山のような漆黒の濁流はドタドタと大きな音を響かせながらあっという間に過ぎ去っていく。
「テケリ・リ!テケリ・リ!」
と妙にはっきりと響く鳴き声は俺の古の厨二知識の中から一つのモンスターの姿を引っ張り出すことに成功した。それは虹色の光と悪臭を放つ黒、または緑のゲル状生物。
「まさか、ショゴス?あれが?」
それにしては悪臭も光も嫌悪感もそれほどない、と走り去るショゴス(?)を呆然と眺めていると仮称ショゴスは急に立ち止まり、ググッと体を縮め、跳躍した。そのまま空中で広がったもうショゴスでいいやは真っ直ぐに地上に向かって落下し──
「テケリ・リ!!!」
「──────────ォ!!!!」
地上から飛び出した何者かによって吹き飛ばされた。俺の方に。あ、やばい、死ぬ。防御を、バリアを!早く!散発的な思考の中、俺のネンリキンは瞬時にその膜を広げ、バリアを形作る。
「────ッ!」
ビタァン!と大きな音を立てて咄嗟に張ったバリアにショゴスの巨体が叩きつけられる。高校、大学生活のほとんどを捧げ鍛え上げた超能力は練習通りに展開し、その衝撃の全てを防ぎ切ってくれた。透明なバリア越しにべちゃり、と開いたショゴスの目のような器官と見つめ合う。しばしの沈黙の後にずるり、と動き出したショゴスは巨体に見合わない俊敏さで動き出し、家をひき潰して動き出した。向かう先は正面。そしてその方向からズドドドドドと砂煙と足音を立てて向かってくる人影、さっき地上から飛び出していった人物であることは明らかだ。1人と1匹は全くスピードを緩めることなくぶつかり合った。
「だらっしゃあああああこなくそショゴスがああああああああああああ!!!!!!!!」
人影の大声にあ、やっぱショゴスだったんだ、という思考が浮かびあがると同時にショゴスの触肢が伸びる。ビッ!ビッ!ビッ!と合計6本ほどの触肢が鞭のように蠢き、人影に向けて襲いかかった。2撃、3撃、4撃、と周囲に余波を撒き散らし、家々を破壊しながらもショゴスの攻撃は届かない。人影も隙を見つけては槍を突き出している。ショゴスの巨大さに見合わない──それこそショゴスからしたら爪楊枝ほどの大きさの槍は一撃当たるたびにその体の体積を確実に削っていく。数秒ほどの攻防の末、一瞬の隙に新たな触肢が飛び出し、人影を絡め取った。
「おおっ!?」
人影から驚きの声が上がり、ブオンブオンと振り回されたのちにまたもや俺のいる屋上へと一直線に飛んでくる。
「う、受け止め……」
ようとした俺の目の前で人影は宙を掴み、そして浮いた。
設定まとめ
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いる
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いらん
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1話の前に置く
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募集の話の後に置く