43位に上がってた。さすが半ギレ、マイナーな人気作品だぜ(一行矛盾)
「う、浮いて……」
目の前で空中に捕まっているスーツ姿の男がいる。明らかな異常事態だ。いや、この状況自体が異常だし、なんかショゴスいるし、そもそも俺も浮けるんだけど。それでもだ。ついに見つけた自分以外の神秘に頭が沸騰している。始まるのだ。俺の物語が。強く、強く、そう感じた。その時、男の目が俺を捉えた。その手に持つ槍と同様の赫い目だ。
「なんだ、新手か?」
「ひぃ!?」
くしゃくしゃの黒髪の奥からギロリと睨まれる。そのセリフと殺気からして間違いなく
「い、いや!俺!敵じゃないんです!気がついたらここにいて!」
咄嗟に腕で顔を覆い、防御姿勢をとりながらなんとかそんな言葉を搾り出す。あ、人生で一度は言ってみたかったセリフ言えた。気がついたらここに、はやっぱり万能かもしれない。なんて的確すぎる状況説明なんだ。最初にこれを思いついた人は天才かもしれない。これを言っておけばどこの主人公も大体なんとかなってるから多分大丈夫!え?フィクションだからだろって?馬鹿野郎こんな状況もはやフィクションだから大丈夫に決まってるだろそういうことにしてくださいお願いします。いやまじで。薄目を開けて男の様子を伺うと男は何やら考え込んでいる様子だ。何かをボソボソと呟いている。
「こんなのが主人公?まじで?いやちゃんと戦えば強すぎるのは知ってるけどさ。あ、続き台本感謝」
パッと顔を上げた男はハキハキ喋り始めた。
「だいたいわかった。お前も迷い込んだクチだな。ちょっと待ってろ、あれ潰したら家に帰してやる」
ビ、と親指で示した先にいるのは巨大なショゴス。ぬっちゃんぬっちゃんと体を揺らして今にもこちらに飛びかかって──きた。
「うわぁ!?」
一瞬、深淵に飲み込まれるような錯覚を覚えて大きく体をのけぞらせる。無理だ、勝てない、と弱気な考えが頭を占める。超能力なんて通用するのか、とついさっきあいつをバリアで受け止めたことすら忘れて恐怖に飲み込まれる。自分の意に反して体がガタガタと震え出す。だが、このままでいいのかと囁く俺がいる。せっかくのチャンスなんだ。男の口振り的に俺を家に帰らせるつもりのようだ。今日、今、この瞬間を逃せば2度と来ないかもしれない非日常。俺には容易に想像できる。このまま男が戦う様を眺めているだけだった自分の行く末が。
元の世界に帰った俺はたとえ超能力があっても何も出来なかったと無力感を募らせるだろう。超能力なんか鍛えても意味がない。そして今まで打ち込んできた趣味が無くなった俺はただ周囲に流されるままに社会に出て、日々の仕事に精神をすり減らし、消えていく。何も成せないことが容易に想像できた。
一生隠して生きて行くつもりなのか?
考えれば考えるほどそっちの方がよっぽど恐ろしく思えた。体の震えはおさまっていた。ゆっくりと目を開く、極限の集中状態、いわゆるゾーンにでも入ったのか飛び込んでくるショゴスも、伸ばした右手の動きも全てがスローモーションだ。ああ、俺は何を弱気になっていたのだろう。いつかこういう時が来た時のために俺は超能力を鍛えていたのではなかったか?半ば諦めていたとはいえようやく俺の物語が始まりそうなのだ。だから──
「落ちろ」
鍛え上げたネンリキンを思い切りショゴスに叩きつける。俺の目の前まで迫っていた触肢はちぎれ、べチャリ、と地面に叩きつけられたショゴス。その上から動かないようにネンリキンで押さえつける。地面と薄いバリアの間でビタビタと跳ね回る触手。
「テケリ・リ!」
とどこか悲痛な叫びが聞こえる。核か何かがあったのかもしれない。そのまま薄く引き伸ばそうと全力で押さえつけたショゴスはパチン、と弾け、ブスブスと音を立てて全身が黒い煙となって解けていく。
「嘘だろ」
うわ死んでる、と呟く男の声で俺はようやくショゴスが消えていたことに気がついた。わ、なんかプッツンして覚醒した主人公みたいだ。恐怖で自立行動してただけだけど。右を見れば若干引き気味の男と目が合った。やりすぎたかもしんねえ。こんな殺意マシマシの対応をしてしまってどう挽回したものかと、俺はバリ島で買った仮面に手を触れてため息をついた。
格好から怪しさが滲み出てんだよなぁ。感想の返信にも書いたけど
設定まとめ
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いる
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いらん
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1話の前に置く
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募集の話の後に置く