そんな夢を見ました。
「ハッ……」
朝が来ています。窓の外では小鳥がチチチと鳴いています。
とてもすがすがしい朝です。そういえば昨夜、なんだかとーっても恥ずかしいことをしたようなあったようななかったような……
「いえ、たぶんあれは……夢『おっはよーございますイリヤサーン!』うわ」
『え、なんですかそのガチ引き。私としては突然すべてを夢落ちにされかけたほうが驚きなんですけど。昨晩はあんなにもリリカルマジカルしていましたのに……』
「恥ずかしいこと思い出させないでぇ……」
まあ結局。
昨日のあれも、この一週間の戦いも……もちろん、夢オチでも何でもないわけで。
昨日は、いろいろあって家に帰った後、疲れてぐっすり眠っちゃって。それで、起きれないかなぁ、なんて思ってたら案外、ちゃんと起きれたらしい。日々の習慣のたまものだ。
恥ずかしかった夜は、もうとっくに過ぎていたんだった。
気持ちの整理は、まあ結局全くできてないんだけど。
それでも、朝はやってきちゃう。
欠伸をしながら下に降りて、お兄ちゃんやセラ、リズと一緒にご飯を食べる。
いつも通りの朝の、いつも通りの食卓、なんだけど……
今日は、ほんの少し……心が軽い。
そんな面持ちで、学校まで行くと……「あのー、ミユさん?」
なんかぴっとりミユにくっつかれたタカラくんがいた。
「はっ、イリヤ!」
「うわ」
タカラ君に巻き付いてたミユが、すばやーくこっちにやってきた。なんだろう、二人そろってなつかれたらしい。その様子を見てたスズカが、ため息交じりに言った。
「昨日までけんかしてたと思ったら、その有様……一体全体なにがあったわけよ?」
「けんかはしてないよ~。多分気のせい全部気のせい……」
「それにしては、たった一夜でとんでもないデレっぷりだけど~」
ナナキへ、それは知らない。なんかすりすりされると猫っぽく見えて撫でまわしたくなってるからやめてほしい。
「イリ子がミユルートを裏で開拓していたとは……俺にも触らせろー!」
とかなんとかやってるタツコをミミが止めて「仲がいいのはいいことだよね。仲直りしたんでしょ?」
と、わたしとミユと、タカラ君を見てくる。わたしとタカラ君は、そろって苦い顔をして。
「仲直りって」「言うのかなぁ……」
なんて、口をそろえて言うのだった。
♦
集め終えたカードを、凛が読み上げる。
「アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、セイバー、アサシン。そして」
最後の一枚をパサリと置き。
「バーサーカー……回収完了。コンプリートよぉ……」
そう音頭をとるや。ようやくみんな緊張が抜けて、ベターっと地面に座り込んだ。
でっかいため息が場を満たす。
『……ちょっと皆さん。せっかく勝ったというのになんですかこのだらけムードは。でかい祝砲の一発でもあげたい気分なんですよこちらは!』
『……ちょっと黙ってて姉さん』『ま、まじで気分やないんやおあわぁ⁉』
『ガーッチャチャー!』
「遊ばれてるねぇ、ガッチャ」
『み、みとらんではよう助けんかーい!』
ガッチャは新しくできた仲間に、いいように遊ばれていた。その様子を、どこか楽しげに見ていた凛は、また小さくため息をついて。
「イリヤ」
「あ、はい!」
「美遊」
「は、はい」
一度、息を吸い込んで。
「勝手に巻き込んじゃって、悪かったわね。でも、あなたたちがいてくれて、本当に良かった。きっと私たちだけじゃ、勝てなかったから。最後まで戦ってくれて、ありがと」
そのお礼の言葉は、どこか暖かく、二人の心に響いていた。恥ずかしいのか、ミユも顔をそらしている。
さて、と気を取り直して。こちらもまた恥ずかしいので赤くなっていた凛は、七枚のカードを手に取るや。
「これはわたしが責任をもって大師父のもとに」というところでカードが手から消えた。
金髪ドリルの手にカードが七枚あった。「ホーッホッホッホ! 最後の最後で油断しましたわね遠坂凛っ! このカードはワタクシが、責任をもって大師父のもとへ届けて差し上げますわーーー!!!」
「んな、はああああああああ!?!?!?」
そこから大喧嘩が始まった。ルヴィアさんを乗せたヘリコプターを、凛さんが全速力で追いかけていく。そのすさまじい速度と執念に、さしものルビーも『あれ私いらないですよね』と言っていた。
ルヴィアさんは逃げていくときに、「先に家に戻っていなさい!」とミユに言っていた。多分カードを送った後、ミユに吉報を伝えるつもりだったんだろうなと宝は思った。
思ったんだけど……「ユーフォーエックスに持ってってもらえばよかったのに」
「ユーフォー」
ユーフォーエックスは宝石翁のもとにいる数体のケミーの中でも、一番有名なものなのだ。
その彼を、わざわざ爺ちゃんが派遣したってことは、バーサーカーのカードが強いこととか、宝の状況とか、イリヤちゃんのあれこれとかに、あの人が気づいていたということでもあって。
と、一応その話は置いておこう。オチは最後に取っておくものだ。
ともかく凛とルヴィアという犬猿は、朝まで追いかけっこしてたらしい。
で、朝市に学校に来たら、なんでかミユにべったりされて、ついでに彼女はイリヤにもべったり、と。好かれるようなことしたっけなーとか宝は思ったのだった。
ガッチャはそんな彼を見て『まあ順当にいけばそうなるやろが』などと言ってた。この戦いで彼が彼女に何をしてたかを思えば、宝的には納得がいかなくても美遊敵には納得がいくのだろうということだったりした。
ちなみにそのクーデレ美遊さんは龍子を泣かせてた。
曰く「仲良くなるのはいい。そのうるさいのはどうにかならないの?」とのこと。でれーってしてたとは思えない冷たーい一言である。龍子の心はガラスのごとく崩れ去った。
うーん、結局性格は改善されてないような。からかってたときとほとんど変わってないような……『からかってた自覚あるとかお前なぁ……』「う、うるさいな……」
「まあ、一件落着かなぁ……」
「んなわけあるか! おぎゃりだしたぞあいつ止めろ!」
「おぎゃああああああああああ」「うるさい」
「刺すたびに悲鳴が伸びていく……」
……これはまた、大変な日々の始まりかもしれません。
そういえば、おいて置いた話に話題を戻すんですけど「おいこら現実逃避すんな!」
ミユはルヴィアさんの妹になっているんです。ということは、ルヴィアさんと一緒にイギリスに行くのでは? というかもう行ってるのでは? という話なんですが。
先の喧嘩には続きがありまして。
凛さんとルヴィアさんはヘリを落下させて、山の中に落ちたそうです。その時おじいちゃんから、言われたそうで。
♦
「あの、どういうことでしょう大師父」
『言ったままの意味じゃ。回収任務はご苦労。おぬしらのサポートと、あの少女たちのおかげじゃな。これで冬木の地脈も安定しよう……約束通り、お前たちを弟子に迎えるのもやぶさかではない。が』
『……魔術を学ぶ前に、お前たちには一般常識が足りておらん』「は?」
『幸い日本は、「和」を重んじる国。一年、留学の機会を与える。喧嘩で講堂をぶち壊し、挙句の果てに魔術とは関係のない一般人を巻き込んだその性根を直してこい。弟子にするのはそれからじゃ、ではな』
ぶつっ、つー、つー
「……………………」
ばきっ
「ふっっっっっっざけんなああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
と、まあ。そういうわけで。
なんだかんだみんな、日本在留。
この奇妙な……でもとても楽しい関係は。
まだまだ、続きそうなのでした。
♦
つー、つー、つー、ぱっ
「おじい様」
『おお、千秋か。元気か?』
「おかげさまで。アイリさんのお見送りを終えてきました」
『ふむ、そうか。ありがとうな。……何か、おかしなことはなかったか?』
「そのことでご連絡した次第です。走行中、黄金色の怪人に襲われました。幸い、私とヴァルで、何とか撃退しましたが……」
『がんばりましたよー! ほめてください叔父様!』
『おうおうわかった。しかし、やはりそちらにも出たか……仕方あるまい。彼女らには、戻ってくる時期を遅めてもらうとするか。ついでにあの性格も直してもらうかの』
「遠坂達を在留させるのですか? こちらに?」
『うむ。ルビーからも提案があってな。連絡が取れれば、指輪のもそちらに向かわせておく』
「わかりました。では、宝にはこの話は?」
『時が来るまでは、伝えるな。よいな?』
「……はい。では、失礼します。おじい様」
『うむ。たまには帰ってくるんじゃぞ。手土産持ってな~』
がちゃり。つー、つー
「……ふー……また、一波乱ありそう、ね」
to be continue……