Fate/Gotcha liner   作:アカハナさん

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今作の昭和の皆様はSpirits準拠でお送りしております。


第二十話 Wの望み/黄金の怪人たち

 今頃は、フィリップとときめが子供たちの相手をしているところだろうか。

 なんて、翔太郎は思いふける。

 

 ここは風都市、風花町、風花公園。

 

 そこで今回の事件の、十人目の被害者が見つかった。

 それは最近この風都で有名になっている、吸血鬼事件の被害者。

 

 路地裏や人気のない草むら、夜の公園などで、女性が襲われその生き血を吸い取られる。そして彼女たちの死体は、カラカラに乾いたミイラとなって犯行現場に転がされていた。

 その女性たちのどれもが、ちまたでは評判のアイドルだったり風都の夜の花と呼ばれるような人物であった。風都の警察はこの事件を「超常犯罪」であるとし、超常犯罪捜査課が捜査に当たった。

 これが宝たちが街に訪れる、一か月ほど前のこと。

 

 さて、その時期に合わせるように、鳴海探偵事務所にも依頼が舞い込んでいた。

 

「……私の親友を殺した犯人を捜してほしいんです」

 

 そう言ってやってきた彼女が、小山油井。彼女は憎しみと悪意をないまぜにした表情で、そう翔太郎たちに持ち掛けた。

 詳しい話を聞けば、先日殺害された十人目の被害者……清原木乃美という人物が、彼女の友人だったという。

 高校からの友人で、同じ大学に通っていたのだとか。

 

 彼女は親友がミイラにされてことに激しく憤り、ドーパント犯罪に強いことで有名な鳴海探偵事務所を訪れたのだという。

 

「私は犯人を許せません……あの子を、あんなひどい姿にした犯人を……どうかお願いです。犯人を、事件の犯人を必ず捕まえてください! お願いします!」

 

 そんな彼女の訴えを、二つ返事で飲んだ翔太郎。

 街を泣かせる悪を許しはしない、それが彼のモットーである。親友を、街にはびこる悪に殺された彼女のことを、翔太郎は放っておけなかったのだった。

 

 そういうわけで調査を始め、仲間とともに進めてひと月。

 

 調査そのものは進められていたが……それと並行して、あるものが現れるようになった。

 

 それが。

 

「また出やがったな、黄金野郎」

 

 目の前に現れた、黄金色に輝く仮面ライダーの偽物。

 趣味の悪いことこの上ない、ギラギラ輝く危険な奴らだ。

 

 こうして事務所に帰る途中にも現れるのだからたまらない。明らかに……仮面ライダーである、自分たちの行動を制限しようとしている。

 

「あいにく、こっちは相棒が取り込み中でな」

 

 翔太郎はかっこつけながらも、懐から取り出した赤いベルトを腰にセット。そして一本のメモリを取り出す。デフォルメされた「J」の文字が輝く、黒いメモリ。

 ジョーカーのメモリだ。

 

「さっさとどいてもらうぜ」

『ジョーカー!』

「変身!」

 

 スイッチを起動したメモリをベルトに装填。ベルトを起動するや、黒い風が巻き起こる。

 ジョーカーメモリに宿り切り札の記憶は、翔太郎の肉体に適合した形を作り出し、その通りに彼の体を変形させるのだ。

 そうして黒い疾風に身を任せた翔太郎の体は、彼のものからかけ離れた姿へと変化していた。

 

 赤い瞳に黒い体、胸と肩に刻まれたJの文字。Wを思わせる銀色の触覚。

 力強く握られた拳を開き、彼は目の前の偽物……仮面ライダーサガの偽物へと、宣言する。

 

「仮面ライダー……ジョーカー。行くぜ、偽サガ公」

 

 仮面ライダージョーカー、切り札の戦士は敢然とサガへと立ち向かう。

 ゆらりと動き出した偽物の拳と、彼の鉄拳が、空中で交錯した。

 

 

 ♦

 

 

 

 車内のミニテレビに、ニュースが映っている。

 黒の仮面のライダーと、黄金色の仮面ライダーが戦っていた。

 戦場の上空から撮影された映像で、テレビでは「先ほど、再び金色の仮面ライダーが現れました」などとやっている。

 

 それを注視しながら、イリヤは宝に聞いてみた

 

「こんなライダーもいるんだ……?」

「え、いや、知らないんだけど……」

 

 でも、自分が知らないライダーとかたくさんいるだろうしな……と思って、宝は言いよどむ。

 すると、助手席に座っていたフィリップが「何を見ているんだい」と聞いてきた。

 ニュースのことを伝えると。

 

「ああ、ゴルドライダーのことか」

「ゴルドライダー?」

 

 宝が首をかしげて、その言葉を反芻する。フィリップが「そう」と答え、うなづいた。

 

「最近この街で確認されている、ドーパントではない怪人たちさ。ライダーに似通った姿をしているが、その能力はあくまで、彼らの力を再現した偽物。しかしその再現が非常に精工でね、Wをも苦戦させる仕上がりなんだ」

「出始めたのは一週間くらい前よね、確か」

 

 ときめの問いにうなづいて応じ。

 

「出るときに、ライダーと出会えたらラッキー、と言った、今の風都ではライダーとゴルドライダーの戦いが何度か起こっている。この一週間の間にね。会える確率はかなり高いだろうけど……その分危険も多い。くれぐれも、僕らから離れてはいけないよ」

「は、はい!」

 

 さて、車は警察署の通りにやってきた。

 ワゴンはそこで停車して、ときめが「ついたよ」と皆に伝える。

 

「え、ここが目的地なんですか?」

 

 美々は思わずそう聞いた。ときめはうなづく。

 

「うちの署長さんが、ぜひ自分の旦那さんも紹介したいからって、言っててね。それで、探偵事務所と警察署、どっちも見てもらおうってことになったの」

「フィールドワークはそのあと。さて、出たまえ」

 

 言われて、ワゴンの外に出る。ときめは車を止めてくるからと、駐車場のほうに車を走らせた。

 フィリップが四人を先導し、四人はそれについていく形で、警察署に足を踏み込んだ。

 

「お、フィリップ!」

 

 と、声が聞こえた。皆がそちらを振り向くと、白いハンチングを被りカメラを首から下げた青年が、フィリップに手を振っていた。その後ろには黒いワンピースを着た黒髪の女性がいた。

 

「こっちに来てたのか。偶然だな」

「先輩。それに油井ちゃん」

「さっきぶりです、フィリップさん」

 

 誰だろう。

 

「誰なんですか?」

 

 イリヤがフィリップに問いかけた。

 

「依頼人の小山油井さん。それと、僕と相棒の先輩の、一文字隼人さんだ」

「先輩……ってことは、このお兄さんも探偵なんですか?」

「いや、俺はカメラマンだぜ。こいつのバイク乗りの先輩さ」

 

 そういうつながりなのか。

 フィリップさんにとっては、偶然の遭遇なのだろうな。

 そういえば、もう一人の女性のほうは、依頼者だと言っていたけど。

 

「ああ、それと彼女は」

「フィリップさん。私のことは大丈夫です。子供たちに伝えるようなことでもないですから」

「そうかい? ……じゃあ、一応、僕たちが受け持っている事件の依頼人とだけ」

「ちょうど依頼を受けてたんですね」

「そう。少し調査が難航しているのだけどね」

 

 そう言いつつ、フィリップは「さあ」と手をたたいて。

 

「アキちゃ……所長も待っている。あまり時間もないし、行ってみようか」

「あ、はい!」

 

 そういうわけでまたも四人はてぽてぽとついていった。

 一文字はその背を見て「かわいいねえ」などとつぶやいた。

 

「隼人さん、それ最近だと危ないですよ」

「危ないって……そりゃねえだろ、子供ってのはいつの時代もかわいいもんだぜ?」

 

 その発言だけでも、だいぶ危ういのだけど。しかし隼人が気にする様子は全くない。

 

「しかし、嘘もいいところですね。バイク乗りの先輩なんて」

「あってるだろ? ライダーだし」

「あってますけど……そうういえば、今日はどうするんですか? 確か今日がちょうど……」

「おう、満月だ。予想されたメモリが、活性化するらしいのが今日だったな」

 

 隼人は、懐のカードを見ながら、そう言った。

 そのカードには、仮面ライダーストロンガーによく似ているが、デフォルメされた不思議な見た目のカブトムシが描かれていた。真っ赤な体に緑の目、側面には黒いSの文字がある。

 

「今日こそ、こいつを使ってたやつをとっちめる。そのチャンスだからな……ちと気合い入れねえとな」

 

 カードをしまい、彼はにかっと笑った。

 油井はため息をついた。

 

「というか、カードを早く渡しに行きません? それを超常犯罪捜査課に渡しに来たんですよね?」

「おうそうだったな! よし、行こうぜ!」

 

 隼人はそうやって油井に促す。

 なんとも強引だ、これが昭和の男というものなんだろうか。しかしその優しさが、復讐心に駆られていた自分を、今の程度にまで緩和してくれているのも事実で。嫌いになれないなと、もういちど油井はため息をつくのだった。

 

 ……と、近くの木がガサリと揺れた。

 どうしたのかとそちらを見ると、何もいない。風など吹いていないのに……

 気にしないようにして歩き出すと、今度は隼人が止まっていた。

 

「どうしました?」

「あれ見てくれ」

 

 そう言って彼が指をさす先には、金色のスライムがいた。警察署の壁に張り付いて、二階の窓を探っている。

 

「あれは!」

「まさか、な……ちっと急ぐぜ!」

 

 隼人が走り出す。油井もまた、彼の後を追った。

 

 

 

 ♦

 

 

 

 警察署内を見回りながら、応接間に案内される。

 大きな施設で、警察官がたくさんいて、見慣れない機材がたくさんある。

 小学生の四人組には、いつもとは全く違う世界に来たように感じる場所だった。

 

「なんだろう……鼻がツン、ってするんだけど」

 

 美遊が言う。

 それってタバコのにおいじゃないだろうか。今じゃ吸う人も少ないけど、ここでは案外吸っている人が多いんだろうか。

 確かに少々臭いけれど……

 

「これはこれで、大人の臭いって感じがするね~」

 

 と、イリヤが評した。確かに、大人のための場所って、こういう独特な雰囲気とにおいがするのだろうな、と宝も思う。居心地はよくないというか、あんまり慣れないけれど、いずれ慣れていくのだろうか。

 

「みんな、興味津々みたいだね」

 

 フィリップは後ろの三人を見ながら、隣を早歩きで歩く美々にそう聞く。

 緊張しながらも「そ、そうですね」と、美々は答える。

 

「美々ちゃんは、見て回ったりしないのかい?」

「わ、私はいいんです! 班長ですし、少し我慢します!」

「……ふむ、我慢は毒だというけどね」

 

 と、そうしていると、廊下の突き当りの応接間についた。

 中に入ろうとドアノブに手を触れると、扉の向こうから声がかかってくる。

 

「超常犯罪捜査課、課長。照井竜です。よろしく」

 

 どこかぎこちない男性の声。その声に「もう一回だよ! もっと愛想よく!」と激励を飛ばす女の人の声。

 ……何かの練習中だろうか。

 

「演劇でもするのかな」

「まさか、小学校じゃあるまいし」

「失礼するよアキちゃん、照井竜」

 

 何かやってるのにノックもせずに入ったぞこの人。

 

 扉の向こうにいた赤いパンクな服を着た男性が、バッとこちらを見た。

 

「……もう来たのか」

「予定より早くね」

 

 なんだろう、会話といい、あの赤い人がこちらを見る目つきといい、ここだけ空気が張り詰めすぎて戦場のようになっているんだけど。

 

『ごにょんにょん(メンチで負けちゃだめですよイリヤさん!)』

「無茶言わないでよ⁉」

 

 前にも似たような無茶振りしてきたよね⁉

 

「どうかしたの?」

「あ、や、何でもないよミミ」

 

 危ない、ルビーのせいで(『心外ですね』)変な子にみられるところだった。

 と、ともかく、あの人は誰だろう? それと隣の女の人は?

 

「おー、ようこそ超常犯罪捜査課へ! 私は鳴海亜樹子! よろしくね~!」

 

 寄ってきた彼女は、それとな~く五人を部屋に招き入れつつ、そう挨拶した。その隣で、「なぜ所長が言うんだ」と、小さな声で赤い人が言った。その赤い人を手で指して。

 

「そしてこっちがこの部署の署長で私の旦那様!」

「……超常犯罪捜査課の照井竜だ。よろしく頼む」

「す、スルー? 余裕の全スルー……」

 

 ああ、かわいそうな奥さん。でもすぐ持ち直して「そういうところも格好いいよね!」と笑う。

 おお、強いぞ奥さん。

 

「いやぁフィリップくんご苦労様! よく連れてきてくれたね!」

「大変ではなかったよ。ここまでの運転も、ときめがやってくれたし」

「そうなの。じゃあときめちゃんにも後でお礼言っとかないとね」

 

 と、会話を交わしつつ、改めて亜樹子は、子供たちに向き直る。

 

「いやぁ、本当は事務所であいさつしたかったんだけどね~。ごめんね、遠くまで来てもらって」

 

 そう言いつつも「旦那さんを紹介できるから、よかったけど」と笑う。

 

「あ、あの」

「ん? なあに? えーっと」

「か、桂美々です! そのう……皆さんってそういえば、何か今、調査をされているんですか?」

「うん? ああ、そういえばそうなんだけど……あれ、フィリップ君伝えてないの?」

「部外者だしね、伝えていないけど……」

「それならときめちゃんも言ってないのかな。ふ~ん……まあ確かにね」

「あのー」

「ああ、大丈夫だよ美々ちゃん。お仕事中ってわけじゃないの。君たちの相手も、お仕事の一環だから!」

「……俺は少々異なるがな」

 

 照井竜、と呼ばれていた赤い人は、ようやくそう言葉を口にした。

 そういえば、この人は警察なのだっけ?

 

「警察官が旦那さんだから、鳴海探偵事務所さんは、警察との連携がとりやすそうですね」

 

 宝は特に気にはせず、そう言ってみる。イリヤは「そういうもの?」と聞く。

 

「だって、調べたことを共有しやすいじゃない。探偵じゃ手に入らない情報が、警察なら手に入るってこともあるだろうし」

「……スパイみたいな感じ?」

「……別に敵じゃないし、スパイは違うけど……似たようなものかなぁ」

 

 似たようなものなんだろうか。二人のやり取りを聞きながら突っ込みたくなった美遊は、しかし何も言わないでおくことにした。下手に言って誤解を加速させても、よくないし。

 

「ともかく、ここで所長のお仕事とか、竜くんのお仕事とかをご説明しましょー! ささ、竜くんそっちに」

 

 そう亜樹子が照井を急かす。彼は机に置かれていた投影機に手を触れた。

 

 そこでバタンと、いきなり扉が開かれた。

 血相を変えた様子の隼人が、そこにいる。息を切らしているらしい彼は荒い息を吐いたまま、部屋の中を見渡して。

 

「あー……スマン、間が悪かったか?」

 

 とだけ言った。

 

「どうしたんですか、先輩」

 

 照井が彼に問いかける。あれ、こちらも先輩と呼ぶのか。

 

『ごにょ……(オートバイの先輩とはいえ、ここまで顔が広いものでしょうか……?)』

 

 隼人は照井の質問に「いや、なに」と前置きをしつつ答える。

 

「さっき、ゴルドライダーの幼体を見つけてな。二階のほうの窓を物色してたから、追いかけてきたんだ」

「ゴルドライダーって……」

 

 さっきワゴン車の中で見たテレビに、映っていた怪人だ。

 その怪物が、近くにいるのか……!

 

 そんな時、ガラリと何かが開く音がした。美々が「ひっ」と声を上げ、宝はとっさにそちらを振り向く。

 

「おいおい、そっちもご到着かよ!」

 

 隼人が言い、顎で向こうを指した。金色に輝くゲル状の何かが、窓から入り込んできている。

 

「な、なに⁉」

 

 美々が驚いて声を上げる。

 そのなにかは二つに分かれるや、それぞれが人型に変わった。人型だが、しかし人ならざる異形のもの。

 仮面ライダーの姿へと。

 

「あれが噂のゴルドライダー……⁉」

 

 それぞれのゴルドライダーの姿には既視感があった。

 だいぶ尖ったような、悪辣な見た目に変わっているが。それらには確かに、仮面ライダースーパー1と、仮面ライダーフォーゼの面影がある。

 そのどちらも、豊富な特殊能力が特徴のライダーだったと、宝は記憶している。

 

「たく、今度は沖と弦太郎の偽物か。ご丁寧に宇宙コンビとは、好きにやってるねぇ」

 

 言いながら、隼人が前に出る。

 

「フィリップ、照井、子供たちを頼む」

「……了解した、先輩。あとは」

「皆まで言うな、任せとけって!」

 

 しかし、彼らが逃げるよりも早く、ゴルドフォーゼの攻撃が火を噴いた。

 足に現れたガトリング砲からの連続射撃が、部屋ごと彼らの体を打ち抜く。

 

 その寸前で、フィリップの服の隙間から白い恐竜が現れ、弾丸を全て受け止めた。金色の弾丸は、ただの液体となって、どろりと地面に落ちる。白い恐竜型のメモリは「キュウ」と一声鳴いた。

 

「ファング、こっちだ!」

「ひゅう、俺が守るより早いな! じゃあ、こっちもいいとこ見せようか!」

 

 言うや、一文字隼人は白い上着を脱ぎ棄てる。上着がマントのように舞う中、彼は腰に現れた、巨大な赤いベルトを見せつけるように光らせる。

 逃げる直前、その輝きを見た宝は、そのベルトが一体何であるか気が付いた。

 

「まさか、あの人……」

「さあて……お見せしよう!」

 

 彼は手を水平に構え、そのまま体の上部で回転。力を貯めるようにポーズをとる。そして、腰のベルトの風車に、巻き起こした風のエネルギーを取り込んだ。

 部屋の中の机が浮きはじめ、次いで突風の中で乱舞する。一文字隼人はその風すらも取り込みながら、叫んだ!

 

「変身!」

 

 瞬間、彼の瞳が真っ赤に輝く。緑色の仮面が彼の頭を覆いつくす。

 体は真っ黒に染まって、その上に緑色の装甲と、赤い手袋にブーツが現れた。黒い体には方から手の先にかけて、真っ白な一本線が入る。

 その姿を、宝はビデオで何度も見て知っていた。

 古い映像の中で、幾度となく悪に拳をふるってきた、赤いスカーフの仮面の戦士。

 

「仮面、ライダー……⁉」

 

 目の前の彼にその名を問いかける。

 その問いに答えるように。

 敵に対して指をさし、仮面の男は語る。

 

「俺はお前たち偽物どもの敵。そして」

 

 今度は、子供たちを守るように手と腕を開く。

 

「子供たちの味方」

 

 そして__赤い手を水平に構え、瞳と額のランプが、輝く!

 

「仮面ライダー、第二号!」

 

 現れたるは、仮面の男。赤い手袋に黒い仮面が映える、伝説の第二号。

 仮面ライダー二号だ!

 

「行くぜ、ライダーパワー!」

 

 全身の戦闘用回路をフル稼働させ、ライダー二号が走り出す。

 二体の偽物も、それぞれの近接専用装備を召喚し、二号ライダーにぶつかった。

 

「やっぱり、やっぱりライダー二号だ!」

 

 驚きよりも何よりも、その姿を間近で見ることができた。

 その嬉しさが勝って、宝は思わず歓声を上げた。

 

「宝、あれが仮面ライダーなの?」

 

 美遊の問いに「うん!」と、宝は答える。

 

「仮面ライダー二号、栄光の七人ライダーの二番目で、世界で二番目に作られた仮面ライダーだよ……! まさか、あのお兄さんが変身するなんて、思わなかったけど」

「い、いや、今はそんなことより、早く逃げないと!」

 

 イリヤが言う。確かにその通りだ。

 

「こっちだ、みんな!」

 

 フィリップが先導し、宝たちは廊下を駆け抜ける。途中、美々が転びそうになるも、亜樹子が彼女を支えた。

 

「大丈夫?」

「は、はい!」

 

 しかし、廊下の先にはまたも、金色の液体があふれ出した。今度は、仮面ライダーとは似ても似つかない怪人の姿に変わる。赤い瞳に青い体で、その怪物はうなりを上げた。

 

「ザンジオゥ……!」

 

 フィリップは目の前の、サンショウウオの姿を禍々しく真似た怪物を見て、呟く。

 

「エリート怪人ザンジオーか……全く、大ショッカーではないんだから」

「やはり自我はないようだな」

 

 そう言いながら、照井が前に出る。

 

「フィリップ。翔太郎はまだ戦闘中だろう。俺がやる」

「……助かるよ」

 

 照井竜は懐から、バイクのハンドルの様なドライバーを取り出した。それを腰に据え、次いで一本のメモリを取り出す。赤色の、「A」の文字が刻印された、ガイアメモリだ。

 

『アクセルッ!』

 

 メモリは、火が付いたかのように、熱い声を上げる。

 

「え……」

「そのメモリは!」

 

 宝も、イリヤも、美遊も美々も、そのメモリとドライバーには見覚えがあった。

 あれはガレージで見た写真の中の、赤い仮面ライダーの腰についていたドライバーだったから__

 

「変……身ッ!」

 

 メモリを装填。ハンドルを回すと、彼の体が真っ赤に染まりあがる。

 彼を覆うように現れた赤いいくつものエンジンが火を噴き上げ、赤い円状の空間を形成。そしてその中で、照井竜という男の肉体を、強化人間へと変えたのだ。

 青いランプのような瞳に、バイクをそのまま人型に変形させたかのようなその見た目。

 彼こそは、仮面ライダーアクセルだ!

 

「てゆーか、テルイさんも仮面ライダーなの⁉」

 

 イリヤは思わず声を上げる。

 照井さんも仮面ライダー……で、この人は一文字さんのことを先輩と呼んでいて、その一文字さんも二号ライダーで……二号ライダーは、すべてのライダーの中で二番目に生まれた人で。

 てことはー……

 

「も、もしや先輩ってそういう⁉ フィリップさんも仮面ライダー⁉」

 

 口早にそう言うイリヤ。さてフィリップはあいまいな表情。対して亜樹子さんはその通りとでも言いたげな表情。

 

「竜君も仮面ライダーだし、うちはときめちゃんと私以外みんな仮面ライダーなのよー!」

「……勢いで暴露するな、所長」

 

 「まあ、どの道バレるだろうとは思っていたが」と言いつつ、どこからか現れた大剣を片手に、アクセルは黄金ザンジオーを見る。

 

「フィリップ、早く逃げろ。ロストドライバーはないんだろう?」

「ああ、そうさせてもらうよ、照井竜。みんな、こっちだ!」

 

 フィリップは子供たちに叫ぶ。美々はうなづき、亜樹子の手を握って彼に従った。

 イリヤたちもそれに続くのだが、宝は一度背後を振り返る。

 自分も戦いと、思ってしまったのだ。自分が先輩と仰ぐ、憧れのあの人たちとともに……

 

「タカラ君! 早く!」

「あ、うん!」

 

 イリヤに呼ばれて、宝はようやく足を動かした。

 それを追うザンジオーには、エンジンブレードの一撃がたたきつけられる。吹き飛ぶザンジオー。エンジンブレードを構え、照井竜は告げる。

 

「そう易々と、行かせはしないぞ」

 

 

 

 ♦

 

 

 

 逃げて、逃げて、ようやく警察署の玄関口まで来た。

 その時には所内は警報が鳴り響き、人々がいずこかへと走り、また走って去っていく。

 警察官の人ごみの中には、見慣れない姿の青い仮面が見えた。

 

 そうしていると、美々の耳に、声が響く。

 聞こえた声は、女性のもの。次いで、ハナミズキの香りが鼻孔をくすぐった。

 

「ときめさん!」

 

 美々が呼ぶと、彼女は人の波の中から彼女を見つけ出した。

 すぐさま、美々とフィリップのほうによって来る。

 

「フィリップ、美々ちゃん! よかった、無事だったんだ」

 

 そう言って少女を抱きとめる彼女。

 しかし、美々の顔は少々、険しかった。

 

「……ってあれ、ほかのみんなは?」

「は、はぐれてしまって……」

「気づいたらいなくなっていたんだ。ときめ、彼女を頼む」

 

 美々を抱きしめたときめに、フィリップはそう告げる。

 フィリップは一人で、この喧騒の中、三人を探すつもりなのだ。

 

「わかった……無茶しないでね。怪人も出てるんでしょ?」

 

 その言葉には、「今の君は変身できないのだから」という言葉が含まれていた。

 大丈夫、とフィリップは返す。彼はそのまま、走り去った。

 

 彼には彼を守るファングメモリもいる。大丈夫、だろうが……

 

「一体、どこに行ったの……みんな」

 

 

 

 ♦

 

 

 

『こっちです、イリヤさん!』

「うん!」

 

 イリヤは階段奥の、使われていない部屋のほうへと走る。

 ここなら、だれの目にもつかない。遅れて宝と、美遊も現れた。

 

『ここなら、だれにも見られへんな』

「よし、変身しよう!」

 

 それぞれが杖を構え、ベルトを腰に取り付け。

 

「ホッパー1、スチームライナー!」

『ホッパー1、アーンド、スチームライナー!』「ホパー!」「ライナー!」

「変身!」『ガッチャーンコ!』

 

 二枚のカードを装填、その力を重ね合わせ、空色の装甲を身にまとう。

 

「行くよルビー!」「お願い、サファイア」

 

「「多元転身(プリズムトランス)!!」」

 

 ステッキたちの力を借りて、桃色のドレスと、青いレオタード、それぞれをその身にまとい、美しい翼と光の粒子を散らす。

 

 それなるは形は異なれど、同じカレイドライナーの姿。

 

 白いグローブを握りしめ、パンクライダゴーグルを上げ、その奥に秘められた矢印の瞳を開眼するのは。

 

『スチームホッパー!』

 

 ケミーたちの力をつかさどる、カレイドライナーガッチャード。

 

 ふわりと宙に舞い、地面にとんと降り立ち、くるりと回って決めポーズ。

 かわいらしく、されど少し格好よく決めた、二人の魔法少女は。

 

『カレイドライナー・プリズマ☆イリヤ!』

『カレイドライナー・プリズマ☆ミユ……!』

 

 白鳥と、黒蝶となって並び立つ、美しき乙女たち。

 

『同時に降臨!』『です!』

 

 なお中継は暗ーい部屋のため、見ている人は誰もいなかったり。

 決めポーズの意味とは……

 

『意味など関係ありません! かっこいいから、やるんですっ!』

『おおー、力説』

 

 今回は珍しく、ガッチャがルビーをぞんざいな扱いしてるなぁ『いつものお返しや~』

 

『むう、なんという弟なのでしょうか!』

「それはいいけど、これ大丈夫かな……勝手にいなくなったし、ミミもフィリップさんも、心配してないかな?」

「そうかもしれない……けど、こんなに怪人がはびこったなら、背に腹は代えられない。後でいくら怒られてもいい……今は、怪人を倒すことを考えて」

 

 美遊は、不安げなイリヤをそう諭す。イリヤは「そうだね」とその言葉に応じた。

 

「よし……わかった! 気合い入れていこう!」

 

 三人は部屋の外に出る。

 黄金の怪人が一体、部屋の中で警官を襲っていた。

 

「アビィ……!」「ブブブ……」

「く、くそっ……」

 

 片やカニの鋏を持った細身の怪人。片や長いストロー上の口を伸ばした、昆虫の怪人。

 イリヤがその二体の後ろから魔力砲をぶっぱなし、まとめて吹き飛ばした。

 

「早く逃げてください!」「あ、ああ……ありがとう」

 

 ガッチャードに助け出され、警官は怪人のいないほうへ走り去っていく。

 攻撃を受けた二体の怪人は、三人のほうを見て咆哮をあげた。

 

「アビアビアビィ!!」

「ブゥヨォオ~ン!」

「……蚊の怪人と、カニの怪人、よね?」

 

 杖を構える美遊は、二体の怪人をいぶかしげに見つめた。

 

「うん。確か、蚊のほうがモスキラス。カニのほうはシオマネキの怪人の、シオマネキングだったと思う」

『おお詳しいですね』

 

 モスキラス、かつて二号ライダーと南米で戦い、その後日本は紀伊半島にショッカーの基地を作る作戦に参加。

 一号ライダー抹殺のため、シオマネキングとともに活動するも、一・二号のダブルライダーによってそれぞれが撃破された。

 

 宝の家の資料には、かつてライダーによって敗れた怪人たちのデータも、ある程度残っている。

 もちろん、ショッカーのような組織の計画までは残っていない。残ってはいないのだが……

 

「その計画、モスキラスもシオマネキングも自分でダブルライダーにばらしてたんだよね……」

「ええ……」

「計画の最高責任者にあるまじき失態ね……」

 

 その通りです。ショッカーの怪人にはそういうのが多い。

 しかし目の前のモスキラスは、その怪人を模しただけの、黄金の怪物に過ぎない。

 あくまで使えるデータは、名前だけと思ったほうがいいだろう。

 

 モスキラス、シオマネキングは、しびれを切らしたように三人に突進した。

 シオマネキングの巨大はさみが迫るが、ガッチャードのガッチャートルネードがその攻撃を受け止める。はさみを跳ね返し、ガッチャートルネードの斬撃を食らわせるが「うわっ⁉」

 

「ブブブ!」

 

 モスキラスの口が触手のように動き、ガッチャードの体をからめとった。

 ガッチャートルネードを操る切れが鈍り、そこにシオマネキングの炎が炸裂する。シオマネキングの吐く泡は、発火性の溶解液なのだ。ガッチャードの装甲がどろりと溶け、焼け焦げていく。

 

「っ、このぉ!」

 

 高速を逃れられない宝に代わり、イリヤの攻撃が炸裂する。シオマネキングの鋏をまねた、光の刃がモスキラスの口を切り裂いた。そこに美遊が速射(シュート)を放ち、吹き飛ばす。

 

「宝、そっちはお願い!」

「っ、オッケー……! スチームホッパーは相性悪そうだし……二人とも、ちょっと休んでて」

「ホパ」「スチム!」

 

 モスキラスを魔法少女組に任せ、ケミーカードを入れ替える。

 今日は見学に行くだけだったので、あまりケミーたちを連れてきてはいないのだが……ちょうど、スチームホッパー以外のガッチャンコケミーの組み合わせがあった!

 

「ようし。出番だよ二人とも!」

『ガッツショベル! プラス、ドッキリマジーンや!』「ガーッツ!」「マージマジ……!」

「『ガッチャーンコ!』」

 

 ガッツショベルとドッキリマジーンを、まとめてガッチャンコ!

 スチームホッパーのアーマーが外され、代わりに合体するのは紫色の重機型ガッチャンコケミー。シルクハット状のドッキリハットと、両腕のアーム・マジカルバケットが特徴的なこの姿は?

 

『ドッキリショベル!』

 

 オペラグラス状のパンクライダゴーグルをかちゃりとあげ、ガッチャードは構えをとる。

 

「おお! マジンくんの形態なんだ!」

「普段はガッツショベルが姉さんのとこにいるから出せないんだけど……今日は特別!」

 

 マジカルバケットを振りかざし、シオマネキングの鋏とぶつけ合うガッチャード・ドッキリショベル。シオマネキングはその攻撃を余裕でさばき、電撃をまとったはさみで返しの斬撃を放つ。

 が、マジカルバケットはその攻撃を受け止め、どころか電撃を吸収して帯電した。

 

「V3!」

 

 そのまま攻撃をはじき、マジカルバケットを上段から振り下ろす!

 

「電熱チョォップ!」

 

 電光をまとった一撃が、シオマネキングを吹き飛ばす。なんとか体勢を立て直し後退するシオマネキングだが、全身の電撃系統がやられたらしく、いびつな電気を体中から放っていた。

 

「ようっし、このまま!」

『いっくでー!』「マッジーン!」

 

 ガッチャードは、シオマネキングに畳みかけた。

 

 対する魔法少女組は、空に逃走したモスキラスを追っていた。イリヤは作り上げた魔力のはさみを振り回し、モスキラスの槍に対抗する。

 相手の槍は、しかし魔力を固めた攻撃であっても微動だにせず、それどころか弾いて反撃してくる。空中を軽やかに飛んで避けながら、イリヤは突破口を模索した。

 

「接近戦じゃだめだよね……だったら!」

 

 イリヤははさみを取り消し、ルビーの先に魔力を込め、放つ。

 基本的な魔力砲だが、相手を追尾して攻撃するというかつてのライダー戦で見せた機能を備えさせた。モスキラスは攻撃をかわし、被弾には槍で衝撃を最小限にとどめつつ、イリヤに突進する。

 

『来ました!』

「うん! 美遊!」

 

 イリヤは敵の攻撃を避けつつ誘導しながら、美遊に叫ぶ。通信を受け取った彼女は、貯めていた魔力を矢のように尖らせ、モスキラスを狙い。

 

「弾速最大……速射(シュート)ォ!」

 

 放った。イリヤの魔力砲同様、ホーミング性能を持つ魔力の槍は、イリヤを狙っていたモスキラスの胸を打ち抜き、風穴を開ける。しかしそれでもなお、仰け反っただけで動き続けるモスキラス。

 そこに、ハンマー状の魔力の塊が炸裂する!

 

剛撃(クロープ)ッ!」

 

 魔力のハンマーは見事モスキラスの全身を打ち抜き、地面へ向かって弾道ミサイルのごとき速度で着弾させる。砂煙が舞い、警察署の敷地内に大きなクレーターが生まれた。

 

「アブッ、ブブブッ……」

 

 何とか立ち上がるモスキラスだが、全身の魔力が切れかけており、体を保つことすらままならない。バラバラに砕けそうになっている。

 そこに、シオマネキングも吹き飛ばされてきた。

 

「アビ~ッ⁉」

 

 片腕のはさみが折られた哀れな姿のシオマネキングもまた立ち上がるが、二体ともすでに満身創痍。

 そして、シオマネキングと戦っていたガッチャードが、彼らの前に立ちはだかった。

 

「一気にとどめ行くよ!」

『おうさ!』

 

 ガッチャードライバーが必殺待機状態に変化。ガッチャードの全身に魔力がたまり、胸のパッションアタノールが青い炎を噴き上げる。シオマネキングは、そんなガッチャードの隙をつかんと突進するが、それよりも早く、ガッチャードは必殺の力を解き放った。

 

『ドッキリマジーン!』

「ライダー……」

 

 マジカルバケットが巨大化し、地面に突き立てられるや。その腕を一気に、真上へと降り抜く!

 

『フィーバーッ!』

「パァーンチッ!」

 

 アスファルトの地面ごと空中へ投げ出された二体の黄金ショッカー怪人。

 その一撃こそ、致命傷にはならないが……

 

『さあイリヤさん! もちつきですよ!』

「オッケー! もっと出力上げて……!」

 

 空中には、先ほどモスキラスを複雑骨折に追い込んだ一撃以上の、魔力の塊が浮いていた。

 イリヤはそれを、思いっきり振り下ろした!

 

極大(マクスマィール)……! 剛撃(クロープ)ッ!!!」

 

 魔力の一撃は、二大怪人をまとめて飲み込み打ち砕き、再び地面にたたきつけた。

 重力の力を借りた連撃を受けては、二大怪人もたまらない。もはや立ち上がることすらなく、たたきつけられた瞬間に爆炎を上げ、滅び去った。

 

「よっし!」

 

 宝は粉砕された二体を確認しガッツポーズ。

 イリヤもまた安堵のため息を吐く。だが、美遊だけは周囲を確認しながら地面に降りて。

 

「……まだ戦闘は続いてる。宝、さっきの怪人のことだけど」

「うん。多分……錬金術で編まれたゴーレム……いや、ホムンクルスだと思う」

「ほむんくるす?」

 

 降りてきたイリヤの問いに、宝はこくんとうなづく。

 

「簡単に言えば人造人間を作っちゃう技術。なんだけど、使いようによっては簡易的な術式だけで、巨大な腕を作ったり、こういう戦闘兵も作れるんだ。ただ、これは純金で作られてるから、性質はゴーレムに近いけどね」

「ご、ゴーレムがわかんない……ゲームに出てくるあの、岩の巨人みたいなやつだよね?」

『それもありますね』

 

 イリヤのあげた例を肯定しつつ「しかし!」とルビーは続ける。

 

『ゴーレムとはカバラ系列の魔術によって成る無機物の人形です。作成者の命令に忠実に動きますが、思考回路は持ち合わせていないんです』

「さっきの怪人の偽物は、自分で考えて戦ってた。もちろん、前の英霊の現象みたいに、頭がいいわけじゃないけど……でも、ゴーレムにはこういうことはできないんだ」

「だから、ゴーレムに近いホムンクルスって言ったんだね」

 

 なるほどとイリヤは納得した。

 しかし、ホムンクルスを、ひいては錬金術を操るということは、この怪物たちの裏で手を引いているのは。

 

「魔術師……?」

「多分、そうかも……でも、なんで」

 

 なぜこうも大規模な攻撃を行ったのか、それがわからない。

 そもそも魔術は、その存在の秘匿が第一原則。普通の魔術師は、決して人前では魔術は使わない。そのはずなのだが……

 

『宝様、まずは安全を確保してから考えるべきかと』

「……うん、そうだね。わかったよサファイア」

 

 宝はうなづき、基本形態であるスチームホッパーへと戻った。

 と、ガラスの割れる音が響き、空から何かが降ってきた。

 黄金色の二体の怪人……いや。

 

「仮面ライダー! ……の、偽物か!」

 

 降り立った二体の黄金ライダーは、その声には応えない。

 ただ目の前に現れた、新たな獲物を狩ろうと、牙を剥くのみだ。彼らはそれぞれ構え、カレイドライナー達もまた、攻撃に備えるべく構える。

 

 と、その時。

 

「待てコラァー!!」

 

 窓を突き破って、黒仮面のライダーが現れた。仮面ライダー二号、一文字隼人だ。

 

「逃げんな逃げんな、お前らのもとになってるやつらが泣くぜ?」

 

 そう挑発するが、しかし偽ライダーたちは何も答えない。ただ構えたまま、殺気だけをとがらせて、二号ライダーを見据えている。

 

「たく……おい、大丈夫か? お嬢ちゃんたち」

「え……あ、大丈夫です!」

 

 イリヤが答える。「それならよかった」と、二号は朗らかに笑う。

 そういえば、ガッチャードのように仮面で顔を隠しているならともかく……先ほど会ったイリヤたちに、二号ライダーは気づいていないようなそぶりだが……

 

『認識を歪めているのですよ、イリヤさん!』

「認識を歪める?」

『はい。これぞ二十六の秘密機能の一つ、マジカルイマジンチャフです!』

『私と姉さんにはそれぞれ、転身者の秘密を保持する機能が存在します。その機能を発展させ、正体がばれないように素顔への認識を変化させるのが、この機能です』

 

 ほうほうなるほど、そんな機能があったのか。

 

「ガッチャードは仮面があるから、ばれる心配はないんだけどね」

『仮面あるなら、体形も変わるようにしてほしかったなぁ』

「それは言わないの」

「おうおうどうした、逃げずに話し込んで」

 

 そんな風に話していると、二号が三人に寄ってきた。三人をじろじろ見て「へー」とか「ほー」とか声を漏らす。

 

「お前、仮面ライダーか」

 

 そして、宝を指さしてそう言った。

 

『あーいや、二号のあんちゃん。こいつは仮面ライダーやなくて、カレイドライナー「そ、そうです。仮面ライダーガッチャードです!」……あー』

「おー、仮面ライダーか! じゃあこの子たちを守ってたんだな、新人!」

「え?」

「……一緒に戦っていたのだけど」

 

 まあ、見られてないし。

 

「いや、守ってたわけじゃ」

「みなまで言うな。よし、協力してあいつを倒すぞ、ガッチャード!」

「あ、はい!」

 

 とんとん拍子で話が進んでしまった。ガッチャードの隣に、改めて、二号ライダーが並び立つ。

 下がっていろと言われそうな雰囲気だが……美遊は一つため息をつき、彼らの隣に、イリヤとともに並び立った。

 

「宝、あの二人の詳細は分かる?」

 

 そして、有無を言わせずガッチャードに問う。

 勝手に戦わせないのは許さないぞという圧を混ぜながら。

 

「も、もちろん。仮面ライダースーパー1に、仮面ライダーフォーゼ。あれは国際宇宙開発研究所のホームページに公式資料があったんだけど……確か火器攻撃が得意なはず!」

「火器って……」『重火器などですね! 一応障壁で相殺することは可能ですが……』

 

 黄金のスーパー1が、黄金のフォーゼが、そろってその姿を変えた。

 片や両腕を金色に光らせ、片や右足に巨大なミサイルランチャーを生み出し。

 同時に、攻撃を放つ。

 

「レーダー・ハンド」

『ランチャー・オン』

 

 無機質な音声とともに、計八発のミサイル攻撃が火を噴く。

 

『わ、わ、わ! 避けてくださーい!』

「間に合わないよ!」

 

 ガッチャードが前に出て、その攻撃を防ごうとするが、まともに食らえばただでは済まない。

 イリヤは迫りくる攻撃をまっすぐに見据えながら、何か防ぐ方法はないかと頭を巡らせ……

 

「っ、そうだ!」

 

 イリヤは足の宝の腕のホルダーから無理やりカードを引き抜いた。

 

「ちょっ、何して」「いいから!」

 

 素早くそのカードをルビーにかざし、能力を発動。と同時に、ミサイルが着弾し、彼らのいた場所が粉々に吹き飛んだ。

 

 二体の偽ライダーはそれぞれ姿を元に戻し、煙が晴れるのを待つ。しかしそこには、吹き飛んだがれき以外には何もない。杖も、ガッチャードライバーさえも残っていなかった。

 うろたえた様子で周囲を探る偽ライダー。

 

「ライダァ、チョォップ!」

 

 その時、ゴルドフォーゼの腕が、手刀によって切り落とされた。

 空中からの落下の勢いとともに、その攻撃を放ったのは、もちろん仮面ライダー二号だ。二体の偽物はとっさに振り向き、二号に対して攻撃しようとするが、彼の体は素早く後方に飛んでいく。

 

 彼の体には魔力の糸が巻き付いていて、それをイリヤが手繰り寄せたのだった。

 

「よし、不意打ち成功! 戦えないのかと思ったら、やるじゃないか、お嬢ちゃん!」

「いや、お嬢ちゃんじゃなくてイリ『本名はだめです! カレイドルビーと名乗ってくださいな!』う……プリズマのほうじゃないんだね」

 

 でも確かに、プリズマ☆イリヤは本名入ってるしなぁ……

 しょうがない!

 

「わ、私はカレイドルビーです! お嬢ちゃんじゃなくて!」

「おう、すまない。カレイドルビーだな!」

 

 じゃあ、そっちは? と二号が手で指す。

 その先にいた少女は、ガッチャードとともに魔力の弾丸を放って二体の偽ライダーをその場にくぎ付けにしていた。

 

「カレイドサファイア、です。そしてこっちが」

『一応、カレイドライナーガッチャードや。まあこいつは仮面ライダーって名乗りたいみたいやがな』

「いいじゃない、仮面ライダーガッチャードでさ!」

 

 そう言うが、ガッチャは「カレイドライナーが正式名称や!」とゆずらない。

 そんな二人のコンビを見て、二号ライダーは笑う。

 

「いいコンビだな、お前ら。スッキリする良いチームだ!」

「そうかなぁ?」

『カレイドライナーズ、先輩に褒められて首をかしげる、の巻ですねー』

「何言ってるのルビー。ともかく、タカ……じゃなくてガッチャー、ド?「呼び捨てでいーよ」なら、ガッチャード。忍者君、返すね」

 

 イリヤは先ほどドローホルダーから抜き取った、サスケマルのカードを返した。

 ミサイル攻撃を受ける直前、イリヤはサスケマルの能力で、大量の瓦礫の幻影を召喚。それらを身代わりに攻撃を回避し、不意打ちにつなげたのだった。

 

「実弾攻撃は受けたら危ないしね。ガッチャ、サスケマル。後、エナジールも!」

 

 宝はホルダーからさらに一枚カードを抜き取る。そしてスチームホッパーを構成する二体から、サスケマルとエナジールの二体を代わりにセットした。

 

『サスケマル! エナジール!』

「変身!」『ガッチャーンコ!』

 

 再びスチームホッパーの装甲が外れ、代わりにエナジールとサスケマルが混合錬成されたガッチャンコケミーが、ライダケミドールに合体する。

 そして生まれるのは、緑の輝きを有するエンターテイナーな忍者形態!

 

『エナジーマル!』

 

 ぽくぽくと湧き上がるは水の音。ガッチャードはいつも以上にテンション爆上げで構えをとった!

 

「さあ……各々方。拙者がお相手つかまつろう!」




Fate世界に当てはめたスーパー1はかーなーり強いんですよねぇ……
無論フォーゼも頭おかしい偉業残してるんですが。
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